397 / 653
第3部 周りと仲良くしろと言われました
94.割り切れない気持ちを話したら嫉妬されました
しおりを挟む
やきもきするがしかたない、と香子は嘆息した。
皇太后に根回しもした。皇太后は、
『では妾のわがままということにしよう。妾が花嫁様を連れて静宜園(香山)に行きたいのだと言えばよい』
と言ってくれた。その後皇帝が皇太后のところへ突撃したりといろいろあったらしいが、皇太后はのらりくらりとかわして香子と香山に向かうことを了承させたとか聞いた。皇帝の苦虫を噛み潰したような顔を思い浮かべるだけで、香子は溜飲が下がるのを覚えた。あまりはっきり表には出さないようにしているが、本当に香子は皇帝を毛嫌いしているのである。
『何がそんなに気になるのか』
白虎に顔を覗き込まれてしまった。白虎の室である。
『保護しているかわいい娘が紅夏なんかにほだされて手籠めにされるのかと思うと切なくて切なくて……』
『ふむ』
白虎は無表情になった。
『我の記憶では、あの娘は村の男に嫁ぎたくなくてここまで出てきたのではなかったか』
『……よく覚えてましたね』
『そなたが話してくれたことは忘れてはおらぬ』
香子は顔が熱くなるのを感じた。こういうことをさらりと言うから四神はもうっ! と思ってしまうのだ。
『そういえばそうだったと思います』
『あの娘もここで働くのは構わぬが、いずれ誰かに嫁ぐ必要があるのではないか』
『うっ……』
香子は言葉をつまらせた。未だ紅児は不安定な状態である。この国の法律だとまもなく成人するだろう紅児は、村にいたままであればすでに婚約者がいて結婚の準備を進めているだろう頃合いである。下手したらもう結婚前の試用期間的なかんじで相手の家に入っていてもおかしくはない。紅児の元の国ではまだまだ成人しないはずだからそれを適用させたとしても後約三年である。三年でいい相手が見つかるかどうかも未知数だし、そもそもセレスト王国からかまだなんの返答も来ていない。もしこの国で一生を過ごすことになれば、誰かに嫁がないわけにはいかないのだ。
(女子は、結婚しないといけないもんね……)
そう、この国では独身でいることはできないと言っていい。
元の世界の己の国でも結婚しなければなんやかや言われていた。それでも独身で過ごす女性がいなかったわけではない。でもこの国はだめなのだ。それが許される国ではない。
『……紅夏が相手としては最善だと?』
『眷属は番(つがい)を何よりも大切にする。お互いが世界の全てなのだ。それは我も変わらぬ』
どさくさに紛れて唇を寄せられ、香子はしょうがないなぁとそれに応えた。
「んっ、んんっ……」
けれどそれは昼間からする口づけではなかった。ちゅっと触れた唇から舌が伸ばされ、香子の口内を甘く舐めた。四神との口づけは本当に気持ちいいから香子は困ってしまう。
顎を優しく押さえられ、逃げることもできなくて、香子は舌を何度も舐められた。少しざらついた舌が気持ちよくて、香子の目にうっすらと涙が浮かんだ。
『……もうっ……』
やっと口づけが解かれた時には、香子は胸を喘がせていた。
『そなたが愛しくてたまらぬ故な』
『……私はまだ……ですけど、紅夏がエリーザに手を出すのは認められませんよ!』
いいとは香子も言えない。下手なことを言ったらまた床に運ばれてしまうことが間違いないからだった。
『愛し合っているのではないのか?』
『まだそこまで気持ちを交わしていないはずです! それにエリーザは未成年です! 立場的には黒月と変わりません』
『だが、あの娘の国では婚前の性行為は推奨されているのではなかったか?』
『ああもう! なんでそんなことばっかりはっきり覚えてるんですかっ!』
なんなんだあの国は! と香子はいきり立った。婚前交渉が推奨されてる国とかなんなんだ。身体の相性をみるのは確かに大事かもしれないが、それは13歳頃性教育を行われた後ならばかまわないというのだから、香子としては信じられない。しかも結婚前に性行為を一度も行ったことのない女性は魅力がないなどの理由で離縁されてしまうこともあるらしいと聞き、香子はカルチャーショックを受けた。
『とにかく! よっぽどのことがない限りは認められませんっ! だってエリーザは元の国で性教育を受けていないんですからっ!』
『それは確かにそうだな』
はーっ、はーっと香子は荒い息をついた。何故こんなに自分が興奮しているのか香子はわからなかった。白雲と陳秀美についてはかまわないだろう。陳はいわゆる後家さんだし、白雲と幸せになってほしいと香子は思っている。延夕玲も成人はしているのだが、青藍が強引に口説くような真似をしなければいい。ただしやはり紅児についてはだめだと香子は思うのだ。
『だがそうなると、性教育さえ受ければかまわないという話にはならぬのか?』
『だったらなおのこと性教育なんて受けさせませんよっ!』
白虎は面白そうに笑んだ。
『香子は本当に面白いな』
香子はムッとした。
『白虎様、それ全然褒めてませんよ……』
『もろもろのことを含めて、そなたが愛しくてならぬ』
『うっ……!』
その流し目は反則である。
『香子』
『な、なんですか?』
『この国の女子は、嫁ぐ際に性教育などは受けていないはずだ』
『あ……』
そういえばそうだったと香子は頭を抱えたくなった。
『全て夫に身を任せ、よいように従う。それをあの娘にもさせよとは言わぬ。だが……』
白虎は香子を抱いたまま長椅子から立ち上がった。
『今は我だけを見てはくれぬか?』
あ、と香子はやっと気づいた。白虎は紅児のことを気にかける香子に嫉妬していた。
『……抱かないでくださいね?』
それだけ伝えて、香子は素直に白虎の寝室に運ばれたのだった。
ーーーーー
セレスト王国の常識については、「初めての人になってくれませんか?」(一迅社/メリッサ文庫)を参照してください。
「貴方色に染まる」77話~です。紅児が紅夏とデート中です。よろしければこちらもどうぞ。
皇太后に根回しもした。皇太后は、
『では妾のわがままということにしよう。妾が花嫁様を連れて静宜園(香山)に行きたいのだと言えばよい』
と言ってくれた。その後皇帝が皇太后のところへ突撃したりといろいろあったらしいが、皇太后はのらりくらりとかわして香子と香山に向かうことを了承させたとか聞いた。皇帝の苦虫を噛み潰したような顔を思い浮かべるだけで、香子は溜飲が下がるのを覚えた。あまりはっきり表には出さないようにしているが、本当に香子は皇帝を毛嫌いしているのである。
『何がそんなに気になるのか』
白虎に顔を覗き込まれてしまった。白虎の室である。
『保護しているかわいい娘が紅夏なんかにほだされて手籠めにされるのかと思うと切なくて切なくて……』
『ふむ』
白虎は無表情になった。
『我の記憶では、あの娘は村の男に嫁ぎたくなくてここまで出てきたのではなかったか』
『……よく覚えてましたね』
『そなたが話してくれたことは忘れてはおらぬ』
香子は顔が熱くなるのを感じた。こういうことをさらりと言うから四神はもうっ! と思ってしまうのだ。
『そういえばそうだったと思います』
『あの娘もここで働くのは構わぬが、いずれ誰かに嫁ぐ必要があるのではないか』
『うっ……』
香子は言葉をつまらせた。未だ紅児は不安定な状態である。この国の法律だとまもなく成人するだろう紅児は、村にいたままであればすでに婚約者がいて結婚の準備を進めているだろう頃合いである。下手したらもう結婚前の試用期間的なかんじで相手の家に入っていてもおかしくはない。紅児の元の国ではまだまだ成人しないはずだからそれを適用させたとしても後約三年である。三年でいい相手が見つかるかどうかも未知数だし、そもそもセレスト王国からかまだなんの返答も来ていない。もしこの国で一生を過ごすことになれば、誰かに嫁がないわけにはいかないのだ。
(女子は、結婚しないといけないもんね……)
そう、この国では独身でいることはできないと言っていい。
元の世界の己の国でも結婚しなければなんやかや言われていた。それでも独身で過ごす女性がいなかったわけではない。でもこの国はだめなのだ。それが許される国ではない。
『……紅夏が相手としては最善だと?』
『眷属は番(つがい)を何よりも大切にする。お互いが世界の全てなのだ。それは我も変わらぬ』
どさくさに紛れて唇を寄せられ、香子はしょうがないなぁとそれに応えた。
「んっ、んんっ……」
けれどそれは昼間からする口づけではなかった。ちゅっと触れた唇から舌が伸ばされ、香子の口内を甘く舐めた。四神との口づけは本当に気持ちいいから香子は困ってしまう。
顎を優しく押さえられ、逃げることもできなくて、香子は舌を何度も舐められた。少しざらついた舌が気持ちよくて、香子の目にうっすらと涙が浮かんだ。
『……もうっ……』
やっと口づけが解かれた時には、香子は胸を喘がせていた。
『そなたが愛しくてたまらぬ故な』
『……私はまだ……ですけど、紅夏がエリーザに手を出すのは認められませんよ!』
いいとは香子も言えない。下手なことを言ったらまた床に運ばれてしまうことが間違いないからだった。
『愛し合っているのではないのか?』
『まだそこまで気持ちを交わしていないはずです! それにエリーザは未成年です! 立場的には黒月と変わりません』
『だが、あの娘の国では婚前の性行為は推奨されているのではなかったか?』
『ああもう! なんでそんなことばっかりはっきり覚えてるんですかっ!』
なんなんだあの国は! と香子はいきり立った。婚前交渉が推奨されてる国とかなんなんだ。身体の相性をみるのは確かに大事かもしれないが、それは13歳頃性教育を行われた後ならばかまわないというのだから、香子としては信じられない。しかも結婚前に性行為を一度も行ったことのない女性は魅力がないなどの理由で離縁されてしまうこともあるらしいと聞き、香子はカルチャーショックを受けた。
『とにかく! よっぽどのことがない限りは認められませんっ! だってエリーザは元の国で性教育を受けていないんですからっ!』
『それは確かにそうだな』
はーっ、はーっと香子は荒い息をついた。何故こんなに自分が興奮しているのか香子はわからなかった。白雲と陳秀美についてはかまわないだろう。陳はいわゆる後家さんだし、白雲と幸せになってほしいと香子は思っている。延夕玲も成人はしているのだが、青藍が強引に口説くような真似をしなければいい。ただしやはり紅児についてはだめだと香子は思うのだ。
『だがそうなると、性教育さえ受ければかまわないという話にはならぬのか?』
『だったらなおのこと性教育なんて受けさせませんよっ!』
白虎は面白そうに笑んだ。
『香子は本当に面白いな』
香子はムッとした。
『白虎様、それ全然褒めてませんよ……』
『もろもろのことを含めて、そなたが愛しくてならぬ』
『うっ……!』
その流し目は反則である。
『香子』
『な、なんですか?』
『この国の女子は、嫁ぐ際に性教育などは受けていないはずだ』
『あ……』
そういえばそうだったと香子は頭を抱えたくなった。
『全て夫に身を任せ、よいように従う。それをあの娘にもさせよとは言わぬ。だが……』
白虎は香子を抱いたまま長椅子から立ち上がった。
『今は我だけを見てはくれぬか?』
あ、と香子はやっと気づいた。白虎は紅児のことを気にかける香子に嫉妬していた。
『……抱かないでくださいね?』
それだけ伝えて、香子は素直に白虎の寝室に運ばれたのだった。
ーーーーー
セレスト王国の常識については、「初めての人になってくれませんか?」(一迅社/メリッサ文庫)を参照してください。
「貴方色に染まる」77話~です。紅児が紅夏とデート中です。よろしければこちらもどうぞ。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる