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第3部 周りと仲良くしろと言われました
105.理解はしなくていいのです
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その後茶室に移動し、お茶を淹れながら香子は何故建物の外観が見たいのかという理由も話した。
元の世界では戦争によって沢山の遺跡が壊されていたこと。修復作業はまだ途中で、自分が生きている間に修復が終わるとは思えなかったこと。その遺跡を外観だけでも見たいと思っていることなどを切々と四神に訴えた。
正直、香子は四神に引かれようがなんだろうがどうでもよかった。それぐらい円明園の廃墟は衝撃だったのだ。わかってくれなくてもいい。ただ見たいのだということだけ知っていてくれればいいと伝えた。
『そなにそなたがこの国の遺跡を愛しているとは思わなんだ』
朱雀が苦笑したように呟いた。
『そうですね。私は昔から自然よりも遺跡が好きでした。建物とか、焼き物等を見るのも好きですよ』
『人の作ったものが好きなのだな』
香子は首を傾げた。
『……そう、なんですかね? まぁ、遺跡ですからそうなんでしょうね』
香子は兵馬俑だって見に行きたいと思っている。だがあれは秦の始皇帝の墓からの続きの部分であり、現状発掘されているかどうかはわからない。下手に兵馬俑の話をして、香子のおかげで発見したなんてことになってもいけないだろう。なにせ兵馬俑の中でも有名な銅馬車は、発見された当時バラバラになっていたはずだ。それを修復する技術が今のこの国にあるとは香子は思えなかった。
そんなわけで発見されているかどうかもわからない遺跡に対し、下手なことは言えないのである。
『清漪園にも行きたいようなことを言っていたはずだが、そっちはいいのか?』
『清漪園(頤和園)には何度か行ったことがあるので。それよりも円明園の姿が見たいですね。あの廃墟を見た時のショックは忘れられません』
『……わからぬものだな』
青龍が頭を振った。
『理解はしなくてかまいません。そういうものだと知ってくれさえすればけっこうです』
四神に理解できるとは、香子も全く思っていない。
『それは今でなければならぬことか?』
玄武が静かに問うた。
『もし、もっと寒くなる前に見に行けたら嬉しいですが、今年中でなくてもかまいません』
香子はそう答えたが、その表情は裏切っていた。
『香子は、もっと我らにわがままを言ってもかまわぬ。聞き入れられるかどうかは別だが、そなたが我らに遠慮する必要はない。それに』
玄武の目が優しくなった。
『好きなものやことを語るそなたの目は美しい。我は生き生きとしているそなたを見るのが好ましい』
香子はカーッと頭が熱くなるのを感じた。首から上が真っ赤になる。
(もー、玄武様って玄武様って……)
絶対タラシだ! と思い、香子はどうにか『はい……』と返事だけした。その後はもうどきどきして、お茶の味もよくわからなかった。
そうしてその夜は、白虎も交えて過ごした。
(ううう……爛れている……なんという、なんという……)
翌朝、いつも通り香子は精神的にダメージを受けていた。すでに白虎の姿はないが、目の前には美しい胸板があり、背後から誰かの腕によって抱きしめられている。そっと目を開ければ、目の前の胸板は朱雀のものだった。
(相変わらず素敵な胸板……)
香子は筋肉自体に興味はそれほどないが、四神はみな理想的な体型をしているのでその胸板にもつい触れたくなってしまう。とにかく薄すぎず、厚すぎずという逞しさで、後ろから香子を抱きしめている腕も惚れ惚れするほど美しい。
『香子、目が覚めたか』
『はい……』
頬を染めて朱雀に応えた途端、腹の虫が鳴った。
そう、四神に抱かれた朝はとにかく腹が減るのである。毎朝のこととはいえいたたまれない。そう、毎朝のことなのだから香子もいいかげん開き直っていいとは思っている。思ってはいるのだが、それに開き直れるのはせいぜい青龍に抱かれて目覚めた時ぐらいだ。青龍に抱かれるのが嫌というわけではないが、あの空腹だけはどうにかならないかと思っている。
(でも、空腹を感じなかったら何をどこまでされちゃうかわからないもんね……)
それも香子は理解していたが、とにかく空腹はつらいのだ。
『声はかけた故、すぐに持ってくるだろう』
『はい……』
おなかが空いているとろくなことを考えない。全然動けないと文句を言い、香子は玄武と朱雀にしっかり自分の世話をさせた。回復はしてもらっているので物理的に動けないわけではないが、空腹で動きたくないのである。それを二神も厭わずに甲斐甲斐しく世話をするものだから、なんだかなぁと香子も思うのだ。
今朝もありえないほどの早さで前菜が着いた。服を軽く羽織らされ、玄武の膝に乗せられて、香子たちはどんどん料理を消費していった。厨師(コック)たちがとにかくがんばっているので前菜の種類は多い。それから炒め物、蒸し物などを経て、スープを飲んでからやっと香子は一息ついた。
そこではっとする。
『あれ? 今日ってもしかして張老師がいらっしゃる日ではありませんでしたか?』
『確認しよう』
玄武が白雲を呼んだ。意志の疎通はできないが、呼びつけるには便利である。
『張錦飛でしたら、明日来る予定です』
『ありがとう……』
遺跡のことを熱く語るあまり、昨日香山公園(静宜園)に行ったことが香子の頭からすっぽ抜けていたようだった。となると今日は青龍と過ごす予定である。また書を教えてもらおうと香子は思ったのだった。
元の世界では戦争によって沢山の遺跡が壊されていたこと。修復作業はまだ途中で、自分が生きている間に修復が終わるとは思えなかったこと。その遺跡を外観だけでも見たいと思っていることなどを切々と四神に訴えた。
正直、香子は四神に引かれようがなんだろうがどうでもよかった。それぐらい円明園の廃墟は衝撃だったのだ。わかってくれなくてもいい。ただ見たいのだということだけ知っていてくれればいいと伝えた。
『そなにそなたがこの国の遺跡を愛しているとは思わなんだ』
朱雀が苦笑したように呟いた。
『そうですね。私は昔から自然よりも遺跡が好きでした。建物とか、焼き物等を見るのも好きですよ』
『人の作ったものが好きなのだな』
香子は首を傾げた。
『……そう、なんですかね? まぁ、遺跡ですからそうなんでしょうね』
香子は兵馬俑だって見に行きたいと思っている。だがあれは秦の始皇帝の墓からの続きの部分であり、現状発掘されているかどうかはわからない。下手に兵馬俑の話をして、香子のおかげで発見したなんてことになってもいけないだろう。なにせ兵馬俑の中でも有名な銅馬車は、発見された当時バラバラになっていたはずだ。それを修復する技術が今のこの国にあるとは香子は思えなかった。
そんなわけで発見されているかどうかもわからない遺跡に対し、下手なことは言えないのである。
『清漪園にも行きたいようなことを言っていたはずだが、そっちはいいのか?』
『清漪園(頤和園)には何度か行ったことがあるので。それよりも円明園の姿が見たいですね。あの廃墟を見た時のショックは忘れられません』
『……わからぬものだな』
青龍が頭を振った。
『理解はしなくてかまいません。そういうものだと知ってくれさえすればけっこうです』
四神に理解できるとは、香子も全く思っていない。
『それは今でなければならぬことか?』
玄武が静かに問うた。
『もし、もっと寒くなる前に見に行けたら嬉しいですが、今年中でなくてもかまいません』
香子はそう答えたが、その表情は裏切っていた。
『香子は、もっと我らにわがままを言ってもかまわぬ。聞き入れられるかどうかは別だが、そなたが我らに遠慮する必要はない。それに』
玄武の目が優しくなった。
『好きなものやことを語るそなたの目は美しい。我は生き生きとしているそなたを見るのが好ましい』
香子はカーッと頭が熱くなるのを感じた。首から上が真っ赤になる。
(もー、玄武様って玄武様って……)
絶対タラシだ! と思い、香子はどうにか『はい……』と返事だけした。その後はもうどきどきして、お茶の味もよくわからなかった。
そうしてその夜は、白虎も交えて過ごした。
(ううう……爛れている……なんという、なんという……)
翌朝、いつも通り香子は精神的にダメージを受けていた。すでに白虎の姿はないが、目の前には美しい胸板があり、背後から誰かの腕によって抱きしめられている。そっと目を開ければ、目の前の胸板は朱雀のものだった。
(相変わらず素敵な胸板……)
香子は筋肉自体に興味はそれほどないが、四神はみな理想的な体型をしているのでその胸板にもつい触れたくなってしまう。とにかく薄すぎず、厚すぎずという逞しさで、後ろから香子を抱きしめている腕も惚れ惚れするほど美しい。
『香子、目が覚めたか』
『はい……』
頬を染めて朱雀に応えた途端、腹の虫が鳴った。
そう、四神に抱かれた朝はとにかく腹が減るのである。毎朝のこととはいえいたたまれない。そう、毎朝のことなのだから香子もいいかげん開き直っていいとは思っている。思ってはいるのだが、それに開き直れるのはせいぜい青龍に抱かれて目覚めた時ぐらいだ。青龍に抱かれるのが嫌というわけではないが、あの空腹だけはどうにかならないかと思っている。
(でも、空腹を感じなかったら何をどこまでされちゃうかわからないもんね……)
それも香子は理解していたが、とにかく空腹はつらいのだ。
『声はかけた故、すぐに持ってくるだろう』
『はい……』
おなかが空いているとろくなことを考えない。全然動けないと文句を言い、香子は玄武と朱雀にしっかり自分の世話をさせた。回復はしてもらっているので物理的に動けないわけではないが、空腹で動きたくないのである。それを二神も厭わずに甲斐甲斐しく世話をするものだから、なんだかなぁと香子も思うのだ。
今朝もありえないほどの早さで前菜が着いた。服を軽く羽織らされ、玄武の膝に乗せられて、香子たちはどんどん料理を消費していった。厨師(コック)たちがとにかくがんばっているので前菜の種類は多い。それから炒め物、蒸し物などを経て、スープを飲んでからやっと香子は一息ついた。
そこではっとする。
『あれ? 今日ってもしかして張老師がいらっしゃる日ではありませんでしたか?』
『確認しよう』
玄武が白雲を呼んだ。意志の疎通はできないが、呼びつけるには便利である。
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『ありがとう……』
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