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第3部 周りと仲良くしろと言われました
106.四神の表情はあまり動かないものらしいです
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『青龍様、書を教えてください』
『……そなたも熱心なことだ。字など書けずとも問題はあるまいに』
青龍にそう言われて香子はムッとした。
『字は書けます……多分。でも筆で綺麗に書くことは難しいのです。青龍様は意地悪です』
『すまぬ。せっかくそなたと過ごせる日だというのにと思ってしまったのだ』
『……二日に一度は共に過ごしているではありませんか』
香子は頬が熱くなるのを感じた。ほんのりと染まった頬を見て、青龍の口元が綻ぶ。
『そなたと共にある時は、独り占めにしたい』
『で、でも……書を教えてくださるのは青龍様だけなので……』
『……そうか』
何かの琴線に触れたらしい。その後、青龍は本当に真面目に香子の書の練習に付き合った。ほんのちょっとだけ、香子は真面目すぎるのも考えものだと思った。
とはいえおかげで今日は手応えを感じるぐらい書の練習ができたので香子はご機嫌だった。青龍の指導は厳しいが、たまにこうして教えてもらえる分にはとてもいい老師であると香子は思っている。
『明後日もしっかり指導しよう』
『明日張老師に教えてもらえるので……』
連日はできれば遠慮してほしい。
『香子は書の上達がしたいのではなかったか?』
『……はい』
やっぱり青龍は真面目だった。しかしへとへとになって昼食を取った後はそうではなかった。
『香子』
昼食後、青龍の室に連れて行かれた。そこまではいい。青龍は当たり前のように香子を抱いて寝室へ運んでいこうとした。
『ちょっ、青龍様っ!』
『如何した?』
『なんで私、寝室に運ばれようとしているんでしょうか?』
『我がそなたに触れたいからだ』
何を当たり前のことをとでも言いだしそうである。
『さ、触るだけですよね?』
青龍はほんの少しだけ考えるような表情をした。青龍はあまり表情が動かないから、香子はついその顔を見つめてしまう。考えるような表情、といっても香子にそう見えるだけで、侍女たちが見てもわからないだろうという変化だ。だが香子は四神のほんのわずかな表情の変化も最近はわかるようになっていて、
(青龍様も表情が出てきたなぁ)
なんてのんきなことを思ったりもした。
『……舐めるのは触るに含まれるのだろうか』
しかしその後青龍が言ったことに、香子はどういう顔をしたらいいのかわからなくなった。青龍、台無しである。
『……青龍様、そういうことは私に聞くことではないと思います……』
せめて他の四神に聞くことはできなかったのだろうか。いろいろまだまだだなと思う香子だった。
夜も、みたいなことを言われたがそれはさすがに香子も断った。明日は張錦飛が来る。書を習うのもそうだが、香山公園に行ったことも話したいし、円明園について知っていることがあれば教えてほしいとも香子は思っている。その楽しみを奪われるわけにはいかなかった。
『ならばいつならいいのだ?』
切なそうな表情で聞かれ、香子はうっと詰まった。最近青龍はこういう、なんというか香子が逆らいにくいような表情をするようになった。あくまで香子の目にそう映っているだけなので、やはり侍女たちが見ても表情が動いたようにはほとんど見えなかったりする。
『……明後日の夜でしたら……』
明日は張錦飛に書を習った後は白虎と過ごすことになっている。だから、明後日ならばいいかと香子も思った。ちなみに明後日の昼からでない理由は、どうしても昼からそういうことをするのには抵抗があるからだった。愛撫はいいのかというツッコミは入るかもしれないが、それが香子の耳に入ることはないのでそういうものなのである。
『では明後日の夜、忘れるでないぞ』
青龍がニヤリとした。なんというか、人の悪い笑みであった。
あんな表情できたんだ、と香子も驚いた。
何度も言うようだが、香子は青龍に抱かれるのが嫌なわけではない。ただ青龍との営みはどうしても時間がかかることがネックなのだ。
(あれえ? でもなんで青龍様に抱かれる時って時間がかかるんだろう?)
香子は頬を染めたまま首を傾げた。青龍は龍だ。龍の交尾が長いなんて香子は聞いたことがない。それ以前に玄武のがどうだとか、朱雀のがどうだとかも香子はよくは知らない。なにせ抱かれる時は毎回朱雀に「熱」を与えられ、とても感じやすい状態にさせられてから抱かれるのだ。もちろん「熱」を受けないで抱かれたこともないではないが、その回数は少なく、そして四神は彼らのそれを決して香子に見せたりはしなかった。
青龍との交わりが何故長いのか。今頃になって香子は気になった。
だがなんとなくそれはまだ聞いてはいけないような気もする。聞いたらひどくショックを受けるような、そんな予感すらするのだ。
(まだ、触れるなってことなのかな?)
交わり関係については下手に聞くと藪蛇になる恐れもあるので、青龍との交わりは長いとだけ覚えておくことにした。
(考えない考えない……)
その夜、いつも通り玄武と朱雀に抱かれながらつい青龍のことを聞いてしまったが、どう二神が答えたのか香子はさっぱり覚えていなかった。
つまり、やはりまだ触れてはいけないようだと香子は再認識したのだった。
『……そなたも熱心なことだ。字など書けずとも問題はあるまいに』
青龍にそう言われて香子はムッとした。
『字は書けます……多分。でも筆で綺麗に書くことは難しいのです。青龍様は意地悪です』
『すまぬ。せっかくそなたと過ごせる日だというのにと思ってしまったのだ』
『……二日に一度は共に過ごしているではありませんか』
香子は頬が熱くなるのを感じた。ほんのりと染まった頬を見て、青龍の口元が綻ぶ。
『そなたと共にある時は、独り占めにしたい』
『で、でも……書を教えてくださるのは青龍様だけなので……』
『……そうか』
何かの琴線に触れたらしい。その後、青龍は本当に真面目に香子の書の練習に付き合った。ほんのちょっとだけ、香子は真面目すぎるのも考えものだと思った。
とはいえおかげで今日は手応えを感じるぐらい書の練習ができたので香子はご機嫌だった。青龍の指導は厳しいが、たまにこうして教えてもらえる分にはとてもいい老師であると香子は思っている。
『明後日もしっかり指導しよう』
『明日張老師に教えてもらえるので……』
連日はできれば遠慮してほしい。
『香子は書の上達がしたいのではなかったか?』
『……はい』
やっぱり青龍は真面目だった。しかしへとへとになって昼食を取った後はそうではなかった。
『香子』
昼食後、青龍の室に連れて行かれた。そこまではいい。青龍は当たり前のように香子を抱いて寝室へ運んでいこうとした。
『ちょっ、青龍様っ!』
『如何した?』
『なんで私、寝室に運ばれようとしているんでしょうか?』
『我がそなたに触れたいからだ』
何を当たり前のことをとでも言いだしそうである。
『さ、触るだけですよね?』
青龍はほんの少しだけ考えるような表情をした。青龍はあまり表情が動かないから、香子はついその顔を見つめてしまう。考えるような表情、といっても香子にそう見えるだけで、侍女たちが見てもわからないだろうという変化だ。だが香子は四神のほんのわずかな表情の変化も最近はわかるようになっていて、
(青龍様も表情が出てきたなぁ)
なんてのんきなことを思ったりもした。
『……舐めるのは触るに含まれるのだろうか』
しかしその後青龍が言ったことに、香子はどういう顔をしたらいいのかわからなくなった。青龍、台無しである。
『……青龍様、そういうことは私に聞くことではないと思います……』
せめて他の四神に聞くことはできなかったのだろうか。いろいろまだまだだなと思う香子だった。
夜も、みたいなことを言われたがそれはさすがに香子も断った。明日は張錦飛が来る。書を習うのもそうだが、香山公園に行ったことも話したいし、円明園について知っていることがあれば教えてほしいとも香子は思っている。その楽しみを奪われるわけにはいかなかった。
『ならばいつならいいのだ?』
切なそうな表情で聞かれ、香子はうっと詰まった。最近青龍はこういう、なんというか香子が逆らいにくいような表情をするようになった。あくまで香子の目にそう映っているだけなので、やはり侍女たちが見ても表情が動いたようにはほとんど見えなかったりする。
『……明後日の夜でしたら……』
明日は張錦飛に書を習った後は白虎と過ごすことになっている。だから、明後日ならばいいかと香子も思った。ちなみに明後日の昼からでない理由は、どうしても昼からそういうことをするのには抵抗があるからだった。愛撫はいいのかというツッコミは入るかもしれないが、それが香子の耳に入ることはないのでそういうものなのである。
『では明後日の夜、忘れるでないぞ』
青龍がニヤリとした。なんというか、人の悪い笑みであった。
あんな表情できたんだ、と香子も驚いた。
何度も言うようだが、香子は青龍に抱かれるのが嫌なわけではない。ただ青龍との営みはどうしても時間がかかることがネックなのだ。
(あれえ? でもなんで青龍様に抱かれる時って時間がかかるんだろう?)
香子は頬を染めたまま首を傾げた。青龍は龍だ。龍の交尾が長いなんて香子は聞いたことがない。それ以前に玄武のがどうだとか、朱雀のがどうだとかも香子はよくは知らない。なにせ抱かれる時は毎回朱雀に「熱」を与えられ、とても感じやすい状態にさせられてから抱かれるのだ。もちろん「熱」を受けないで抱かれたこともないではないが、その回数は少なく、そして四神は彼らのそれを決して香子に見せたりはしなかった。
青龍との交わりが何故長いのか。今頃になって香子は気になった。
だがなんとなくそれはまだ聞いてはいけないような気もする。聞いたらひどくショックを受けるような、そんな予感すらするのだ。
(まだ、触れるなってことなのかな?)
交わり関係については下手に聞くと藪蛇になる恐れもあるので、青龍との交わりは長いとだけ覚えておくことにした。
(考えない考えない……)
その夜、いつも通り玄武と朱雀に抱かれながらつい青龍のことを聞いてしまったが、どう二神が答えたのか香子はさっぱり覚えていなかった。
つまり、やはりまだ触れてはいけないようだと香子は再認識したのだった。
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