異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
431 / 653
第3部 周りと仲良くしろと言われました

128.予想通りなことと、そうでないこともありました

しおりを挟む
 茶室でゆっくりとお茶を飲んでいたら、朱雀がやってきた。

『終わったのではないか』
『はい、終わりました。ちょっとぼーっとしていたかったのでお茶を飲んでいたんです』
『そうか』

 朱雀が隣に腰掛けた。

『我にも茶を淹れてくれ』
『はい』

 香子はにっこりした。
 朱雀はわかっていて空気を読まないことが多いが、時折こうして香子に寄り添ってくれもする。空気を読まない時も別段香子をないがしろにしているわけではなく、きちんと周りは見ているのだ。そういうところはずるいとは思うが、こんな時寄り添ってくれるのはとても嬉しいと香子は感じた。

(なんだかんだいって、朱雀様のこと好きだもんね)

 香子は四神をそういう意味で好いている。ただ、最初に嫁ぐとなると……と考えてしまうのだ。みなそれぞれいいところがあって、そして寿命の問題もある。

『そなたが淹れる茶はどれもうまいな』
『茶葉がいいんですよ』
『それだけではあるまい。そなたが淹れたからこそうまいのだ』
『……お世辞を言っても何もでませんよ~』

 香子は照れた。朱雀は不思議そうな顔をした。

『我がそなたに世辞を言うと思っているのか?』
『もう! そのまっすぐが恥ずかしいんです!』

 四神がお世辞を言わないことぐらい香子だってわかっている。香子が頬を染めれば朱雀が笑んだ。こういうところがずるいというのだ。

『……朱雀様はずるいです』
『何がずるいというのか』
『いろいろです。わかっているのにあえて言うところとか』
『嫌か』
『……嫌な時もあります』

 全てが全てではないから、香子はそう答えた。

『失礼します。朱雀様、花嫁様、昼食の準備が整ったとのことでございます』

 延夕玲に静かに言われて香子ははっとした。

夕玲シーリン、ありがとう。また、着替えた方がいいのかしら』
『はい。着替えをお願いします』
『わかったわ』

 このままでもいいではないかと香子は思うのだが、書の練習をしたから墨の匂いが衣類についてしまっていると怒られるのだ。それに、四神宮には毎日のように贈物が届く為香子の衣裳の充実度はすごい。香子の着替えやメイクなどを担当している侍女たちは、日々衣裳を確認しては今日は香子に何を着せようかと考えている。衣裳の数があまりにも多いので、香子がどこにも出かけなくても侍女たちは香子を着替えさせたくてしかたないのだ。
 そんなわけでただ昼食を食堂でとるというだけなのに着替えさせられる香子だった。
 もちろん香子もそんなに着替えをしなくてもいいのではないかと言ったことはあったのだ。だがその時、侍女たちがこの世の終りのような顔をしたので以来逆らわないことにしている。さすがに化粧はほとんどしない方向で考えてもらっているし、髪飾りも極力減らしてはもらっているが、着替えだけはどうにもならない。
 今日の昼食もおいしかった。書を習ったせいか特においしく感じられた。ヘーゼルナッツを使った炒め物がなかなかおいしいと香子は思った。単純に香子がヘーゼルナッツが好きなだけかもしれないが。
 午後は予定通り朱雀と過ごすことにした。
 食休みも兼ねて朱雀の居間でお茶を飲む。
 紅児は船に乗ったかな、とぼんやり考えていたら、部屋の外から声がかかった。白雲だった。

『如何か』

 紅炎が扉を開けた。

『紅夏から使いが参りました』

 途端、香子の身体が強張った。

『入ってちょうだい』

 白雲に、朱雀の室に入ってもらい、香子は報告を聞くことにした。

『結論から申しますと、船には乗れなかったそうです』
『……そう』

 香子は脱力した。
 予想はしていた。けれど乗れる可能性も0ではなかったから、口にはしていなかった。

『じゃあ、すぐに戻ってくるのかしら?』
『朱雀様の領地へ連れて行くそうです』
『は?』

 思わずそんな声が出た。
 紅夏は紅児を香子に会わせない気なのだろうか。

『眷属たちに妻をお披露目してから戻ってくるそうです』
『……アイツ……』

 既成事実はある。紅夏は再び香子に紅児と引き離されてはなるまいと、先に外堀を埋めにいったようである。香子は拳を握りしめた。

『朱雀様!』
『なんだ?』
『貴方の眷属はなんなんですか! 私に喧嘩を売っているんですか!?』
『”つがい”が愛しくてならぬのだろう。いくらそなたでも引き離すことはまかりならぬぞ』

 朱雀がクックックッと笑う。

『引き離すつもりはありません! でも、まだエリーザは未成年なんですよ! 同衾なんて言語道断です!』
『……だがセレスト王国では、結婚前の性行為は推奨されているのでは?』
『エリーザはセレスト王国で性教育を受けておりません!』
『……難しいものだな』
『ぜんっぜん難しくないです! せめてエリーザが十五歳になるまでは同室なんて認めませんよ、私は! 朱雀様、それはきちんと紅夏に言ってください』
香子シャンズ

 あ、まずいと香子は思った。どうやら朱雀の何かを刺激してしまったようである。
 濃厚な色気を浴びて、香子は頬を染めた。白雲と紅炎がさりげなく室を出て行った。

『紅夏に伝えるのはかまわぬ。だが、そろそろ我を見てもよいのではないか?』

 あ、これ嫉妬だ。
 香子が気づいた時には手遅れで、朱雀の色気にあてられて寝室に運ばれてしまったのだった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...