異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第3部 周りと仲良くしろと言われました

131.帰ってきたので、話を聞いてみました

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 謁見の間ではしっかりと紅児を観察はしなかった。
 謁見の間は少し暗いのだ。また後で紅児たちが挨拶に来るであろうことはわかっているので、香子は敢えて観察するのは避けたのである。だが、髪の色は香子と同じ色になっているように見えた。
 そうなるには……と考えただけで香子は血圧が上がりそうだと思った。
 それが必要だということも、香子はわかっている。だがこういうのは理屈ではないのだ。
 午後、白虎の室でお茶をしていたら紅児が訪ねてきた。紅夏に抱かれて。

『おかえりなさい。……紅夏、さすがに四神宮の中で抱き上げるのはどうかと思うわよ?』
『やっと”つがい”を手に入れたのです。まだエリーザは復職しておりませんので、よろしいではありませんか』

 香子は頭が痛くなるのを感じた。

『……エリーザが恥ずかしがってるじゃないの』

 風紀うんぬんとか、香子の気持ちとかもあるのだが、一番は紅児が恥ずかしがっているのがひどく甘酸っぱいのである。

『エリーザ、嫌か?』
『い、嫌だって……言ってるじゃないですか。……四神宮の中は、その……』
『そうか。善処しよう』
『それ絶対聞く気ないでしょう?』

 四神や眷属の言う「善処」はする気がないことが多いので香子はすかさず突っ込んだ。

『”つがい”が大事なら”つがい”の言うことも聞くべきだと思うけど?』

 そう言うと紅夏に睨まれた。怖いなぁと香子は思った。白虎は苦笑した。

『香子、あまりいじめてやるな。白雲、”つがい”については我は知らぬ。香子に説明してやれ』
『はい』

 それについては紅児も興味津々な様子で聞いた。
”つがい”と結婚した眷属は独占欲が強くなり、普通ならば一歩も表に出さないようにするのだそうだ。だから紅夏が紅児を四神宮で働かせるなどというのは異例のことであり、本来ならば領地へ連れ帰ってずっと抱いているものなのだとか。
 それを聞いた紅児は蒼褪めた。

『わ、私……もしかして早まったのでは……』
『別れることはできぬぞ』

 紅夏はそう言って紅児を抱き込んだ。

『……はい』

 紅児は真っ赤だった。なんだかんだいって紅児は紅夏のことを好きになってしまっている。だから香子は嘆息した。もうごちそうさまと言いたい心境だった。

『一応報告は聞いたけど、紅夏に直接状況を話してもらえるかしら?』
『はい』

 あの日、馬車に乗って郊外まで出てからは紅児を抱いて天津まで走った。そこで待っていた馬車と落ち合い、紅児の叔父の元へ向かった。その日のうちに船着き場へ移動し、船に乗ろうとはしてみたが、紅児が恐慌状態になったので今回は見送ることにした。
 翌朝船着き場で叔父を見送った、というのが一連の流れである。

『エリーザの叔父が気になることは言っていましたが、エリーザが船に乗れるようにならなければ真偽のほどはわかりません』
『気になること?』
『エリーザの叔父が言うには、エリーザの母君は潔白だと』

 香子は眉を寄せた。

『ってことは、エリーザのお母さんは叔父さんとは結婚してないってこと?』
『おそらくそういうことでないかと思われます』
『ふうん。じゃあ、エリーザの叔父さんは嘘をついたのね』

 香子は二人をじっと見つめた。
 これはあくまで想像に過ぎないが、はるばる姪の消息を訪ねてやってきた叔父は、二人の仲睦まじい様子を見て腹が立ったのだろう。紅児の叔父が紅児の母親に懸想をしているのは間違いなさそうだし、と香子は思った。

『どうして……叔父はそんな嘘をついたのでしょう……』
『たぶん、エリーザが紅夏と幸せそうにしているのを見て嫉妬したんじゃないかしら?』
『ええっ!?』
『もしそうならそうで、大人げないけどね……』

 香子は苦笑した。
 紅児の叔父ではないからその心理はわからないが、想像することはできる。紅児の叔父は妻を亡くし、子どもを抱え、紅児の母を支えてきたのだろう。姪の消息を聞いて、二か月もかけて唐にやってくれば姪がとても幸せそうにしている。紅児のせいではないが男まで作って、という奴だろう。紅児からしたら災難だが、おおよそそんなかんじだったのではないだろうか。

『なんにせよ、お疲れ様。今日のところはゆっくり休んでね。いつから職務復帰するかは趙や夕玲と相談してちょうだい』
『わかりました』
『ありがとうございます』

 紅児たちが退室して、香子はほっとした。

『やっぱり乗れなかったのかぁ……。一度船に乗れなくなった人が、また乗れるようになる方法ってないんですかね?』
『できぬことはないが……だいぶ荒療治にはなるな』
『荒療治じゃ困りますよ』

 白虎の返答に香子は苦笑した。

『いろいろ、うまくいくといいですよね。ってことで、白虎様はもふらせてください!』
『……何故なにゆえそうなる?』
『癒しが必要なのです。あ、どなたかお呼びしていただいても?』

 白虎は大仰に嘆息した。

『……そなたにはかなわぬな』

 香子はにっこりした。
 こういう時は女の言うことを聞くべきである。そしてそれは白虎もやぶさかではなかった。


ーーーーー
「貴方色に染まる」の本編は115話で完結しています。(その後の番外編も含めて完結済)
お付き合いありがとうございました。


恋愛小説大賞応援ありがとうございました!


2/28 「森のくまさんと元OL」キャラ文芸大賞、読者賞ありがとうございました!
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