異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
439 / 653
第3部 周りと仲良くしろと言われました

136.確認が大切であることがよくわかりました

しおりを挟む
 冬である。
 さすがに四神が側にいれば快適な気温になるとはいっても、もう外でお茶をする季節ではない。さすがに冬の陽射しと時折吹く風まで遮ることは難しい。香子は常に四神の腕の中なので風などの影響は受けないが、周りの者は影響を受けるのだ。(みな暖石は持っているのでそこまでつらいというほどではない)
 今回は話が話だけに皇帝の執務室に向かうことになった。中書令(宰相)である李雲も同席すると香子は聞いた。四神と四神の花嫁、そして皇室との関係について宰相が知っていいものなのか、香子にはよくわからなかった。今回は女官や侍女は執務室の手前で控え、中には入らないそうだ。

(それぐらい知られてはまずい内容ってことよね?)

 だったらそういうことはしっかり説明しておいてほしいと香子は思った。
 どう考えてもコミュニケーションが足りない。でも花嫁が四神宮に滞在する期間が一年間というのはともかく、それを過ぎても花嫁が相手を決めない場合皇帝がその夫を決めるということを、皇太后はどうやって知ったのだろう。そういうことは夫婦で把握しておくものなのだろうか。
 香子はそんなことを考えながら、玄武の腕に抱かれたまま皇帝の執務室に入った。今回は皇帝、中書令、皇太后、玄武、朱雀、香子、白雲のみである。延夕玲はみなにお茶を淹れてから退室した。執務室の前では黒月と紅夏が控えていることになっている。執務室から少し離れた控室で女官や侍女たちは待っている形だ。武官は執務室の扉を眷属と共に守っている。

『そなに厳重に隠さなばならぬ内容とは思えぬがな』

 朱雀が呆れたように言った。皇帝が頭を下げた。

『……申し訳ない。契約の内容の擦り合わせが必要かと思いまして。国と契約をしたのが先代の四神とはいえ伝わっていないとは思いませんでしたから』
『先々代の花嫁がいらっしゃった頃の話であろう。見せよ』

 朱雀が手を出した。中書令が黒塗りの箱を出した。

『長い時を持たせるようにと、石に刻印しております。どうぞご確認ください』

 蓋を開けて見せられた石は黒くてツヤツヤしていた。長細い平らな石に文字が彫られているのが見えた。

『ふむ』

 玄武と朱雀が箱に入っている石を眺めた。香子も見てみたが、さっぱりわからなかった。使われている漢字は香子から見れば全て繁体字(旧字)だし、句読点はない。なんで読みづらいのに句読点というものをいつまでも開発してくれなかったのだろう。亀の甲羅や木や竹に彫っていたから、できるだけ彫らないで済むようにと考えた結果なのだろうかと香子は考えた。
 どうせ香子が読んでもわからないのだ。

『……解釈の違いか、もしくは』

 玄武が呟くように言った。

『と、おっしゃられますと?』

 宰相が反応した。

『ここに季節が四回巡るまでいう記載はある。だがそれは最低でも季節が四回巡るまでは、四神とその花嫁を滞在させることとある。例外は、四神と花嫁がお互いに納得して季節が巡る前に四神宮を去る場合。そして四神と花嫁が納得した上であればその代の皇帝が身罷るまで四神宮での滞在を許可すること』
『ええっ!?』

 言っていることが違うではないか。香子は皇帝を睨んだ。

『ただし、四神の花嫁が季節が四回巡っても四神を受け入れない場合は、その代の皇帝が花嫁の嫁ぎ先を決めることとは書いてあるな』

 玄武が顔を上げた。

光基グワンジー(皇帝の名)、そなたはこれを見て先日のようなことを申したのか』
『大変申し訳ありません!!』

 皇帝と皇太后がその場に平伏した。
 話を聞くと、この契約書は普段天壇にしまわれているらしい。皇帝が許可を出した者以外には触れることはできず、動かすこともできないようだ。
 なので皇帝がこの契約書を直接確認したのはこれが初めてだったという。

『ってことは……先代の皇帝から口伝えされたことを朱雀様に伝えたのですか?』
『此度は、本当に申し訳ないことをした』

 皇帝、皇太后、宰相が平伏する。香子ははらわたが煮えくり返りそうだったが、ふと気づいた。

『……この契約書が入った箱って、運びたい時に運べるものなのですか?』
『いえ、天壇の出入りには許可がいります』

 宰相が答えた。

『その許可を得るにはどれぐらいの期間がかかりますか?』
『……今回は緊急ということで、二日で許可を取りました』
『なるほど』

 香子は皇帝を許すことにした。一応こちらが声をかける前に動いてはいたようだったからだ。

『ということは、私が四神宮にもっと滞在したいと思えばいられるということよね? 私は四神を拒んではいないのだから』
『……そういうことになりますな』

 宰相は苦笑した。

『顔を上げてちょうだい。そういうことなら、これからもよろしくお願いするわ』

 顔を上げた皇帝は蒼褪めていた。皇太后は笑んでいた。そして宰相もまた笑顔だった。目は笑っていなかったが。

『……妾がお騒がせしたようですな』
老仏爺ラオフオイエは先帝からお聞きになられたのでしょうか? その都度確認しなければ千四百年も昔の話なんてわかりませんわ。気になさらないでください』
『花嫁様の慈悲深いお言葉、この年寄りの胸にしみます』
『老仏爺、これからもよろしくお願いします』
『もちろんですとも……』

 正しい契約内容が知れたことは収穫だったと香子は思った。その後、お茶は冷めてしまったがみなでお茶をし、香子は上機嫌で四神宮に戻ったのだった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...