458 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました
6.そんなに布は集めなくてもいいと思います
しおりを挟む
張錦飛と話をし、気が楽になったはいいが布の色合わせはなくならない。
香子は内心げんなりしながら慈寧宮に向かった。今回は白虎もそうだが玄武も一緒である。玄武の衣裳はあるもので賄うことになっているので必要ないが問題は香子である。
『新年を迎えるのですから、明るい色がよいのではないでしょうか?』
『そうじゃのぅ。しかし玄武様の色も忘れてはならぬ』
皇后と皇太后が香子に布を当てながらああでもないこうでもないと言っている。元々嫁姑の仲は良かったのだろうが、更に仲良しになっているようだった。それはとてもいいことだと香子は思う。だがこんな場面でその仲の良さを発揮しなくても、と香子はやはりげんなりしていた。
慈寧宮に用意された布の種類は、それはそれは多かったのだ。春の大祭時など比べ物にならないほど布が詰まれた一室で、香子は眩暈がしそうになった。
白虎と玄武が目を剥いたほどである。
『……江緑(皇太后の名前)……これはさすがに多すぎではないか?』
白虎が呟いた。それに皇太后が噛みつく。
『何をおっしゃいます! 新年を迎えるのですぞ? 大祭の衣裳だけでなく全ての衣裳を新調するつもりで望まなければなりませぬ!』
『そ、そういうものなのか……』
『そういうものなのです。こういうことは如何に白虎様であろうとも口を挟んではなりませぬ。そこで見ていてくださいまし』
『わ、わかった』
玄武も呆れた顔をしていたが口は挟まなかった。香子はそんな二神を見て、内心(裏切り者!)と叫んだ。
香子もわかってはいるのだ。いくら四神であろうと皇太后にかなうわけがないのである。それでもどうにかしてほしかったというのが本音だ。香子はちら、と延夕玲を見た。あからさまに視線を反らされて、夕玲でもだめなのかと嘆息した。
四神はともかくとして、夕玲にも止めるすべがないというのならばしかたない。
『花嫁様、そのような憂い顔をするものではございません。これを機に沢山衣裳を作ってしまえばよいのです』
『……そのお金はどこから出るのですか……』
皇太后ににこにこしながら言われ、香子は気になっていたことを尋ねた。
『皇上からですわ』
皇后もまたにこにこしながら答えた。
『……は?』
『四神に関する予算は基本国家予算から出ますが、花嫁様の衣装代などは一部しか出ませんの。ですから皇上に更に出していただくことにしましたのよ?』
皇后が嬉しそうに言った。
『ええー……』
香子は思わず声を上げた。
『皇帝のお金ででしたら万瑛(皇后の名前)が自分の衣裳を作ればいいと思うのだけど……』
『後宮は後宮で予算があるから問題ありませんわ。それよりも、こちらの布も合わせてみませんこと?』
『……はい』
皇帝のお金でなんかやだーと香子は思ったが、皇太后と皇后の微笑みには勝てなかった。香子は女性にとても弱いのである。それに、皇后は笑顔を見せるようになった。もし姉がいたらこんなかんじなのではないかと、香子は密かに思った。
結局衣裳は十着作ることになった。それだけでも眩暈がしそうなのに、これでは足りないようなことを皇太后と皇后が言っている。香子は戦慄した。香子はちら、と夕玲を窺った。今度は夕玲も軽く頷いた。
夕玲はスッと皇太后の側に移動した。
『おそれながら申し上げます。老仏爺、花嫁様には毎日沢山の贈物が届きます。その中には衣裳も少なくないのです』
『おお、そうか。ならばこれぐらいで抑えておくのがよいというもの』
皇太后は納得したように頷いた。
『ですが、冬の大祭にはこちらで仕立てた物を着ていただきたいと存じます。よろしいな?』
『はい。なにからなにまでありがとうございます』
香子はどうにか口元が引きつりそうになるのをこらえながら、笑顔で礼を言った。
冬の大祭の衣裳は玄武の瞳の色に合わせ、鮮やかな緑色の布をベースにすることになった。香子もそれを見て少し楽しみになった。
布を選んだ後は昼食が用意された。わざわざ昼から清蒸魚が用意されていて、香子は申し訳ないことをしたなと思った。
『花嫁様は魚が好きであろう?』
『はい、大好きです』
皇太后に言われて、香子は開き直った。
『香子は海老料理も好きであったな』
白虎がそう言いながら唐辛子がベースの干焼蝦仁(日本ではエビのチリソース炒め)を取り分けてくれた。チリはこの国にはないと前述した。香子は辛い物も好きだ。白虎や玄武、皇太后から取り分けてもらいながら、しっかりと食べさせてもらった。
白菜と春雨、肉団子のスープもなかなかおいしかった。
『春雨もおいしいですよね』
香子が呟いた。それらは女官や侍女たちに記録される。次回来る時には春雨料理も用意されているだろう。もちろんそんなこと、香子は少しも意識してはいないのだが。
『ほんに、花嫁様はおいしそうに食べるのぅ』
『おいしいですから!』
皇太后とのやりとりもいつものことである。
(ホント、中華料理っておいしいよね~。いくら食べても飽きないし。ってこれは人によるか……)
そんなことを思いながら、香子は昼にしては豪華な料理に舌鼓を打ったのだった。
香子は内心げんなりしながら慈寧宮に向かった。今回は白虎もそうだが玄武も一緒である。玄武の衣裳はあるもので賄うことになっているので必要ないが問題は香子である。
『新年を迎えるのですから、明るい色がよいのではないでしょうか?』
『そうじゃのぅ。しかし玄武様の色も忘れてはならぬ』
皇后と皇太后が香子に布を当てながらああでもないこうでもないと言っている。元々嫁姑の仲は良かったのだろうが、更に仲良しになっているようだった。それはとてもいいことだと香子は思う。だがこんな場面でその仲の良さを発揮しなくても、と香子はやはりげんなりしていた。
慈寧宮に用意された布の種類は、それはそれは多かったのだ。春の大祭時など比べ物にならないほど布が詰まれた一室で、香子は眩暈がしそうになった。
白虎と玄武が目を剥いたほどである。
『……江緑(皇太后の名前)……これはさすがに多すぎではないか?』
白虎が呟いた。それに皇太后が噛みつく。
『何をおっしゃいます! 新年を迎えるのですぞ? 大祭の衣裳だけでなく全ての衣裳を新調するつもりで望まなければなりませぬ!』
『そ、そういうものなのか……』
『そういうものなのです。こういうことは如何に白虎様であろうとも口を挟んではなりませぬ。そこで見ていてくださいまし』
『わ、わかった』
玄武も呆れた顔をしていたが口は挟まなかった。香子はそんな二神を見て、内心(裏切り者!)と叫んだ。
香子もわかってはいるのだ。いくら四神であろうと皇太后にかなうわけがないのである。それでもどうにかしてほしかったというのが本音だ。香子はちら、と延夕玲を見た。あからさまに視線を反らされて、夕玲でもだめなのかと嘆息した。
四神はともかくとして、夕玲にも止めるすべがないというのならばしかたない。
『花嫁様、そのような憂い顔をするものではございません。これを機に沢山衣裳を作ってしまえばよいのです』
『……そのお金はどこから出るのですか……』
皇太后ににこにこしながら言われ、香子は気になっていたことを尋ねた。
『皇上からですわ』
皇后もまたにこにこしながら答えた。
『……は?』
『四神に関する予算は基本国家予算から出ますが、花嫁様の衣装代などは一部しか出ませんの。ですから皇上に更に出していただくことにしましたのよ?』
皇后が嬉しそうに言った。
『ええー……』
香子は思わず声を上げた。
『皇帝のお金ででしたら万瑛(皇后の名前)が自分の衣裳を作ればいいと思うのだけど……』
『後宮は後宮で予算があるから問題ありませんわ。それよりも、こちらの布も合わせてみませんこと?』
『……はい』
皇帝のお金でなんかやだーと香子は思ったが、皇太后と皇后の微笑みには勝てなかった。香子は女性にとても弱いのである。それに、皇后は笑顔を見せるようになった。もし姉がいたらこんなかんじなのではないかと、香子は密かに思った。
結局衣裳は十着作ることになった。それだけでも眩暈がしそうなのに、これでは足りないようなことを皇太后と皇后が言っている。香子は戦慄した。香子はちら、と夕玲を窺った。今度は夕玲も軽く頷いた。
夕玲はスッと皇太后の側に移動した。
『おそれながら申し上げます。老仏爺、花嫁様には毎日沢山の贈物が届きます。その中には衣裳も少なくないのです』
『おお、そうか。ならばこれぐらいで抑えておくのがよいというもの』
皇太后は納得したように頷いた。
『ですが、冬の大祭にはこちらで仕立てた物を着ていただきたいと存じます。よろしいな?』
『はい。なにからなにまでありがとうございます』
香子はどうにか口元が引きつりそうになるのをこらえながら、笑顔で礼を言った。
冬の大祭の衣裳は玄武の瞳の色に合わせ、鮮やかな緑色の布をベースにすることになった。香子もそれを見て少し楽しみになった。
布を選んだ後は昼食が用意された。わざわざ昼から清蒸魚が用意されていて、香子は申し訳ないことをしたなと思った。
『花嫁様は魚が好きであろう?』
『はい、大好きです』
皇太后に言われて、香子は開き直った。
『香子は海老料理も好きであったな』
白虎がそう言いながら唐辛子がベースの干焼蝦仁(日本ではエビのチリソース炒め)を取り分けてくれた。チリはこの国にはないと前述した。香子は辛い物も好きだ。白虎や玄武、皇太后から取り分けてもらいながら、しっかりと食べさせてもらった。
白菜と春雨、肉団子のスープもなかなかおいしかった。
『春雨もおいしいですよね』
香子が呟いた。それらは女官や侍女たちに記録される。次回来る時には春雨料理も用意されているだろう。もちろんそんなこと、香子は少しも意識してはいないのだが。
『ほんに、花嫁様はおいしそうに食べるのぅ』
『おいしいですから!』
皇太后とのやりとりもいつものことである。
(ホント、中華料理っておいしいよね~。いくら食べても飽きないし。ってこれは人によるか……)
そんなことを思いながら、香子は昼にしては豪華な料理に舌鼓を打ったのだった。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる