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第4部 四神を愛しなさいと言われました
6.そんなに布は集めなくてもいいと思います
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張錦飛と話をし、気が楽になったはいいが布の色合わせはなくならない。
香子は内心げんなりしながら慈寧宮に向かった。今回は白虎もそうだが玄武も一緒である。玄武の衣裳はあるもので賄うことになっているので必要ないが問題は香子である。
『新年を迎えるのですから、明るい色がよいのではないでしょうか?』
『そうじゃのぅ。しかし玄武様の色も忘れてはならぬ』
皇后と皇太后が香子に布を当てながらああでもないこうでもないと言っている。元々嫁姑の仲は良かったのだろうが、更に仲良しになっているようだった。それはとてもいいことだと香子は思う。だがこんな場面でその仲の良さを発揮しなくても、と香子はやはりげんなりしていた。
慈寧宮に用意された布の種類は、それはそれは多かったのだ。春の大祭時など比べ物にならないほど布が詰まれた一室で、香子は眩暈がしそうになった。
白虎と玄武が目を剥いたほどである。
『……江緑(皇太后の名前)……これはさすがに多すぎではないか?』
白虎が呟いた。それに皇太后が噛みつく。
『何をおっしゃいます! 新年を迎えるのですぞ? 大祭の衣裳だけでなく全ての衣裳を新調するつもりで望まなければなりませぬ!』
『そ、そういうものなのか……』
『そういうものなのです。こういうことは如何に白虎様であろうとも口を挟んではなりませぬ。そこで見ていてくださいまし』
『わ、わかった』
玄武も呆れた顔をしていたが口は挟まなかった。香子はそんな二神を見て、内心(裏切り者!)と叫んだ。
香子もわかってはいるのだ。いくら四神であろうと皇太后にかなうわけがないのである。それでもどうにかしてほしかったというのが本音だ。香子はちら、と延夕玲を見た。あからさまに視線を反らされて、夕玲でもだめなのかと嘆息した。
四神はともかくとして、夕玲にも止めるすべがないというのならばしかたない。
『花嫁様、そのような憂い顔をするものではございません。これを機に沢山衣裳を作ってしまえばよいのです』
『……そのお金はどこから出るのですか……』
皇太后ににこにこしながら言われ、香子は気になっていたことを尋ねた。
『皇上からですわ』
皇后もまたにこにこしながら答えた。
『……は?』
『四神に関する予算は基本国家予算から出ますが、花嫁様の衣装代などは一部しか出ませんの。ですから皇上に更に出していただくことにしましたのよ?』
皇后が嬉しそうに言った。
『ええー……』
香子は思わず声を上げた。
『皇帝のお金ででしたら万瑛(皇后の名前)が自分の衣裳を作ればいいと思うのだけど……』
『後宮は後宮で予算があるから問題ありませんわ。それよりも、こちらの布も合わせてみませんこと?』
『……はい』
皇帝のお金でなんかやだーと香子は思ったが、皇太后と皇后の微笑みには勝てなかった。香子は女性にとても弱いのである。それに、皇后は笑顔を見せるようになった。もし姉がいたらこんなかんじなのではないかと、香子は密かに思った。
結局衣裳は十着作ることになった。それだけでも眩暈がしそうなのに、これでは足りないようなことを皇太后と皇后が言っている。香子は戦慄した。香子はちら、と夕玲を窺った。今度は夕玲も軽く頷いた。
夕玲はスッと皇太后の側に移動した。
『おそれながら申し上げます。老仏爺、花嫁様には毎日沢山の贈物が届きます。その中には衣裳も少なくないのです』
『おお、そうか。ならばこれぐらいで抑えておくのがよいというもの』
皇太后は納得したように頷いた。
『ですが、冬の大祭にはこちらで仕立てた物を着ていただきたいと存じます。よろしいな?』
『はい。なにからなにまでありがとうございます』
香子はどうにか口元が引きつりそうになるのをこらえながら、笑顔で礼を言った。
冬の大祭の衣裳は玄武の瞳の色に合わせ、鮮やかな緑色の布をベースにすることになった。香子もそれを見て少し楽しみになった。
布を選んだ後は昼食が用意された。わざわざ昼から清蒸魚が用意されていて、香子は申し訳ないことをしたなと思った。
『花嫁様は魚が好きであろう?』
『はい、大好きです』
皇太后に言われて、香子は開き直った。
『香子は海老料理も好きであったな』
白虎がそう言いながら唐辛子がベースの干焼蝦仁(日本ではエビのチリソース炒め)を取り分けてくれた。チリはこの国にはないと前述した。香子は辛い物も好きだ。白虎や玄武、皇太后から取り分けてもらいながら、しっかりと食べさせてもらった。
白菜と春雨、肉団子のスープもなかなかおいしかった。
『春雨もおいしいですよね』
香子が呟いた。それらは女官や侍女たちに記録される。次回来る時には春雨料理も用意されているだろう。もちろんそんなこと、香子は少しも意識してはいないのだが。
『ほんに、花嫁様はおいしそうに食べるのぅ』
『おいしいですから!』
皇太后とのやりとりもいつものことである。
(ホント、中華料理っておいしいよね~。いくら食べても飽きないし。ってこれは人によるか……)
そんなことを思いながら、香子は昼にしては豪華な料理に舌鼓を打ったのだった。
香子は内心げんなりしながら慈寧宮に向かった。今回は白虎もそうだが玄武も一緒である。玄武の衣裳はあるもので賄うことになっているので必要ないが問題は香子である。
『新年を迎えるのですから、明るい色がよいのではないでしょうか?』
『そうじゃのぅ。しかし玄武様の色も忘れてはならぬ』
皇后と皇太后が香子に布を当てながらああでもないこうでもないと言っている。元々嫁姑の仲は良かったのだろうが、更に仲良しになっているようだった。それはとてもいいことだと香子は思う。だがこんな場面でその仲の良さを発揮しなくても、と香子はやはりげんなりしていた。
慈寧宮に用意された布の種類は、それはそれは多かったのだ。春の大祭時など比べ物にならないほど布が詰まれた一室で、香子は眩暈がしそうになった。
白虎と玄武が目を剥いたほどである。
『……江緑(皇太后の名前)……これはさすがに多すぎではないか?』
白虎が呟いた。それに皇太后が噛みつく。
『何をおっしゃいます! 新年を迎えるのですぞ? 大祭の衣裳だけでなく全ての衣裳を新調するつもりで望まなければなりませぬ!』
『そ、そういうものなのか……』
『そういうものなのです。こういうことは如何に白虎様であろうとも口を挟んではなりませぬ。そこで見ていてくださいまし』
『わ、わかった』
玄武も呆れた顔をしていたが口は挟まなかった。香子はそんな二神を見て、内心(裏切り者!)と叫んだ。
香子もわかってはいるのだ。いくら四神であろうと皇太后にかなうわけがないのである。それでもどうにかしてほしかったというのが本音だ。香子はちら、と延夕玲を見た。あからさまに視線を反らされて、夕玲でもだめなのかと嘆息した。
四神はともかくとして、夕玲にも止めるすべがないというのならばしかたない。
『花嫁様、そのような憂い顔をするものではございません。これを機に沢山衣裳を作ってしまえばよいのです』
『……そのお金はどこから出るのですか……』
皇太后ににこにこしながら言われ、香子は気になっていたことを尋ねた。
『皇上からですわ』
皇后もまたにこにこしながら答えた。
『……は?』
『四神に関する予算は基本国家予算から出ますが、花嫁様の衣装代などは一部しか出ませんの。ですから皇上に更に出していただくことにしましたのよ?』
皇后が嬉しそうに言った。
『ええー……』
香子は思わず声を上げた。
『皇帝のお金ででしたら万瑛(皇后の名前)が自分の衣裳を作ればいいと思うのだけど……』
『後宮は後宮で予算があるから問題ありませんわ。それよりも、こちらの布も合わせてみませんこと?』
『……はい』
皇帝のお金でなんかやだーと香子は思ったが、皇太后と皇后の微笑みには勝てなかった。香子は女性にとても弱いのである。それに、皇后は笑顔を見せるようになった。もし姉がいたらこんなかんじなのではないかと、香子は密かに思った。
結局衣裳は十着作ることになった。それだけでも眩暈がしそうなのに、これでは足りないようなことを皇太后と皇后が言っている。香子は戦慄した。香子はちら、と夕玲を窺った。今度は夕玲も軽く頷いた。
夕玲はスッと皇太后の側に移動した。
『おそれながら申し上げます。老仏爺、花嫁様には毎日沢山の贈物が届きます。その中には衣裳も少なくないのです』
『おお、そうか。ならばこれぐらいで抑えておくのがよいというもの』
皇太后は納得したように頷いた。
『ですが、冬の大祭にはこちらで仕立てた物を着ていただきたいと存じます。よろしいな?』
『はい。なにからなにまでありがとうございます』
香子はどうにか口元が引きつりそうになるのをこらえながら、笑顔で礼を言った。
冬の大祭の衣裳は玄武の瞳の色に合わせ、鮮やかな緑色の布をベースにすることになった。香子もそれを見て少し楽しみになった。
布を選んだ後は昼食が用意された。わざわざ昼から清蒸魚が用意されていて、香子は申し訳ないことをしたなと思った。
『花嫁様は魚が好きであろう?』
『はい、大好きです』
皇太后に言われて、香子は開き直った。
『香子は海老料理も好きであったな』
白虎がそう言いながら唐辛子がベースの干焼蝦仁(日本ではエビのチリソース炒め)を取り分けてくれた。チリはこの国にはないと前述した。香子は辛い物も好きだ。白虎や玄武、皇太后から取り分けてもらいながら、しっかりと食べさせてもらった。
白菜と春雨、肉団子のスープもなかなかおいしかった。
『春雨もおいしいですよね』
香子が呟いた。それらは女官や侍女たちに記録される。次回来る時には春雨料理も用意されているだろう。もちろんそんなこと、香子は少しも意識してはいないのだが。
『ほんに、花嫁様はおいしそうに食べるのぅ』
『おいしいですから!』
皇太后とのやりとりもいつものことである。
(ホント、中華料理っておいしいよね~。いくら食べても飽きないし。ってこれは人によるか……)
そんなことを思いながら、香子は昼にしては豪華な料理に舌鼓を打ったのだった。
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