異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

31.そろそろ決める必要はありそうです

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 庭にある卓と椅子は石で作られているからそのまま腰掛けるには冷たい。
 青龍が香子を抱いたまま腰掛けたので、香子はそのまま青龍の腕の中で甘えることにした。自分で椅子に座りたいとは言わない香子に、青龍は顔を少し綻ばせた。こうして四神の表情が動くのを見るのが香子はとても嬉しい。最初の頃は本当に能面みたいだった美貌に表情が乗るのだ。メンクイな香子としてはたまらないご褒美である。
 寒いからと、お茶の準備をさせてから侍女たちは建物の中に戻るよう香子は伝えた。
 侍女たちは少し渋ったが、

『我が付いている。安心せよ』

 黒月に言われて侍女たちは戻っていった。黒月がこうやって侍女たちと話しているのを見るのも香子は好きだ。できれば黒月がみなと仲良くなってくれればいいと思っている。……例え、生きる時間が違っても。

(そんなこと言ったらお年寄りと仲良くできないもんね……)

 香子はまだ長く生きるということに実感が湧かないからその程度の認識である。漠然とした不安はあるが、それをずっと抱えていても仕方ないと香子は割り切っていた。
 香子としては、本当は延夕玲も建物の中に入ってほしかったのだが、青龍には青藍が付いている。青藍が夕玲の側から離れない為、冬の表だというのに夕玲も控えさせているような状態である。寒くはないかと香子は気になって仕方がなかった。

夕玲シーリン
『はい』
『寒くはない? 風が吹くとさすがにつらいでしょう?』

 夕玲にそう声をかけたら、夕玲は笑んだ。その目が笑っていない。

『花嫁様』
『うん?』
『妾のことを気にする暇があるのでしたら、青龍様と仲良くしてくださいませ』
『え? 仲良くしてるけど……』

 今青龍の腕の中にいるではないかと、香子は首を傾げた。夕玲は嘆息した。

『……花嫁様は……妾に仕えさせてはくださらないのでしょうか』
『え? え?』

 夕玲が何を言っているのかわからなくて、香子は反対側に首を傾げた。微妙に頭が重い。外出時ほどではないが、髪は結い上げられているし、そこに簪が刺さっているのである。毎日けっこう頭が重いのだ。衣裳も、四神宮から出ないからそんなに着せられているわけではないが、意外と重かったりする。確かにこれではマッサージも必要になろうというものだ。
 閑話休題。
 夕玲との会話である。
 青龍がククッと喉の奥で笑った。珍しいこともあるものだと香子は少しだけ青龍を振り返った。

香子シャンズ。この娘は我と香子が結婚することを望んでいるのだ』
『えっ?』

 夕玲の方を見れば、夕玲は頷いた。青藍も頷いている。

『ええと……?』

 スッと青藍が一歩前に出た。

『我から説明をさせていただきましょう。花嫁様が四神宮を離れるのは四神のうちのどなたかに嫁がれる時です』

 香子は青藍の言葉に頷いた。

『その際、我は夕玲を娶ります』
『そういうこと……』
『はい。花嫁様が青龍様以外の方に嫁がれてしまうと、夕玲は花嫁様のお世話ができません』

 それはそうだろうと香子は理解したが、疑問にも思った。

『確かに……夕玲は私の女官だけど、青藍に嫁いでからも私の女官として勤めるの? 結婚したらこちらの女性は家に入るものでしょう?』

 元の世界の中国ならともかく、結婚してからも働いたりはしないはずだ。

『妾は……花嫁様にお仕えしたいのです……』

 夕玲が頬を染め、消え入りそうな声で言った。香子はそんな夕玲をかわいいと思う。

『夕玲、貴女の気持ちはわかったわ。でも誰かと一緒にいたいから結婚相手を決めるわけではないのよ。ちゃんと考えて嫁ぐことにしたいの』
『はい、申し訳ありません』

 そんな夕玲に青藍が寄り添う。

『……青龍様に嫁がれればいいではありませんか』
『青藍、貴方も言うようになったわね……』

 控えめに香子をフォローしていた面影はもうない。四神の眷属もつがいを得る為には必死なようである。

『花嫁様は玄武様に嫁がれるのでは?』

 そこで黒月まで口を挟んできたから香子も困ってしまった。

『……黒月、貴方は私の守護なのでしょう?』
『はい』
『もし私が玄武様以外に嫁ぐ場合は貴方とは離れてしまうのかしら?』
『そのようなことはありません。我は玄武様の眷属ではありますが、花嫁様を主と決めております』
『じゃあ、今はどなたに嫁ぐかは決めなくていいわよね?』
『……玄武様に嫁いでいただきたいです』

 黒月の気持ちもわかるだけに、香子は苦笑することしかできなかった。それまで静観していた青龍が口を開いた。

『青藍、黒月、控えよ。無理を言って香子を困らせるな』
『失礼しました』
『はい』

 二人はすぐに引き下がった。神の一声に逆らえるはずなどないのである。

『花嫁様、申し訳ありません。お茶が冷めてしまったかと……替えさせていただきます』

 夕玲が申し訳なさそうに言い、いつになく慌てて茶杯を手に取ろうとした。その手に香子はやんわりと触れた。

『いいわ。気にしないで。冷めてもおいしいものよ』

 そう言って青龍と共にお茶を啜る。今回のお茶は紅茶だった。雲南紅茶だろうかと香子は思う。香子は紅茶についてはあまり詳しくはない。

『お湯を淹れてくれる?』
『はい……』

 蓋碗の蓋を開けて、夕玲がお湯をそっと注いだ。お湯を入れた湯壺の中には熱石が入っているから、湯が冷めないようになっているのだ。
 こんなところもファンタジーだよねと香子はまったりとお茶を啜りながら思ったのだった。


ーーーーー
登場人物や設定、番外編などが載っているものを今更ながら外部登録しました。
やることが亀ですみません(汗
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