異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

10.四神とのお食事はけっこうたいへんです

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※『』内の言葉は中国語です。「」内は日本語になります。


 香子の内心の混乱っぷりをよそに、朱雀は機嫌良さそうに香子を膝に乗せて軽く抱きしめていた。

白香バイシャンよ、何か食べるか?』

 と気軽に声をかけられる。朱雀の科白に、そういえば神様って何を食べるのだろうとお膳を見ると、肉や魚、野菜などの料理が所狭しと置かれていた。
 一応気を使ってか朱雀の前に鳥料理はないようである。

『魚と野菜が食べたいです』

 と素直に答えると、横から、

『肉は食べぬのか?』

 白虎が低い声で尋ねてきた。香子はどう答えていいか悩む。北京では鶏がおいしかったがそれを朱雀の膝の上で答えていいものだろうか。

『牛は食べますが、内臓類は苦手ですし、豚は脂身が多いのであまり好きではありません』
『ふむ……』

 白虎は満足したのかよくわからない声を漏らすと目の前の肉の塊に手をつけはじめた。

(ってそれ、アヒルの丸焼きじゃ!?)
『鳥は食べないのか?』

 頭上から他意もなく聞かれて頭が痛くなる。すると白虎の隣に悠然と腰かけている玄武が低く笑った。

『白香はそなたに気を使っているのだろう。察してやれ』

 朱雀は玄武の言葉に少し考えるような表情をし、やっと気付いたようだった。

『ああ! 鳥類だから気を使ったのか? 我は家畜とは違う故そんな気遣いは無用だ』

 そう言われてほっとする。すっぽん料理等はそう簡単に出てこないだろうが鶏料理は一般的である。

『それにしても……』

 頭上にあったはずの朱雀の顔が目の前に迫り香子の顔を覗きこむ。

(面食いなんだからそれ以上その顔を近づけないでぇええええ!)

 この神様たちはあまりにも香子の好みの顔をしている。この顔で迫られたらどんな性格だろうと例え子どもを百人産めとか無体なことを言われても頷いてしまいそうな気がして嫌だ。

『我の為に鶏を好きだと言うのを躊躇するとは、心優しいのだな……』

 香子が心の中でそれ違うから! とツッコむ前に朱雀の顔が近付いてきて……。

「んっ、んんん~~~っ!?」

 衆人環視の中で香子は口唇を奪われていた。

(なんでなんでなんで~~~~~~~~~っ!?)

 とっさに朱雀から逃げようにもその腕はがっちりと香子を抱きしめていてどうにもならない。

『まぁ……!』
『おお……』
『さすが朱雀様、なんて情熱的な……』
(た、助けて~~~~~~っ!)

 遠巻きに見ている人々のどよめきが伝わってきて香子は泣きそうになる。

(これは一体なんの羞恥プレイですかっ!?)

 香子がパニックを起こしている間も朱雀の舌は香子の舌を絡め取り好きなように吸っている。

(やだやだこんなところで~~~~っ! やーめーてーーーーーーっ!)

 香子は涙目になった。するとすぐ近くから大きなため息。
 そして。

『朱雀、白香は恥ずかしがっておるようだ。そういうことはせめて人の見えない場所でした方がよかろう』

 穏やかな玄武の声が朱雀をいさめた。
 それに朱雀は名残惜しそうに香子から口唇を離した。香子はあまりのことにぐったりと朱雀の胸にもたれることしかできない。ツッコミを入れたい部分は山ほどあったが今は息を落ち着かせるのが先である。

『……なんで……』

 呟くように言うと再びきつく抱きしめられた。

『そなたが愛らしくてつい耐えられなくなってしまった。許しておくれ』
(ああもうそんな甘い声で囁かれたら頷くことしかできないじゃないっ!)

 朱雀の声は甘いテノール。玄武の声はバリトンで、どちらも香子の好みだった。

『あの……せめて他の人のいるところではしないでください……』

 本当は人の目がない場所に行くのも勘弁してほしいのだが、今はそう言うことしか香子にはできなかった。

『朱雀兄、おめでとうございます。これで次代は約束されましたな』

 白虎が嬉しそうに言う。しかし朱雀はその向こうの玄武に視線を向けた。

『我もそうだがそれよりも玄武兄の方が先であろう。愛しいそなたを共有しなければならないのはつらいがこらえておくれ』

 朱雀に抱きしめられながら香子の頭の中は?でいっぱいだった。

(次代? 玄武様の方が先? 共有? いったい何ーーーー?)

 そんな香子の様子に青龍はふんと鼻を鳴らした。

『……どうやら人間たちはその小娘にその辺りの説明はしていないように見受けられますが?』

 澄んだ水を思わせる透き通るような声に棘が含まれているのを、香子は正確に聞きとった。

(もう、勝手にして……)

 けれどそれにむっとするには香子はすでに疲れすぎていた。投げやりな気持ちになって朱雀の胸に頬を擦りよせる。
 今はとりあえず自分に好意を向けてくれる存在が必要だった。
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