異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

12.四神は世話好きのようです(青龍除く)

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 朱雀は自分の胸にすり、と頬を擦り寄せた香子に微笑んだ。

『疲れたか?』

 そう優しく尋ねる声に、当たり前だと香子は思う。
 いくら中国語に堪能でもずっと使い続けるのは疲れるし、更に様々な問題がのしかかっている。疑問は沢山あるが今日はもう尋ねる気力もない。

『白香、少しでも食べた方がいい。体がもたぬぞ』

 玄武に優しく声をかけられて少しだけ気分が浮上する。身を乗り出して朱雀の前に置かれた料理を改めて見る。

『何が食べたい? 食べさせてやろう』

 朱雀が嬉しそうに声をかけてくる。また見えない疲れが肩にのしかかってきた。

『自分で食べます……』

 ほっとけばあーんと餌付けされそうな気がして、香子は箸を受け取った。リーチの差で食器まで手が届かないので結局皿を手繰り寄せてもらうことにはなってしまったが。

『そこの野菜をお願いします』

 朱雀は嬉しそうに香子の世話を焼く。隣の白虎も『これも食べるか?』などと自分の前に置かれた皿を示してくれたりした。白虎の膳は肉類がほとんどだった。さもありなんと香子は思う。

(虎だもんねぇ……)

 白虎の向こうに腰かけている玄武の膳は野菜類が多かった。興味深そうに見ていると玄武は柔らかく笑んで皿をいくつか回してくれた。
 なんだか雰囲気が孫にかまうおじいちゃんのようなかんじである。
 青龍はどうも香子にいい感情を持っていなさそうなので黙殺することにした。

(ま、気が合わない人もいるよね)

 そうして甲斐甲斐しく世話をされている間におなかいっぱいになった。目はまだ食べたがっているのだが、さすがに満腹である。

『腹は膨れたか?』

 くすくす笑いながら朱雀に聞かれて頷いた。

『おいしかったです……』
『それはよかった。あとで伝えるように言っておこう』

 そういえば、と香子は思い出す。自分の席の前にもお膳があったはずである。
 あちらの膳には全く手をつけないままこちらに連れてこられてしまったのだ。

(もったいないことしたなー……)

 人の膳から食べないでまずあちらの膳から食べればよかったと香子は思う。
 貧乏性と言われようがなんだろうが、食べ物を残す、という考え方が香子にはない。
 中国では人をもてなす時は食べきれない量を出す。それはレストランなどでもてなされる場合も同様だ。おかげで何度もったいないと身悶えたことか。
 留学中、持ち帰れる分はできるだけ持ち帰って寮で食べたりしていたが、ここではそんなことはできないだろう。
 香子は嘆息した。それに朱雀が気づく。

『どうしたのだ?』
『あー……残した料理もったいないなーって思って……』

 それに朱雀は笑んだ。

『おそらく下男や下女に下げ渡されるだろう。そなたが気に病む必要はない』
『それならいいんですけど……』

 食べ物の元は命なのだから、できるだけ無駄にはしたくないと思う。

『そんなに食べ物に困るところから来たのか』

 横から再び透き通るような声がした。おなかがいっぱいになって余裕がでてきたせいか香子はむっとする。

『私自身は困りませんでしたが、元の世界には飲み水にすら困る人もいました。この国にだって食べ物に困る人々はいるはずです』

 青龍をまっすぐ見据えて言うと、彼は眉を寄せた。

『あっはっはっはっはっ! 青龍、そなたの負けだ。いいかげん絡むのはやめた方がいい』

 豪快に笑ったのは白虎だった。

『青龍は我らのうちでは一番若い。そなたにどう接したらいいのかわからないのだ、大目にみてやってくれ』

 頭上から朱雀がなだめるように言う。

(若いったっていくらなんでも私よりは年上でしょうに……)

 それとも見た目に左右されるのだろうか。パッと見る限りは二十歳前後の青年の姿をしている。しかしなんだか接し方がわからないというようなかんじではない。明らかに香子を厭っているように感じられる。
 ただ香子も全ての人に好かれたいなどと大それたことは考えていないので、ほうっておくことにした。
 さて、おなかいっぱいになって少し余裕が出てきた為疑問も少しずつ湧いてきた。おなかに血がいっている状態なので思考が鈍くはなっているが、このまますぐに寝たいというほどでもない。

『あのー……全然知識がないのでいろいろ教えてくださいね?』

 そう言うと、目を向けた朱雀、白虎、玄武は笑みを浮かべて頷いてくれた。
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