12 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました
12.四神は世話好きのようです(青龍除く)
しおりを挟む
朱雀は自分の胸にすり、と頬を擦り寄せた香子に微笑んだ。
『疲れたか?』
そう優しく尋ねる声に、当たり前だと香子は思う。
いくら中国語に堪能でもずっと使い続けるのは疲れるし、更に様々な問題がのしかかっている。疑問は沢山あるが今日はもう尋ねる気力もない。
『白香、少しでも食べた方がいい。体がもたぬぞ』
玄武に優しく声をかけられて少しだけ気分が浮上する。身を乗り出して朱雀の前に置かれた料理を改めて見る。
『何が食べたい? 食べさせてやろう』
朱雀が嬉しそうに声をかけてくる。また見えない疲れが肩にのしかかってきた。
『自分で食べます……』
ほっとけばあーんと餌付けされそうな気がして、香子は箸を受け取った。リーチの差で食器まで手が届かないので結局皿を手繰り寄せてもらうことにはなってしまったが。
『そこの野菜をお願いします』
朱雀は嬉しそうに香子の世話を焼く。隣の白虎も『これも食べるか?』などと自分の前に置かれた皿を示してくれたりした。白虎の膳は肉類がほとんどだった。さもありなんと香子は思う。
(虎だもんねぇ……)
白虎の向こうに腰かけている玄武の膳は野菜類が多かった。興味深そうに見ていると玄武は柔らかく笑んで皿をいくつか回してくれた。
なんだか雰囲気が孫にかまうおじいちゃんのようなかんじである。
青龍はどうも香子にいい感情を持っていなさそうなので黙殺することにした。
(ま、気が合わない人もいるよね)
そうして甲斐甲斐しく世話をされている間におなかいっぱいになった。目はまだ食べたがっているのだが、さすがに満腹である。
『腹は膨れたか?』
くすくす笑いながら朱雀に聞かれて頷いた。
『おいしかったです……』
『それはよかった。あとで伝えるように言っておこう』
そういえば、と香子は思い出す。自分の席の前にもお膳があったはずである。
あちらの膳には全く手をつけないままこちらに連れてこられてしまったのだ。
(もったいないことしたなー……)
人の膳から食べないでまずあちらの膳から食べればよかったと香子は思う。
貧乏性と言われようがなんだろうが、食べ物を残す、という考え方が香子にはない。
中国では人をもてなす時は食べきれない量を出す。それはレストランなどでもてなされる場合も同様だ。おかげで何度もったいないと身悶えたことか。
留学中、持ち帰れる分はできるだけ持ち帰って寮で食べたりしていたが、ここではそんなことはできないだろう。
香子は嘆息した。それに朱雀が気づく。
『どうしたのだ?』
『あー……残した料理もったいないなーって思って……』
それに朱雀は笑んだ。
『おそらく下男や下女に下げ渡されるだろう。そなたが気に病む必要はない』
『それならいいんですけど……』
食べ物の元は命なのだから、できるだけ無駄にはしたくないと思う。
『そんなに食べ物に困るところから来たのか』
横から再び透き通るような声がした。おなかがいっぱいになって余裕がでてきたせいか香子はむっとする。
『私自身は困りませんでしたが、元の世界には飲み水にすら困る人もいました。この国にだって食べ物に困る人々はいるはずです』
青龍をまっすぐ見据えて言うと、彼は眉を寄せた。
『あっはっはっはっはっ! 青龍、そなたの負けだ。いいかげん絡むのはやめた方がいい』
豪快に笑ったのは白虎だった。
『青龍は我らのうちでは一番若い。そなたにどう接したらいいのかわからないのだ、大目にみてやってくれ』
頭上から朱雀がなだめるように言う。
(若いったっていくらなんでも私よりは年上でしょうに……)
それとも見た目に左右されるのだろうか。パッと見る限りは二十歳前後の青年の姿をしている。しかしなんだか接し方がわからないというようなかんじではない。明らかに香子を厭っているように感じられる。
ただ香子も全ての人に好かれたいなどと大それたことは考えていないので、ほうっておくことにした。
さて、おなかいっぱいになって少し余裕が出てきた為疑問も少しずつ湧いてきた。おなかに血がいっている状態なので思考が鈍くはなっているが、このまますぐに寝たいというほどでもない。
『あのー……全然知識がないのでいろいろ教えてくださいね?』
そう言うと、目を向けた朱雀、白虎、玄武は笑みを浮かべて頷いてくれた。
『疲れたか?』
そう優しく尋ねる声に、当たり前だと香子は思う。
いくら中国語に堪能でもずっと使い続けるのは疲れるし、更に様々な問題がのしかかっている。疑問は沢山あるが今日はもう尋ねる気力もない。
『白香、少しでも食べた方がいい。体がもたぬぞ』
玄武に優しく声をかけられて少しだけ気分が浮上する。身を乗り出して朱雀の前に置かれた料理を改めて見る。
『何が食べたい? 食べさせてやろう』
朱雀が嬉しそうに声をかけてくる。また見えない疲れが肩にのしかかってきた。
『自分で食べます……』
ほっとけばあーんと餌付けされそうな気がして、香子は箸を受け取った。リーチの差で食器まで手が届かないので結局皿を手繰り寄せてもらうことにはなってしまったが。
『そこの野菜をお願いします』
朱雀は嬉しそうに香子の世話を焼く。隣の白虎も『これも食べるか?』などと自分の前に置かれた皿を示してくれたりした。白虎の膳は肉類がほとんどだった。さもありなんと香子は思う。
(虎だもんねぇ……)
白虎の向こうに腰かけている玄武の膳は野菜類が多かった。興味深そうに見ていると玄武は柔らかく笑んで皿をいくつか回してくれた。
なんだか雰囲気が孫にかまうおじいちゃんのようなかんじである。
青龍はどうも香子にいい感情を持っていなさそうなので黙殺することにした。
(ま、気が合わない人もいるよね)
そうして甲斐甲斐しく世話をされている間におなかいっぱいになった。目はまだ食べたがっているのだが、さすがに満腹である。
『腹は膨れたか?』
くすくす笑いながら朱雀に聞かれて頷いた。
『おいしかったです……』
『それはよかった。あとで伝えるように言っておこう』
そういえば、と香子は思い出す。自分の席の前にもお膳があったはずである。
あちらの膳には全く手をつけないままこちらに連れてこられてしまったのだ。
(もったいないことしたなー……)
人の膳から食べないでまずあちらの膳から食べればよかったと香子は思う。
貧乏性と言われようがなんだろうが、食べ物を残す、という考え方が香子にはない。
中国では人をもてなす時は食べきれない量を出す。それはレストランなどでもてなされる場合も同様だ。おかげで何度もったいないと身悶えたことか。
留学中、持ち帰れる分はできるだけ持ち帰って寮で食べたりしていたが、ここではそんなことはできないだろう。
香子は嘆息した。それに朱雀が気づく。
『どうしたのだ?』
『あー……残した料理もったいないなーって思って……』
それに朱雀は笑んだ。
『おそらく下男や下女に下げ渡されるだろう。そなたが気に病む必要はない』
『それならいいんですけど……』
食べ物の元は命なのだから、できるだけ無駄にはしたくないと思う。
『そんなに食べ物に困るところから来たのか』
横から再び透き通るような声がした。おなかがいっぱいになって余裕がでてきたせいか香子はむっとする。
『私自身は困りませんでしたが、元の世界には飲み水にすら困る人もいました。この国にだって食べ物に困る人々はいるはずです』
青龍をまっすぐ見据えて言うと、彼は眉を寄せた。
『あっはっはっはっはっ! 青龍、そなたの負けだ。いいかげん絡むのはやめた方がいい』
豪快に笑ったのは白虎だった。
『青龍は我らのうちでは一番若い。そなたにどう接したらいいのかわからないのだ、大目にみてやってくれ』
頭上から朱雀がなだめるように言う。
(若いったっていくらなんでも私よりは年上でしょうに……)
それとも見た目に左右されるのだろうか。パッと見る限りは二十歳前後の青年の姿をしている。しかしなんだか接し方がわからないというようなかんじではない。明らかに香子を厭っているように感じられる。
ただ香子も全ての人に好かれたいなどと大それたことは考えていないので、ほうっておくことにした。
さて、おなかいっぱいになって少し余裕が出てきた為疑問も少しずつ湧いてきた。おなかに血がいっている状態なので思考が鈍くはなっているが、このまますぐに寝たいというほどでもない。
『あのー……全然知識がないのでいろいろ教えてくださいね?』
そう言うと、目を向けた朱雀、白虎、玄武は笑みを浮かべて頷いてくれた。
80
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる