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第1部 四神と結婚しろと言われました
58.ただより高いものはない
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夕食の後、香子は青龍に抱き上げられて茶室に移動した。なにやら話があるらしい。
(青龍様とずっと二人きりよりかはいっか……)
なんの話だろうと侍女にお湯を用意させながらお茶の準備をする。先ほど食堂を出ていった白雲が、何やら巻物のようなものを持ってきて玄武に差し出した。玄武はそれに目を通すと朱雀に渡す。朱雀もまた目を通し白虎へ、そして青龍へと渡された。
香子も気になったが何か自分に関係のある物なら見せてくれるだろうと考えて、お茶を入れることに集中した。
料理をするのはそれほど好きではないが、お茶を入れるのは別である。茶葉に応じて一番おいしく飲めるように入れるのが香子は好きだった。
相変わらず流れるような動きでお茶を入れ、四神に振る舞う。すると青龍から巻物を渡された。
なんだろうと目を通すと、繁体字がずらずらと並んでいた。香子は眉を寄せる。
(キレイな字だけど……句読点がなくて読みづらい……)
一行目は誰かの名前のようだった。その後何やら書かれている。
(んー……なんか物の名前が書いてあるような気がするけど……)
一人で唸っているよりも聞いた方が早い。
『あのぅ、これは何ですか? なんだか物の名前が書いてあるようには見えるのですけど』
尋ねると四神は意外そうな顔をした。
(だーかーらー、私が習っていたのは簡体字だし、日本で使ってる漢字は新字体だし、しかもこんな古代漢語は専門の辞書がないとわからないっつーの!)
古代漢語、というのは日本でいう漢文のことである。しかも当然句読点はない。言うまでもないことだがレ点も一二点もない。
『それは何某かが贈ってきたという贈り物の目録だ』
朱雀が香子の問いに答えてくれた。
『贈り物?』
香子はいぶかしげな顔をした。四神に贈り物というのはわかるが自分になんの関係があるというのだろう。
『香子宛にも届いておるらしい』
香子の表情を見ながら朱雀が言う。
『私に贈り物なんかしてどうするんですか?』
問い返すと白雲と青藍の口元が少し緩んだが、香子は気付かなかった。
『さぁな……。大方そなたに取り入って我らになんらかの願い事を叶えてもらおうと考えているのやもしれぬ』
朱雀の応えは他人事だったが、香子はまた眉を寄せた。そろそろ眉間に皺ができそうである。
『まぁ……ただで食べられるごはんはない(ただより高いものはない)って言いますしね。それって断ることはできるんですか?』
『できないことはないのですが、全て断るにはふれを出す必要があるようです』
白雲が答える。
『うーん……』
香子は悩んだ。ここで受け取ればこれから先も受け取り続けなければいけないし、かといって断り続けるというのも疲れる話ではある。しかも全て断るにはめんどくさい手続きがありそうだ。
朱雀がそれに笑んだ。
『もらえるものはもらっておくといい。いらぬものは売り払ってもかまわぬだろう』
『でも……私が何かもらったことで四神の足を引っ張るのは嫌です』
四神の口元に笑みが浮かんだ。
『そなたが気にすることはない。下心などあったところで我らがそれを叶える理由にはならぬ』
言われてみればそうだ。
(神様への御供えの一部だと思えばいいか……)
『先に私が目を通しましたのでおかしな物はないかと』
白雲の言葉に頷く。
『うーん、じゃあ品物の確認を一緒にしてもらっていいですか?』
なにせここは宮廷である。もらったものに呪詛のようなものがかけられていても香子にはわからない。物語の読み過ぎだと言われても、考えられるリスクはできるだけ回避したいと思うのが人情だろう。
『そなたが望むなら』
四神はなんだか満足そうに見えた。
『明日の午前中に届けさせますので、そこで確認いたしましょう』
白雲の言葉に香子は頷いた。
まったくもって宮廷というのは厄介なところである。
(青龍様とずっと二人きりよりかはいっか……)
なんの話だろうと侍女にお湯を用意させながらお茶の準備をする。先ほど食堂を出ていった白雲が、何やら巻物のようなものを持ってきて玄武に差し出した。玄武はそれに目を通すと朱雀に渡す。朱雀もまた目を通し白虎へ、そして青龍へと渡された。
香子も気になったが何か自分に関係のある物なら見せてくれるだろうと考えて、お茶を入れることに集中した。
料理をするのはそれほど好きではないが、お茶を入れるのは別である。茶葉に応じて一番おいしく飲めるように入れるのが香子は好きだった。
相変わらず流れるような動きでお茶を入れ、四神に振る舞う。すると青龍から巻物を渡された。
なんだろうと目を通すと、繁体字がずらずらと並んでいた。香子は眉を寄せる。
(キレイな字だけど……句読点がなくて読みづらい……)
一行目は誰かの名前のようだった。その後何やら書かれている。
(んー……なんか物の名前が書いてあるような気がするけど……)
一人で唸っているよりも聞いた方が早い。
『あのぅ、これは何ですか? なんだか物の名前が書いてあるようには見えるのですけど』
尋ねると四神は意外そうな顔をした。
(だーかーらー、私が習っていたのは簡体字だし、日本で使ってる漢字は新字体だし、しかもこんな古代漢語は専門の辞書がないとわからないっつーの!)
古代漢語、というのは日本でいう漢文のことである。しかも当然句読点はない。言うまでもないことだがレ点も一二点もない。
『それは何某かが贈ってきたという贈り物の目録だ』
朱雀が香子の問いに答えてくれた。
『贈り物?』
香子はいぶかしげな顔をした。四神に贈り物というのはわかるが自分になんの関係があるというのだろう。
『香子宛にも届いておるらしい』
香子の表情を見ながら朱雀が言う。
『私に贈り物なんかしてどうするんですか?』
問い返すと白雲と青藍の口元が少し緩んだが、香子は気付かなかった。
『さぁな……。大方そなたに取り入って我らになんらかの願い事を叶えてもらおうと考えているのやもしれぬ』
朱雀の応えは他人事だったが、香子はまた眉を寄せた。そろそろ眉間に皺ができそうである。
『まぁ……ただで食べられるごはんはない(ただより高いものはない)って言いますしね。それって断ることはできるんですか?』
『できないことはないのですが、全て断るにはふれを出す必要があるようです』
白雲が答える。
『うーん……』
香子は悩んだ。ここで受け取ればこれから先も受け取り続けなければいけないし、かといって断り続けるというのも疲れる話ではある。しかも全て断るにはめんどくさい手続きがありそうだ。
朱雀がそれに笑んだ。
『もらえるものはもらっておくといい。いらぬものは売り払ってもかまわぬだろう』
『でも……私が何かもらったことで四神の足を引っ張るのは嫌です』
四神の口元に笑みが浮かんだ。
『そなたが気にすることはない。下心などあったところで我らがそれを叶える理由にはならぬ』
言われてみればそうだ。
(神様への御供えの一部だと思えばいいか……)
『先に私が目を通しましたのでおかしな物はないかと』
白雲の言葉に頷く。
『うーん、じゃあ品物の確認を一緒にしてもらっていいですか?』
なにせここは宮廷である。もらったものに呪詛のようなものがかけられていても香子にはわからない。物語の読み過ぎだと言われても、考えられるリスクはできるだけ回避したいと思うのが人情だろう。
『そなたが望むなら』
四神はなんだか満足そうに見えた。
『明日の午前中に届けさせますので、そこで確認いたしましょう』
白雲の言葉に香子は頷いた。
まったくもって宮廷というのは厄介なところである。
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