異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
59 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました

59.やっぱり白酒は最高です

しおりを挟む
 青龍は一旦香子を部屋に帰してくれた。

『湯を使っておけ。後ほど参る』
(それは今夜ここで青龍様が一緒に寝るということですか、ああそうですか)

 香子はなんだか気が遠くなりそうな自分をどうにか立て直すのに必死だった。おかげで侍女たちがこっそりとほくそ笑んでいたことに全く気付かなかった。
 侍女たちに浴室に案内され、これでもかと体を磨かれる。香油を全身に塗りこまれマッサージを受けるともうどうにでもしてという気分になる。丹念に世話をされて着せかけられたのは薄絹の夜着で。その上からガウンのようなものを着せられ部屋に戻った。

(うわぁ……これはまるで初夜のような……)

 香子はガウンの下の自分の格好を見ながらなんとも情けない気持ちになった。あからさまに透けているかんじではないが、見る人が見れば淫靡な格好と言えないこともない。
 寝室のテーブルには香子のバッグが丁寧に置かれていた。そういえば縫ってもらったのだったと確認するとかなりキレイに仕上げられていた。自分でやったとしたらこうはいかなかっただろうと思うととても嬉しくなる。

(明日お礼言わないと)

 棚に一旦しまった物を思い浮かべて、辞書をまだ返してもらっていなかったことも思い出した。

(明日確認しよう……)

 なにかメモ帳というか紙が欲しい。でもこの国で紙は貴重品だろうか。

(ボールペンとかシャーペンなんて便利な物はないよねぇ……)

 筆は苦手なんだけどと思いながら香子はため息をついた。
 一応なにかあった時用に小さいメモ帳とボールペンは一本入れてあったからそれにメモする。かえすがえすももう一つの手荷物が惜しくなる。

(存在抹消と同時にあの時飛行機に積んであった荷物もまとめて持ってきてくれないかなぁ)

 勝手なことを考えながらお茶を入れて飲もうとした時、扉が開いた。

「……あ……」

 青龍だった。白い夜着に青い長袍を引っかけただけの姿だが、ひどく婀娜っぽく見える。

『女性というのはとかく支度に時間がかかるものなのだな……』

 苦笑したように言いながらベッドの横のテーブルに酒瓶を置いた。陶器でできているものなので中身は窺えない。

『酒杯はありませんが……』

 どうしようかと香子はどぎまぎして寝室の中を見回す。

『これでいい』

 そう言って青龍が手に取ったのは茶杯だった。そして香子が何か言うのを待たず、手酌し一気に中身を煽った。

『そなたも飲むか?』

 卓の隣の椅子に腰かけて悠然と聞かれる。

『中身はなんのお酒ですか?』

 あまりお酒には強くないので思わず聞き返す。

『白酒だが』
『では少しいただきます』

 そう言って香子は自分で茶杯に瓶の中身を少し注いだ。口に含んでその辛い、ツーンとした味を楽しむ。

『おいしいですけど、かなり強いお酒ですね。青龍様はお酒に酔われないんですか?』
『そうだな……これ一瓶ぐらいでは酔わぬな』

 青龍からはそれほど酒の匂いがしないから、香子と飲む為にわざわざ持ってきてくれたのかもしれない。
 白酒はいろいろ種類があってよくわからないが、紹興酒よりは香子の好みである。ちなみに日本で好まれる紹興酒は黄酒(醸造酒)である。白酒は蒸留酒で紹興酒よりもアルコール度数は高い。

(あれ? でも白酒って確か宋代初期に出てきたんじゃ?)
『あの……この白酒っていつ頃から生産されはじめたんですか?』
『さぁな……我の生まれる少し前からだと聞いているから、大体三百年ぐらい前から出回っているはずだが』
(三百年前というと清の中期ぐらいってことだよね)

 ちょうど元の世界で白酒の生産が増えた頃と一致する。香子がうんうんと頷いてもう一口飲む。やはり強い。
 すでに香子の顔は真っ赤だった。
 青龍は水のように飲んでいるがいくらなんでも真似はできない。

『そなたは酒に弱そうだな』
『はい、でも白酒は好きです』

 何よりも香りがいい。
 香子が微笑んで答えると、青龍は目を細めた。そして香子の手から杯を取り上げ自分が煽る。

「……あっ……!?」

 香子は慌てて青龍の手から杯を取り返そうとしたがすでに遅かった。恨めしそうに青龍を見上げると、いつのまにかその顔が近付いてきていて。
 そしてどちらからともなくお互いの口唇が重なった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...