異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
502 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました

50.四神の愛はなかなか重そうです

しおりを挟む
 ……身体のダメージはない。
 それでも白虎に本性を現されて抱かれるのは、香子にとって負担は大きかった。

(虎の姿でっていうのがやっぱり怖いんだよね……)

 白虎はすでにいない。目を覚ましたら玄武と二人きりであった。玄武の腕の中に抱き込まれているのが香子は嬉しかった。衣裳を着ていると全く感じられないのに、こうして裸で抱き合っていると玄武の逞しさを感じる。美しいし、身体は筋肉質だしと香子の萌え要素が詰まりに詰まっている四神はずるいと香子は思う。
 ただ、あまりくっついているとまた玄武がその気になってしまうかもしれず、そうなったらそうなったでたいへんである。

(でもごはんは食べさせてくれるんだよね)

 我を忘れて香子を求めるということは、四神はあまりない。我慢させているという自覚は香子にもあった。けれど四神がどの程度我慢しているのかは香子にはわからないし、ヘタなことを言おうものなら一日中ベッドから出してもらえなさそうな気もしている。
 ただ、香子にもしたいことはある。
 玄武の逞しい胸にすりすりしたいし、朱雀の熱を受けながら朱雀に甘く抱かれたいと思うし、白虎の本性をもふもふしたいし、青龍にも寄り添いたい。

(あれ?)

 と、無意識に玄武の胸にすり寄りながら己の思考を疑問に思った。

香子シャンズ、そなにかわいいことをされてしまうと……』

 玄武が言い終わらないうちに、

『はいっ! ごめんなさいっ!』

 香子は慌てて玄武から離れようとしたがそれはかなわなかった。背中に玄武の腕が回り、がっちりと香子を固定する。

(うわん)
『襲ってしまうぞ?』

 玄武はククッと喉の奥で笑った。

「んんっ……!」

 唇を塞がれ、すぐに香子の身体から力が抜ける。四神の口づけはどこまでも甘い。
 しかしそれも香子の空腹には勝てないのだ。ぐ~と鳴った香子の腹の虫のおかげで、どうにか香子は玄武の腕から逃げ出すことができたのである。
 恥ずかしいが、やはり食べるのはほどほどが正しいと香子は再認識したのだった。


 いつも通りの朝食を終え、香子はやっと一息ついた。
 最近は菜包(野菜まん)もお気に入りである。なんで野菜しか入っていないのにあんなにおいしいのかと香子は首を傾げた。人によっては青臭いと思えるほど青菜が詰まっているそれが、香子にとっては好ましかった。
 今日は青龍と過ごす日だ。

(もしかして、今夜抱きたいって言われちゃうのかな)

 まだ新年が明けて数日しか経っていないのだが、一日一日が濃すぎてなかなか日が経たない印象である。
 はっとする。
 張錦飛は次、いつ頃こちらに顔を出すと言っていただろうか。
 朝食を終えて、玄武に抱かれて部屋に戻った。ここのところ香子は自分の足では全く歩いていないと思う。元よりその傾向はあったものの、こんな誰かの室から自分の部屋に戻るとか、部屋から食堂へ向かう時も四神に抱かれて移動しているのである。

(あれえ?)
『玄武様』
『如何か』

 部屋の長椅子に下ろされて、香子は玄武に声をかけた。

『大したことではないのですけれども……私、年が明けてから全然自分の足で歩いていない気がするのですが……』

 玄武はなんだそんなことかと言うように目を少し細めた。その優しい表情に香子の胸は疼いた。

『少なくともそなたは今年中に誰かの元に嫁ぐだろう。我もそうだが、みなそなたと離れがたいのだ。もちろん領地間の移動は問題ないし、我らもそなたに会いたい時に会うことはできるが……こう手の届く位置からそなたの姿がいなくなってしまうかと思うとたまらぬのだ……』

 香子は真っ赤になり、内心身もだえた。
 玄武はなんてことを言うのだ。

『わ、私は四分割はできませんよ……』
『そうだな』

 玄武はククッと笑む。

『だが、もしそなたが四つに分かれることができたとしても……今度はその四人を独り占めしたいと願うだろう』
『えええええ』

 玄武は香子の手を取ると、そっと口づけた。

『そなたにはわからぬであろうが……我らはそれほどそなたを欲しているのだ』
『ううう……』

 求められるのは嬉しいと香子は思う。香子はもう人ではないから、この先ずっと四神の腕に抱かれて移動したとしても筋力が衰えて歩けなくなったりはしないのだろう。香子はどうにかして話題を変えようとした。

『……今日は、青龍様と過ごすつもりです』
『そうか』

 玄武は再び香子の手に口づけてから立ち上がった。

『では青龍に声をかけて参ろう。衣裳も直さねばな』
『……はい』

 玄武は踵を返し、香子の部屋を出て行った。
 香子は両手で顔を覆った。

「無理無理無理無理、だめもう無理、素敵すぎるうううう~~~~~!!」

 香子は日本語で叫ぶ。延夕玲や侍女にはその言葉は理解できなかったが、大体こんなニュアンスの言葉だろうということは伝わったようだった。
 夕玲は頭が痛くなるのを感じ、侍女たちは終始内心身もだえていた。部屋で控えている侍女は紅児と林雪紅である。紅児は自分の夫である紅夏を思い出し、林雪紅は自分に迫ってくる紅炎を思い出して真っ赤になった。
 己のことでいっぱいいっぱいな香子はそれには気づかない。きっと気づいていたらコイバナができたかもしれないが、それは今ではないだろう。
 どうにか夕玲に宥められて衣裳や髪型などを侍女に整えてもらい、香子はやっと一息ついたのだった。


ーーーーー
エールありがとうございます! 本当に嬉しいです!
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...