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第4部 四神を愛しなさいと言われました
51.やっぱり学習していないみたいです
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青龍が青藍を伴って香子を迎えにきたのは、ちょうどいいタイミングであった。
おそらく青藍が気を利かせて時間を調整しているのだろうということは香子もわかる。香子が身支度を整えて、お茶を一杯飲んだところで来るなど絶妙だ。
『香子』
『青龍様』
香子は茶杯を卓に置こうとしたが、それは青龍によって取り上げられた。コトリと卓に置くと、青龍は香子を抱き上げた。
『……やっとそなたと過ごせる』
香子の顔が一気に赤くなった。
当初はすごく険悪であったのに、今はとても甘いと香子は思う。険悪から友人枠になり、だがやはりそこは四神である。香子を求め、絡め取るさまは蛇のようだと香子は思った。しかも青龍に抱かれると夜から翌日の昼過ぎまで確実に放してもらえない。目覚めたら翌日の夕方というのが普通で、香子はひどい空腹に泣くはめになるのだ。
だが香子は己の身体が食べ溜めをできることを知った。
(青龍様に事前に言っておいてもらえれば、夕飯の量を増やしてもらうことも可能よね?)
とにかく目覚めた時の空腹がひどくて指先一つ動かせなくなるのが香子はつらいのである。
抱かれている間は何故か途中靄がかかったようになり、気持ちいいということしかわからなくなる。だから抱かれるのはもう香子としてはかまわないのだ。
『今日は風はどうでしょうか』
『穏やかであるな』
『では、表でお茶をしたいです』
『わかった。用意せよ』
四神宮はそれなりの広さはあるが、散歩できるというほどではない。
『……少し、歩く場所がほしいです……』
この際自分の足でなくてもいい。四神に抱かれたままでもいいから、少し気分転換がしたい。許可を取らなければどこにも出られないというのが香子としてはストレスである。最初の頃は向かえていた景山にも行っていないし、御花園にも行けない。
今は正月だからまだ各国からの要人たちも滞在しているのだろう。
新年から仕事で皇帝もたいへんだなとは香子も思うが、それが皇帝なのだからしかたないとばっさり切った。香子の中で皇帝は最低な男筆頭なので容赦がない。
『……自分の足で歩きたいのか?』
青龍に尋ねられてはっとした。
『自分の足でなくてもかまいません。こう、四神宮の中だけで過ごしていると気が滅入ってくるのです』
『そうか……確か今年は龍の年であったな』
『えっ?』
この国で今が何年かなど香子は考えたこともなかった。ということは昨年が卯年だったのかとぼんやり思った程度である。
青龍は香子を抱いたまま渡り廊下に出た。そのままお茶の準備をしているだろう中庭に向かう。その間青龍は無言であった。
香子はなんとなく呟いてみただけだったから、その間に青龍が四神同士で何か伝え合っているとは全く思ってもみなかった。
『準備はまた後にせよ。しばし散歩に参る』
青龍は中庭で用意をしていた侍女たちにそう声をかけた。
「?」
香子は目を丸くして青龍を見た。散歩とは言うが、いったいどこに向かうつもりなのだろう。
『青龍様?』
『そなたの望む形ではないかもしれぬ。空中散歩をしたいと思うのだが如何か』
『え』
空中散歩というとあれだろうか。青龍の背に乗って空を飛ぶというやつか。想像しただけで香子はわくわくするのを感じた。
けれどさすがにそれは迷惑ではないかとも香子は思う。
『したい、ですけど……でも』
『ならば参るぞ』
『ええっ!?』
青龍は強引だった。そのまま中庭にトンッと下りると香子を抱いたまま本性を現し、目を白黒させる香子をその背に乗せた。
『捕まっておれ』
『え? はい? わあっ!』
香子が青龍の背に身体を伏せた途端、青龍はふわりと浮き上がった。
こんなことをしてたいへんなことにならないのかとか、そんな考えが浮かぶ。四神宮の面々が青龍を見上げながらあんぐりと口を開けているのが見えた。いきなりで申し訳ないと香子は思う。
《何故そなたがそなに困っているのか》
心話で話しかけられて香子はびくっとした。
《だって、突然ですから》
香子は苦笑する。
『ああっ、あれは!?』
『龍だ! 吉祥だ!』
青龍は一応皇帝には一方的に伝えていた。青龍は何度か王城の上空をぐるりと回る。それほど高度が高くないせいか、香子にも慌てて建物から出てきた人々の姿が見えた。
《青龍様、皇帝ってどこにいるんでしたっけ?》
こうなったらもう楽しんだ者勝ちと香子は割り切った。
《……皇帝に会いたいのか?》
心話でも低い声ということがわかる。不思議だなと香子は思った。
《皇帝の慌てているマヌケ面が見たいのですよ~》
私性格悪いので、と香子は笑った。青龍はフッと笑う。
《確かに、それは随分と性格が悪い。だがそんなそなたが好ましくてならぬ》
いきなり口説かれて香子はどんな顔をしたらいいのかわからなくなった。息をするように口説くのは止めてほしいと香子は思う。
《そなたが愛しいのだからしかたない》
そういえば本性を現した四神にくっついていると、心情がだだ漏れになるのだったということを香子は思い出した。
《では探してみるか》
青龍は楽しそうに王城の上空を飛び、建物から出てきて困ったような顔をしている皇帝の姿を香子に見せた。
《青龍様、大好きです!》
皇帝の周りには地位が高そうな者たちが何人もいて、しきりにこちらを指さしている。その中には外国の衣裳を着ている者も混じっていた。あれはどこかの要人なのかもしれないと香子は思った。
《聞くがいい。我は花嫁と飛んで参る。ただそれだけ故大事にするでない》
青龍は一方的に王城の者たちにそう告げると、北へ向かって飛んでいったのだった。
皇帝がこめかみに指を当て、この騒ぎをどうしたものかと頭を悩ませたのは香子たちのあずかり知らぬことである。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございますー!
おそらく青藍が気を利かせて時間を調整しているのだろうということは香子もわかる。香子が身支度を整えて、お茶を一杯飲んだところで来るなど絶妙だ。
『香子』
『青龍様』
香子は茶杯を卓に置こうとしたが、それは青龍によって取り上げられた。コトリと卓に置くと、青龍は香子を抱き上げた。
『……やっとそなたと過ごせる』
香子の顔が一気に赤くなった。
当初はすごく険悪であったのに、今はとても甘いと香子は思う。険悪から友人枠になり、だがやはりそこは四神である。香子を求め、絡め取るさまは蛇のようだと香子は思った。しかも青龍に抱かれると夜から翌日の昼過ぎまで確実に放してもらえない。目覚めたら翌日の夕方というのが普通で、香子はひどい空腹に泣くはめになるのだ。
だが香子は己の身体が食べ溜めをできることを知った。
(青龍様に事前に言っておいてもらえれば、夕飯の量を増やしてもらうことも可能よね?)
とにかく目覚めた時の空腹がひどくて指先一つ動かせなくなるのが香子はつらいのである。
抱かれている間は何故か途中靄がかかったようになり、気持ちいいということしかわからなくなる。だから抱かれるのはもう香子としてはかまわないのだ。
『今日は風はどうでしょうか』
『穏やかであるな』
『では、表でお茶をしたいです』
『わかった。用意せよ』
四神宮はそれなりの広さはあるが、散歩できるというほどではない。
『……少し、歩く場所がほしいです……』
この際自分の足でなくてもいい。四神に抱かれたままでもいいから、少し気分転換がしたい。許可を取らなければどこにも出られないというのが香子としてはストレスである。最初の頃は向かえていた景山にも行っていないし、御花園にも行けない。
今は正月だからまだ各国からの要人たちも滞在しているのだろう。
新年から仕事で皇帝もたいへんだなとは香子も思うが、それが皇帝なのだからしかたないとばっさり切った。香子の中で皇帝は最低な男筆頭なので容赦がない。
『……自分の足で歩きたいのか?』
青龍に尋ねられてはっとした。
『自分の足でなくてもかまいません。こう、四神宮の中だけで過ごしていると気が滅入ってくるのです』
『そうか……確か今年は龍の年であったな』
『えっ?』
この国で今が何年かなど香子は考えたこともなかった。ということは昨年が卯年だったのかとぼんやり思った程度である。
青龍は香子を抱いたまま渡り廊下に出た。そのままお茶の準備をしているだろう中庭に向かう。その間青龍は無言であった。
香子はなんとなく呟いてみただけだったから、その間に青龍が四神同士で何か伝え合っているとは全く思ってもみなかった。
『準備はまた後にせよ。しばし散歩に参る』
青龍は中庭で用意をしていた侍女たちにそう声をかけた。
「?」
香子は目を丸くして青龍を見た。散歩とは言うが、いったいどこに向かうつもりなのだろう。
『青龍様?』
『そなたの望む形ではないかもしれぬ。空中散歩をしたいと思うのだが如何か』
『え』
空中散歩というとあれだろうか。青龍の背に乗って空を飛ぶというやつか。想像しただけで香子はわくわくするのを感じた。
けれどさすがにそれは迷惑ではないかとも香子は思う。
『したい、ですけど……でも』
『ならば参るぞ』
『ええっ!?』
青龍は強引だった。そのまま中庭にトンッと下りると香子を抱いたまま本性を現し、目を白黒させる香子をその背に乗せた。
『捕まっておれ』
『え? はい? わあっ!』
香子が青龍の背に身体を伏せた途端、青龍はふわりと浮き上がった。
こんなことをしてたいへんなことにならないのかとか、そんな考えが浮かぶ。四神宮の面々が青龍を見上げながらあんぐりと口を開けているのが見えた。いきなりで申し訳ないと香子は思う。
《何故そなたがそなに困っているのか》
心話で話しかけられて香子はびくっとした。
《だって、突然ですから》
香子は苦笑する。
『ああっ、あれは!?』
『龍だ! 吉祥だ!』
青龍は一応皇帝には一方的に伝えていた。青龍は何度か王城の上空をぐるりと回る。それほど高度が高くないせいか、香子にも慌てて建物から出てきた人々の姿が見えた。
《青龍様、皇帝ってどこにいるんでしたっけ?》
こうなったらもう楽しんだ者勝ちと香子は割り切った。
《……皇帝に会いたいのか?》
心話でも低い声ということがわかる。不思議だなと香子は思った。
《皇帝の慌てているマヌケ面が見たいのですよ~》
私性格悪いので、と香子は笑った。青龍はフッと笑う。
《確かに、それは随分と性格が悪い。だがそんなそなたが好ましくてならぬ》
いきなり口説かれて香子はどんな顔をしたらいいのかわからなくなった。息をするように口説くのは止めてほしいと香子は思う。
《そなたが愛しいのだからしかたない》
そういえば本性を現した四神にくっついていると、心情がだだ漏れになるのだったということを香子は思い出した。
《では探してみるか》
青龍は楽しそうに王城の上空を飛び、建物から出てきて困ったような顔をしている皇帝の姿を香子に見せた。
《青龍様、大好きです!》
皇帝の周りには地位が高そうな者たちが何人もいて、しきりにこちらを指さしている。その中には外国の衣裳を着ている者も混じっていた。あれはどこかの要人なのかもしれないと香子は思った。
《聞くがいい。我は花嫁と飛んで参る。ただそれだけ故大事にするでない》
青龍は一方的に王城の者たちにそう告げると、北へ向かって飛んでいったのだった。
皇帝がこめかみに指を当て、この騒ぎをどうしたものかと頭を悩ませたのは香子たちのあずかり知らぬことである。
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