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第1部 四神と結婚しろと言われました
94.決意(三神たちの会話)
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玄武と香子から離れた三神と眷族は木々が集まる場所に足を進めた。
木々には若芽が見られ、春の訪れを優しく告げている。冬は厳しい寒さに見舞われる北京だが、こうしてきちんと毎年春が訪れるのだ。
景山のあるこの庭園の中に人の姿は見えないが、かなりの人数が配備されていることが四神やその眷族にはわかっていた。庭園の維持管理と禁域であることでの護衛に沢山の人間がいる。彼らはこの禁域に足を踏み入れることができる貴人の前にはできるだけ姿を現さない。彼らが姿を現す時というのは侵入者を排除する時と貴人に危険が迫った場合のみである。一応庭園の維持管理を行っている庭師などは貴人に請われれば説明などに出てくることはあるが、それも極めてまれである。
朱雀は木々を見るようなそぶりで歩きながら結界を張った。これから話すことは香子に関係のあることだったから、万が一にも第三者に聞かれないようにする為である。
『……二人きりにして大丈夫なのでしょうか……』
呟くような小声の黒月に、朱雀は口元に笑みを浮かべた。
『あれだけはっきりと皇帝に興味がないと答えたのだ。玄武兄が襲うことはあるまい』
『あれから何があったのですか?』
青龍の問いに、淡々と朱雀が答える。
『そなたたちが予想していた通りだ。玄武兄は香子を襲おうとし、それを黒月が止めに入った。香子はその後皇帝には全く興味がないと弁明していたのだが……くっ……』
そこまで言って香子の言を思い出したらしい。笑いをこらえるような朱雀の様子に、理由を知らない面々は目を丸くした。
『……花嫁様は、皇帝の相手など金を積まれてもごめんだとおっしゃったらしいです』
紅夏が後を引き取る。白虎と青龍はその言葉の意味を正しく理解すると、朱雀と同じように笑い出した。
『だめだ、面白すぎる!』
白虎がたまらないというように声を上げる。
ここに香子がいたらまたむーっとした顔をするだろうが、皇帝は人間の最高位であるだけに、そこまで嫌がる者というのはこの国では存在しない。むしろ積極的に自分の売り込みをしたがるだろう。だから四神や眷族にとっても香子の言というのは爆弾発言としかいいようがなかった。
『……しかもその理由がかなりふるっていてな……』
そう言って、朱雀が香子の言を一字一句漏らさずに披露すると、さすがに白雲や青藍まで噴き出してしまった。
『……花嫁様に対して失礼かとは存じますが……随分と、その……』
青藍が言いづらそうに言葉を紡ぐのに朱雀は頷いた。
『ただ、香子が言っていたことはあながち間違いとも言えぬ。後宮には悪い気が淀みやすい。皇帝がいくら賢明であろうとも、そこに住まう女たちの争いは絶えぬものだ』
『然り』
白虎と青龍が同意する。
『皇帝と話をさせたのは早計だったでしょうか……』
青龍の言葉に朱雀は首を振った。
『香子の知識や聡明さを隠すことはできぬ。遅かれ早かれ皇帝と言葉を交わすことにはなっただろう。不穏な芽は早めに摘んでおいた方がいいことは間違いないが……あの皇帝、些か人望がなさそうではあるな……』
『余計な芽まで出ているように我には思われますが』
青龍が眉を寄せて言い募る。
それに朱雀はふっと笑った。
『しばらくほおっておいても構わぬだろう。我らが側にいる限り香子に手を出せる者はおらぬ』
『ですが……』
『花嫁一人守れずして神を名乗れようか』
『否』
それには白虎も青龍も同意した。
『それに我らが思っているよりも香子は脆く、しかし強くもある』
眷族たちは首を傾げたが、白虎と青龍には思い当たるところがあるようだった。
『我らは我らのやり方で香子を守ればいい。どうせこの国に未練などないだろう?』
朱雀の科白に彼らは頷いた。
最悪の場合、四神がこの国を捨てることも視野に入れているとはきっとこの国の誰も思ってはいないだろう。それぐらい長く四神はこの国に留まり続けている。
だがそうしてもいいぐらい四神にとって花嫁という存在はかえがたいものなのだった。
木々には若芽が見られ、春の訪れを優しく告げている。冬は厳しい寒さに見舞われる北京だが、こうしてきちんと毎年春が訪れるのだ。
景山のあるこの庭園の中に人の姿は見えないが、かなりの人数が配備されていることが四神やその眷族にはわかっていた。庭園の維持管理と禁域であることでの護衛に沢山の人間がいる。彼らはこの禁域に足を踏み入れることができる貴人の前にはできるだけ姿を現さない。彼らが姿を現す時というのは侵入者を排除する時と貴人に危険が迫った場合のみである。一応庭園の維持管理を行っている庭師などは貴人に請われれば説明などに出てくることはあるが、それも極めてまれである。
朱雀は木々を見るようなそぶりで歩きながら結界を張った。これから話すことは香子に関係のあることだったから、万が一にも第三者に聞かれないようにする為である。
『……二人きりにして大丈夫なのでしょうか……』
呟くような小声の黒月に、朱雀は口元に笑みを浮かべた。
『あれだけはっきりと皇帝に興味がないと答えたのだ。玄武兄が襲うことはあるまい』
『あれから何があったのですか?』
青龍の問いに、淡々と朱雀が答える。
『そなたたちが予想していた通りだ。玄武兄は香子を襲おうとし、それを黒月が止めに入った。香子はその後皇帝には全く興味がないと弁明していたのだが……くっ……』
そこまで言って香子の言を思い出したらしい。笑いをこらえるような朱雀の様子に、理由を知らない面々は目を丸くした。
『……花嫁様は、皇帝の相手など金を積まれてもごめんだとおっしゃったらしいです』
紅夏が後を引き取る。白虎と青龍はその言葉の意味を正しく理解すると、朱雀と同じように笑い出した。
『だめだ、面白すぎる!』
白虎がたまらないというように声を上げる。
ここに香子がいたらまたむーっとした顔をするだろうが、皇帝は人間の最高位であるだけに、そこまで嫌がる者というのはこの国では存在しない。むしろ積極的に自分の売り込みをしたがるだろう。だから四神や眷族にとっても香子の言というのは爆弾発言としかいいようがなかった。
『……しかもその理由がかなりふるっていてな……』
そう言って、朱雀が香子の言を一字一句漏らさずに披露すると、さすがに白雲や青藍まで噴き出してしまった。
『……花嫁様に対して失礼かとは存じますが……随分と、その……』
青藍が言いづらそうに言葉を紡ぐのに朱雀は頷いた。
『ただ、香子が言っていたことはあながち間違いとも言えぬ。後宮には悪い気が淀みやすい。皇帝がいくら賢明であろうとも、そこに住まう女たちの争いは絶えぬものだ』
『然り』
白虎と青龍が同意する。
『皇帝と話をさせたのは早計だったでしょうか……』
青龍の言葉に朱雀は首を振った。
『香子の知識や聡明さを隠すことはできぬ。遅かれ早かれ皇帝と言葉を交わすことにはなっただろう。不穏な芽は早めに摘んでおいた方がいいことは間違いないが……あの皇帝、些か人望がなさそうではあるな……』
『余計な芽まで出ているように我には思われますが』
青龍が眉を寄せて言い募る。
それに朱雀はふっと笑った。
『しばらくほおっておいても構わぬだろう。我らが側にいる限り香子に手を出せる者はおらぬ』
『ですが……』
『花嫁一人守れずして神を名乗れようか』
『否』
それには白虎も青龍も同意した。
『それに我らが思っているよりも香子は脆く、しかし強くもある』
眷族たちは首を傾げたが、白虎と青龍には思い当たるところがあるようだった。
『我らは我らのやり方で香子を守ればいい。どうせこの国に未練などないだろう?』
朱雀の科白に彼らは頷いた。
最悪の場合、四神がこの国を捨てることも視野に入れているとはきっとこの国の誰も思ってはいないだろう。それぐらい長く四神はこの国に留まり続けている。
だがそうしてもいいぐらい四神にとって花嫁という存在はかえがたいものなのだった。
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