512 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました
60.頭の中が相変わらずヒマなようです
しおりを挟む
香子は白虎の腕に抱かれたまま足をぶらぶらさせた。
ここのところ食堂へ移動するとか、四神の室から己の部屋に移動するだけでも四神のうちの誰かが香子を運ぶのである。
(……自分の足で歩けなくなりそう)
それは香子がここに来てからずっと思っていることである。
香子の身体はもう人とは違う物に作り替えられているから、全く動かなくても太ることもない。ただ白虎に愛されているせいか胸がたわわになって自分でもすごいなぁと思っているぐらいである。肌の色も透き通るように白くなっている。
(でも筋肉は使わないと落ちるのでは……?)
疑問はあるが、四神に下ろしてもらうすべは香子にはない。
香子が己の腕の中にいるせいか、白虎は機嫌がよさそうである。
『もう着いてしまったか……』
白虎は名残惜しそうに呟いた。
四神宮の中は、一室一室は大きめに作られてはいるがそれを渡り廊下で繋げているだけである。だからすぐに着いてしまう。
香子は胸がきゅうっと甘くなるのを感じた。
白虎は香子を少しだけ強く抱きしめると、香子の部屋に入ってそっと彼女を長椅子に下ろした。
『またあとでな』
『……はい』
白虎が部屋を去ってから、香子は顔を両手で覆った。
「あーーーーー、もうっ……! なんであんなにステキなのよカッコイイのよもうもうもうっっ!」
メンクイな己が憎いと香子は思う。日本語で叫んでいるから侍女たちも聞いてて意味はわからないが、だいたいニュアンスは伝わるものだ。おそらくこのようなことを叫んでいるのだろうなと部屋付の侍女である紅児と林雪紅は思い、延夕玲は呆れていた。
部屋の外で控えている黒月は内心ため息をついたが、そんなことは香子には関係ないのである。
やっと衣裳を着替え、髪型などを整えてから香子は落ち着いた。
どれほど抱かれても、香子は慣れないようである。
興奮して疲れたので、香子は少しのんびりすることにした。青龍が顔を出したらしかたないが、そうでなければ部屋で過ごすことにしたのである。
そうなってくると気になるのは黒月のことだ。
(デバガメはよくないって知ってるけど……)
黒月に直接聞いても答えてはくれないだろう。
でも、と香子は思い出した。
黒月は玄武に恋を抱いていたはずである。今は敬愛に近いものを抱いているような話は黒月に聞いていたが、最初ここに来た時は確かに恋をしていたはずだ。
(なんで忘れてたんだろ……)
ということは、四神の眷属は未成年でも恋はするのではないか。
「うーん……」
黒月には聞けない。そして趙文英に聞くことはもっと難しい。周りの侍女たちから、とも香子は思ったが、よく考えたら趙はそれなりに整った顔をしている。侍女が趙に恋をしていてもおかしくはない。
「難しい……」
香子は長椅子の上で身もだえた。
『青龍様がいらっしゃいました』
表から声がかかって、香子ははっと居住まいを正した。青龍はともかく青藍ならば少しは知っているだろうかと香子は考えてしまった。
『青龍様』
青龍が青藍を伴って部屋に入ってきた。
相変わらず涼やかな雰囲気である。青藍も共に来るとその雰囲気が倍増するような気が、香子はした。なんというか、爽やかなのだ。
香子は長椅子から立とうとしたが、それは青龍に制された。
『香子』
青龍は香子をふわりと抱き上げた。香子はその胸にこてんと頭をもたせかける。
もうなんというか、青龍も香子にとっては素敵すぎてどうしようもないのだ。
『我の室へ向かうぞ』
『……はい』
香子に逆らうすべはないし、逆らう気もない。四神は甘すぎて、香子はとてもかないそうになかった。
香子は無意識で青龍の胸に頬をすり寄せる。
その仕草に青龍が内心デレデレしているのを香子は知らなかった。四神は感情が表情に出にくいのでわかりづらいのである。
部屋の表へ出ると、冷たい風が吹いた。
それに香子はハッとした。
青藍に聞きたいと、香子は思った。
『青龍様、少しだけ青藍に聞きたいことがあります』
『青藍に?』
『はい。ですから居間でお茶をしましょう』
青龍は苦笑した。
『……そなたにはかなわぬな』
青藍の表情もまた動かないが、不機嫌そうだということはわかった。
香子が青龍の室にいる間に夕玲の元へ向かうつもりだったのだろう。だが香子から言わせれば今は夕玲の就業時間である。働いている人にプライベートでちょっかいをかけてはいけない。
四神宮に女官は一人しかいないから夕玲の仕事は多いのだ。
『あ』
そういえば女官を増やすなんて話もあったことを香子は思い出した。
あれもこれもと思考が飛んで困ったものである。
青龍の室に移動する。長椅子に腰掛けた青龍の膝に横抱きにされたまま、青藍が淹れたお茶を香子は啜った。
『……花嫁様、我に聞きたいこととはなんでしょう?』
声は涼やかなのだがイライラしているのは丸わかりである。眷属は現金だなぁと香子は感心した。
『黒月と趙の様子って最近どう? 青藍から見てどっちかがどっちかに興味持ってそうな雰囲気ってある?』
青藍は少し視線を左に動かした。
『……趙は黒月を想っているでしょう』
『黒月は?』
『……わかりかねます』
『そう、ありがとう……』
今のところは趙が一方的に黒月を想っているような状態らしいということを知って、香子は内心がっかりした。
そして反省した。
(勝手に自分の想いとか恋とかが娯楽の対象にされてたらやだよね。悪いことしちゃったなぁ……)
『……黒月は我々にとってわかりにくいです』
青藍が補足した。
香子はむむむと青藍を睨んだ。そうやって人を煽るようなことを言うのはどうかと思った。
ーーーーー
悪いのは香子ちゃん(笑)
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
ここのところ食堂へ移動するとか、四神の室から己の部屋に移動するだけでも四神のうちの誰かが香子を運ぶのである。
(……自分の足で歩けなくなりそう)
それは香子がここに来てからずっと思っていることである。
香子の身体はもう人とは違う物に作り替えられているから、全く動かなくても太ることもない。ただ白虎に愛されているせいか胸がたわわになって自分でもすごいなぁと思っているぐらいである。肌の色も透き通るように白くなっている。
(でも筋肉は使わないと落ちるのでは……?)
疑問はあるが、四神に下ろしてもらうすべは香子にはない。
香子が己の腕の中にいるせいか、白虎は機嫌がよさそうである。
『もう着いてしまったか……』
白虎は名残惜しそうに呟いた。
四神宮の中は、一室一室は大きめに作られてはいるがそれを渡り廊下で繋げているだけである。だからすぐに着いてしまう。
香子は胸がきゅうっと甘くなるのを感じた。
白虎は香子を少しだけ強く抱きしめると、香子の部屋に入ってそっと彼女を長椅子に下ろした。
『またあとでな』
『……はい』
白虎が部屋を去ってから、香子は顔を両手で覆った。
「あーーーーー、もうっ……! なんであんなにステキなのよカッコイイのよもうもうもうっっ!」
メンクイな己が憎いと香子は思う。日本語で叫んでいるから侍女たちも聞いてて意味はわからないが、だいたいニュアンスは伝わるものだ。おそらくこのようなことを叫んでいるのだろうなと部屋付の侍女である紅児と林雪紅は思い、延夕玲は呆れていた。
部屋の外で控えている黒月は内心ため息をついたが、そんなことは香子には関係ないのである。
やっと衣裳を着替え、髪型などを整えてから香子は落ち着いた。
どれほど抱かれても、香子は慣れないようである。
興奮して疲れたので、香子は少しのんびりすることにした。青龍が顔を出したらしかたないが、そうでなければ部屋で過ごすことにしたのである。
そうなってくると気になるのは黒月のことだ。
(デバガメはよくないって知ってるけど……)
黒月に直接聞いても答えてはくれないだろう。
でも、と香子は思い出した。
黒月は玄武に恋を抱いていたはずである。今は敬愛に近いものを抱いているような話は黒月に聞いていたが、最初ここに来た時は確かに恋をしていたはずだ。
(なんで忘れてたんだろ……)
ということは、四神の眷属は未成年でも恋はするのではないか。
「うーん……」
黒月には聞けない。そして趙文英に聞くことはもっと難しい。周りの侍女たちから、とも香子は思ったが、よく考えたら趙はそれなりに整った顔をしている。侍女が趙に恋をしていてもおかしくはない。
「難しい……」
香子は長椅子の上で身もだえた。
『青龍様がいらっしゃいました』
表から声がかかって、香子ははっと居住まいを正した。青龍はともかく青藍ならば少しは知っているだろうかと香子は考えてしまった。
『青龍様』
青龍が青藍を伴って部屋に入ってきた。
相変わらず涼やかな雰囲気である。青藍も共に来るとその雰囲気が倍増するような気が、香子はした。なんというか、爽やかなのだ。
香子は長椅子から立とうとしたが、それは青龍に制された。
『香子』
青龍は香子をふわりと抱き上げた。香子はその胸にこてんと頭をもたせかける。
もうなんというか、青龍も香子にとっては素敵すぎてどうしようもないのだ。
『我の室へ向かうぞ』
『……はい』
香子に逆らうすべはないし、逆らう気もない。四神は甘すぎて、香子はとてもかないそうになかった。
香子は無意識で青龍の胸に頬をすり寄せる。
その仕草に青龍が内心デレデレしているのを香子は知らなかった。四神は感情が表情に出にくいのでわかりづらいのである。
部屋の表へ出ると、冷たい風が吹いた。
それに香子はハッとした。
青藍に聞きたいと、香子は思った。
『青龍様、少しだけ青藍に聞きたいことがあります』
『青藍に?』
『はい。ですから居間でお茶をしましょう』
青龍は苦笑した。
『……そなたにはかなわぬな』
青藍の表情もまた動かないが、不機嫌そうだということはわかった。
香子が青龍の室にいる間に夕玲の元へ向かうつもりだったのだろう。だが香子から言わせれば今は夕玲の就業時間である。働いている人にプライベートでちょっかいをかけてはいけない。
四神宮に女官は一人しかいないから夕玲の仕事は多いのだ。
『あ』
そういえば女官を増やすなんて話もあったことを香子は思い出した。
あれもこれもと思考が飛んで困ったものである。
青龍の室に移動する。長椅子に腰掛けた青龍の膝に横抱きにされたまま、青藍が淹れたお茶を香子は啜った。
『……花嫁様、我に聞きたいこととはなんでしょう?』
声は涼やかなのだがイライラしているのは丸わかりである。眷属は現金だなぁと香子は感心した。
『黒月と趙の様子って最近どう? 青藍から見てどっちかがどっちかに興味持ってそうな雰囲気ってある?』
青藍は少し視線を左に動かした。
『……趙は黒月を想っているでしょう』
『黒月は?』
『……わかりかねます』
『そう、ありがとう……』
今のところは趙が一方的に黒月を想っているような状態らしいということを知って、香子は内心がっかりした。
そして反省した。
(勝手に自分の想いとか恋とかが娯楽の対象にされてたらやだよね。悪いことしちゃったなぁ……)
『……黒月は我々にとってわかりにくいです』
青藍が補足した。
香子はむむむと青藍を睨んだ。そうやって人を煽るようなことを言うのはどうかと思った。
ーーーーー
悪いのは香子ちゃん(笑)
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
29
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる