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第4部 四神を愛しなさいと言われました
59.翌朝はどうしてかひどく甘いのです
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その日の夜は白虎も交えて過ごした。
香子はもふもふは好きだが、やはり白虎の本性に抱かれるのは怖いと思う。だから朱雀の熱を受けなければまともに受け入れることは難しい。
(……こんな状態で白虎様と結婚はできないよね……)
翌朝、空腹を感じながら香子はそう思った。ここに来て、一年が経つまで後二か月弱である。その間に白虎への本能的な恐怖を克服して、結婚したいと思えるかどうかは香子にはわからなかった。
そう、そろそろ真剣に誰と結婚するかを考えなければならない。
便宜上四神のうちの誰かと結婚するだけだとは聞いているが、結婚というとやはり特別なことだと香子は思うのだ。
白虎の室である。朱雀は夜のうちに室へ戻ったようだ。白虎に抱かれて朝食をいただく香子の横で、玄武もまたすごいスピードで朝食を平らげていた。
昨夜は朱雀とも交わったから、朱雀も空腹のはずである。
いろいろ食べて一息ついてから、香子はそのことを思い出した。
『朱雀様も朝食は召し上がられたのかしら?』
『聞こう』
玄武が心話で聞いたようだ。
『食べておらぬようだな』
香子は驚いた。四神は基本空腹を感じないから、香子が朝食堂に向かわなければ朝食は取らないようなことは聞いていた。けれど昨夜香子は朱雀にも抱かれたはずである。
『じゃあおなかがすいていらっしゃいますよね。朱雀様の室にも運ばせましょう』
玄武と白虎が目を丸くした。
『食べずとも問題はないぞ』
『それはわかっていますけど、空腹を感じていらっしゃるなら食べた方がいいと思うんです』
『香子は優しいな』
玄武はそう言って笑った。朱雀はこちらに来ることにしたらしい。申し訳ないと香子は思ったが、朱雀の分も用意してもらうことにした。
四神の室はそれなりに広いが、四人もいるとちょっと狭くも感じられる。かといってこれから食堂に移動するのも違うだろう。
今まで自分がいっぱいいっぱいで香子は気づいていなかったが、四神のうちの誰かが午前中空腹のままでいたということは何度かあった。ただ四神は空腹という感覚もまた新鮮だったので、香子が申し訳なく思う必要はない。空腹は確かにめったにないつらい感覚だが、四神にとってはそれすらも香子を感じる手段であった。
それよりも香子と過ごせない方が四神はつらいのである。
朱雀がやってきた。
上機嫌である。
玄武が寝室から椅子を一脚運んできた。卓は狭いがこれならば共に食べることができるだろう。
『香子』
『朱雀様、申し訳ありません。私、気づかなくて……』
『よい。そなたは優しいな』
そんなことはないと香子は思ったが、ここで否定の言葉を発しても宥められてしまうだけなので軽く首を振るだけに留めた。
朱雀はそんな香子の心情がわかっていたが、香子が己に心を割いたということが嬉しいので朝食を優雅に食べた。給仕をしている侍女たちが内心身もだえていたが、そんなのはいつものことである。
食事を終えると、白雲が主官である趙文英から預かったという書簡を運んできた。
『これは、私に?』
『はい。皇帝からだそうです』
『ああ……』
香子は視線を巡らせた。昨日白虎に一方的に伝えさせたことだが、仕事が早いものである。
『読んでくれる?』
『かしこまりました』
侍女たちがスッと傅く。皇帝からの書簡だからだろう。こういうのは面倒なことだと香子は思う。だがこういうものなのだからしょうがなかった。
相変わらずの口上の後、春を迎えたとはいえ長城にはまだ冬が残っているからお年寄りを案内することは遠慮しろというようなことが書かれていた。
確かに、と香子は頷いた。
まだ正月十五日も迎えてはいない。四神宮では風さえ吹かなければ一年中快適な気候とはいえ、四神宮の表はまだ冬の気候である。
張錦飛に長城を見せたいと思ったが、季節的によくはないだろう。
(そうだよねぇ……)
自分が常に快適な場所にいるから、香子は季節というものを失念していたのかもしれなかった。
『いつ頃ならいいのかしら。それとも季節と張老師の歳を口実に断っているだけなのかしら?』
無理なら無理でかまわないと香子は思う。何故ならこれは香子の我がままだからだ。
『聞いて参ろう』
玄武はそう言うと一瞬で姿を消した。
『あああああ……』
別に聞いてこいという意味で言ったわけではないのだが、香子の呟きはそう取られてもしかたなかった。とはいえまた皇帝の胃の調子がおかしくなる程度のことである。
(胃に穴が空くほどじゃないでしょ)
香子はとことん皇帝が嫌いなのだった。
ほどなくして玄武が戻ってきた。
『玄武様』
『暖かくなってから再度声をかければいいようだ』
香子は玄武に手を伸ばした。玄武もまたそれを受けて手を出してくれた。その手を香子は抱きしめる。
『玄武様、ありがとうございます。でも、私の呟きをそんなに気にされなくてもいいのです……』
『……我が叶えたいだけだ。だめだろうか』
香子は首を振った。
四神はどこまでも香子に甘い。
『花嫁様、お召し替えを』
すでに自分の朝食を終えて室の隅に控えていた黒月に声をかけられて、香子ははっとした。玄武が香子の手に口づけてそっと離す。
『では我が運ぼう』
白虎は香子を抱いたまま立ち上がった。
どうしてこんなに甘いのか。
香子の顔は真っ赤だった。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
香子はもふもふは好きだが、やはり白虎の本性に抱かれるのは怖いと思う。だから朱雀の熱を受けなければまともに受け入れることは難しい。
(……こんな状態で白虎様と結婚はできないよね……)
翌朝、空腹を感じながら香子はそう思った。ここに来て、一年が経つまで後二か月弱である。その間に白虎への本能的な恐怖を克服して、結婚したいと思えるかどうかは香子にはわからなかった。
そう、そろそろ真剣に誰と結婚するかを考えなければならない。
便宜上四神のうちの誰かと結婚するだけだとは聞いているが、結婚というとやはり特別なことだと香子は思うのだ。
白虎の室である。朱雀は夜のうちに室へ戻ったようだ。白虎に抱かれて朝食をいただく香子の横で、玄武もまたすごいスピードで朝食を平らげていた。
昨夜は朱雀とも交わったから、朱雀も空腹のはずである。
いろいろ食べて一息ついてから、香子はそのことを思い出した。
『朱雀様も朝食は召し上がられたのかしら?』
『聞こう』
玄武が心話で聞いたようだ。
『食べておらぬようだな』
香子は驚いた。四神は基本空腹を感じないから、香子が朝食堂に向かわなければ朝食は取らないようなことは聞いていた。けれど昨夜香子は朱雀にも抱かれたはずである。
『じゃあおなかがすいていらっしゃいますよね。朱雀様の室にも運ばせましょう』
玄武と白虎が目を丸くした。
『食べずとも問題はないぞ』
『それはわかっていますけど、空腹を感じていらっしゃるなら食べた方がいいと思うんです』
『香子は優しいな』
玄武はそう言って笑った。朱雀はこちらに来ることにしたらしい。申し訳ないと香子は思ったが、朱雀の分も用意してもらうことにした。
四神の室はそれなりに広いが、四人もいるとちょっと狭くも感じられる。かといってこれから食堂に移動するのも違うだろう。
今まで自分がいっぱいいっぱいで香子は気づいていなかったが、四神のうちの誰かが午前中空腹のままでいたということは何度かあった。ただ四神は空腹という感覚もまた新鮮だったので、香子が申し訳なく思う必要はない。空腹は確かにめったにないつらい感覚だが、四神にとってはそれすらも香子を感じる手段であった。
それよりも香子と過ごせない方が四神はつらいのである。
朱雀がやってきた。
上機嫌である。
玄武が寝室から椅子を一脚運んできた。卓は狭いがこれならば共に食べることができるだろう。
『香子』
『朱雀様、申し訳ありません。私、気づかなくて……』
『よい。そなたは優しいな』
そんなことはないと香子は思ったが、ここで否定の言葉を発しても宥められてしまうだけなので軽く首を振るだけに留めた。
朱雀はそんな香子の心情がわかっていたが、香子が己に心を割いたということが嬉しいので朝食を優雅に食べた。給仕をしている侍女たちが内心身もだえていたが、そんなのはいつものことである。
食事を終えると、白雲が主官である趙文英から預かったという書簡を運んできた。
『これは、私に?』
『はい。皇帝からだそうです』
『ああ……』
香子は視線を巡らせた。昨日白虎に一方的に伝えさせたことだが、仕事が早いものである。
『読んでくれる?』
『かしこまりました』
侍女たちがスッと傅く。皇帝からの書簡だからだろう。こういうのは面倒なことだと香子は思う。だがこういうものなのだからしょうがなかった。
相変わらずの口上の後、春を迎えたとはいえ長城にはまだ冬が残っているからお年寄りを案内することは遠慮しろというようなことが書かれていた。
確かに、と香子は頷いた。
まだ正月十五日も迎えてはいない。四神宮では風さえ吹かなければ一年中快適な気候とはいえ、四神宮の表はまだ冬の気候である。
張錦飛に長城を見せたいと思ったが、季節的によくはないだろう。
(そうだよねぇ……)
自分が常に快適な場所にいるから、香子は季節というものを失念していたのかもしれなかった。
『いつ頃ならいいのかしら。それとも季節と張老師の歳を口実に断っているだけなのかしら?』
無理なら無理でかまわないと香子は思う。何故ならこれは香子の我がままだからだ。
『聞いて参ろう』
玄武はそう言うと一瞬で姿を消した。
『あああああ……』
別に聞いてこいという意味で言ったわけではないのだが、香子の呟きはそう取られてもしかたなかった。とはいえまた皇帝の胃の調子がおかしくなる程度のことである。
(胃に穴が空くほどじゃないでしょ)
香子はとことん皇帝が嫌いなのだった。
ほどなくして玄武が戻ってきた。
『玄武様』
『暖かくなってから再度声をかければいいようだ』
香子は玄武に手を伸ばした。玄武もまたそれを受けて手を出してくれた。その手を香子は抱きしめる。
『玄武様、ありがとうございます。でも、私の呟きをそんなに気にされなくてもいいのです……』
『……我が叶えたいだけだ。だめだろうか』
香子は首を振った。
四神はどこまでも香子に甘い。
『花嫁様、お召し替えを』
すでに自分の朝食を終えて室の隅に控えていた黒月に声をかけられて、香子ははっとした。玄武が香子の手に口づけてそっと離す。
『では我が運ぼう』
白虎は香子を抱いたまま立ち上がった。
どうしてこんなに甘いのか。
香子の顔は真っ赤だった。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
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