異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

120.おいしかったですよ?

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 急いで用意したのか、いつになく春巻の形や焦げ目具合が妙に味を出していた。他の肉まんや野菜まん、揚げた餃子、油条ヨウティャオ(揚げパンのようなもの)もいつも出されるものと違い形が無骨で脂っこい。本来身分のある人に出すような物ではなさそうな気がしたが、香子は元々こういう場末の味が大好きである。

(坦坦面一丁! とか言ったらまんま場末の味で出てきそう……)

 そう考えるだけでよだれが出てきそうだ。
 玄武も朱雀も普通に取ってくれることから、全然気にしないで食べることができた。夢中で食べさせてもらっていると、表から紅夏の声がかかった。

『なにか?』
『朝食を持ってきたというのですが……』

 その戸惑ったような声に香子は首を傾げる。まだ食べ物は半分ぐらい残っていることから、追加で頼むには早急である。
 朱雀が眉を寄せた。

『通せ』

 扉が開けられ、侍女たちが頭を下げる。しずしずと居間に料理を運んできた彼女たちは目を見開いた。

『まぁ、なんてこと! 四神様、花嫁様、すぐにお下げしますのでお待ちくださいませ!』

 香子は目を白黒させた。いったい何が問題なのかさっぱりわからなかった。

『……どうかしたんですか?』

 慌てて出ていった侍女以外の者たちに声をかけると、彼女たちは泣きそうな顔で平伏した。どうも彼女たちに聞いても答えてはくれなさそうである。しばらくもしないうちに侍女頭と趙文英が急いでやってきた。

『これは……』
『……たいへん申し訳ありません!』

 侍女頭と趙が平伏する。香子は困ってしまって朱雀と玄武を見た。

『よい。別に害のある物が入っていたわけではない』
『出入りする者たちの顔ぐらい覚えておくように護衛官たちに言っておけ』

 どうも二神はなにやら気づいていたようだった。

『ですが……!』
『これはこれで味があっていい。香子、そなたは如何?』
『? 普通においしいですけど? まぁ、宮廷で出されるものと考えると多少疑問は残りますが』

 香子の素直な応えに朱雀が笑む。

『此度のことは不問に付す。だが、調理人は連れてまいれ』
『……ありがたきお言葉。承知いたしました』

 趙が立ち上がり室を出ていく。さっそうとしたその姿を、つい香子は目で追ってしまった。

『たいへん申し訳ありませんでした。すぐに片付けますので、しばしお待ちを』

 侍女頭の言に香子は首を振った。

『大丈夫です。すごくおなかがすいてるので、持ってきてもらったものも食べていいですか?』

 平然として言うと、侍女たちはまた目を見開いた。それに朱雀が笑い出す。

『香子の言う通りにせよ。我らも食す故並べてくれ』
『は、はい!』

 侍女たちは戸惑いながらも更にテーブルを用意し、そこに自分たちが運んできた料理を並べた。似たような内容でも彼女たちが運んで来たものは見た目からして洗練されている。それを眺めながら香子はあれもこれもと沢山食べた。
 二神は香子に精を与えた為食欲があるのだろう。結局先に誰かが持ってきたものも、後から持ってこられたものも全て食べ尽くしてしまった。
 紅夏にお茶を入れてもらい一口啜ってから、『あー、おいしかった……』と香子はため息をつくように言った。そうしてから二神を見る。

『で? 先ほどのはなんだったんですか?』

 なんとなく状況は察したものの詳細まではわからない。

『……四神宮の侍女に扮した者たちが先に我らに給仕をしにきた』

 事実を聞いているわけではないのだが、理由までは思い浮かばないのだろう。
 理由と動機を考えるに、浅はかとしか言いようがないことを香子は思い浮かべた。

『そこまでリスクをおったとしてもお咎めを受けない自信があったということですか』
(おいしかったからいいけどね)

 誰がどうしてこんなことを考え、敢行したのか。
 香子の予想としては、香子を気に入らない何者かが(それなりに身分のある人だろう)、嫌がらせのつもりで場末の食べ物を運ばせたというところだと思う。それで香子が憤り手をつけなければ四神の花嫁は贅沢者だと侍女に扮した者たちが言いふらす。もし運んで来た者たちが手打ちにあえばそれはそれで極悪非道とでも言いふらす材料になったに違いなかった。

(まーこんなこと考えるのはきっと女だよねー)

 果たして趙や王英明の必死の努力の甲斐あってか、夕方前には首謀者が発覚した。
 なんと皇帝の一番下の妹である昭正公主だという。
 後宮の誰かではないかと予想していただけに、香子は頭が痛くなった。
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