異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
517 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました

65.どこまでも甘くて溺れてしまいそうです

しおりを挟む
 無事、侍女たちに手伝ってもらい入浴はできた。
 香子が一人きりになれる空間というのはまずないが、侍女たちがそれなりに気を遣ってくれているので助かっている。
 生まれた時から傅かれているわけではないので、人が側にいるということが時にはストレスにもなるのだ。

(大分それでも、四神には慣れてきたかも……)

 香子は四神を好きだと思う。誰が一番かと聞かれるとまだ難しい。ただ、やはり最初に抱かれた相手というのは特別に思えてしまう。

(やっぱり、玄武様なのかなぁ……)

 二人きりで、と考えるとまだ不安は残るが一番安定しているのは玄武だと香子は思うのだ。香子を抱いている間は意地悪だが、いろいろ気がつくのは朱雀である。フォローもしてくれるし、と香子は考える。
 はっきり言って白虎は怖い。香子を抱く時は必ず本性を現わすのだ。恐ろしいなんてものではなかった。しかしあのもふもふも捨てがたいと思ってしまう。香子はどこまでも欲張りな己にため息をついた。
 では青龍はどうなのかといえば、毎回抱かれる時間は長いものの香子はやはり憎からず思っている。抱かれているというのもあるだろう。

(やっぱりこうやって抱かれてると情は移るよね……)

 香子は自分がチョロインだという自覚はある。だからこそ己の判断が信用できないのだ。
 お湯が気持ちいいと香子は思った。湯を掬って顔を洗う。大陸の寮ではシャワーしかなかった。上に固定のシャワーヘッドがついているだけの浴室である。もちろん浴槽などはない。おかげで十分に身体を洗うことはできていなくて、旅行先や一時帰国の時に風呂は堪能していた。
 香子はもう人ではないからのぼせるということもないが、そろそろ四神も焦れているだろうと出ることにした。
 自ら抱かれる為に出るなんて、やっぱり恥ずかしい。
 しかしいつまでも浸かっているわけにもいかないのだった。
 侍女に身体を拭いてもらい、睡衣(寝巻)を着せられた上に長袍を羽織らされる。真冬である。湯冷めしないようにと足早に部屋へ戻らなければならないのだが、浴室から出たら青龍が待っていた。

香子シャンズ
『青龍様?』
『行くぞ』

 問答無用で抱き上げられて、そのまま青龍の室に連れていかれるのかと慌てたが、そうではなかった。香子が支度を整えるのは待ってくれるらしい。部屋に運ばれて、香子が侍女たちに身だしなみを整えられる間、青龍は居間で待っていた。

(あーもう、だめかも……)

 待ちたくないけど待ってくれるなど胸のときめきが押さえられないではないかと、香子は内心身もだえた。
 最初はあんなに敵意のようなものを向けられていたというのに、変わるものである。それとも、やはり香子は花嫁であるから青龍には抗えないのだろうか。そんなことまで香子は考えてしまった。
 睡衣は薄手のものだ。長袍を羽織っているとはいえ、その恰好で髪型などを整えられるのも少し恥ずかしい。頬の熱が全く去らなくて困ってしまう。

『花嫁様、口を少し開いて下さいませ』

 侍女に言われてその通りにした。紅をさされる。
 口づけをされれば、その紅は四神の唇をほんのりと染めるのだ。それが色っぽくて、思い出しただけで香子はぶるりと震えた。
 身だしなみを整えた香子は侍女たちによって青龍に渡された。

『そのままでも美しいが……こうして大切に整えられたそなたは更に魅力的だ』

 青龍に言われて、香子はどう返したらいいのかわからなかった。もう照れていることしかできない。
 抱き上げられて青龍の室へと運ばれる。そのまま寝室へ連れていかれて、香子は顔中に口づけられた。

(愛しい……)
『んっ……』

 唇を優しく塞がれて香子はうっとりする。その間に気配が増えたような気がした。玄武と朱雀が訪れたようである。
 彼らに抱かれるのだと思ったら、身体の奥が甘く疼いた。
 そうしてまた長い夜が始まった。


 正月の間の過ごし方も、そんな風にしていつもとはそれほど変わらなかった。
 もう一度ぐらい張錦飛が来たが、香子の字が上達しないのを見て苦笑していた。なんといっても最近の四神は香子をずっと離さないのである。書の練習をしようにもするヒマもなかったのだ。
 ほっほっほと張に笑われて、やっぱりバルタン星人かなと香子は思ったりもした。

『仲睦まじいのが一番ですぞ。花嫁様に不満がなければそれが一番でしょう』
『そうですね……申し訳ありません、せっかく来ていただいているのに……』
『四神は花嫁を全力で愛すものらしいですからな。お嫌でなければ囚われてしまうのもいいでしょう』
『……はい……』

 もし四神に囚われたら、愛欲の日々まっしぐらであることぐらい香子は理解している。

(それはまだちょっと……勘弁してほしいんだよねぇ)

 我がままを言っている自覚はあるが、香子にはまだやりたいことが沢山あるのだ。
 張と歴史談義もしたいし、字もうまくなりたいし、唐の国の各地を回りたいしと欲は尽きない。誰かに嫁げば今よりは動きやすくなると聞いたが、二人きりになった四神の誰かが香子を離すとは到底思えない。

(気がついたら抱かれ続けて十年とか経ってそう……)

 それを考えるとなかなか決められないでいるのだった。


ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...