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第1部 四神と結婚しろと言われました
144.独白(公主視点)
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部屋に戻ると、もう李葉明こと昭正公主は我慢ができなかった。
公主にあるまじき強さでだん、だんと地板を踏むようにして部屋の中をうろうろする。
侍女たちが主の様子に内心びくびくしていたが、そんなことを彼女が斟酌するはずもない。
李葉明は元々、四神やその花嫁についてどういう存在なのかということを真面目に考えたことがなかった。四神は基本春節の折に何日か滞在することは知っていたし、その宴席で見かけた姿は遠目にもひどく見目麗しいと認識はしていた。四神と言われる通り彼らは四人いて、それなのに花嫁はたった一人と聞き何かの間違いではないかと思った。
一神につき四人の女性というならばわかるが、四神にたった一人?
しかもその花嫁は界を渡ってきた者だという。
意味がわからなかった。
親兄弟に尋ねようにも母は皇太后で、興味を持った時にはすでに西の地に移り住んでいた。姉たちはみなお嫁に行っているし、兄たちも独り立ちしている。後宮を訪ねれば皇帝の寵を競う妾妃たちばかりでまともに教えてくれる者もいない。花嫁修業の老師は『公主が知る必要はないことです』と言う。
好奇心に火がついてしかたがなかったある日、どこかの侍女が四神とその花嫁が連れ立っているところを見たという話をしていた。直接話をするわけにもいかないので侍女たちにその話を詳しく聞いてこさせた。
侍女たちの話によると、花嫁は赤い髪をしている他はいたって普通の娘だという。
『公主と同じぐらいかもしれないと言っておりました』
そう言われた時、彼女はなんだか腹が立った。
特別な能力があるわけでもないただの娘が、どうして四神の花嫁になれるというのか。
四神は唐の国の守り神だと聞いた。
葉明は唐の公主だというのにその顔を近くで拝謁したこともない。それなのに自分と同じぐらいの、いたって普通の娘が四神を独占しているなんてことがあっていいはずがない。
嫉妬だった。
それも目も眩むほどの。
花嫁は四神の腕に横抱きにされて移動をしていたという。
それでも四神は葉明からすると遠い存在だったから、憎たらしいとは思えどもそれまでだった。
だがあろうことかその女は葉明の兄である皇帝にまで色目を使ったというではないか。
皇帝は同腹の兄で、葉明にとって理想の男性だった。
降嫁する相手の徐衛とはすでに顔合わせは済ませているが、見た目からしておとなしそうで決して葉明の好みではなかった。
皇帝が四神の花嫁に靡くことはないだろうが、色目を使ったということがどうしても許せない。
(四神の花嫁というだけでは足りないというの!?)
普通の娘だと言うなら身の程を知るがいい。
そう憤りのままに、市井の、それも屋台と言われるところの食べ物を作らせて持っていかせた。
それなのに、その日の夕方には大事になっていた。
あんなに取り乱した皇后を見るのは初めてだった。
『花嫁様が陛下に色目を使ったなどということはありません。陛下に呼ばれて会ったというのは事実のようですが……。おそらく陛下の寵をいただけない者が流した噂に過ぎぬでしょう』
そう葉明の勘違いを正す皇后はひどく疲れているように見えた。
『妾から陛下には釈明しておきます』
そう言った皇后はけれど、皇帝の怒りを買い、ひどいありさまで戻ってきた。
そこでようやく葉明も己がとんでもないことをしたということに気付いた。だがやはり花嫁への印象は変わらなかった。
そして今日対峙した朱雀と花嫁に、葉明は圧倒された。
確かに花嫁は四神に比べればそれほど美しいというほどではなかった。だがその雰囲気は人のそれとは明らかに違った。
葉明は初めてその存在を畏怖した。
けれどその時にはもう、後の祭りであった。
あとは皇帝の裁量に任されることになる。正直葉明は泣いてしまいそうだった。
公主にあるまじき強さでだん、だんと地板を踏むようにして部屋の中をうろうろする。
侍女たちが主の様子に内心びくびくしていたが、そんなことを彼女が斟酌するはずもない。
李葉明は元々、四神やその花嫁についてどういう存在なのかということを真面目に考えたことがなかった。四神は基本春節の折に何日か滞在することは知っていたし、その宴席で見かけた姿は遠目にもひどく見目麗しいと認識はしていた。四神と言われる通り彼らは四人いて、それなのに花嫁はたった一人と聞き何かの間違いではないかと思った。
一神につき四人の女性というならばわかるが、四神にたった一人?
しかもその花嫁は界を渡ってきた者だという。
意味がわからなかった。
親兄弟に尋ねようにも母は皇太后で、興味を持った時にはすでに西の地に移り住んでいた。姉たちはみなお嫁に行っているし、兄たちも独り立ちしている。後宮を訪ねれば皇帝の寵を競う妾妃たちばかりでまともに教えてくれる者もいない。花嫁修業の老師は『公主が知る必要はないことです』と言う。
好奇心に火がついてしかたがなかったある日、どこかの侍女が四神とその花嫁が連れ立っているところを見たという話をしていた。直接話をするわけにもいかないので侍女たちにその話を詳しく聞いてこさせた。
侍女たちの話によると、花嫁は赤い髪をしている他はいたって普通の娘だという。
『公主と同じぐらいかもしれないと言っておりました』
そう言われた時、彼女はなんだか腹が立った。
特別な能力があるわけでもないただの娘が、どうして四神の花嫁になれるというのか。
四神は唐の国の守り神だと聞いた。
葉明は唐の公主だというのにその顔を近くで拝謁したこともない。それなのに自分と同じぐらいの、いたって普通の娘が四神を独占しているなんてことがあっていいはずがない。
嫉妬だった。
それも目も眩むほどの。
花嫁は四神の腕に横抱きにされて移動をしていたという。
それでも四神は葉明からすると遠い存在だったから、憎たらしいとは思えどもそれまでだった。
だがあろうことかその女は葉明の兄である皇帝にまで色目を使ったというではないか。
皇帝は同腹の兄で、葉明にとって理想の男性だった。
降嫁する相手の徐衛とはすでに顔合わせは済ませているが、見た目からしておとなしそうで決して葉明の好みではなかった。
皇帝が四神の花嫁に靡くことはないだろうが、色目を使ったということがどうしても許せない。
(四神の花嫁というだけでは足りないというの!?)
普通の娘だと言うなら身の程を知るがいい。
そう憤りのままに、市井の、それも屋台と言われるところの食べ物を作らせて持っていかせた。
それなのに、その日の夕方には大事になっていた。
あんなに取り乱した皇后を見るのは初めてだった。
『花嫁様が陛下に色目を使ったなどということはありません。陛下に呼ばれて会ったというのは事実のようですが……。おそらく陛下の寵をいただけない者が流した噂に過ぎぬでしょう』
そう葉明の勘違いを正す皇后はひどく疲れているように見えた。
『妾から陛下には釈明しておきます』
そう言った皇后はけれど、皇帝の怒りを買い、ひどいありさまで戻ってきた。
そこでようやく葉明も己がとんでもないことをしたということに気付いた。だがやはり花嫁への印象は変わらなかった。
そして今日対峙した朱雀と花嫁に、葉明は圧倒された。
確かに花嫁は四神に比べればそれほど美しいというほどではなかった。だがその雰囲気は人のそれとは明らかに違った。
葉明は初めてその存在を畏怖した。
けれどその時にはもう、後の祭りであった。
あとは皇帝の裁量に任されることになる。正直葉明は泣いてしまいそうだった。
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