異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

150.回避するのはたいへんです

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 景山から四神宮に戻ると、もう四神を阻む物は何もない。だが当然のことながら香子は諦めが悪かった。

『玄武様! 贈物! 贈物を見ていません!』

 室へ一直線で戻ろうとする玄武をどうにかして止めようとする。

『侍女に確認させればよかろう』

 しかし対する玄武は非協力的だ。香子は頭の中がぐちゃぐちゃになりながらも考える。

『玄武様! そういえば写真! 写し絵を留める方法を相談してくれるって!』

 無理矢理思い出した事柄を叫ぶように言うと、やっと玄武は足を止めた。そして眉間にしわを寄せる。

『……そうであったな』

 その声はとても不本意そうであったが、それでも反故にしないだけ律儀である。そうして一瞬の間を置いてから茶室に足を踏み入れた。香子はそれにほっと胸を撫で下ろした。
 三神とはいささか距離が離れていた為念話を使ったらしい。ほどなくして三神も茶室にやってきた。
 いつものようにお茶を入れてから肝心の写真を持ってきていないことに気づき取りに行くというアクシデント(?)はあったが(その際もわざわざ玄武に抱き上げられて運ばれた)、比較的スムーズに話は進んだ。

『ほほぅ、これが”写真”というのか。なんとも精巧な写し絵だな』

 写真に一番興味を持ったのは白虎だった。四神はおざなりに見るのではなく、一枚一枚確認するようにアルバムをめくっていた。それも香子にとっては嬉しいことだった。
 アルバムの入れられる枚数の関係で二、三枚重ねて入れてあるところも見たがったので、四神が全て見終わるまでけっこうな時間がかかった。

『このような物があるとは……。香子シャンズのいた世界は随分と進んでいるのだな』

 感心したように青龍が言う。どうやってこのような物を作るのかと尋ねられたがやっぱり原理のわからない香子にはうまく説明ができなかった。
 追求は特にされなかったので胸をなで下ろす。そしてふと、このアルバムを他の人間が見ただろうということを思い出して嫌な気分になった。

(写真自体に指紋をつけられていなかっただけまだいいかな……)

 嫌なことは極力考えない、と軽く首を振って意識から追い出す。

『香子、如何した』

 玄武の声に香子ははっとした。自分の行動はみなの注目を集めるということをつい忘れてしまう。

『いえ……なんでもないです』

 笑顔を作って答えると、玄武は眉を寄せたがそれ以上聞かれることはなかった。結論として、写真をそのまま劣化させないでおくことは可能らしい。
 香子はそれにほっとした。
 今はそれだけで十分だった。


 写真を見るだけで意外と時間がかかったらしく、もうそろそろ夕飯の時間だという。とはいえこの国の夕飯は早い。ただ夏になると日が延びる為夕飯の時間は徐々に遅くなるらしかった。

(日の光と共に生活してるってかんじだよねー)

 だがもちろん問題はある。時間は王都である北京を基準としているから、西にいけばいくほど時間はずれるのだ。中国の広さを考えると最低でも二時間ぐらいの時差は設けてしかるべきなのだがそもそもこの世界に時差の概念はあるのだろうか。それ以前にこの世界も地球のように星の上に存在するのだろうか。
 それはともかく今は夕飯である。
 いつもの上品な料理の他に今回は担担面タンタンメンもあった。大きな椀に少し盛られた、という形であったが、スープの色が赤く、如何にも辛くておいしそうである。
 香子が愛してやまない担担面は、場末の店で食べる一杯3.5元(一元=15円換算で52.5円)の物だった。欠けた椀にたっぷりのうどんのような麺(うどんほど太くない)に真っ赤なスープ(どんだけラー油入ってんの)、それに豚肉のそぼろとチンゲンサイが乗っている。それがたまらなく好きで一時期はまって食べていたら店のおばちゃんに顔を覚えられてしまったという曰くつきである。
 今回出された物にも豚肉のそぼろとチンゲンサイが乗せられていて香子はにんまりしてしまった。
 食べてみると四神宮の料理人が作ったらしく上品な味であったが、とても辛くておいしかった。他にも料理はあったがもっと食べたいなと思っていたら横からすっと椀を差し出された。

『……玄武様?』

 優しい眼差しで受け取るよう促され、香子はなんとなく受け取ってしまっていた。

(どうしよう……)

 そんなに物欲しそうにしていたのだろうかと冷汗をかく。

『好きなのだろう? とても幸せそうな顔をしていた』

 さらりと甘いバリトンが紡がれ、香子は真っ赤になった。

(だ、だだだだだからそういうのは反則ぅっっっ!!!!!!)

 これ以上惚れさせてどうしようというのだ。
 そんな四神と香子の様子を眷族と侍女たちは微笑ましそうに見守っていたが、もちろん余裕が全くない香子は気付かなかった。
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