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第1部 四神と結婚しろと言われました
151.疲れたのでお風呂に入ります
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夕飯が終ると茶室に移るのが恒例になっている。そこで香子がお茶を入れ、他愛ない話をしている間に侍女たちが浴室の準備を整える。黒月は香子の守護となったので浴室の中でも控えているというのが当然なのだがそれには香子が難色を示した。
『黒月さんも一緒にお風呂入りますよね?』
『いえ、我は……』
『そばでただ控えていられたらゆっくりお風呂にも入れません。それともなんですか? お風呂に入っていたら私の守護はできないんですか?』
『そんなことは……!!』
『じゃあ決まりです。一緒に入りましょう』
『……承知しました』
香子と黒月のやりとりを聞いていた他の眷族たちは苦笑した。黒月はなかなか香子には勝てそうもない。ただ、黒月も勝てるとは思っていないだろう。香子は四神の花嫁なのだから。
それにしても、こちらの世界に来てからなんと濃い日々だろうと香子は思う。一応景山に行く許可は明日までとってあると趙文英が言っていた。最初に一週間分と言っていた気がするから、明日でやっと七日になるわけだ。
(濃い……濃すぎる……)
中国に着いた初めの一週間も、それはそれは長く濃い時間であったけれども、こちらの世界での一週間はもっと濃密だと思う。そして結局それは玄武や朱雀との行為まで考えてしまうことになる。
(花嫁って言われてるぐらいだからこれでいいのだろうけど……)
それでも二神の相手を同時にしているというのは香子の倫理観から逸脱している。
(どなたかに決めた方がいいんだよね)
ということはわかっているものの、はいそうですかと決められるほど付き合いがあるわけではない。
物思いにふけっている香子を見ながら、玄武は品茗杯(小さい湯呑み)を傾けた。
香子の一挙手一投足に四神は反応する。ふっと香子が顔を上げ四神の誰かを見れば必ず目が合うほどに。その点眷族は自分の主だけを見ているから香子もそちらへなら目を向けやすい。とはいえやはり顔を上げた時に見えるのは色とりどりの美丈夫だから、感覚が麻痺してしまいそうだと香子は思った。
今日は朝からいろんなことがあった。
その疲れもあってか、香子は無言で品茗杯を傾けるばかりだった。
そんな香子の様子を彼らは静かに見守る。やがてお茶の味がそろそろなくなりそうという頃、浴室の準備ができたことを伝えられた。
(……今夜はどうすればいいのかしら)
席を立つ前に香子は視線を彷徨わせた。それに玄武と朱雀が頷く。香子は頬をほんのりと赤く染めて俯いた。
黒月と共に浴室に向かい、広い浴槽に浸かって、やっと香子は少し気持ちが休まった気がした。
一般庶民はこうして湯を溜めて入浴することはまずない。お湯をただ浴びるか、体を拭くだけというのが普通である。そう考えると、こうして湯に浸かっているというのはとんでもない贅沢に思えた。
北京を含む中国の北方は降水量が少ない。その為毎年水不足が叫ばれている。日本では毎日お風呂に入るという人が圧倒的に多いだろうが中国ではまず湯に浸かるという習慣がない。香子がいた学生寮は外国人専用だったがまず浴槽がなかった。固定されたシャワーヘッドからお湯が出てくるだけなので不便といえば不便だったのだがそれすらも贅沢だったらしい。もちろん一生お風呂に入らない、なんて人もいる。日本人からしたらぞっとしない話だが、世界的にみたら毎日入浴するのは少数派である。これも日本は水資源が豊富だからできることだ。
香子はお湯をすくって顔を洗った。
『黒月さんは……領地で入浴はされてました?』
そう聞くと黒月は伏せていた目を香子に向けた。
『花嫁様、我のことは黒月と呼び捨てになさいませ。……このように湯に浸かるということはありませんでした。体は何日かに一度洗ってはいましたが』
ふむふむと頷く。そしてふと考えた。
『あの……四神は入浴するのでしょうか?』
四神宮には浴場が二か所あるようだが、香子が使っているのは玄武の室と青龍の室の側にある北東の方角の浴場である。いつも香子が入っている時四神は南西の浴場を使っているのだろうか。
『四神は基本沐浴をされます』
沐浴と言われてもどう判断をしていいのか香子はわからなかった。水浴びが基本なのだろうか。ここらへんは直接聞いた方がよさそうだった。
そうしてふと皇后と昭正公主のことを思い出した。彼女たちの処分は皇帝に丸投げしたのだからもう気にする必要はないだろう。
今夜はこれからまた玄武と朱雀に抱かれてしまうのだろうか。香子はふぅっと静かに嘆息した。
『黒月さんも一緒にお風呂入りますよね?』
『いえ、我は……』
『そばでただ控えていられたらゆっくりお風呂にも入れません。それともなんですか? お風呂に入っていたら私の守護はできないんですか?』
『そんなことは……!!』
『じゃあ決まりです。一緒に入りましょう』
『……承知しました』
香子と黒月のやりとりを聞いていた他の眷族たちは苦笑した。黒月はなかなか香子には勝てそうもない。ただ、黒月も勝てるとは思っていないだろう。香子は四神の花嫁なのだから。
それにしても、こちらの世界に来てからなんと濃い日々だろうと香子は思う。一応景山に行く許可は明日までとってあると趙文英が言っていた。最初に一週間分と言っていた気がするから、明日でやっと七日になるわけだ。
(濃い……濃すぎる……)
中国に着いた初めの一週間も、それはそれは長く濃い時間であったけれども、こちらの世界での一週間はもっと濃密だと思う。そして結局それは玄武や朱雀との行為まで考えてしまうことになる。
(花嫁って言われてるぐらいだからこれでいいのだろうけど……)
それでも二神の相手を同時にしているというのは香子の倫理観から逸脱している。
(どなたかに決めた方がいいんだよね)
ということはわかっているものの、はいそうですかと決められるほど付き合いがあるわけではない。
物思いにふけっている香子を見ながら、玄武は品茗杯(小さい湯呑み)を傾けた。
香子の一挙手一投足に四神は反応する。ふっと香子が顔を上げ四神の誰かを見れば必ず目が合うほどに。その点眷族は自分の主だけを見ているから香子もそちらへなら目を向けやすい。とはいえやはり顔を上げた時に見えるのは色とりどりの美丈夫だから、感覚が麻痺してしまいそうだと香子は思った。
今日は朝からいろんなことがあった。
その疲れもあってか、香子は無言で品茗杯を傾けるばかりだった。
そんな香子の様子を彼らは静かに見守る。やがてお茶の味がそろそろなくなりそうという頃、浴室の準備ができたことを伝えられた。
(……今夜はどうすればいいのかしら)
席を立つ前に香子は視線を彷徨わせた。それに玄武と朱雀が頷く。香子は頬をほんのりと赤く染めて俯いた。
黒月と共に浴室に向かい、広い浴槽に浸かって、やっと香子は少し気持ちが休まった気がした。
一般庶民はこうして湯を溜めて入浴することはまずない。お湯をただ浴びるか、体を拭くだけというのが普通である。そう考えると、こうして湯に浸かっているというのはとんでもない贅沢に思えた。
北京を含む中国の北方は降水量が少ない。その為毎年水不足が叫ばれている。日本では毎日お風呂に入るという人が圧倒的に多いだろうが中国ではまず湯に浸かるという習慣がない。香子がいた学生寮は外国人専用だったがまず浴槽がなかった。固定されたシャワーヘッドからお湯が出てくるだけなので不便といえば不便だったのだがそれすらも贅沢だったらしい。もちろん一生お風呂に入らない、なんて人もいる。日本人からしたらぞっとしない話だが、世界的にみたら毎日入浴するのは少数派である。これも日本は水資源が豊富だからできることだ。
香子はお湯をすくって顔を洗った。
『黒月さんは……領地で入浴はされてました?』
そう聞くと黒月は伏せていた目を香子に向けた。
『花嫁様、我のことは黒月と呼び捨てになさいませ。……このように湯に浸かるということはありませんでした。体は何日かに一度洗ってはいましたが』
ふむふむと頷く。そしてふと考えた。
『あの……四神は入浴するのでしょうか?』
四神宮には浴場が二か所あるようだが、香子が使っているのは玄武の室と青龍の室の側にある北東の方角の浴場である。いつも香子が入っている時四神は南西の浴場を使っているのだろうか。
『四神は基本沐浴をされます』
沐浴と言われてもどう判断をしていいのか香子はわからなかった。水浴びが基本なのだろうか。ここらへんは直接聞いた方がよさそうだった。
そうしてふと皇后と昭正公主のことを思い出した。彼女たちの処分は皇帝に丸投げしたのだからもう気にする必要はないだろう。
今夜はこれからまた玄武と朱雀に抱かれてしまうのだろうか。香子はふぅっと静かに嘆息した。
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