168 / 653
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
14.御花園に行きたいのです
しおりを挟む
目覚めは口づけと共に訪れた。
至近距離に青龍の顔があって非常に心臓に悪い。しかも身をよじろうとしても動けない。
『目覚めたか』
青龍が唇を離す。正直そんな起こし方はしないでほしかった。
『……今何時ですか?』
咎めてもしかたないので聞くと、『そうだな、おそらく辰の初刻ぐらいではあるまいか』と返事をされた。それに香子ははっとする。
『御花園!』
叫ぶように言って身じろぐとかえってがっちりと抱え込まれてしまった。やはり香子が動けない原因は二神にあったようである。
『御花園に行きたいです! 行かせてください!』
まだ間に合うはず! と声を上げる。二神のどちらかが嘆息したような気がするがそれは無視することにした。
『だが香子、そなた朝食もまだであろう』
『後でいいです! 散歩がしたいんです!』
力説すると、『しばし待て』と白虎に言われた。どうやら手配をしてくれるらしい。
しばらくもしないうちに白雲がやってきたようで『おめしかえを』と居間に出た青龍に言った。それからはみんなばたばたと支度をし、どうにか辰の三刻に御花園に着くことができた。
王城の中の庭園であるから、もちろん景山のような広さは望めない。それでも花々が植えられ、ところどころに四阿があり、人工の山、そして人工の川や池に橋がかかり、となかなかの景観であった。さすが御花園というだけある。人工の山は太湖石を用いて作られているのだろうか。奇岩を積み重ねられているように見受けられた。香子としては、北京の故宮博物館の御花園と似ているようで異なる印象を受けた。
(まぁ、それでも何回も見たことがあるわけではないけれど……)
北京に留学していたので何度かは故宮博物館に足を運んだことはある。友人が北京に遊びに来てくれてその案内もした。ただ、天安門広場の端から故宮博物館を抜けて景山に上るという強行コースではあったが。
(あの時は確かまっすぐ進んだだけなのに一時間半ぐらいかかったなー……)
北京は広い。建造物はでかい。天安門広場、故宮博物館といえばダイナミックな中国を連想させるものだと香子はしみじみ思う。
閑話休題。
御花園である。それほどの広さはないので王英明の説明を聞きながらあっちへ行ったりこっちへ来たりしただけで、すぐに回り終えてしまった。
やはり山っぽいものは太湖石でできていると聞いた。わざわざ遠いところからよく運んできたものだと思ってしまう。四阿に軽食の用意ができたと趙文英に伝えられ、香子はさすがに頭をかいた。香子のわがままに付き合ってもらって本当に御苦労さまである。
『朝食はまた四神宮で用意しますので、これでご容赦ください』
急いで用意したのだろう乾菓子とお茶を出され、香子はぶんぶんと首を振った。
『わがまま言ってすいません。大丈夫です!』
すると香子を膝に乗せている白虎が眉を寄せた。
『香子、そこは『ごめんなさい』ではなく『ありがとう』というところではないのか?』
香子ははっとした。
『あ……そうですね。みなさん、ありがとうございます』
そしてはにかむように笑む。王と趙はその笑みに一瞬目を奪われたが、すぐに四神の視線を感じ取って目を伏せた。そうでなくても香子自身から醸し出される色気は尋常ではないのだ。彼らが気を抜くわけにはいかない。
『お礼を言われるほどのことではございません。花嫁様に喜んでいただければそれにこしたことはありません』
『はい、御花園に連れてきていただけて嬉しいです。またお願いします』
屈託なく言う香子に、王と趙はこっそり苦笑した。確かに今朝はたいへんであったが、身分の高い者特有の奢りがないだけにいくらでも願いを叶えてあげたくなってしまう。だがもちろん彼らがそんな心境でいることを香子は知らない。
(どーも日本語の感覚だと『ごめんなさい』になっちゃうんだよね。『ありがとう』って言うようにしよう……)
と、香子は別のことを考えていた。
そして短いながらも充実した時間を御花園で過ごし、四神宮に戻った。
至近距離に青龍の顔があって非常に心臓に悪い。しかも身をよじろうとしても動けない。
『目覚めたか』
青龍が唇を離す。正直そんな起こし方はしないでほしかった。
『……今何時ですか?』
咎めてもしかたないので聞くと、『そうだな、おそらく辰の初刻ぐらいではあるまいか』と返事をされた。それに香子ははっとする。
『御花園!』
叫ぶように言って身じろぐとかえってがっちりと抱え込まれてしまった。やはり香子が動けない原因は二神にあったようである。
『御花園に行きたいです! 行かせてください!』
まだ間に合うはず! と声を上げる。二神のどちらかが嘆息したような気がするがそれは無視することにした。
『だが香子、そなた朝食もまだであろう』
『後でいいです! 散歩がしたいんです!』
力説すると、『しばし待て』と白虎に言われた。どうやら手配をしてくれるらしい。
しばらくもしないうちに白雲がやってきたようで『おめしかえを』と居間に出た青龍に言った。それからはみんなばたばたと支度をし、どうにか辰の三刻に御花園に着くことができた。
王城の中の庭園であるから、もちろん景山のような広さは望めない。それでも花々が植えられ、ところどころに四阿があり、人工の山、そして人工の川や池に橋がかかり、となかなかの景観であった。さすが御花園というだけある。人工の山は太湖石を用いて作られているのだろうか。奇岩を積み重ねられているように見受けられた。香子としては、北京の故宮博物館の御花園と似ているようで異なる印象を受けた。
(まぁ、それでも何回も見たことがあるわけではないけれど……)
北京に留学していたので何度かは故宮博物館に足を運んだことはある。友人が北京に遊びに来てくれてその案内もした。ただ、天安門広場の端から故宮博物館を抜けて景山に上るという強行コースではあったが。
(あの時は確かまっすぐ進んだだけなのに一時間半ぐらいかかったなー……)
北京は広い。建造物はでかい。天安門広場、故宮博物館といえばダイナミックな中国を連想させるものだと香子はしみじみ思う。
閑話休題。
御花園である。それほどの広さはないので王英明の説明を聞きながらあっちへ行ったりこっちへ来たりしただけで、すぐに回り終えてしまった。
やはり山っぽいものは太湖石でできていると聞いた。わざわざ遠いところからよく運んできたものだと思ってしまう。四阿に軽食の用意ができたと趙文英に伝えられ、香子はさすがに頭をかいた。香子のわがままに付き合ってもらって本当に御苦労さまである。
『朝食はまた四神宮で用意しますので、これでご容赦ください』
急いで用意したのだろう乾菓子とお茶を出され、香子はぶんぶんと首を振った。
『わがまま言ってすいません。大丈夫です!』
すると香子を膝に乗せている白虎が眉を寄せた。
『香子、そこは『ごめんなさい』ではなく『ありがとう』というところではないのか?』
香子ははっとした。
『あ……そうですね。みなさん、ありがとうございます』
そしてはにかむように笑む。王と趙はその笑みに一瞬目を奪われたが、すぐに四神の視線を感じ取って目を伏せた。そうでなくても香子自身から醸し出される色気は尋常ではないのだ。彼らが気を抜くわけにはいかない。
『お礼を言われるほどのことではございません。花嫁様に喜んでいただければそれにこしたことはありません』
『はい、御花園に連れてきていただけて嬉しいです。またお願いします』
屈託なく言う香子に、王と趙はこっそり苦笑した。確かに今朝はたいへんであったが、身分の高い者特有の奢りがないだけにいくらでも願いを叶えてあげたくなってしまう。だがもちろん彼らがそんな心境でいることを香子は知らない。
(どーも日本語の感覚だと『ごめんなさい』になっちゃうんだよね。『ありがとう』って言うようにしよう……)
と、香子は別のことを考えていた。
そして短いながらも充実した時間を御花園で過ごし、四神宮に戻った。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる