異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

42.お風呂場は話しやすいみたいです

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 茶会についてはわくわくした気持ちが主なのだが、引き続き延夕玲に対しての気持ちは少し複雑である。そして今更ながらふと、香子は王城に仕える者たちの恋愛事情が気になってしまった。

(時代劇なんかだと皇帝の部屋付の侍女が手を出されちゃったりとかー、身分違いの恋でーとかあるのよね。そういえば侍女頭の陳秀美と白雲は恋仲っぽいし。そういうの誰か詳しい人いないかしら?)

 守護である黒月がその手の話に詳しいわけはない。女官である夕玲はこちらに来たばかりである。
 とすればやはり四神宮に仕えている侍女に尋ねるのが正しいと思われる。
 とはいえ香子の部屋には最近夕玲が詰めているし、四神の室にわざわざ呼ぶというのも違う。誰にも邪魔されずに王城内の恋愛に関する噂話を聞くにはどうしたいいのだろう。

(後は……入浴の時かな?)

 香子の入浴の際には何人か侍女が世話につくのである。
 夕玲は今のところ一緒に入浴していない。黒月も毎回一緒に入ってくれるわけではない。

(そうしよーっと)

 解決策を早々に導き出し、香子はにんまりした。


 ちょうどその夜、黒月が共に入浴するのを渋った。
 玄武の眷属である黒月は、水浴びは好きなのだが暖かい湯に入るのはそれほど好きではないらしい。しかも香子の守護として仕えるにはあまり無防備な恰好でいたくないというのが本音である。それでも香子に泣きつかれると弱いのかここのところ二、三回に一度は一緒に風呂に入ってくれている。
 香子と入浴しない場合、黒月は基本浴室の前に控えてくれている。浴室内の会話を聞かれるかもしれないが、どうしても隠さなければいけない話題でもないので気にしないことにした。
 体を洗ってもらい、湯船につかると「失礼します」と声がかかり肩や腕を侍女たちが揉んでくれる。
 そんなに動いていないので体が凝ることはないと思うのだが、揉んでもらうと痛気持ちいいのでやはり多少は緊張しているのかもしれない。

(なんて贅沢なのかしら)

 最近そうされることに慣れてきた自分が怖いと香子は思う。きっとこういうところに勤めている人々に対して全身マッサージをしろと言えばしてくれるのだろう。

(足裏マッサージとかは好きだけど……まず歩いてないし)

 マッサージしてもらうなんてとんでもない。
 自分の思考にツッコミを入れて、「ありがとう、もういいわ」とやんわり断った。
 ふーっと静かに息を吐き出す。
 どう切り出したものか。

(うーんと……)

 振り返り、浴槽の縁で両腕を軽く組んで首をこてんと傾げる。

『……ねぇ……私、以前宮廷内の恋愛を題材にした小説を読んだことがあるのだけど、こちらでもそういうことってあるのかしら? 例えば……身分の高い人に仕える侍女がお手つきされちゃうとか……』

 侍女たちの方に視線を向けて問えば、みな戸惑ったような表情をした。

『……答えにくいことならいいのだけど、例えばここでも誰と誰が恋仲みたいだとか知ってたら教えてくれないかなって……』

 みな声を発してくれないので、最後の方はさすがに尻つぼみになってしまった。

(こういうことって聞いちゃいけないのかしら? それともなにか警戒してる?)

 沈黙が痛い、と思っていると、一人の侍女がおそるおそる声を発した。

『あの……それは……どういう……』

 警戒されているということがわかり、香子は笑顔を作った。仕えている者に職場恋愛を知られるとあまりよくないことが起きるのかもしれない。

『んー、ただの好奇心よ。私こちらに来て間もないでしょう? こちらの恋愛事情ってどうなのかしらと思って。なんかね、見てる限り白雲と侍女頭の陳さんがそれっぽく見えるんだけど、四神の眷属と人が一緒になるって一般的なのかなー、とか……』

 侍女たちは一斉にぶんぶん首を振った。予想通りだが、どうやらそう簡単にあることではないらしい。

『そうよね? で、実際あの二人ってそうなのかしら?』
『おそれながら、恋人同士だと思います!』
『求婚されたって聞きましたよ!』

 それを聞いて香子は驚いた。実のところ白雲と陳の関係については本人たちの口から聞いたわけではない。いわゆる女のカンというヤツである。

『えー、もう求婚まで? やっぱり人じゃないから手順とか全部すっとばしちゃうのかしら? どう思う?』

 香子の口調がフランクなせいか、侍女たちの警戒も解けたようだった。一般的に女子は噂好きでおしゃべりなものだと香子は認識している。特に四神宮に仕える侍女たちはみな若い。ちょっとつついてあげれば堰を切ったように話してくれるに違いなかった。

『恋愛結婚とか素敵じゃないですか!』
『憧れます! しかもあんな……美しい方と……』
『でも陳さんだから許せちゃう! いいなぁ……』
『やっぱりこの国の結婚って親が決めちゃうものなの?』

 さらに質問すれば、『そうなんです』『市井の人たちは知りませんけど、私たちは大体、ねぇ……』
 という答えが返ってきた。

『じゃあ大体みんな何歳ぐらいで結婚するものなの?』
『普通は、十五~十七歳ぐらいです』
 そういえばこの国の成人は十五歳だったと思い出す。それにしては、陳はもっと歳がいっているように見えたが。
 香子の疑問が顔に出ていたのか、『侍女頭は確か二十歳を越えています』と答えてくれた。そこには何らかの事情があるのだろうと察し、香子はそれ以上聞かなかった。
 そのまま侍女たちとガールズトークをたっぷり楽しみ、しびれを切らした朱雀が浴室まで迎えにくるというハプニングはあったものの、おおむね香子は満足した。
 女性の情報網というのは本当に侮れない。

 どうやら、青藍と夕玲がという情報まで手に入れたのだから。
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