異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

88.眷属の暴走はほどほどに願います

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 皇太后がふと、何かに気づいたような表情をした。

『そういえば、花嫁様のところは女官が夕玲シーリンしかおりませんな』
『……はい』

 忘れていてもよかったと香子は思ったが、女官が一人ということは延夕玲一人に仕事がのしかかるわけで、今更な話ではあるがそれをこのままにしておくのもまずい。

『婚礼は二か月後に挙げるといたしましても、その後も花嫁様はこちらに滞在されるのでしょう? そなに長い期間ではありませんが、妾の方で手配いたしました。ヤンをこれへ』

 その女性を見て、香子はおや? と思った。
 キレイな人だった。もしかしたら香子と同い年ぐらいかもしれない。

『花嫁様、これは妾の遠い親戚の娘でしてな。夕玲も妾の親戚の娘故、あまりよろしくはないと思いましたが、実家で無聊をかこつよりはよいかと声をかけさせていただきました』
『そうなのですか』

 なんで結婚していないのかと香子は考えてしまうが、なんらかの事情があるのだろう。皇太后が推薦するぐらいだからそれなりに能力は高いのだろうしと、香子は気にしないことにした。

『楊、ご挨拶を』

 楊、と呼ばれた女性が一歩前に出て礼をする。両手を身体の前で揃え、少し腰を落とし目は伏せるものである。優美だなと香子は思った。

『お初にお目にかかります。楊家が娘、楊芳芳ヤンファンファンと申します。精いっぱい務めさせていただきます』
『芳芳と呼んでもいいかしら。これからよろしくね。私はよくわからないから、四神宮のことは夕玲に聞いてちょうだい』
『承知しました』

 夕玲のように鈴を転がすような声とはいかないが、こちらもキレイな声をしていると香子は思った。
 あまりまじまじと見るわけにはいかないだろうが、夕玲とは違ったタイプの美人である。こちらの方が夕玲より身体つきもしっかりしているように見える。人は見かけでは判断できないが、おいおい知っていけばいいだろうと香子は思う。
 しかしここで直接お目見えとなると、四神宮の主官である趙文英には話を通していないのではないかと香子は考える。また趙が苦労することになるのだろうか。少し可哀想だなと香子は思った。
 芳芳は夕玲の斜め後ろに控えることになった。

『女官については何かあれば妾におっしゃってください。足りなければまたご用意いたします』
『足りない、かどうかの判断は夕玲に任せます……』
『そうですな』

 ほ、ほと皇太后が笑う。ようは夕玲の仕事が増えなければいいのだ。

『青龍様』

 皇太后が青龍を見やる。それまでほぼ置物と化していた青龍が視線を皇太后に向けた。

『如何か』
『呼びつけてしまい、申し訳ありません』
『かまわぬ』

 皇太后が青龍もと声をかけたのは、延夕玲と青藍についてのことだった。

『我が眷属が世話をかける。眷属とは言うが婚姻等についても本人たちに委ねている故、我が関わることはない。青藍とそちらで決めればよい』
『かしこまりました』

 皇太后はなるほどというように頷いた。青藍は青龍より年長である。眷属は四神よりは長生きしないが、青藍は先代の花嫁から生まれているから長命である。夕玲がつがいということで、結婚すれば夕玲も同じだけの時を生きることになる。

(長生きするのってたいへんそうだよねえ)

 他人事のように考えているが、香子は更に長い時を四神と過ごすことになるのだ。

『青藍様には近々夕玲の両親と改めて対面していただきましょう。婚礼は花嫁様の婚礼の後になりますが、よろしいですか?』

 皇太后が青藍に尋ねた。

『かまいませぬ』

 青藍が答える。けれどそれだけでは終わらなかった。青藍は香子に声をかけてきた。

『花嫁様』
『……なぁに?』

 香子は嫌な予感がした。つがいが関わると眷属はろくなことを言い出さないということを香子はよく知っていた。

『婚礼は一日も早く行っていただきたい』
『……それは、私の一存で決められることではないわ』

 やっぱりむちゃぶり来た、と香子は思った。それもあまり表情の動かない顔で言われるものだから、実のところ何を考えているのかよくわからない。本気なのか冗談なのか判別がつかないのだ。

『花嫁様が一言命じればよいだけでしょう』
『夕玲と一日も早く結婚したいからって、私を巻き込まないでくれる?』
『その権限があるのは花嫁様ですので』

 しれっと青藍が言う。四神の花嫁なのだから権限は四神にあるのではないかと香子は思ったが、四神に丸投げなんてしようものならたいへんなことになるのを香子は知っているので、そこはあえて言わないことにした。

『青藍の願いを叶える為に私が悪者になるのは嫌だわ』
『花嫁様ならできます』
『夕玲、この暴走男をどうにかして!』

 さすがにいいかげんにしてほしいと香子は思った。夕玲は困ったような表情をし、青藍の衣裳の袖をそっと掴んだ。その掴み方がまたあざとい。そういうことは二人きりの時にしてくれである。

『青藍様、花嫁様を困らせてはいけません』
『我は夕玲を一日も早く娶りたいのだ。花嫁様の婚礼が先だというのならばその婚礼を早めればよいこと』
『そういうわけにはいきません。青藍様、耐えられないとおっしゃるのでしたら私も嫁ぐことはできませんわ』
『夕玲!』
『……そういうことは二人きりの時になされよ』

 さすがの黒月も腹に据えかねたらしい。黒月が低い声を発したことで、二人の世界はそこで解除されたのだった。
 やれやれである。


ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!


プチプリの閉鎖に伴いまして、登場人物一覧などはfanboxに移動しました。
作品情報にurlを載せていますのでご確認ください。
番外編などはいずれまた修正して公開予定です。

11/18 fanboxに登場人物を追加しました。
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