異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

89.そろそろそんな話になりまして

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 皇太后は笑うのを堪えていたようだった。
 香子からすれば笑いごとではないのだが、やりとりを楽しんでもらえたのならよかったと思った。普段は冷静だが、眷属はひとたびつがいが関わるとあほになるようである。
 紅児が紅夏に嫁ぐまでは紅夏がうるさくてしかたなかった。香子はちら、と白雲を見やる。こちらはこちらで勝手に侍女頭の陳秀美を捕らえ、結婚も秒読みである。香子が婚礼を挙げた後は白雲と陳、青藍と延夕玲が結婚するに違いなかった。

『では青藍様、顔合わせの日が決まりましたらご連絡差し上げます』
『承知した』
『ですが』

 皇太后はそこで言葉を切った。

『もし花嫁様になんらかの用事があって青藍様が付き従う必要がありましたら、そちらを優先してくださいませ』
『……それは何故なにゆえか?』

 本当に不思議そうに青藍が聞く。ここらへんのしきたりとか、機微などは伝わらないものらしい。皇太后も一瞬困ったような表情を浮かべた。

『青藍様は四神の眷属でございましょう。花嫁様を優先されるのは当然でございます。その際は妾も花嫁様に付き従いますので』
『……そなたに従おう』

 夕玲に小声で説明され、青藍は夕玲に微笑みかけた。夕玲はとても困ったような表情で、頬を染めた。至近距離で見る四神の眷属の美しさに抗える者はいないのである。

(ま、いっかー)

 香子は笑顔である。
 眷属が香子に必要以上に近づいてくることはないので、それによるダメージはないが、四神と顔は似通っているので本当になんだかなぁと香子は思う。ただその雰囲気は全然違うので、顔も姿形も似ていても間違えることはない。ただ眷属の見分けはもしかしたら難しいかもしれないと香子は考える。

(ここだから区別できてるけど、領地に行ったらわからなくなるかも?)

 香子はあまり人の顔が覚えられる性質ではないので、今頃になってちょっと心配になった。

香子シャンズ、如何か?』

 全然関係ないことを考えているのを、白虎には気づかれてしまった。これは香子が白虎の腕の中にいるからしかたないことかもしれない。

『なんともありません』

 香子はそっと白虎の腕を衣裳の上から撫でた。
 おいしい紅茶をいただき、お茶菓子を食べ、香子は慈寧宮を辞した。
 婚礼の日取りなどはまた改めて通知が来るそうである。楊という女官についてはまず四神宮の主官である趙文英に話をしてから後日迎えることとなった。さすがにいきなり連れて戻ったら趙の胃がおかしくなってしまうかもしれないと香子は思っていたので、それは助かった。
 白雲から女官が増えることを伝えられた趙が胃を押さえたかどうか香子は知らない。
 それよりも茶会が終わった後、白虎が香子を抱いたまま四神宮の室に飛び、本性を現して香子に甘えまくったことの方が問題ではあった。すぐに玄武が追いかけ、昼間から香子が白虎に襲われることは阻止されたのでそちらも大した問題にはならなかった。

『虎~もふもふ~もふもふ~』

 香子が白虎の毛を堪能して至福の表情を浮かべたぐらいである。
 皇太后と皇后、皇帝の口添えにより、香子と四神の婚礼は二か月後に行われることと決まった。


『結婚式かぁ……』

 イマイチ香子には実感がない。
 結婚式に出たのも紅児と紅夏のが初めてなのである。元の世界でもそんな機会はなく、香子は誰かの結婚式に出たことがなかった。
 故に、何をするものなのかよくわからない。
 中国の時代劇は見ていたので手順などはなんとなくわかるが、結婚相手が四人という時点で香子は混乱していた。

『婚礼はそなたにとって厭うものか?』

 日中、青龍を椅子にした形でお茶を啜っていると青龍にそう聞かれた。

『いえ……まだ自分のことと実感が湧かないだけです』

 香子は素直に答えた。ククッと青龍が喉の奥で笑う。

『実感とは……すでに我らと交わっているというのにまだしないものなのか?』

 香子は首を傾げた。そうしてから、そういえばこの国では普通女性は結婚してからしか肌を許さないのだったということを思い出した。

『ああ、そうでしたね……』

 玄武に抱かれた時点で香子は”初めて”ではなかったから、身体を重ねたイコール結婚とは考えていなかったのである。
 これは見ようによってはあばずれと思われてもしかたないと香子はこめかみを指で押さえた。

『そなたの国では違うのであったか』
『……結婚するまで守っている女性もいるでしょうし、国によってはそれが当たり前ではあるのですが、私の国ではそのう……』
『そなたが気に病むことではない。これからは我らにしか抱かれることはないのだから』
『そ、それもそうです、ね……』

 香子は別にどうしてもHしたいわけではないからそれでいい。青龍が気にしていないようで、香子はほっとした。

『だが……少し妬けるな』
『……え?』

 持っていた茶杯を奪われ、卓の上に戻される。そうして青龍は香子を抱いたまま立ち上がった。

『青龍様……』
『抱きはせぬ。そなたを愛でたいだけだ』

 ここで逆らってもしょうがないことを香子はよく知っていた。
 青龍が気にしていないなんてことはなかった。

『夕飯はちゃんと食べたいです……』
『そなたはそればかりだな……』

 そんな色気のない香子でも、青龍は捕らえ、午後は甘く啼かせたのだった。
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