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第4部 四神を愛しなさいと言われました
98.抱き上げるのが基本動作なのでしょうか
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『花嫁様、婚礼の衣裳の仮縫いができましたので是非に』
皇太后の笑みがとても怖いと香子は思った。
『ところで、皇上。四神と花嫁様が輿に乗って王都内を巡るという話はどうなったのかえ?』
皇太后が皇帝に尋ねた。皇帝は目を逸らしながら、
『……花嫁のご提案で、輿に乗っていただく案はなくなりました。代わりに、四神に空を飛んでいただくことになりました』
と告げた。
『……四神に、空を……』
皇太后は信じられない物を見るような目で玄武と白虎を眺めた。
『そ、それは婚礼の後すぐということかえ?』
『……そうなりますな。詳しいことはこれからになりますので、眷属の方にも話を聞いていただけると助かります』
李雲が引き取って答える。白雲はそれに頷いた。
やはりなんだかんだいって白雲を頼りにしてしまう。
そうして香子は玄武から白虎の腕に移され、玄武と白雲をその場に残して慈寧宮に向かうこととなった。その際黒月には四神宮の主官である趙文英を呼んできてもらうように告げた。
『……我は花嫁様の守護ですが……』
『我が香子を抱いているのだ。何があろう?』
『……承知しました』
香子は白虎の腕の中にいるので、何か起こりようはずもない。黒月はしぶしぶ了承し、飛ぶように四神宮へと戻っていった。
途中で誰かにぶつからなければいいのだけどと香子は少しだけ心配になった。
そうしてみな慈寧宮に移動する。
『……黒月が戻るまでは離さぬぞ』
白虎が香子だけでなく皇太后にも言い聞かせるように言う。皇太后はそれに笑んだ。
『わかっておりますとも』
それぐらい四神は花嫁を離したくないのである。
『……本当に立ち方や歩き方も忘れてしまいそうです……』
それがまた恥ずかしくて、香子はぼやいた。そんな香子に皇太后は笑んだ。
『ほ、ほ……愛される妻というのは動かぬものですよ。自らあちらこちらへと動き回る女主人というのは嫌われるもの。花嫁様は四神を己の足とすればいいだけではありませぬか』
『それは……』
本気で言っているのかどうなのかわからないと香子は苦笑した。
『嫌うということはありえぬが……そなたを閉じ込めてしまうやもしれぬな?』
『うっ……』
耳元で、白虎の低いバスの声。しかもその内容はどこまでも恐ろしく、甘い。
香子は頬を染め、皇太后はにんまりと笑んだ。
『ほ、ほ……まだ寒い時分だというのにお熱いこと』
香子はどう返したらいいのかわからなかった。
こんな時ばかり、と香子は白虎を睨む。
『そなにかわいい顔をしていると、室に連れ込みたくなるな……』
『だめです! やることが先です!』
白虎と香子のやりとりを聞いて皇太后は上機嫌だった。
『……やらねばならぬことを終えたら白虎様と仲良うされるのですな。ではできるだけ早めに終わるよう努めましょうぞ』
『あっ! いえ、あの、そういうことではなく……』
香子はしどろもどろになった。延夕玲が嘆息した。
『老佛爷』
『なんじゃ?』
『花嫁様をからかわれるのも大概になされませ』
『たまにしか会えぬのじゃ。よいではないか。のぅ、花嫁様』
『……あ、あんまり……』
逆らうのもアレだが、嫌なものは嫌という香子なりの返事である。そうしている間に黒月が戻ってきた。
『ただいま戻りました』
その姿を見て、みな目を見開いた。
黒月に趙を呼んでくるようにとは伝えたが、まさか抱き上げて連れてくるとは誰も思ってはいなかった。香子は遠い目をしたくなった。
四神やその眷属というのは人を抱き上げることが基本動作としてプログラムされているのかと、香子は考えてしまう。もちろんそんなことはないだろうが、趙としてはそれどころではないだろう。顔を赤くしたり青くしたりして慌てていた。
『黒月、ご苦労さま。趙を下ろしてあげて?』
『はっ』
黒月は今気づいたというように趙をその場に下ろした。その動きもまた丁寧である。黒月の背も高いから、その姿はなかなかにさまになった。
皇太后の背後にいた女官や侍女たちがその姿を見て内心悶えていたのだが、そんなことを香子が知るよしもない。
趙は倒れそうになっていたが、どうにか立ち上がり拱手した。
『四神宮主官趙文英、お召しにより参上いたしました……』
『ご苦労。婚礼の予定に変更がある。玄武兄、白雲と共に皇帝から話を聞くがいい』
『……承知しました』
白虎に言われ、趙が移動しようとすると黒月がまた当たり前のように抱き上げた。
『黒、黒月殿!?』
『この方が早い』
黒月はそう言うと、そのまま趙を先ほどまでいた皇帝の執務室へ運んでいった。
『あら、まぁ……』
香子は思わず呟いた。
『……花嫁様、黒月殿はもしや……』
皇太后がにこにこしながら香子に声をかけた。
『……私は……知りません』
趙への遣いをあえて黒月に頼むこともあった香子だったが、黒月の気持ちまではわからない。だいたい黒月にそんなことを聞こうものならブリザードもかくやという視線を向けられてしまうことを香子はわかっていた。
『……花嫁様』
『はい……』
『人の恋路というのはいいものじゃのう……』
『……そ、そうですか……』
同意するのもはばかられ、香子は白虎の腕の中でそっと目を逸らしたのだった。
皇太后の笑みがとても怖いと香子は思った。
『ところで、皇上。四神と花嫁様が輿に乗って王都内を巡るという話はどうなったのかえ?』
皇太后が皇帝に尋ねた。皇帝は目を逸らしながら、
『……花嫁のご提案で、輿に乗っていただく案はなくなりました。代わりに、四神に空を飛んでいただくことになりました』
と告げた。
『……四神に、空を……』
皇太后は信じられない物を見るような目で玄武と白虎を眺めた。
『そ、それは婚礼の後すぐということかえ?』
『……そうなりますな。詳しいことはこれからになりますので、眷属の方にも話を聞いていただけると助かります』
李雲が引き取って答える。白雲はそれに頷いた。
やはりなんだかんだいって白雲を頼りにしてしまう。
そうして香子は玄武から白虎の腕に移され、玄武と白雲をその場に残して慈寧宮に向かうこととなった。その際黒月には四神宮の主官である趙文英を呼んできてもらうように告げた。
『……我は花嫁様の守護ですが……』
『我が香子を抱いているのだ。何があろう?』
『……承知しました』
香子は白虎の腕の中にいるので、何か起こりようはずもない。黒月はしぶしぶ了承し、飛ぶように四神宮へと戻っていった。
途中で誰かにぶつからなければいいのだけどと香子は少しだけ心配になった。
そうしてみな慈寧宮に移動する。
『……黒月が戻るまでは離さぬぞ』
白虎が香子だけでなく皇太后にも言い聞かせるように言う。皇太后はそれに笑んだ。
『わかっておりますとも』
それぐらい四神は花嫁を離したくないのである。
『……本当に立ち方や歩き方も忘れてしまいそうです……』
それがまた恥ずかしくて、香子はぼやいた。そんな香子に皇太后は笑んだ。
『ほ、ほ……愛される妻というのは動かぬものですよ。自らあちらこちらへと動き回る女主人というのは嫌われるもの。花嫁様は四神を己の足とすればいいだけではありませぬか』
『それは……』
本気で言っているのかどうなのかわからないと香子は苦笑した。
『嫌うということはありえぬが……そなたを閉じ込めてしまうやもしれぬな?』
『うっ……』
耳元で、白虎の低いバスの声。しかもその内容はどこまでも恐ろしく、甘い。
香子は頬を染め、皇太后はにんまりと笑んだ。
『ほ、ほ……まだ寒い時分だというのにお熱いこと』
香子はどう返したらいいのかわからなかった。
こんな時ばかり、と香子は白虎を睨む。
『そなにかわいい顔をしていると、室に連れ込みたくなるな……』
『だめです! やることが先です!』
白虎と香子のやりとりを聞いて皇太后は上機嫌だった。
『……やらねばならぬことを終えたら白虎様と仲良うされるのですな。ではできるだけ早めに終わるよう努めましょうぞ』
『あっ! いえ、あの、そういうことではなく……』
香子はしどろもどろになった。延夕玲が嘆息した。
『老佛爷』
『なんじゃ?』
『花嫁様をからかわれるのも大概になされませ』
『たまにしか会えぬのじゃ。よいではないか。のぅ、花嫁様』
『……あ、あんまり……』
逆らうのもアレだが、嫌なものは嫌という香子なりの返事である。そうしている間に黒月が戻ってきた。
『ただいま戻りました』
その姿を見て、みな目を見開いた。
黒月に趙を呼んでくるようにとは伝えたが、まさか抱き上げて連れてくるとは誰も思ってはいなかった。香子は遠い目をしたくなった。
四神やその眷属というのは人を抱き上げることが基本動作としてプログラムされているのかと、香子は考えてしまう。もちろんそんなことはないだろうが、趙としてはそれどころではないだろう。顔を赤くしたり青くしたりして慌てていた。
『黒月、ご苦労さま。趙を下ろしてあげて?』
『はっ』
黒月は今気づいたというように趙をその場に下ろした。その動きもまた丁寧である。黒月の背も高いから、その姿はなかなかにさまになった。
皇太后の背後にいた女官や侍女たちがその姿を見て内心悶えていたのだが、そんなことを香子が知るよしもない。
趙は倒れそうになっていたが、どうにか立ち上がり拱手した。
『四神宮主官趙文英、お召しにより参上いたしました……』
『ご苦労。婚礼の予定に変更がある。玄武兄、白雲と共に皇帝から話を聞くがいい』
『……承知しました』
白虎に言われ、趙が移動しようとすると黒月がまた当たり前のように抱き上げた。
『黒、黒月殿!?』
『この方が早い』
黒月はそう言うと、そのまま趙を先ほどまでいた皇帝の執務室へ運んでいった。
『あら、まぁ……』
香子は思わず呟いた。
『……花嫁様、黒月殿はもしや……』
皇太后がにこにこしながら香子に声をかけた。
『……私は……知りません』
趙への遣いをあえて黒月に頼むこともあった香子だったが、黒月の気持ちまではわからない。だいたい黒月にそんなことを聞こうものならブリザードもかくやという視線を向けられてしまうことを香子はわかっていた。
『……花嫁様』
『はい……』
『人の恋路というのはいいものじゃのう……』
『……そ、そうですか……』
同意するのもはばかられ、香子は白虎の腕の中でそっと目を逸らしたのだった。
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