562 / 652
第4部 四神を愛しなさいと言われました
110.眷属たちの認識と花嫁の思い(前半白雲視点)
しおりを挟む
白風は比較的すんなり納得したが、他の白虎の眷属たちは違った。
『昼食は召し上がられずに四神宮に戻るとおっしゃるのか』
『これはゆゆしきこと』
『厨師は何をしているのか』
白虎と香子が庭園を白風に案内してもらっている間、白雲は少し席を外し、眷属たちが集まっている場所へ顔を出した。
『……まだかようなことを言っているのか』
白雲はため息をついた。
眷属はその神が一番である故に、花嫁を尊重しないきらいがある。だが仕えている神にとって花嫁が至上の存在となるのだ。花嫁を大事にできない眷属など切り捨てられてしまうだろう。
だが、これまで花嫁に会ったことがない眷属にはそれがわからない。
『白雲! 白虎様はいったいどうなされたのだ』
『四神にとって花嫁は一人しかおらぬと伝えたはずだ。人から神の花嫁として嫁がれたのだ。少しでも心地いい場所にいたいと思われるのはおかしいことではない』
『白雲は花嫁の肩を持つというのか?』
『そうではない。事実を述べたまでだ』
白虎の眷属は頭が固いわけではない。ただ、自分たちが盲目であるが故に花嫁もそうだろうと思い込んでいたのだった。
『白虎様にとって花嫁は一人だが、花嫁にとって伴侶は四柱いるのだぞ。四神はみな素晴らしい。優劣など花嫁にはつけられぬ。ならば優劣がつけられるところはどこであろうな?』
そこまで言われて、眷属たちははっとしたようだった。
『……厨師の派遣はできるだろうか』
『おそらく許可を取っている最中であろう。時期がくれば白虎様から声がかかる』
『あいわかった。そのように厨師には伝えておこう』
『頼んだぞ』
話を終えて、白雲は庭園を散策している白虎と花嫁の元へ向かった。
* *
庭園の四阿で、香子は用意されたお茶を啜っていた。
白虎の膝の上である。行儀が悪いとは思ったが、香子は足をぶらぶらさせた。
ずっと地に足を付けていないとなんとなく足がだるくなってくるような気がする。今の香子の身体は神に近くなっているので足がだるくなるようなことは決してないのだが、あくまで気分である。
『香子、如何した?』
『ずっと地に足を付けていないというのが不思議だなぁと思いまして』
『我が運ぶ故、問題はなかろう』
『……そういう話じゃないんですよー』
四神は花嫁を片時も放したくないし、できることならばずっと床で共に過ごしたいと思っていることを香子は知っている。だから香子を抱き上げて運ぶということも容認しているのだ。本当は今でも香子は慣れないだけれど。
『……四神宮に戻ったら少し歩きたいです』
『……あまり歩かせたくはないが』
『何度も言ってますけど、歩き方を忘れてしまいそうで嫌なんですよー』
『忘れてしまえばいいだろう』
白虎が本気で言っていることがわかるから、香子は苦笑してしまう。それぐらい四神にとって花嫁は大事で、閉じ込めておきたい存在なのだ。
こんな状態で誰かの領地に移った際、香子はその地で歩くことができるのだろうかと疑問に思った。
だが口には出さない。白虎の眷属は白虎のことを好きすぎると香子は認識した。例えば、という話をしたとして、ここに香子がもう移ってくると思い込んでしまうかもしれない。そして他の神の話をするのもNGだ。
(眷属も、白虎様の気質を受け継いでいるのかな……)
今は穏やかに香子を撫でている白虎だが、他の神に嫉妬するし、香子への独占欲も強いのだ。そこは三神とは違うところである。
正直香子としても、己がここまで気を遣う必要があるかどうか疑問であった。
(まぁでも、このタイミングでこちらの視察に来てよかったかも)
眷属の気質も違うことがわかってよかったと香子は思う。庭園から見える景色は本当に美しい。高い山々の上の方は白くなっている。あれは万年雪だろうか。
白虎に頼んだら、あの雪のあるところまで連れて行ってもらえるだろうかと香子はぼんやり思った。
そして、どのタイミングで頼めるかとも考える。
今頼んでいいものかどうか、香子も考えてしまうのだ。
『香子?』
『あ……いえ、山の上の方はどうなっているのかなって……』
『どれ、連れて行ってやろう』
『いえ、今でなくても……』
『次にここに来る機会はなかなかなかろうて』
それはそうなんだけど、と香子が思う間に白虎は本性を現わした。
『では参ろうぞ』
どういう原理ですでに香子が白虎の背の上に乗っているのか、香子にはわからなかったが慌てて白虎の背に伏せた。
『昼前にはお戻りください』
『わかった』
白雲にそう言われて白虎が返事をする。白風はおろおろしているようだった。それに香子はちょっと悪いことをしたと思う。
でも高い山のてっぺんに連れて行ってもらえると思ったら、わくわくしてきた。
『行ってきます』
白雲と白風にそう声をかけた時、香子の身体はもう白虎の館からは出てしまっていた。もふもふの白い毛並みに包まれているからなのか、風も全く冷たいとは感じない。あの山は何mあるのだろうと、香子はわくわくしてきた。
『わぁ……』
そうして、香子は白虎と共に風になったのだった。
『昼食は召し上がられずに四神宮に戻るとおっしゃるのか』
『これはゆゆしきこと』
『厨師は何をしているのか』
白虎と香子が庭園を白風に案内してもらっている間、白雲は少し席を外し、眷属たちが集まっている場所へ顔を出した。
『……まだかようなことを言っているのか』
白雲はため息をついた。
眷属はその神が一番である故に、花嫁を尊重しないきらいがある。だが仕えている神にとって花嫁が至上の存在となるのだ。花嫁を大事にできない眷属など切り捨てられてしまうだろう。
だが、これまで花嫁に会ったことがない眷属にはそれがわからない。
『白雲! 白虎様はいったいどうなされたのだ』
『四神にとって花嫁は一人しかおらぬと伝えたはずだ。人から神の花嫁として嫁がれたのだ。少しでも心地いい場所にいたいと思われるのはおかしいことではない』
『白雲は花嫁の肩を持つというのか?』
『そうではない。事実を述べたまでだ』
白虎の眷属は頭が固いわけではない。ただ、自分たちが盲目であるが故に花嫁もそうだろうと思い込んでいたのだった。
『白虎様にとって花嫁は一人だが、花嫁にとって伴侶は四柱いるのだぞ。四神はみな素晴らしい。優劣など花嫁にはつけられぬ。ならば優劣がつけられるところはどこであろうな?』
そこまで言われて、眷属たちははっとしたようだった。
『……厨師の派遣はできるだろうか』
『おそらく許可を取っている最中であろう。時期がくれば白虎様から声がかかる』
『あいわかった。そのように厨師には伝えておこう』
『頼んだぞ』
話を終えて、白雲は庭園を散策している白虎と花嫁の元へ向かった。
* *
庭園の四阿で、香子は用意されたお茶を啜っていた。
白虎の膝の上である。行儀が悪いとは思ったが、香子は足をぶらぶらさせた。
ずっと地に足を付けていないとなんとなく足がだるくなってくるような気がする。今の香子の身体は神に近くなっているので足がだるくなるようなことは決してないのだが、あくまで気分である。
『香子、如何した?』
『ずっと地に足を付けていないというのが不思議だなぁと思いまして』
『我が運ぶ故、問題はなかろう』
『……そういう話じゃないんですよー』
四神は花嫁を片時も放したくないし、できることならばずっと床で共に過ごしたいと思っていることを香子は知っている。だから香子を抱き上げて運ぶということも容認しているのだ。本当は今でも香子は慣れないだけれど。
『……四神宮に戻ったら少し歩きたいです』
『……あまり歩かせたくはないが』
『何度も言ってますけど、歩き方を忘れてしまいそうで嫌なんですよー』
『忘れてしまえばいいだろう』
白虎が本気で言っていることがわかるから、香子は苦笑してしまう。それぐらい四神にとって花嫁は大事で、閉じ込めておきたい存在なのだ。
こんな状態で誰かの領地に移った際、香子はその地で歩くことができるのだろうかと疑問に思った。
だが口には出さない。白虎の眷属は白虎のことを好きすぎると香子は認識した。例えば、という話をしたとして、ここに香子がもう移ってくると思い込んでしまうかもしれない。そして他の神の話をするのもNGだ。
(眷属も、白虎様の気質を受け継いでいるのかな……)
今は穏やかに香子を撫でている白虎だが、他の神に嫉妬するし、香子への独占欲も強いのだ。そこは三神とは違うところである。
正直香子としても、己がここまで気を遣う必要があるかどうか疑問であった。
(まぁでも、このタイミングでこちらの視察に来てよかったかも)
眷属の気質も違うことがわかってよかったと香子は思う。庭園から見える景色は本当に美しい。高い山々の上の方は白くなっている。あれは万年雪だろうか。
白虎に頼んだら、あの雪のあるところまで連れて行ってもらえるだろうかと香子はぼんやり思った。
そして、どのタイミングで頼めるかとも考える。
今頼んでいいものかどうか、香子も考えてしまうのだ。
『香子?』
『あ……いえ、山の上の方はどうなっているのかなって……』
『どれ、連れて行ってやろう』
『いえ、今でなくても……』
『次にここに来る機会はなかなかなかろうて』
それはそうなんだけど、と香子が思う間に白虎は本性を現わした。
『では参ろうぞ』
どういう原理ですでに香子が白虎の背の上に乗っているのか、香子にはわからなかったが慌てて白虎の背に伏せた。
『昼前にはお戻りください』
『わかった』
白雲にそう言われて白虎が返事をする。白風はおろおろしているようだった。それに香子はちょっと悪いことをしたと思う。
でも高い山のてっぺんに連れて行ってもらえると思ったら、わくわくしてきた。
『行ってきます』
白雲と白風にそう声をかけた時、香子の身体はもう白虎の館からは出てしまっていた。もふもふの白い毛並みに包まれているからなのか、風も全く冷たいとは感じない。あの山は何mあるのだろうと、香子はわくわくしてきた。
『わぁ……』
そうして、香子は白虎と共に風になったのだった。
237
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる