異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
562 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました

110.眷属たちの認識と花嫁の思い(前半白雲視点)

しおりを挟む
 白風は比較的すんなり納得したが、他の白虎の眷属たちは違った。

『昼食は召し上がられずに四神宮に戻るとおっしゃるのか』
『これはゆゆしきこと』
厨師コックは何をしているのか』

 白虎と香子が庭園を白風に案内してもらっている間、白雲は少し席を外し、眷属たちが集まっている場所へ顔を出した。

『……まだかようなことを言っているのか』

 白雲はため息をついた。
 眷属はその神が一番である故に、花嫁を尊重しないきらいがある。だが仕えている神にとって花嫁が至上の存在となるのだ。花嫁を大事にできない眷属など切り捨てられてしまうだろう。
 だが、これまで花嫁に会ったことがない眷属にはそれがわからない。

『白雲! 白虎様はいったいどうなされたのだ』
『四神にとって花嫁は一人しかおらぬと伝えたはずだ。人から神の花嫁として嫁がれたのだ。少しでも心地いい場所にいたいと思われるのはおかしいことではない』
『白雲は花嫁の肩を持つというのか?』
『そうではない。事実を述べたまでだ』

 白虎の眷属は頭が固いわけではない。ただ、自分たちが盲目であるが故に花嫁もそうだろうと思い込んでいたのだった。

『白虎様にとって花嫁は一人だが、花嫁にとって伴侶は四柱いるのだぞ。四神はみな素晴らしい。優劣など花嫁にはつけられぬ。ならば優劣がつけられるところはどこであろうな?』

 そこまで言われて、眷属たちははっとしたようだった。

『……厨師の派遣はできるだろうか』
『おそらく許可を取っている最中であろう。時期がくれば白虎様から声がかかる』
『あいわかった。そのように厨師には伝えておこう』
『頼んだぞ』

 話を終えて、白雲は庭園を散策している白虎と花嫁の元へ向かった。


 *  *


 庭園の四阿で、香子は用意されたお茶を啜っていた。
 白虎の膝の上である。行儀が悪いとは思ったが、香子は足をぶらぶらさせた。
 ずっと地に足を付けていないとなんとなく足がだるくなってくるような気がする。今の香子の身体は神に近くなっているので足がだるくなるようなことは決してないのだが、あくまで気分である。

香子シャンズ、如何した?』
『ずっと地に足を付けていないというのが不思議だなぁと思いまして』
『我が運ぶ故、問題はなかろう』
『……そういう話じゃないんですよー』

 四神は花嫁を片時も放したくないし、できることならばずっとベッドで共に過ごしたいと思っていることを香子は知っている。だから香子を抱き上げて運ぶということも容認しているのだ。本当は今でも香子は慣れないだけれど。

『……四神宮に戻ったら少し歩きたいです』
『……あまり歩かせたくはないが』
『何度も言ってますけど、歩き方を忘れてしまいそうで嫌なんですよー』
『忘れてしまえばいいだろう』

 白虎が本気で言っていることがわかるから、香子は苦笑してしまう。それぐらい四神にとって花嫁は大事で、閉じ込めておきたい存在なのだ。
 こんな状態で誰かの領地に移った際、香子はその地で歩くことができるのだろうかと疑問に思った。
 だが口には出さない。白虎の眷属は白虎のことを好きすぎると香子は認識した。例えば、という話をしたとして、ここに香子がもう移ってくると思い込んでしまうかもしれない。そして他の神の話をするのもNGだ。

(眷属も、白虎様の気質を受け継いでいるのかな……)

 今は穏やかに香子を撫でている白虎だが、他の神に嫉妬するし、香子への独占欲も強いのだ。そこは三神とは違うところである。
 正直香子としても、己がここまで気を遣う必要があるかどうか疑問であった。

(まぁでも、このタイミングでこちらの視察に来てよかったかも)

 眷属の気質も違うことがわかってよかったと香子は思う。庭園から見える景色は本当に美しい。高い山々の上の方は白くなっている。あれは万年雪だろうか。
 白虎に頼んだら、あの雪のあるところまで連れて行ってもらえるだろうかと香子はぼんやり思った。
 そして、どのタイミングで頼めるかとも考える。
 今頼んでいいものかどうか、香子も考えてしまうのだ。

『香子?』
『あ……いえ、山の上の方はどうなっているのかなって……』
『どれ、連れて行ってやろう』
『いえ、今でなくても……』
『次にここに来る機会はなかなかなかろうて』

 それはそうなんだけど、と香子が思う間に白虎は本性を現わした。

『では参ろうぞ』

 どういう原理ですでに香子が白虎の背の上に乗っているのか、香子にはわからなかったが慌てて白虎の背に伏せた。

『昼前にはお戻りください』
『わかった』

 白雲にそう言われて白虎が返事をする。白風はおろおろしているようだった。それに香子はちょっと悪いことをしたと思う。
 でも高い山のてっぺんに連れて行ってもらえると思ったら、わくわくしてきた。

『行ってきます』

 白雲と白風にそう声をかけた時、香子の身体はもう白虎の館からは出てしまっていた。もふもふの白い毛並みに包まれているからなのか、風も全く冷たいとは感じない。あの山は何mあるのだろうと、香子はわくわくしてきた。

『わぁ……』

 そうして、香子は白虎と共に風になったのだった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...