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第4部 四神を愛しなさいと言われました
132.それを言われたら弱いのです
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『此度は我をお連れください』
珍しく黒月にずずいっと詰められて、香子はこくこくと頷いた。
香子の部屋である。
玄武の領地に向かうので、香子は最初から黒月も一緒に連れていくつもりでいた。
黒月は玄武の眷属なので基本表情はほとんど動かないのだが、今回はすごい顔をしていると香子は思った。なんというか、真剣である。
『……ええ、もちろん。黒月も一緒に来てもらいたいわ』
そう香子が応えると、黒月はあからさまにほっとしたようだった。そういえば、と香子は思う。
『黒月は親御さんのところへはこの一年帰っていないのかしら?』
『はい、戻っておりません』
黒月はそれがどうかしたのかと不思議そうに答えた。表情は動かないまでも、そういう雰囲気は香子にもわかるようになっている。
『じゃあ、親御さんは寂しいのではなくて?』
『そんなことはありません』
黒月はきっぱりと答える。
『そうかしら?』
眷属の成人は五十歳だと香子は聞いている。まだ黒月は四十歳ぐらいなので、未成年である。見た目は成人しているようだが、その実未熟であることに変わりはない。ただ、それを香子が指摘してもしょうがないので首を傾げるだけに留めた。
それよりも今日は青龍と過ごす日だ。
昨日は白虎と過ごしてしまっただけでなく、昼間からいたしてしまったのでどうなるのだろうと香子は内心震えていた。
『香子』
そんなことを考えていたからか、青龍が迎えにきた。
黒月はそっと脇に避けた。
『青龍様』
青龍は長椅子に腰掛けている香子を当たり前のように抱き上げた。そして香子を横抱きにしたまま長椅子に腰掛ける。侍女がお茶の準備を始めた。
青龍はじっと香子を見つめた。香子はきょとんとして、青龍を見返した。
『……何ぞかくばかり愛しいのか』
青龍は香子を抱き込むようにすると、そう呟いた。香子は頬が熱くなるのを感じた。
『青龍様、お茶を飲みましょう……』
『そうだな』
離してもらい、香子は青龍の膝の上でお茶を啜った。これで少しは落ち着くはずだと香子は思ったが、おなかには青龍の腕が回っているし、髪に青龍が何度も口づけているしで、いささか落ち着かない。最初の頃が嘘のようである。
(変わるものなのね……)
青龍の誤解が解けたとか、元々四神は花嫁を求めるものだとか要因はあるのだが、香子としては困るけれども望ましい変化だと思っている。困るのは、香子が恥ずかしいからだ。
お茶を一杯飲んで、香子は青龍の室へ連れて行かれた。それもまっすぐ寝室に。
『青、青龍様……』
香子は戸惑った。
予想はしていたが、香子としてもどうしたらいいのかわからないのである。青龍との交わりは非常に時間がかかるから、やはりそれ相応の準備をすることが望ましい。
『香子、だめか?』
床に下ろされて、縋るような目で見つめられると香子もうっと詰まる。だがここで流されると香子が後で泣くことになるのは間違いない。
『……触れるだけでしたら……』
『……白虎兄には許したであろう』
『……青龍様とでは……とても時間が……』
あんな激しい空腹に泣くのは香子としても嫌である。青龍は深くため息を吐いた。
『……これほどに欲しいと願ったのは香子だけだというのに……難しいものだ』
『青龍様はその……交わる時間を短くすることはできますか?』
『できぬな』
きっぱりと答えられて、香子は苦笑した。本能にかかる部分だからしかたないのだろう。
『でしたらやはり、準備をしてからでなければだめです』
『今宵はよいか』
『……みなさんに伝えてくださいね』
『ああ、香子……』
抱かれはしなかったが、香子は青龍に全身を愛でられた。
えっちしていることに変わりないじゃないかと、香子は涙をこぼした。
『明日は、無理か。明後日には我が領地へ向うとしよう』
夕飯の席で玄武が静かに言った。
『……はい、それでお願いします』
明日は……香子が目覚めるのは早くても夕方だ。それからこれでもかと夕飯を食べて、その後は玄武と朱雀に抱かれるというのもわかっている。もうこういうものだとわかっているので香子も動揺はしないが、それでも恥ずかしいことに変わりはない。
(結局、四神宮の人々に閨の状況を知られていることが恥ずかしいんだよね……)
きっとこれだけは誰の領地へ嫁いでも変わらないだろうと香子は思う。四神宮では女官や侍女が香子の状況を把握しているわけだが、それが誰かの領地へ向かえば眷属が把握するようになるだけである。
しかも四神と繋がりの深い眷属(四神と花嫁の間に生まれた眷属や、その眷属と眷属の間に生まれた眷属、第二世代ぐらいまで)は四神と花嫁の交わりによって精神が安定するらしい。そんなことは初耳だと香子は頭が痛くなるのを感じた。
白雲や紅夏、青藍は先代の四神と花嫁との間に生まれた眷属である。涼しい顔をしてはいるが、四神が花嫁を本気で手に入れようとするならば香子に対して容赦はしないだろう。
すでに結婚はしている。
けれど誰の領地に向かうのかは決めなければならない。
困ったなぁと香子は遠い目をしたくなったのだった。
珍しく黒月にずずいっと詰められて、香子はこくこくと頷いた。
香子の部屋である。
玄武の領地に向かうので、香子は最初から黒月も一緒に連れていくつもりでいた。
黒月は玄武の眷属なので基本表情はほとんど動かないのだが、今回はすごい顔をしていると香子は思った。なんというか、真剣である。
『……ええ、もちろん。黒月も一緒に来てもらいたいわ』
そう香子が応えると、黒月はあからさまにほっとしたようだった。そういえば、と香子は思う。
『黒月は親御さんのところへはこの一年帰っていないのかしら?』
『はい、戻っておりません』
黒月はそれがどうかしたのかと不思議そうに答えた。表情は動かないまでも、そういう雰囲気は香子にもわかるようになっている。
『じゃあ、親御さんは寂しいのではなくて?』
『そんなことはありません』
黒月はきっぱりと答える。
『そうかしら?』
眷属の成人は五十歳だと香子は聞いている。まだ黒月は四十歳ぐらいなので、未成年である。見た目は成人しているようだが、その実未熟であることに変わりはない。ただ、それを香子が指摘してもしょうがないので首を傾げるだけに留めた。
それよりも今日は青龍と過ごす日だ。
昨日は白虎と過ごしてしまっただけでなく、昼間からいたしてしまったのでどうなるのだろうと香子は内心震えていた。
『香子』
そんなことを考えていたからか、青龍が迎えにきた。
黒月はそっと脇に避けた。
『青龍様』
青龍は長椅子に腰掛けている香子を当たり前のように抱き上げた。そして香子を横抱きにしたまま長椅子に腰掛ける。侍女がお茶の準備を始めた。
青龍はじっと香子を見つめた。香子はきょとんとして、青龍を見返した。
『……何ぞかくばかり愛しいのか』
青龍は香子を抱き込むようにすると、そう呟いた。香子は頬が熱くなるのを感じた。
『青龍様、お茶を飲みましょう……』
『そうだな』
離してもらい、香子は青龍の膝の上でお茶を啜った。これで少しは落ち着くはずだと香子は思ったが、おなかには青龍の腕が回っているし、髪に青龍が何度も口づけているしで、いささか落ち着かない。最初の頃が嘘のようである。
(変わるものなのね……)
青龍の誤解が解けたとか、元々四神は花嫁を求めるものだとか要因はあるのだが、香子としては困るけれども望ましい変化だと思っている。困るのは、香子が恥ずかしいからだ。
お茶を一杯飲んで、香子は青龍の室へ連れて行かれた。それもまっすぐ寝室に。
『青、青龍様……』
香子は戸惑った。
予想はしていたが、香子としてもどうしたらいいのかわからないのである。青龍との交わりは非常に時間がかかるから、やはりそれ相応の準備をすることが望ましい。
『香子、だめか?』
床に下ろされて、縋るような目で見つめられると香子もうっと詰まる。だがここで流されると香子が後で泣くことになるのは間違いない。
『……触れるだけでしたら……』
『……白虎兄には許したであろう』
『……青龍様とでは……とても時間が……』
あんな激しい空腹に泣くのは香子としても嫌である。青龍は深くため息を吐いた。
『……これほどに欲しいと願ったのは香子だけだというのに……難しいものだ』
『青龍様はその……交わる時間を短くすることはできますか?』
『できぬな』
きっぱりと答えられて、香子は苦笑した。本能にかかる部分だからしかたないのだろう。
『でしたらやはり、準備をしてからでなければだめです』
『今宵はよいか』
『……みなさんに伝えてくださいね』
『ああ、香子……』
抱かれはしなかったが、香子は青龍に全身を愛でられた。
えっちしていることに変わりないじゃないかと、香子は涙をこぼした。
『明日は、無理か。明後日には我が領地へ向うとしよう』
夕飯の席で玄武が静かに言った。
『……はい、それでお願いします』
明日は……香子が目覚めるのは早くても夕方だ。それからこれでもかと夕飯を食べて、その後は玄武と朱雀に抱かれるというのもわかっている。もうこういうものだとわかっているので香子も動揺はしないが、それでも恥ずかしいことに変わりはない。
(結局、四神宮の人々に閨の状況を知られていることが恥ずかしいんだよね……)
きっとこれだけは誰の領地へ嫁いでも変わらないだろうと香子は思う。四神宮では女官や侍女が香子の状況を把握しているわけだが、それが誰かの領地へ向かえば眷属が把握するようになるだけである。
しかも四神と繋がりの深い眷属(四神と花嫁の間に生まれた眷属や、その眷属と眷属の間に生まれた眷属、第二世代ぐらいまで)は四神と花嫁の交わりによって精神が安定するらしい。そんなことは初耳だと香子は頭が痛くなるのを感じた。
白雲や紅夏、青藍は先代の四神と花嫁との間に生まれた眷属である。涼しい顔をしてはいるが、四神が花嫁を本気で手に入れようとするならば香子に対して容赦はしないだろう。
すでに結婚はしている。
けれど誰の領地に向かうのかは決めなければならない。
困ったなぁと香子は遠い目をしたくなったのだった。
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