599 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました
147.花嫁は欲張りなのです
しおりを挟む
『香子は我らに、ずっと共に生きていてほしいと言うのだな?』
『はい』
そんなこと当たり前ではないかと香子は思う。なんとなくそういうものだと流されてきてしまったが、香子から言わせれば夫が妻より先に亡くなるものだと疑わない方がおかしい。確かに女性の方が長生きするとは言われているが、そういうことではないのである。
確実に香子を先に置いて逝くなど、香子には耐えがたいことだった。
『私は人なんですよ。人の寿命はどんなに長くても百年ぐらいだと思っているんです。それなのに四神に嫁ぐことで寿命が約十倍増えるってなんなんですか? しかもそんなに私の寿命を伸ばしたあげく先に死ぬ? ふざけないでくださいよ!』
そう、香子はキレた。
四神が珍しく目を丸くする。
『いいですか、死ぬ時は四神も私もみ・ん・な一緒ですよ!』
『……そなたはほんに面白いな』
玄武が笑う。朱雀も楽しそうにこんなことを聞いた。
『天皇からの返事はどうする?』
『……たぶん、もういただきました。いろいろ操作されているようで気に食わないのですが!』
『……神に逆らおうとする者などそなたぐらいであろう』
『不敬ではあるが、そんなそなたが好ましい』
白虎と青龍が言いたいことを言っている。
『まぁそんなわけなので』
香子はコホンと咳払いをして言葉を切った。
『また一か月ぐらい四神宮で過ごしてから言います』
四神が目を見開いた。
『香子、そこは嫁ぐところを決める場面ではないのか?』
『香子は面白すぎるな』
『なんでこう斜め上なんだ? そこも魅力的だが』
『我が選ばれることはないだろうが、楽しみではある』
四神四様の反応に香子は苦笑した。
『だって』
『だって、なんだ?』
玄武が促す。
『……今どなたかの領地へ向かうと言ったら、このまま連れ去られてしまうでしょう?』
香子の頬が赤く染まった。
『そうだな』
『もちろん』
『ああ』
『間違いなく』
四神は香子の言葉に頷いた。香子がやっぱりという表情をする。
『……一年以上も四神宮でお世話になったのですから、みなさんにお別れの言葉ぐらい言いたいです。老仏爺にも、皇后にも』
『皇帝はそこに含まれないのだな』
朱雀が楽しそうに言う。
『……皇帝の顔なんか見たくもありません。そりゃあ皇帝の跡継ぎがいなかったらたいへんでしょうから、後宮に美女を沢山囲う理由は理解できます。ですが! 国母と言われる皇后をないがしろにしていい理由にはなりません! 皇后は尊重すべきです!』
『……人というのはわからぬな。別れてしまえばいいのではないか?』
本当に理解不能と言うように白虎が首を傾げる。
『それができないから皇帝が好き勝手やってるんでしょーが! 例えそこに愛がなかったとしても皇后は国母なんですから尊重しろと言ってるんです! それができないなら皇帝なんか止めちまえ! 国母を不幸にする男に国を治める資格なんかないです!』
怒りのままに香子はそう叫んだ。
『……殺せばいいか?』
それまで黙って聞いていた青龍が呟いた。
『だめです!』
香子は即答する。
『だが現皇帝にはこの国を治める資格はないのだろう?』
青龍は相変わらず真面目だと香子は苦笑した。
『それは私が言いたくて言っただけです。今は皇后との仲も多少改善しているようですし、しばらくは見守りたいと思います』
『そうか』
青龍は頷いてから、香子を見た。
『? なんですか?』
『我はそなたに選ばれることはないと確信している』
『……だからなんですか?』
それはそうだと香子も思ったが、今言うわけにはいかない。もし青龍が外れたとはっきりわかったら、残りの三神がうるさそうだからだった。
『その皇帝を見張る為にも、香子は当分四神宮にいた方がいいのではないか?』
青龍が楽しそうに答えた。
『あー……』
確かにそういう手もあるかと香子も思ってしまった。
『青龍よ』
『考えたな』
『我は構わぬ。香子は我の領地にはこぬであろうし』
玄武、朱雀の目が怖い。白虎は笑った。確かに今回白虎の領地に向かうという選択肢は香子の中にはない。だがここで暴露されてしまうと香子としてもやりにくいのだ。
『往生際が悪いな』
玄武が静かに呟いた。
ここで何が何でも香子が向かう先を特定しようとするのはいただけないと香子は思った。
『……言いませんよ。少なくとも、一か月後までは』
『そうか』
『ならば楽しみにしておこう。……今宵は我とも過ごしてくれるだろう?』
朱雀のテナーに色が混じり、香子は背がゾクッとした。香子の身体は間違いなく四神に陥落している。
『……玄武様と朱雀様は共に、でお願いします』
『せっかくの誘いだ』
『そうしよう』
白虎と青龍はスッと席を立つ。
『香子、明日は我と過ごしてくれ』
青龍が去り際にそう言い残した。
『我の番はなかなか来ぬのう』
白虎がため息混じりに呟く。
香子は朱雀の腕に抱き上げられた。
『……湯あみがしたいです』
『では共に参ろうか』
『……できれば別々がいいのですが……』
『それぐらい譲歩せよ』
『ええ……』
朱雀が香子の耳元で甘いテナーを奏でる。
『我らはずっと我慢しているのだぞ?』
『……はい……』
香子はいたたまれなくなって、どんどん熱くなる頬を両手で覆ったのだった。
『はい』
そんなこと当たり前ではないかと香子は思う。なんとなくそういうものだと流されてきてしまったが、香子から言わせれば夫が妻より先に亡くなるものだと疑わない方がおかしい。確かに女性の方が長生きするとは言われているが、そういうことではないのである。
確実に香子を先に置いて逝くなど、香子には耐えがたいことだった。
『私は人なんですよ。人の寿命はどんなに長くても百年ぐらいだと思っているんです。それなのに四神に嫁ぐことで寿命が約十倍増えるってなんなんですか? しかもそんなに私の寿命を伸ばしたあげく先に死ぬ? ふざけないでくださいよ!』
そう、香子はキレた。
四神が珍しく目を丸くする。
『いいですか、死ぬ時は四神も私もみ・ん・な一緒ですよ!』
『……そなたはほんに面白いな』
玄武が笑う。朱雀も楽しそうにこんなことを聞いた。
『天皇からの返事はどうする?』
『……たぶん、もういただきました。いろいろ操作されているようで気に食わないのですが!』
『……神に逆らおうとする者などそなたぐらいであろう』
『不敬ではあるが、そんなそなたが好ましい』
白虎と青龍が言いたいことを言っている。
『まぁそんなわけなので』
香子はコホンと咳払いをして言葉を切った。
『また一か月ぐらい四神宮で過ごしてから言います』
四神が目を見開いた。
『香子、そこは嫁ぐところを決める場面ではないのか?』
『香子は面白すぎるな』
『なんでこう斜め上なんだ? そこも魅力的だが』
『我が選ばれることはないだろうが、楽しみではある』
四神四様の反応に香子は苦笑した。
『だって』
『だって、なんだ?』
玄武が促す。
『……今どなたかの領地へ向かうと言ったら、このまま連れ去られてしまうでしょう?』
香子の頬が赤く染まった。
『そうだな』
『もちろん』
『ああ』
『間違いなく』
四神は香子の言葉に頷いた。香子がやっぱりという表情をする。
『……一年以上も四神宮でお世話になったのですから、みなさんにお別れの言葉ぐらい言いたいです。老仏爺にも、皇后にも』
『皇帝はそこに含まれないのだな』
朱雀が楽しそうに言う。
『……皇帝の顔なんか見たくもありません。そりゃあ皇帝の跡継ぎがいなかったらたいへんでしょうから、後宮に美女を沢山囲う理由は理解できます。ですが! 国母と言われる皇后をないがしろにしていい理由にはなりません! 皇后は尊重すべきです!』
『……人というのはわからぬな。別れてしまえばいいのではないか?』
本当に理解不能と言うように白虎が首を傾げる。
『それができないから皇帝が好き勝手やってるんでしょーが! 例えそこに愛がなかったとしても皇后は国母なんですから尊重しろと言ってるんです! それができないなら皇帝なんか止めちまえ! 国母を不幸にする男に国を治める資格なんかないです!』
怒りのままに香子はそう叫んだ。
『……殺せばいいか?』
それまで黙って聞いていた青龍が呟いた。
『だめです!』
香子は即答する。
『だが現皇帝にはこの国を治める資格はないのだろう?』
青龍は相変わらず真面目だと香子は苦笑した。
『それは私が言いたくて言っただけです。今は皇后との仲も多少改善しているようですし、しばらくは見守りたいと思います』
『そうか』
青龍は頷いてから、香子を見た。
『? なんですか?』
『我はそなたに選ばれることはないと確信している』
『……だからなんですか?』
それはそうだと香子も思ったが、今言うわけにはいかない。もし青龍が外れたとはっきりわかったら、残りの三神がうるさそうだからだった。
『その皇帝を見張る為にも、香子は当分四神宮にいた方がいいのではないか?』
青龍が楽しそうに答えた。
『あー……』
確かにそういう手もあるかと香子も思ってしまった。
『青龍よ』
『考えたな』
『我は構わぬ。香子は我の領地にはこぬであろうし』
玄武、朱雀の目が怖い。白虎は笑った。確かに今回白虎の領地に向かうという選択肢は香子の中にはない。だがここで暴露されてしまうと香子としてもやりにくいのだ。
『往生際が悪いな』
玄武が静かに呟いた。
ここで何が何でも香子が向かう先を特定しようとするのはいただけないと香子は思った。
『……言いませんよ。少なくとも、一か月後までは』
『そうか』
『ならば楽しみにしておこう。……今宵は我とも過ごしてくれるだろう?』
朱雀のテナーに色が混じり、香子は背がゾクッとした。香子の身体は間違いなく四神に陥落している。
『……玄武様と朱雀様は共に、でお願いします』
『せっかくの誘いだ』
『そうしよう』
白虎と青龍はスッと席を立つ。
『香子、明日は我と過ごしてくれ』
青龍が去り際にそう言い残した。
『我の番はなかなか来ぬのう』
白虎がため息混じりに呟く。
香子は朱雀の腕に抱き上げられた。
『……湯あみがしたいです』
『では共に参ろうか』
『……できれば別々がいいのですが……』
『それぐらい譲歩せよ』
『ええ……』
朱雀が香子の耳元で甘いテナーを奏でる。
『我らはずっと我慢しているのだぞ?』
『……はい……』
香子はいたたまれなくなって、どんどん熱くなる頬を両手で覆ったのだった。
238
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる