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第4部 四神を愛しなさいと言われました
147.花嫁は欲張りなのです
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『香子は我らに、ずっと共に生きていてほしいと言うのだな?』
『はい』
そんなこと当たり前ではないかと香子は思う。なんとなくそういうものだと流されてきてしまったが、香子から言わせれば夫が妻より先に亡くなるものだと疑わない方がおかしい。確かに女性の方が長生きするとは言われているが、そういうことではないのである。
確実に香子を先に置いて逝くなど、香子には耐えがたいことだった。
『私は人なんですよ。人の寿命はどんなに長くても百年ぐらいだと思っているんです。それなのに四神に嫁ぐことで寿命が約十倍増えるってなんなんですか? しかもそんなに私の寿命を伸ばしたあげく先に死ぬ? ふざけないでくださいよ!』
そう、香子はキレた。
四神が珍しく目を丸くする。
『いいですか、死ぬ時は四神も私もみ・ん・な一緒ですよ!』
『……そなたはほんに面白いな』
玄武が笑う。朱雀も楽しそうにこんなことを聞いた。
『天皇からの返事はどうする?』
『……たぶん、もういただきました。いろいろ操作されているようで気に食わないのですが!』
『……神に逆らおうとする者などそなたぐらいであろう』
『不敬ではあるが、そんなそなたが好ましい』
白虎と青龍が言いたいことを言っている。
『まぁそんなわけなので』
香子はコホンと咳払いをして言葉を切った。
『また一か月ぐらい四神宮で過ごしてから言います』
四神が目を見開いた。
『香子、そこは嫁ぐところを決める場面ではないのか?』
『香子は面白すぎるな』
『なんでこう斜め上なんだ? そこも魅力的だが』
『我が選ばれることはないだろうが、楽しみではある』
四神四様の反応に香子は苦笑した。
『だって』
『だって、なんだ?』
玄武が促す。
『……今どなたかの領地へ向かうと言ったら、このまま連れ去られてしまうでしょう?』
香子の頬が赤く染まった。
『そうだな』
『もちろん』
『ああ』
『間違いなく』
四神は香子の言葉に頷いた。香子がやっぱりという表情をする。
『……一年以上も四神宮でお世話になったのですから、みなさんにお別れの言葉ぐらい言いたいです。老仏爺にも、皇后にも』
『皇帝はそこに含まれないのだな』
朱雀が楽しそうに言う。
『……皇帝の顔なんか見たくもありません。そりゃあ皇帝の跡継ぎがいなかったらたいへんでしょうから、後宮に美女を沢山囲う理由は理解できます。ですが! 国母と言われる皇后をないがしろにしていい理由にはなりません! 皇后は尊重すべきです!』
『……人というのはわからぬな。別れてしまえばいいのではないか?』
本当に理解不能と言うように白虎が首を傾げる。
『それができないから皇帝が好き勝手やってるんでしょーが! 例えそこに愛がなかったとしても皇后は国母なんですから尊重しろと言ってるんです! それができないなら皇帝なんか止めちまえ! 国母を不幸にする男に国を治める資格なんかないです!』
怒りのままに香子はそう叫んだ。
『……殺せばいいか?』
それまで黙って聞いていた青龍が呟いた。
『だめです!』
香子は即答する。
『だが現皇帝にはこの国を治める資格はないのだろう?』
青龍は相変わらず真面目だと香子は苦笑した。
『それは私が言いたくて言っただけです。今は皇后との仲も多少改善しているようですし、しばらくは見守りたいと思います』
『そうか』
青龍は頷いてから、香子を見た。
『? なんですか?』
『我はそなたに選ばれることはないと確信している』
『……だからなんですか?』
それはそうだと香子も思ったが、今言うわけにはいかない。もし青龍が外れたとはっきりわかったら、残りの三神がうるさそうだからだった。
『その皇帝を見張る為にも、香子は当分四神宮にいた方がいいのではないか?』
青龍が楽しそうに答えた。
『あー……』
確かにそういう手もあるかと香子も思ってしまった。
『青龍よ』
『考えたな』
『我は構わぬ。香子は我の領地にはこぬであろうし』
玄武、朱雀の目が怖い。白虎は笑った。確かに今回白虎の領地に向かうという選択肢は香子の中にはない。だがここで暴露されてしまうと香子としてもやりにくいのだ。
『往生際が悪いな』
玄武が静かに呟いた。
ここで何が何でも香子が向かう先を特定しようとするのはいただけないと香子は思った。
『……言いませんよ。少なくとも、一か月後までは』
『そうか』
『ならば楽しみにしておこう。……今宵は我とも過ごしてくれるだろう?』
朱雀のテナーに色が混じり、香子は背がゾクッとした。香子の身体は間違いなく四神に陥落している。
『……玄武様と朱雀様は共に、でお願いします』
『せっかくの誘いだ』
『そうしよう』
白虎と青龍はスッと席を立つ。
『香子、明日は我と過ごしてくれ』
青龍が去り際にそう言い残した。
『我の番はなかなか来ぬのう』
白虎がため息混じりに呟く。
香子は朱雀の腕に抱き上げられた。
『……湯あみがしたいです』
『では共に参ろうか』
『……できれば別々がいいのですが……』
『それぐらい譲歩せよ』
『ええ……』
朱雀が香子の耳元で甘いテナーを奏でる。
『我らはずっと我慢しているのだぞ?』
『……はい……』
香子はいたたまれなくなって、どんどん熱くなる頬を両手で覆ったのだった。
『はい』
そんなこと当たり前ではないかと香子は思う。なんとなくそういうものだと流されてきてしまったが、香子から言わせれば夫が妻より先に亡くなるものだと疑わない方がおかしい。確かに女性の方が長生きするとは言われているが、そういうことではないのである。
確実に香子を先に置いて逝くなど、香子には耐えがたいことだった。
『私は人なんですよ。人の寿命はどんなに長くても百年ぐらいだと思っているんです。それなのに四神に嫁ぐことで寿命が約十倍増えるってなんなんですか? しかもそんなに私の寿命を伸ばしたあげく先に死ぬ? ふざけないでくださいよ!』
そう、香子はキレた。
四神が珍しく目を丸くする。
『いいですか、死ぬ時は四神も私もみ・ん・な一緒ですよ!』
『……そなたはほんに面白いな』
玄武が笑う。朱雀も楽しそうにこんなことを聞いた。
『天皇からの返事はどうする?』
『……たぶん、もういただきました。いろいろ操作されているようで気に食わないのですが!』
『……神に逆らおうとする者などそなたぐらいであろう』
『不敬ではあるが、そんなそなたが好ましい』
白虎と青龍が言いたいことを言っている。
『まぁそんなわけなので』
香子はコホンと咳払いをして言葉を切った。
『また一か月ぐらい四神宮で過ごしてから言います』
四神が目を見開いた。
『香子、そこは嫁ぐところを決める場面ではないのか?』
『香子は面白すぎるな』
『なんでこう斜め上なんだ? そこも魅力的だが』
『我が選ばれることはないだろうが、楽しみではある』
四神四様の反応に香子は苦笑した。
『だって』
『だって、なんだ?』
玄武が促す。
『……今どなたかの領地へ向かうと言ったら、このまま連れ去られてしまうでしょう?』
香子の頬が赤く染まった。
『そうだな』
『もちろん』
『ああ』
『間違いなく』
四神は香子の言葉に頷いた。香子がやっぱりという表情をする。
『……一年以上も四神宮でお世話になったのですから、みなさんにお別れの言葉ぐらい言いたいです。老仏爺にも、皇后にも』
『皇帝はそこに含まれないのだな』
朱雀が楽しそうに言う。
『……皇帝の顔なんか見たくもありません。そりゃあ皇帝の跡継ぎがいなかったらたいへんでしょうから、後宮に美女を沢山囲う理由は理解できます。ですが! 国母と言われる皇后をないがしろにしていい理由にはなりません! 皇后は尊重すべきです!』
『……人というのはわからぬな。別れてしまえばいいのではないか?』
本当に理解不能と言うように白虎が首を傾げる。
『それができないから皇帝が好き勝手やってるんでしょーが! 例えそこに愛がなかったとしても皇后は国母なんですから尊重しろと言ってるんです! それができないなら皇帝なんか止めちまえ! 国母を不幸にする男に国を治める資格なんかないです!』
怒りのままに香子はそう叫んだ。
『……殺せばいいか?』
それまで黙って聞いていた青龍が呟いた。
『だめです!』
香子は即答する。
『だが現皇帝にはこの国を治める資格はないのだろう?』
青龍は相変わらず真面目だと香子は苦笑した。
『それは私が言いたくて言っただけです。今は皇后との仲も多少改善しているようですし、しばらくは見守りたいと思います』
『そうか』
青龍は頷いてから、香子を見た。
『? なんですか?』
『我はそなたに選ばれることはないと確信している』
『……だからなんですか?』
それはそうだと香子も思ったが、今言うわけにはいかない。もし青龍が外れたとはっきりわかったら、残りの三神がうるさそうだからだった。
『その皇帝を見張る為にも、香子は当分四神宮にいた方がいいのではないか?』
青龍が楽しそうに答えた。
『あー……』
確かにそういう手もあるかと香子も思ってしまった。
『青龍よ』
『考えたな』
『我は構わぬ。香子は我の領地にはこぬであろうし』
玄武、朱雀の目が怖い。白虎は笑った。確かに今回白虎の領地に向かうという選択肢は香子の中にはない。だがここで暴露されてしまうと香子としてもやりにくいのだ。
『往生際が悪いな』
玄武が静かに呟いた。
ここで何が何でも香子が向かう先を特定しようとするのはいただけないと香子は思った。
『……言いませんよ。少なくとも、一か月後までは』
『そうか』
『ならば楽しみにしておこう。……今宵は我とも過ごしてくれるだろう?』
朱雀のテナーに色が混じり、香子は背がゾクッとした。香子の身体は間違いなく四神に陥落している。
『……玄武様と朱雀様は共に、でお願いします』
『せっかくの誘いだ』
『そうしよう』
白虎と青龍はスッと席を立つ。
『香子、明日は我と過ごしてくれ』
青龍が去り際にそう言い残した。
『我の番はなかなか来ぬのう』
白虎がため息混じりに呟く。
香子は朱雀の腕に抱き上げられた。
『……湯あみがしたいです』
『では共に参ろうか』
『……できれば別々がいいのですが……』
『それぐらい譲歩せよ』
『ええ……』
朱雀が香子の耳元で甘いテナーを奏でる。
『我らはずっと我慢しているのだぞ?』
『……はい……』
香子はいたたまれなくなって、どんどん熱くなる頬を両手で覆ったのだった。
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