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第4部 四神を愛しなさいと言われました
164.期日や基準があいまいで困るみたいです
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香子は白虎に抱き上げられ、四神宮の庭に連れて行かれた。
延夕玲は途中で侍女に会ったので、庭でのお茶の準備を言いつけた。
『花嫁様、此度は妾が給仕いたします』
『そう? ありがとう。よろしくね』
夕玲にそう言われて、香子は戸惑った。女官による給仕とはなんて贅沢、と思ってしまったのは内緒である。そんなことを言おうものならため息をついて説教されるに違いない。
(でもさー、でもさー、女官に傅かれるとか慣れないしさー……)
香子は内心言い訳をしながら、夕玲にお茶を淹れてもらった。今日のお茶は緑茶である。蘇州の有名なお茶で、碧螺春という。茶葉はくるんと巻いてあってかわいい。それにお湯を注げば普通の茶葉になる。
『おいしい……』
『何があった?』
石の椅子に腰掛けた白虎に聞かれ、香子は思わずお茶を噴きそうになった。
『……大したことはございません』
『そうか。それにしては白雲が随分と立腹していたようだが』
白虎は先ほど香子の部屋の中でされていた会話をしっかり聞いていた。それがはっきりとわかり、香子はちょっと性格が悪いと思った。
『……かようなこと、白虎様は気になさらないかと思っていましたわ』
『香子、いつも通りでいい。だがそのような物言いをするそなたも新鮮だ』
白虎はニヤリとした。その顔を見て、相変わらずかっこいいなぁと香子は思う。メンクイの香子からして、四神の顔は全て合格だし、そこに表情が乗ったらもうかなうわけがないのである。
『……まぁ、ちょっと大人げなかったとは思ってます』
『そなたが教えることではないがな。白雲には言っておこう』
『それは不要です。彼女もさすがに懲りたでしょう』
話しているのは白風のことだ。
『そういえば、彼女は成人しているのですか?』
『知らぬな』
白虎は即答した。聞いた私がバカだったと香子は反省した。白虎が眷属の歳なんて覚えているわけがない。ましてや白風など眼中にないだろう。それはそれで白風が可哀そうに思えてくるが、案外白風も気にはしていないかもしれない。
(四神と眷属の関係もわからないものだよね……)
香子は難しく考えすぎなのかもしれないが、頭で納得したいのだ。
風が少し吹いてきた。ちょうど心地いい風である。
四神宮内の気候は四神がいれば一定だが、何故か風だけは通してしまう不思議仕様だ。それで季節を感じられるのだからいいと香子は思っている。
当然ながら雨の影響も受けるが、北京は元々雨が少ないので香子が気にするほどでもない。
ぼうっとお茶を飲んでいると、白雲がやってきた。
そして夕玲の後ろに控える。香子はもう一杯お茶が飲みたいと思った。
『あとひと月もないのだな』
『……そこはもっと曖昧でもいいですけど』
香子もわざわざこの日! と決めているわけではない。香子としてはできるだけ長く四神宮に留まっていたいと思っているので、期限を決められるというのは些か居心地が悪かった。
『……我はかまわぬが、玄武兄と朱雀兄はこだわるだろう』
『えっ……』
香子は内心冷汗を掻いた。
『……なんのことでしょう?』
『そなたはわかりやすいな』
白虎はククッと喉の奥で笑った。
『……白虎様に触れたいです。可能ですか?』
『かまわぬ。だがその後は我にも触れさせよ』
『……うっ……』
香子は自分が触れられるのはまだ慣れない。けれどもふもふには抗えそうもなかった。
『お昼ごはんは食べたいです……』
『香子は相変わらず色気がないな』
白虎に笑われても、香子にとって食は重要なのだった。
(食欲とか、ごはんへの執着で私は助かっているのかもしれない)
白虎の室でとろとろに溶かされ、昼食だからと部屋に戻されて身支度を整えられながら香子はそんなことを思った。
今更といえば、しごく今更な話である。
『……どなたかの領地に行ってから、私、生きていられるかしら……』
とても小さな声でぼそりと呟いた声は、侍女たちが聞いていた。それで侍女たちをひどく心配させてしまうことになるとは香子は思ってもいなかった。
香子としては、朝昼晩とエロ同人のようなことになって、スライムみたいに溶けてしまうのではないかと心配になっただけである。自分もエロエロになったらどうしようとか、そんなことを考えていた。
無事お昼ご飯を食べた後、また白虎に抱き上げられた。
『食休みがしたいですー……』
『茶室か? 庭か?』
『庭で』
午後も庭でお茶をしながら、元の世界ではどう過ごしていたっけ? と香子はぼんやり考えた。
彼氏といた時は彼氏と話していたし、黙ってただ一緒にいた時もあった。それで居心地が悪いということはなかった。
ただし、ずっと彼氏と一緒にいたわけではないから一人時間はあった。本を読んだり、ネットサーフィンをしたりしていた。
『あ』
『香子、如何した?』
『白虎様は、歴史書って読めますか?』
白虎は眉を寄せた。それは不快というより、嫌そうなかんじであった。
『……かようなものを読んで如何する?』
『読みたいんですよ。私、歴史が好きなので』
香子はにっこりして伝える。
そうだ、と香子は思った。香子の歴史に対する愛を容認してくれることも必要だと。
延夕玲は途中で侍女に会ったので、庭でのお茶の準備を言いつけた。
『花嫁様、此度は妾が給仕いたします』
『そう? ありがとう。よろしくね』
夕玲にそう言われて、香子は戸惑った。女官による給仕とはなんて贅沢、と思ってしまったのは内緒である。そんなことを言おうものならため息をついて説教されるに違いない。
(でもさー、でもさー、女官に傅かれるとか慣れないしさー……)
香子は内心言い訳をしながら、夕玲にお茶を淹れてもらった。今日のお茶は緑茶である。蘇州の有名なお茶で、碧螺春という。茶葉はくるんと巻いてあってかわいい。それにお湯を注げば普通の茶葉になる。
『おいしい……』
『何があった?』
石の椅子に腰掛けた白虎に聞かれ、香子は思わずお茶を噴きそうになった。
『……大したことはございません』
『そうか。それにしては白雲が随分と立腹していたようだが』
白虎は先ほど香子の部屋の中でされていた会話をしっかり聞いていた。それがはっきりとわかり、香子はちょっと性格が悪いと思った。
『……かようなこと、白虎様は気になさらないかと思っていましたわ』
『香子、いつも通りでいい。だがそのような物言いをするそなたも新鮮だ』
白虎はニヤリとした。その顔を見て、相変わらずかっこいいなぁと香子は思う。メンクイの香子からして、四神の顔は全て合格だし、そこに表情が乗ったらもうかなうわけがないのである。
『……まぁ、ちょっと大人げなかったとは思ってます』
『そなたが教えることではないがな。白雲には言っておこう』
『それは不要です。彼女もさすがに懲りたでしょう』
話しているのは白風のことだ。
『そういえば、彼女は成人しているのですか?』
『知らぬな』
白虎は即答した。聞いた私がバカだったと香子は反省した。白虎が眷属の歳なんて覚えているわけがない。ましてや白風など眼中にないだろう。それはそれで白風が可哀そうに思えてくるが、案外白風も気にはしていないかもしれない。
(四神と眷属の関係もわからないものだよね……)
香子は難しく考えすぎなのかもしれないが、頭で納得したいのだ。
風が少し吹いてきた。ちょうど心地いい風である。
四神宮内の気候は四神がいれば一定だが、何故か風だけは通してしまう不思議仕様だ。それで季節を感じられるのだからいいと香子は思っている。
当然ながら雨の影響も受けるが、北京は元々雨が少ないので香子が気にするほどでもない。
ぼうっとお茶を飲んでいると、白雲がやってきた。
そして夕玲の後ろに控える。香子はもう一杯お茶が飲みたいと思った。
『あとひと月もないのだな』
『……そこはもっと曖昧でもいいですけど』
香子もわざわざこの日! と決めているわけではない。香子としてはできるだけ長く四神宮に留まっていたいと思っているので、期限を決められるというのは些か居心地が悪かった。
『……我はかまわぬが、玄武兄と朱雀兄はこだわるだろう』
『えっ……』
香子は内心冷汗を掻いた。
『……なんのことでしょう?』
『そなたはわかりやすいな』
白虎はククッと喉の奥で笑った。
『……白虎様に触れたいです。可能ですか?』
『かまわぬ。だがその後は我にも触れさせよ』
『……うっ……』
香子は自分が触れられるのはまだ慣れない。けれどもふもふには抗えそうもなかった。
『お昼ごはんは食べたいです……』
『香子は相変わらず色気がないな』
白虎に笑われても、香子にとって食は重要なのだった。
(食欲とか、ごはんへの執着で私は助かっているのかもしれない)
白虎の室でとろとろに溶かされ、昼食だからと部屋に戻されて身支度を整えられながら香子はそんなことを思った。
今更といえば、しごく今更な話である。
『……どなたかの領地に行ってから、私、生きていられるかしら……』
とても小さな声でぼそりと呟いた声は、侍女たちが聞いていた。それで侍女たちをひどく心配させてしまうことになるとは香子は思ってもいなかった。
香子としては、朝昼晩とエロ同人のようなことになって、スライムみたいに溶けてしまうのではないかと心配になっただけである。自分もエロエロになったらどうしようとか、そんなことを考えていた。
無事お昼ご飯を食べた後、また白虎に抱き上げられた。
『食休みがしたいですー……』
『茶室か? 庭か?』
『庭で』
午後も庭でお茶をしながら、元の世界ではどう過ごしていたっけ? と香子はぼんやり考えた。
彼氏といた時は彼氏と話していたし、黙ってただ一緒にいた時もあった。それで居心地が悪いということはなかった。
ただし、ずっと彼氏と一緒にいたわけではないから一人時間はあった。本を読んだり、ネットサーフィンをしたりしていた。
『あ』
『香子、如何した?』
『白虎様は、歴史書って読めますか?』
白虎は眉を寄せた。それは不快というより、嫌そうなかんじであった。
『……かようなものを読んで如何する?』
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そうだ、と香子は思った。香子の歴史に対する愛を容認してくれることも必要だと。
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