異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

163.根本がわかっていないとたいへんだと思います

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 四神が好きすぎてまず誰の領地に向かうか決められないとしたら、あとは四神の領地の環境がどれだけ香子の意に沿うかということが選択のポイントになってくるのではないかと香子は思う。
 それに四神が気づいてくれるわけはないので、部屋に戻ってから香子は呟くようにそんなことを言った。

『花嫁様は決めかねているのですね』

 それを延夕玲が引き取った。

『四神は魅力的だから』

 香子はあっけらかんと言う。葛藤は深かったが、もう四神に嫁いでいるのだからと香子は開き直っていた。
 開き直るまでの期間は非常に長かったが、それは香子にとって必要な時間であった。

『でもさー……いきなりこっちの世界に連れて来られて、四神と結婚とかありえないと思うのよね』
『……花嫁様は白虎様も厭うていらっしゃったのですか?』

 白風がたまらず香子に声をかけた。それに夕玲と楊芳芳がピクリと反応した。女官以外が部屋の主である香子に話しかけるなどあってはならないことだからだ。(黒月は守護なので別だし、身だしなみを整える時は侍女たちも聞かないと仕事にならないのでその際は夕玲が話しかけることを許可している)

『厭ってなんかいないわ。でも……私がいた世界……ではないわね。私の常識では、勝手に結婚相手を決められるなんてことはなかったのよ』

 世界規模で見たら、親が子の結婚相手を決めるところもあるだろうと香子は思い直した。日本でも家によってはそんなところもまだあるかもしれないと。

『勝手に決められたことに反発しただけで、白虎様は素敵な方だと思うわ』
『では……!』

 白風が身を乗り出すようにしたことに、香子は押し止めるように両手を前に出した。

『四神はみな素敵な方々なのよ』
『……そうでございますね』
『だから決められないって言ってるの。そうしたら後は環境が大事でしょ?』
『……厨師を派遣しております』

 白風が答える。白虎の眷属が四神宮の料理を習う為に来ていることは香子も知っている。香子は頷いた。

『……努力していることは知っているわ』
『でしたら……』
『でもね、他の領地の眷属は来ていないのよ。この意味がわかる?』

 白風は不思議そうな顔をした。夕玲がため息を吐き、『失礼しました』と礼をした。

『妾の教育不足でございます。たいへん申し訳ありません。教育し直します』
『……別にかまわないわ。あと一か月もここにはいないのだから』

 香子の突き放すような言葉に、白風はハッとした。このままでは香子が白虎の領地に来ないと気づいたのである。

『……たいへん申し訳ありません』
『それは何に対して謝っているの?』

 バッと平伏した白風に、香子は淡々と聞いた。
 白風は内心焦る。何が悪かったのか、白風は根本的なことを理解していない。
 白風は白虎の眷属であり、眷属の中でも少ない女性である。だから蝶よ花よと育てられてきた。そこは黒月と同様であったが、白風は眷属同士から生まれた子であった為、人を慈しむという考えが欠如していた。眷属の中でのみ暮らしてきたので、そもそも人に触れたことがほとんどなかったのである。
 それ故に、夕玲や楊のことを侮っていた。

『……わかりません』

 白風は正直に答えた。
 そういうところは嫌いではないと香子は思う。ここでごまかしたり言い訳をしたりしないのは美徳だと。
 とはいえ白風の行動によって香子が白虎の領地に行きたくないと思うのは自由である。

『以前も言ったと思うけど、夕玲や芳芳はこの部屋で私の次に身分が高いの。黒月は私の守護だから私と対等に口を利いてもかまわないわ。でも白風は私に仕えに来たんでしょう? だったら眷属だからとか関係なく、女官の言うことは聞かないといけないの。もうこれ以上私に説明させないでくれるかしら?』

 香子がこういうことを白風に説明したのは初めてであったが、部屋付きの侍女である紅児と林雪紅は内心震えていた。

『……たいへん申し訳……』
『もう謝らなくていいから。夕玲、芳芳、再教育よろしくね』

 香子はため息を吐いた。
 こういうことは香子の仕事ではないはずだと香子は思う。

『白虎様がいらっしゃいました』

 表から黒月の声がかかり、香子はゲッと思った。おそらく今の会話も聞かれていたのではないだろうかっと香子は冷汗をかいた。

(そういえば……今日は白虎様と昼間過ごすんだった……)

 環境うんぬんはともかくとして、白風に指導していたのは香子としてもどうかと思う。白虎はなんとも思わないだろうが、付き従っている白雲からの印象は悪くなるのではないかと香子は思った。
 紅児たちが扉を開けると、白虎と白雲が入ってきた。

香子シャンズ、参るぞ』
『はい、白虎様』

 香子は白虎を見てから、ちら、と白雲の様子を窺った。白雲の表情はいつも通りだったが、その眼差しは非常に冷たい。そしてその視線は白風に向けられていた。
 ハッとして白風を見れば、俯いていた。

『白虎様、花嫁様は庭へどうぞ。延、悪いが侍女に声をかけて白虎様を庭に案内してほしい。我はしばし席を外します』

 珍しく白雲にそう言われ、白虎は不思議そうだった。

『白虎様、先に庭でお茶をしましょう!』

 香子は慌てて言う。

『ではそうするか』

 白虎は嬉しそうに香子を抱き上げ、夕玲に案内されて(侍女は間に合わなかった)庭へ向かった。
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