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第4部 四神を愛しなさいと言われました
169.やっとなんとなくわかってきた気がする
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『……おなかすいたよぉ~……』
香子の目からぽろぽろと涙がこぼれた。青龍に抱かれ、力尽きるように寝て目覚めた後はいつもこうである。途中水分補給をされたり、果物を与えられたりしていることはなんとなく香子も覚えているのだが、それだけではとても足りない。
隣で香子の髪をいじっていた青龍は慌てたような表情をした。
その表情が見られただけでも香子の溜飲が下がる。しかし物理的な空腹には勝てなかった。
『伝えたぞ。しばし待て』
青龍はそう言うと、床から起き上がる気力もなく涙をこぼしている香子の口を吸った。
「んっ、んっ……」
舌を絡められれば、その唾液が甘露だと香子は啜った。それぐらい飢えている。一歩間違えば青龍の舌も食べてしまいそうだった。
そうしてしばらく口づけをしていた二人に、居間から青藍の声がかかった。それに香子がハッとし、やんわりと青龍の身体を押す。
青龍はそれに苦笑し、口づけを解いた。そして、
『もっとそなたの舌を堪能したかったのだが……残念だ』
と楽しそうに言う。香子がそれに反応する前に青龍はサッと香子の睡衣を軽く直すと、長袍で香子を包んで居間に運んだ。
香子の顔は真っ赤だった。
『もうっ……!』
香子は不満げに声を上げたが、居間の卓に並べられた前菜を見てすぐに機嫌を直した。
そして青龍に抱かれたまま長椅子に腰掛け、朝食を堪能した。
沢山食べて胃が落ち着いたので、香子はお茶を飲んで一息ついた。毎日の中華料理が香子の癒やしである。
『明日は張老師が来てくださるんでしたっけ……』
香子が四神宮にいる間はできるだけ来ると張錦飛は香子に約束した。三日に一度と考えると、もう九回もないのかと香子はため息を吐く。とはいえ香子が四神の誰かに嫁いだ後、張がその領地を訪れるというのも現実的ではない。
『そうであったか』
青龍は少し困ったような顔をした。香子は張に会う前は書の練習をしたがるから、それを煩わしく思ったのかもしれない。
『申し訳ありませんが、わがままを聞いてください』
『わがまま、か……』
青龍は笑んだ。それはほんの少し口角が上がった程度ではあったが、香子にはしっかり笑みの形をしているように見えた。
『香子は書の練習がしたいのだろう』
『はい』
『それに付き合うのを断ったらどうする?』
『そうですね……』
青龍の問いには特に切実さは感じられなかった。純粋な興味として聞いているのだということは香子にもわかる。これが以前であれば、何を聞いているんだと思ったかもしれないが四神はこういうものなのだ。
『そうしたら、付き合ってくれる方に声をかけます。玄武様は付き合っていただけそうですし』
『わかった。我が付き合おう』
『ありがとうございます』
香子は笑んだ。これで無事明日も青龍に付き合ってもらえるようだ。
青龍の腕に抱かれたまま部屋に戻る。部屋に足を踏み入れても青龍はなかなか香子を下ろしてくれようとはしなかった。
『青龍様?』
香子は小首を傾げた。
『そなたを連れて行きたい』
『だめですよ』
香子は笑んで即答した。連れて行かれるわけにはいかない。
『そなたはつれないな』
『流されないだけです』
流されて後悔するのはごめんだと香子は思う。後悔なんてしたら、己だけではなく四神も悲しい思いをするだろう。
青龍は香子の髪に口づけると、名残惜しそうに戻っていった。身体を四等分できれば……などと時折香子も思ってしまうのだが、そうしたところで選ぶ相手は変わらないに違いない。香子が香子であるかぎり。
侍女たちに衣裳だけでなく髪や顔を整えてもらいながら、香子はそんなことを思う。
全て準備ができたところで、香子は居間の長椅子でお茶を啜った。ほどなくして白虎が現れるはずである。
明日は張が来ると思った時、張が四神の領地を見てみたいと言っていたことを思い出した。さすがに四神に乗りたいとは言っていなかったはずである。さすがに四神の神官だからそんな不敬なことは言わないはずだ。
(張老師が四神の領地に来てくれて、書も歴史談義もしてくれるなら一つ解決するのに)
そんな自分本位なことを考えていたら、白虎が白雲を伴ってやってきた。途端に白風の目がキラキラと輝く。わかりやすいなと香子は思った。
『香子』
白虎は香子の手から茶杯を奪って飲み干すと、香子を抱き上げた。
『……まだ飲んでる途中だったのですが』
『我の室で飲めばよい』
『どうかなさいましたか?』
『そなたと過ごす時間が少ない』
白虎はそう拗ねたように言った。
『そう、かもしれませんね』
香子は白虎の分厚い胸板に頬をすり寄せた。先ほどまでは青龍の腕の中にいた。その時は青龍のことしか考えられなかったというのに、今はもう白虎を愛しいと思っている。それが香子としても違和感で、どうしたらいいものかと悩んでしまう。
花嫁だから四神に想いを寄せるのか、それとも香子の気が多いだけなのかわからないのが不安だった。
『四神宮を出てどなたかの領地に行ったとしても、会えないわけではないでしょう?』
『我は面倒だぞ』
言葉だけ聞けば、白虎が他の神の領地に向かうのが面倒と言っているみたいだ。だが香子は笑う。白虎は己の嫉妬心をよくわかっている。
『知っています』
挑むように言い、香子はそのまま白虎の室に運ばれた。とりあえずもふりたいという要求だけはしておいたのだった。
ーーーーー
毎回同じことのくり返しなんですが、作者がこういうの好きなんです。すみません
香子の目からぽろぽろと涙がこぼれた。青龍に抱かれ、力尽きるように寝て目覚めた後はいつもこうである。途中水分補給をされたり、果物を与えられたりしていることはなんとなく香子も覚えているのだが、それだけではとても足りない。
隣で香子の髪をいじっていた青龍は慌てたような表情をした。
その表情が見られただけでも香子の溜飲が下がる。しかし物理的な空腹には勝てなかった。
『伝えたぞ。しばし待て』
青龍はそう言うと、床から起き上がる気力もなく涙をこぼしている香子の口を吸った。
「んっ、んっ……」
舌を絡められれば、その唾液が甘露だと香子は啜った。それぐらい飢えている。一歩間違えば青龍の舌も食べてしまいそうだった。
そうしてしばらく口づけをしていた二人に、居間から青藍の声がかかった。それに香子がハッとし、やんわりと青龍の身体を押す。
青龍はそれに苦笑し、口づけを解いた。そして、
『もっとそなたの舌を堪能したかったのだが……残念だ』
と楽しそうに言う。香子がそれに反応する前に青龍はサッと香子の睡衣を軽く直すと、長袍で香子を包んで居間に運んだ。
香子の顔は真っ赤だった。
『もうっ……!』
香子は不満げに声を上げたが、居間の卓に並べられた前菜を見てすぐに機嫌を直した。
そして青龍に抱かれたまま長椅子に腰掛け、朝食を堪能した。
沢山食べて胃が落ち着いたので、香子はお茶を飲んで一息ついた。毎日の中華料理が香子の癒やしである。
『明日は張老師が来てくださるんでしたっけ……』
香子が四神宮にいる間はできるだけ来ると張錦飛は香子に約束した。三日に一度と考えると、もう九回もないのかと香子はため息を吐く。とはいえ香子が四神の誰かに嫁いだ後、張がその領地を訪れるというのも現実的ではない。
『そうであったか』
青龍は少し困ったような顔をした。香子は張に会う前は書の練習をしたがるから、それを煩わしく思ったのかもしれない。
『申し訳ありませんが、わがままを聞いてください』
『わがまま、か……』
青龍は笑んだ。それはほんの少し口角が上がった程度ではあったが、香子にはしっかり笑みの形をしているように見えた。
『香子は書の練習がしたいのだろう』
『はい』
『それに付き合うのを断ったらどうする?』
『そうですね……』
青龍の問いには特に切実さは感じられなかった。純粋な興味として聞いているのだということは香子にもわかる。これが以前であれば、何を聞いているんだと思ったかもしれないが四神はこういうものなのだ。
『そうしたら、付き合ってくれる方に声をかけます。玄武様は付き合っていただけそうですし』
『わかった。我が付き合おう』
『ありがとうございます』
香子は笑んだ。これで無事明日も青龍に付き合ってもらえるようだ。
青龍の腕に抱かれたまま部屋に戻る。部屋に足を踏み入れても青龍はなかなか香子を下ろしてくれようとはしなかった。
『青龍様?』
香子は小首を傾げた。
『そなたを連れて行きたい』
『だめですよ』
香子は笑んで即答した。連れて行かれるわけにはいかない。
『そなたはつれないな』
『流されないだけです』
流されて後悔するのはごめんだと香子は思う。後悔なんてしたら、己だけではなく四神も悲しい思いをするだろう。
青龍は香子の髪に口づけると、名残惜しそうに戻っていった。身体を四等分できれば……などと時折香子も思ってしまうのだが、そうしたところで選ぶ相手は変わらないに違いない。香子が香子であるかぎり。
侍女たちに衣裳だけでなく髪や顔を整えてもらいながら、香子はそんなことを思う。
全て準備ができたところで、香子は居間の長椅子でお茶を啜った。ほどなくして白虎が現れるはずである。
明日は張が来ると思った時、張が四神の領地を見てみたいと言っていたことを思い出した。さすがに四神に乗りたいとは言っていなかったはずである。さすがに四神の神官だからそんな不敬なことは言わないはずだ。
(張老師が四神の領地に来てくれて、書も歴史談義もしてくれるなら一つ解決するのに)
そんな自分本位なことを考えていたら、白虎が白雲を伴ってやってきた。途端に白風の目がキラキラと輝く。わかりやすいなと香子は思った。
『香子』
白虎は香子の手から茶杯を奪って飲み干すと、香子を抱き上げた。
『……まだ飲んでる途中だったのですが』
『我の室で飲めばよい』
『どうかなさいましたか?』
『そなたと過ごす時間が少ない』
白虎はそう拗ねたように言った。
『そう、かもしれませんね』
香子は白虎の分厚い胸板に頬をすり寄せた。先ほどまでは青龍の腕の中にいた。その時は青龍のことしか考えられなかったというのに、今はもう白虎を愛しいと思っている。それが香子としても違和感で、どうしたらいいものかと悩んでしまう。
花嫁だから四神に想いを寄せるのか、それとも香子の気が多いだけなのかわからないのが不安だった。
『四神宮を出てどなたかの領地に行ったとしても、会えないわけではないでしょう?』
『我は面倒だぞ』
言葉だけ聞けば、白虎が他の神の領地に向かうのが面倒と言っているみたいだ。だが香子は笑う。白虎は己の嫉妬心をよくわかっている。
『知っています』
挑むように言い、香子はそのまま白虎の室に運ばれた。とりあえずもふりたいという要求だけはしておいたのだった。
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毎回同じことのくり返しなんですが、作者がこういうの好きなんです。すみません
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