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第4部 四神を愛しなさいと言われました
176.誰のところへ嫁ぐのかなんて
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そうは言っても、香子が四神と共に四神宮を出て行きたい時に出て行くというのは現実的ではない。
食材の手配などもあるだろうし、女官や侍女たちのこともある。どうしたって出て行く時はいろいろ準備しておかないといけないのは確かだった。
とはいえ勝手にいろいろ決められるのは論外である。
みなで見送りのようなことは止めるようにと朱雀に言ってもらい、香子は四神宮に戻ってきた。
やはり皇帝は気に食わないと香子は改めて思う。
皇帝だから命令したことは全て通るというのが慣例かもしれないが、四神だけでなく香子もそのくくりからは外れた存在である。
そんなことより。
『朱雀様……』
『なんだ?』
何故香子は今朱雀の室で、お茶を飲んでいるのだろうかと疑問に思った。四神宮に戻ってきたのはいい。その場所が朱雀の室ということもおかしくはない。だが紅炎が当たり前のようにお茶を淹れ、朱雀は居間の長椅子に香子ごと腰掛けてしまった。
まだ昼食後の時間なので、日中は白虎か青龍と過ごすことになっているというのに。
だが、まぁいいかとも香子は思った。
香子と共にいたいのならば、二神がここに訪ねてくるだろう。
『なんでもないです』
香子はそう答えて、朱雀に笑んだ。香子の笑みを見て朱雀の目がスッと細められる。そして朱雀は香子の茶器を奪って卓に置き、香子の唇を塞いだ。
『……んっ……』
四神は挨拶のように香子に口づける。それが香子はまだ慣れないが、嫌ではない。香子はすぐに身体の力を抜き、朱雀に任せた。
肉厚の舌が香子の口腔内を辿る。上顎を舐められて、香子は震えた。
口腔内がこんなに感じるなんて、香子は四神に口づけられるまでは知らなかった。
口づけも性行為の経験もあったが、こんなに気持ちよくなることができるなんて知らなかったから、未だに香子は戸惑ってしまう。
『んっ……はぁ……』
やっと口づけから解放されて、香子は甘いため息をついた。
『……ずっと抱いていたい』
『えっ……?』
『そなたはもう我の妻であろう?』
『そうです、けど……』
そう香子が律儀に答えれば、朱雀は笑んだ。
『みながそなたを愛している。夜は離さぬぞ』
『……はい……』
『朱雀兄、香子をお返しください』
やってきたのは青龍だった。青龍の言葉に朱雀がクククと笑う。
『穏やかではないな』
『用件はもう済んだはずです』
青龍が食い下がるのは珍しいと香子は目を丸くした。
『ああ、我らは二十二日後にここを経つことになっているそうだ。もちろん香子次第ではあるがな』
『二十二日後、ですか』
先ほど青龍も聞いていたはずだが、改めて聞いて思うところがあったのだろう。
『でしたら尚のこと、我か白虎兄と過ごさせてもらいたい』
『……香子がそなたたちを選ぶとは思わぬのか?』
『望みは薄いかと』
(わかってるんだよねぇ……)
香子は自分がいちいち反応しても困るので、朱雀の胸に顔を埋めた。これならば表情は見られないだろう。そんな香子の髪を、朱雀は優しく撫でた。
『日中はそなたに譲ろう。夜は譲らぬぞ』
『今夜とは言いません。香子、明日の夜は如何か?』
『……他の方がよろしければ、かまいません』
聞かれるのも、それに答えるのも恥ずかしかったが香子はそう答えた。
『明日の夕飯は多めにしてもらえるよう、頼んでください』
『そうだな』
青龍が笑む。そして香子を朱雀から受け取った。朱雀の室を出ると、白虎の姿があった。
『今日は青龍か』
『はい』
青龍が満足そうに応える。
『ここにいられるのもあと少しか』
『そうですね』
白虎の呟きにも青龍が答えた。二神は香子に選ばれることがないと思っているようだった。香子はそれに反応するわけにもいかなくて、青龍の胸に頬を寄せた。いくら香子の考えは読めないと四神に言われているとしてもこんなに密着していたら想いは筒抜けではないかと香子は思う。
だが、人の想いなどままならないものだ。
『香子、そなたが誰に嫁いでも我はそなたを訪ねていくぞ』
『……はい』
『そうですね。……我も香子のいるところへ向かうだろう。そなたはすでに我らに嫁いでいるのだから』
『……以前の花嫁の時とは違うとおっしゃりたいのですか?』
香子はようやく口を開いた。
『ああ、香子はすでに我らに嫁いでいるのだから遠慮はいらぬだろう』
『それってどなたかの領地にみなさんが集まるということですかね?』
『そういうこともあるかもしれぬな』
白虎はニヤリとした。結婚とは、と香子も考えてしまう。
『それで領地の方に支障は出ないんですか?』
『何もないだろう』
白虎が即答した。青龍を窺うと、青龍は少しだけ考えるような顔をしたが、
『……ない、と思う』
と答える。そういえば玄武もずっと亀の姿で寝ていたようなことを眷属が言っていたのを香子は思い出した。
四神というのは存在しているだけでいいらしい。もちろん次代を作るという目的はあるけれども。
『……四神は存在しているだけでいいのですね』
『そういうことになるな。香子もそうだ。そなたも我らと共にあればいい』
青龍はそう言って優しく笑んだ。
本当にそうなのだろうと、香子の心にすとんと落ちた。だがそれはそれでどうなのかと香子は思ってしまうので、
『私のやりたいことができるなら、どなたのところに嫁いでもかまわないのですけれど』
そう笑って答えたのだった。
食材の手配などもあるだろうし、女官や侍女たちのこともある。どうしたって出て行く時はいろいろ準備しておかないといけないのは確かだった。
とはいえ勝手にいろいろ決められるのは論外である。
みなで見送りのようなことは止めるようにと朱雀に言ってもらい、香子は四神宮に戻ってきた。
やはり皇帝は気に食わないと香子は改めて思う。
皇帝だから命令したことは全て通るというのが慣例かもしれないが、四神だけでなく香子もそのくくりからは外れた存在である。
そんなことより。
『朱雀様……』
『なんだ?』
何故香子は今朱雀の室で、お茶を飲んでいるのだろうかと疑問に思った。四神宮に戻ってきたのはいい。その場所が朱雀の室ということもおかしくはない。だが紅炎が当たり前のようにお茶を淹れ、朱雀は居間の長椅子に香子ごと腰掛けてしまった。
まだ昼食後の時間なので、日中は白虎か青龍と過ごすことになっているというのに。
だが、まぁいいかとも香子は思った。
香子と共にいたいのならば、二神がここに訪ねてくるだろう。
『なんでもないです』
香子はそう答えて、朱雀に笑んだ。香子の笑みを見て朱雀の目がスッと細められる。そして朱雀は香子の茶器を奪って卓に置き、香子の唇を塞いだ。
『……んっ……』
四神は挨拶のように香子に口づける。それが香子はまだ慣れないが、嫌ではない。香子はすぐに身体の力を抜き、朱雀に任せた。
肉厚の舌が香子の口腔内を辿る。上顎を舐められて、香子は震えた。
口腔内がこんなに感じるなんて、香子は四神に口づけられるまでは知らなかった。
口づけも性行為の経験もあったが、こんなに気持ちよくなることができるなんて知らなかったから、未だに香子は戸惑ってしまう。
『んっ……はぁ……』
やっと口づけから解放されて、香子は甘いため息をついた。
『……ずっと抱いていたい』
『えっ……?』
『そなたはもう我の妻であろう?』
『そうです、けど……』
そう香子が律儀に答えれば、朱雀は笑んだ。
『みながそなたを愛している。夜は離さぬぞ』
『……はい……』
『朱雀兄、香子をお返しください』
やってきたのは青龍だった。青龍の言葉に朱雀がクククと笑う。
『穏やかではないな』
『用件はもう済んだはずです』
青龍が食い下がるのは珍しいと香子は目を丸くした。
『ああ、我らは二十二日後にここを経つことになっているそうだ。もちろん香子次第ではあるがな』
『二十二日後、ですか』
先ほど青龍も聞いていたはずだが、改めて聞いて思うところがあったのだろう。
『でしたら尚のこと、我か白虎兄と過ごさせてもらいたい』
『……香子がそなたたちを選ぶとは思わぬのか?』
『望みは薄いかと』
(わかってるんだよねぇ……)
香子は自分がいちいち反応しても困るので、朱雀の胸に顔を埋めた。これならば表情は見られないだろう。そんな香子の髪を、朱雀は優しく撫でた。
『日中はそなたに譲ろう。夜は譲らぬぞ』
『今夜とは言いません。香子、明日の夜は如何か?』
『……他の方がよろしければ、かまいません』
聞かれるのも、それに答えるのも恥ずかしかったが香子はそう答えた。
『明日の夕飯は多めにしてもらえるよう、頼んでください』
『そうだな』
青龍が笑む。そして香子を朱雀から受け取った。朱雀の室を出ると、白虎の姿があった。
『今日は青龍か』
『はい』
青龍が満足そうに応える。
『ここにいられるのもあと少しか』
『そうですね』
白虎の呟きにも青龍が答えた。二神は香子に選ばれることがないと思っているようだった。香子はそれに反応するわけにもいかなくて、青龍の胸に頬を寄せた。いくら香子の考えは読めないと四神に言われているとしてもこんなに密着していたら想いは筒抜けではないかと香子は思う。
だが、人の想いなどままならないものだ。
『香子、そなたが誰に嫁いでも我はそなたを訪ねていくぞ』
『……はい』
『そうですね。……我も香子のいるところへ向かうだろう。そなたはすでに我らに嫁いでいるのだから』
『……以前の花嫁の時とは違うとおっしゃりたいのですか?』
香子はようやく口を開いた。
『ああ、香子はすでに我らに嫁いでいるのだから遠慮はいらぬだろう』
『それってどなたかの領地にみなさんが集まるということですかね?』
『そういうこともあるかもしれぬな』
白虎はニヤリとした。結婚とは、と香子も考えてしまう。
『それで領地の方に支障は出ないんですか?』
『何もないだろう』
白虎が即答した。青龍を窺うと、青龍は少しだけ考えるような顔をしたが、
『……ない、と思う』
と答える。そういえば玄武もずっと亀の姿で寝ていたようなことを眷属が言っていたのを香子は思い出した。
四神というのは存在しているだけでいいらしい。もちろん次代を作るという目的はあるけれども。
『……四神は存在しているだけでいいのですね』
『そういうことになるな。香子もそうだ。そなたも我らと共にあればいい』
青龍はそう言って優しく笑んだ。
本当にそうなのだろうと、香子の心にすとんと落ちた。だがそれはそれでどうなのかと香子は思ってしまうので、
『私のやりたいことができるなら、どなたのところに嫁いでもかまわないのですけれど』
そう笑って答えたのだった。
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