異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

177.やりたいことはまだあります

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『ほう』

 青龍の目が楽しそうに細められた。

『そなたのやりたいことというと、この国の歴史を紐解くことであったか』
『はい』

 白虎はそれに嫌そうな顔をした。その素直さに香子はおかしくなってしまう。
 白虎のそういうところが香子は嫌いではない。わかりやすいのは時に困ることもあるが、それもまた愛しいと香子は思っている。

『歴史もそうですけど、国内を旅行したいとも思っています』
『この国をか?』

 白虎が反応した。

『はい、できれば自然の多い場所や、歴史に触れられる場所ですね。あと、ごはんがとても楽しみです』

 日本だってその土地その土地の食べ物があるのだ。この国はもっと広いのだから、香子は何が食べられるのかと楽しみでしかたない。元の世界の中国で、香子はいろいろなところへ行ったが更に行きたいと思っている。
 二神は苦笑した。

『そなたは食い気が強いな』

 白虎が呟く。香子は何を今更と思った。

『ええ、食べることは大好きですから。元の世界の、この国に留学してきた時、私……一生分の中華料理を食べつくして帰るって思ったんですよ』

 笑って言えば、『そなたらしいな』と返された。これは以前も話したように香子は思う。

『まだ全然食べつくしてませんけど』
『それならばよかった』

 青龍が笑む。

『なんで、いいんですか?』
『まだ食べたいものがあるのだろう?』
『そうですね。まだまだ食べたいです』

 毎日四神宮で中華料理のオンパレード状態だが、香子は飽きていない。元の世界でパッケージ旅行に参加した時は、最終日などは胃が疲れてとても食べられなかったのだがここではそんなこともない。
 香子の好物ばかり出してもらっているということもあるのだろうが、香子は四神宮の料理が好きだった。

香子シャンズ

 白虎に呼ばれ、香子は顔を上げた。

『明日は我と過ごすように』
『日中は白虎様と過ごしますね』
『夜は……青龍とか』
『はい』

 香子はうっすらと頬を染めた。そういう話をするのは本当に恥ずかしいのである。ここが朱雀の室の前の廊下ということもある。廊下は建物の外側にあるので、屋根があるだけでまんま外である。四神宮の中ではあるのだが、香子はこういうところでそういう話はしないでほしいと思った。
 白虎は無意識に俯いた香子の顔をそっと上げる。

『香子?』
『……そういう話は外でしないでほしいです……』
『……わかった』

 白虎はククッと喉を鳴らし、室へ戻る。香子もまた青龍に抱かれて青龍の室へ向かった。
 相変わらず白虎はデリカシーがない。

(豪快と言えば聞こえはいいのだけれど……)

 青龍の腕に抱かれたまま、香子は青龍の室でお茶を啜っていた。青龍もまたお茶を啜ったり、香子の頬を撫でたり、髪に触れたりする。たったこれだけの甘い時間を過ごすのも少しは慣れた。
 香子は四神宮を離れるまでにやりたいことを指を折って数える。
 張に書を習いたい。四神宮を離れる前にまた皇太后や皇后に会いたい。景山にも行きたい。

『景山にまた行きたいです』
『……北側にある山か』
『はい』

 香子は頷いた。

『私、あんまりあそこの中って見学してないんですよね』

 植物園も駆け足のような形でしか見ていない。あの頃は玄武や朱雀への想いを自覚して、見学どころではなかった。

『さすがに四神宮を離れたら、景山に来るわけにもいきませんよね』
『来ることはできようが……その為だけとなると難しいやもしれぬ』

 青龍は少し考えるようにして答えた。

『ですよね』

 誰かの領地に移動したら、おそらくベッドからしばらく出られない生活になることは想像に難くない。香子はそれも覚悟しているからこそ、四神宮から離れたくないとも思っている。
 香子からすれば、子どもを産むなんてまだ考えられないことだった。

『青龍様……その……子どもってそんなに生まれにくいものなんですか?』
『なんの話か』
『先代の花嫁も最初の眷属を産むまでに五十年かかったと聞きましたから』
『そのようだな』
『そんなに長い間抱き合わなければ妊娠しないものなんですか?』
『……それは我にはわからぬ。先代の花嫁と子を成したのは朱雀兄だけだからな』
『そうでしたね』

 その質問は朱雀にすべきだと香子も思った。

『聞いてみよう』
『いえ、後で自分で聞いてみます』

 香子は青龍に断った。今は青龍と過ごす時間なのだから青龍を優先すべきだと香子は思った。
 ただでさえ時間が足りない。想いを通い合わせる時間が。

(私が、というか……花嫁が四人いればよかったのに)

 だが花嫁が四人いたとして、香子が誰かに選ばれる保証もなかった。選ばれたとしても残り物のような扱いをされたかもしれない。そう思ったら、香子は悲しくなった。

『香子、如何した?』

 瞼に口づけられて、香子は青龍に寄り添った。

『いえ……ありもしない想像をして勝手に悲しくなってしまったんです』
『ほう?』
『話しませんよ?』
『そうか』

 青龍は香子を抱き上げて寝室へ向かった。

『青龍様、夕飯は……』
『呼ばれればそなたを放そう』
『……よろしくお願いします』

 いちいち言わなくてもと香子も思うのだが、言っておかないと危険だと香子の本能が叫ぶのだ。四神は花嫁が全てだからしかたない。
 それでも香子はごはんが食べられないのは嫌なのだった。
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