『偽りの檻の公女は、冷徹王子の寵愛で華麗に逆転ざまぁします~虐げられた私を救ったのは、私の真の婚約者でした~』

紅葉山参

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盟約の秘密と、輝くティアラ

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 婚約発表会の朝。リゼットは、緊張と興奮でほとんど眠れなかった。鏡台の前に座る彼女の周りには、王室専属の侍女たちが集まり、彼女を最高の公女へと仕上げていた。

 リゼットの髪は、絹糸のように艶やかに結い上げられ、顔には抑制の効いた上品な化粧が施された。そして、いよいよ、王室に代々伝わるダイヤモンドのティアラが、彼女の頭上に載せられる。

 そのティアラは、太陽の光を浴びて七色に輝き、リゼットの存在をさらに高貴なものにした。その重みが、過去の苦難を乗り越え、未来の王妃となる責任を彼女に感じさせた。

「リゼット様、準備が整いました。あとは、殿下のお迎えを待つばかりです」

 侍女長の言葉に、リゼットは深く息を吐いた。

(公爵家の使用人だった私が、今、この国の王子の婚約者として、皆の前に立つ。母様、見ていてください)

 彼女は、首元のペンダントをそっと握りしめた。

 
 そのとき、扉が開き、エドワード王子が入ってきた。彼は王室の最高礼服に身を包み、その威厳と美しさは、会場にいる誰をも圧倒するだろう。

 王子は、リゼットの姿を一目見るなり、目を細めた。

「完璧だ、リゼット。貴女は、このティアラに相応しい、唯一の女性だ」

 王子はリゼットに近づき、そっと手を差し出した。そして、彼は懐から、もう一つの小箱を取り出した。

「これは、私からの、婚約を記念する最後の贈りものだ」

 箱の中には、盟約のペンダントと全く同じ意匠で、細工されたブローチが入っていた。しかし、それはプラチナ製で、中央には希少な大きなブルーダイヤモンドが埋め込まれていた。

「これは、私が貴女のために作らせたものだ。貴女の母君の紋章と、私の王家の紋章を組み合わせた。貴女が、二つの血筋を結びつける存在であることの証だ」

「殿下……」

 リゼットは感動で言葉が出なかった。それは、彼女の母の血筋を公然と尊重し、彼女の存在を正式に王室の歴史に組み込む、王子からの愛の証だった。

 王子は、ブローチをリゼットのドレスの胸元に、丁寧に留めた。

「リゼット。貴女の強さ、貴女の優しさ、そして貴女の過去の全てが、私を動かした。貴女を愛している。そして、貴女を守り抜く」

 リゼットは、王子の瞳の奥に、揺るぎない愛の炎を見た。

「私も、殿下を愛しています。そして、王子の隣に立ち、この国を支えます」

 二人は強く抱き合い、愛を確認し合った。

 
 馬車は王宮の大広間へと到着した。会場は、前回の舞踏会よりもさらに豪華に装飾され、国内外の多くの貴族、外交官、そして王族たちが集まっていた。

 エドワード王子とリゼットが、手を取り合って大広間の扉をくぐると、会場のざわめきが一瞬で静まり返った。

 リゼットの放つ光は、息をのむほどだった。彼女は、王子の隣に立つ、威厳と気品に満ちた真の公女だった。

 王国の国王陛下が、壇上に立ち、厳かに言葉を始めた。

「本日、ここに、我が国の第二王子、エドワードと、古き盟約に基づき、隣国クロヴィス公国の血を引く公女、リゼットの婚約を発表する」

 国王の宣言に、会場は拍手喝采に包まれた。誰もが、虐げられた過去を持つ公女が、ついにその地位を取り戻したことを祝福した。

 そして、エドワード王子が壇上に立ち、リゼットの肩に手を置き、静かに語り始めた。

「貴族の皆様。そして、ここに集われた全ての人々に、もう一つの真実を伝えたい」

 会場の空気が、再び張り詰める。

「リゼット公女の母君は、公爵に嫁ぐ際、我が国との盟約を結んだ。それは、単に次代の王妃を定めるものではない。その盟約には、クロヴィス公国の王家に伝わる、ある『秘宝』が、王室に託されるという条項が記されていたのだ」

 王子はディアン騎士団長に目配せをした。ディアンが運んできたのは、厳重に封印された古い羊皮紙だった。

「この羊皮紙は、公爵家の隠し部屋から見つかったもので、リゼット公女の母君が最期に封印したものだ」

 王子は、羊皮紙を広げ、記された古語を読み上げた。

 それは、クロヴィス公国の王家が、代々受け継いできた「広大な未開の領地」と、そこに埋蔵された「膨大な量の資源」を、この国の王室との盟約を証として、リゼットを通じて譲渡するという内容だった。

「リゼット公女は、単なる王妃候補ではない。彼女は、我が国に、領土と資源という、測り知れない富をもたらす、真の『盟約の公女』なのだ」

 この真実が明かされると、会場のざわめきは最高潮に達した。リゼットの地位は、愛と血筋だけでなく、国家的な富をもたらすという、揺るぎないものとなったのだ。

 嫉妬の目を向けていた貴族たちも、リゼットの背後に存在する膨大な価値を知り、完全に沈黙した。彼女を蔑む者は、もう誰もいない。

 リゼットは、王子と視線を合わせた。王子の瞳には、「これで誰も文句は言えまい」という確信と、リゼットへの深い愛情が浮かんでいた。

 王子の隣で、リゼットは最高の笑顔を見せた。虐げられた過去は、全てこの瞬間の輝きのためにあった。彼女は、真の公女として、そして未来の王妃として、この国の歴史に名を刻んだのだ。
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