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不毛の地に咲く新たな絆
要塞化する楽園と、乙女の決意
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カシアン伯爵が土煙を上げて去っていった後、バルザムの村を包んでいたのは、かつてのような「静寂」ではありませんでした。 それは、嵐の前の静けさでありながら、どこか熱を帯びた、戦う者たちの決意に満ちた空気。
「奥様、あんな奴らに、私たちの『蒼の月草』を一株だって渡したくありません‼ 」
リリカが、まだ震える拳を握りしめながら、力強く叫びました。 彼女の瞳には、かつての怯えはなく、守るべき場所を見つけた戦士のような光が宿っています。 わたくし、ミーシアは、そんな彼女の肩を優しく抱き寄せました。
「ええ、リリカさん。わたくしたちがこの不毛の地に流した汗と涙を、あのような強欲な者たちに踏みにじらせるわけにはいきませんわ」
ラッシュ様は、カシアンが去った方向をじっと見つめていましたが、やがて村人たちの方を向き、声を張り上げました。
「皆、聞いてほしい‼ 帝都の魔の手は、再びこのバルザムへと伸びようとしている。奴らは武力をもって、私たちの実りを奪いに来るだろう。だが、私は誓う。このラッシュ・フォン・バルザム、命に代えてもこの村と、君たちの平穏を守り抜くと‼ 」
その宣言に、村人たちからは地鳴りのような歓声が上がりました。 しかし、歓声だけでは敵を防ぐことはできません。 わたくしたちはすぐに、家に戻って緊急会議を開くことにしました。
「ラッシュ様。正規軍が相手となれば、ただの鎌や鍬では対抗できませんわ。……わたくしに、一つ考えがあります」
わたくしは、冬の間に書き溜めていた「研究ノート」の最新ページを開きました。 そこには、蒼の月草とサフラス、そしていくつかの野草を組み合わせた「特殊な植物」の配合図が描かれていました。
「植物を使って……戦う、ということかい⁉ 」
ラッシュ様が驚いたように眉を上げました。 「ええ。わたくしたちの武器は剣や槍ではありません。このバルザムの大地が生み出す、生命の力そのものですわ……」
わたくしが提案したのは、村の周囲を「防衛植物の森」で囲むという計画でした。 例えば、サフラスの変種には、特定の振動に反応して強力な睡眠粉を発する性質を持つものがあります。 さらに、蒼の月草の粒子を応用すれば、侵入者の視界を狂わせる幻惑の霧を作り出すことも不可能ではありません。
「これなら、不必要な流血を避けつつ、敵の戦意を削ぐことができます。……リリカさん、あなたにも手伝ってもらいたいお仕事があるの」
「はい、奥様‼ 何でもお申し付けください‼ 」
リリカの役割は、村の子供たちを束ね、特定の薬草を「防衛拠点」となる場所に配置すること。 彼女の鋭い観察眼があれば、地形を活かした完璧な配置ができるはずです。
その夜から、わたくしたちの新たな闘いが始まりました。 キッチンは調合室へと変わり、ラッシュ様は男たちを率いて、村の境界に深い堀を掘り始めました。 それは単なる防壁ではなく、植物の根に栄養を行き渡らせるための「血管」でもあります。
「ミーシア、君は本当にバルザムの聖女だね……」
作業の合間、ラッシュ様がわたくしの手を取り、熱い視線を送ってくれました。 「君の知恵がなければ、私たちは今頃絶望に沈んでいただろう。君を妻にできたことは、私の人生で最大の誇りだ」
「ラッシュ様……。わたくしこそ、あなたという騎士がいたから、知恵を絞ることができたのですわ」
月明かりの下、わたくしたちは静かに見つめ合いました。 迫り来る帝都の軍勢。マカリスタ皇太子の執念。 けれど、愛する人と、信頼できる仲間、そしてこの大地があれば。 わたくしたちの楽園は、何者にも壊せない「要塞」へと進化していくのです……。
「奥様、あんな奴らに、私たちの『蒼の月草』を一株だって渡したくありません‼ 」
リリカが、まだ震える拳を握りしめながら、力強く叫びました。 彼女の瞳には、かつての怯えはなく、守るべき場所を見つけた戦士のような光が宿っています。 わたくし、ミーシアは、そんな彼女の肩を優しく抱き寄せました。
「ええ、リリカさん。わたくしたちがこの不毛の地に流した汗と涙を、あのような強欲な者たちに踏みにじらせるわけにはいきませんわ」
ラッシュ様は、カシアンが去った方向をじっと見つめていましたが、やがて村人たちの方を向き、声を張り上げました。
「皆、聞いてほしい‼ 帝都の魔の手は、再びこのバルザムへと伸びようとしている。奴らは武力をもって、私たちの実りを奪いに来るだろう。だが、私は誓う。このラッシュ・フォン・バルザム、命に代えてもこの村と、君たちの平穏を守り抜くと‼ 」
その宣言に、村人たちからは地鳴りのような歓声が上がりました。 しかし、歓声だけでは敵を防ぐことはできません。 わたくしたちはすぐに、家に戻って緊急会議を開くことにしました。
「ラッシュ様。正規軍が相手となれば、ただの鎌や鍬では対抗できませんわ。……わたくしに、一つ考えがあります」
わたくしは、冬の間に書き溜めていた「研究ノート」の最新ページを開きました。 そこには、蒼の月草とサフラス、そしていくつかの野草を組み合わせた「特殊な植物」の配合図が描かれていました。
「植物を使って……戦う、ということかい⁉ 」
ラッシュ様が驚いたように眉を上げました。 「ええ。わたくしたちの武器は剣や槍ではありません。このバルザムの大地が生み出す、生命の力そのものですわ……」
わたくしが提案したのは、村の周囲を「防衛植物の森」で囲むという計画でした。 例えば、サフラスの変種には、特定の振動に反応して強力な睡眠粉を発する性質を持つものがあります。 さらに、蒼の月草の粒子を応用すれば、侵入者の視界を狂わせる幻惑の霧を作り出すことも不可能ではありません。
「これなら、不必要な流血を避けつつ、敵の戦意を削ぐことができます。……リリカさん、あなたにも手伝ってもらいたいお仕事があるの」
「はい、奥様‼ 何でもお申し付けください‼ 」
リリカの役割は、村の子供たちを束ね、特定の薬草を「防衛拠点」となる場所に配置すること。 彼女の鋭い観察眼があれば、地形を活かした完璧な配置ができるはずです。
その夜から、わたくしたちの新たな闘いが始まりました。 キッチンは調合室へと変わり、ラッシュ様は男たちを率いて、村の境界に深い堀を掘り始めました。 それは単なる防壁ではなく、植物の根に栄養を行き渡らせるための「血管」でもあります。
「ミーシア、君は本当にバルザムの聖女だね……」
作業の合間、ラッシュ様がわたくしの手を取り、熱い視線を送ってくれました。 「君の知恵がなければ、私たちは今頃絶望に沈んでいただろう。君を妻にできたことは、私の人生で最大の誇りだ」
「ラッシュ様……。わたくしこそ、あなたという騎士がいたから、知恵を絞ることができたのですわ」
月明かりの下、わたくしたちは静かに見つめ合いました。 迫り来る帝都の軍勢。マカリスタ皇太子の執念。 けれど、愛する人と、信頼できる仲間、そしてこの大地があれば。 わたくしたちの楽園は、何者にも壊せない「要塞」へと進化していくのです……。
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