20 / 53
不毛の地に咲く新たな絆
乙女の休息と、深まる溺愛の夜
しおりを挟む
防衛準備が進む中、バルザムの村には奇妙な「連帯感」が生まれていました。 以前はよそよそしかった村の婦人たちも、今ではわたくしを「奥様」と慕い、リリカと共に薬草の加工を手伝ってくれています。
「奥様、このハーブの根、これでよろしいでしょうか⁉ 」
「ええ、完璧ですわ、マーサさん。それを細かく刻んで、サフラスの油に漬け込んでくださいね」
笑い声が絶えない作業場。 帝都の冷酷な社交界では考えられない、温かな共同体の姿がそこにありました。 けれど、連日の激務は、わたくしたちの体力を確実に削っていきます。
特にリリカは、自分の過去を振り払うかのように、寝る間も惜しんで働いていました。 夕暮れ時、ふと見ると、彼女が資料の束を抱えたまま、テラスの椅子でうたた寝をしているのを見つけました。
「……ふふ、頑張りすぎよ、リリカさん」
わたくしはそっと毛布をかけようとしましたが、その時、彼女が小さく「……おかあさん……」と寝言を漏らしたのです。 その幼い声に、胸が締め付けられるような思いがしました。 彼女が背負ってきた孤独と苦しみ。それを癒やすことができるのは、もうわたくしたちしかいないのだと。
そこへ、一日の作業を終えたラッシュ様が戻ってきました。 泥に汚れながらも、その瞳には充実感と、わたくしへの深い愛情が溢れています。
「リリカは眠ってしまったのか。本当に、よくやってくれているね」
「ええ……。この子には、これからたくさんの幸せを経験させてあげたいですわ」
わたくしたちは、リリカを起こさないように静かに家の中へと入りました。 室内には、暖炉の火がパチパチとはぜる音と、サフラスの心地よい香りが漂っています。
「ミーシア。君も少し、休みが必要だ」
ラッシュ様はわたくしの腰を抱き寄せると、そのまま抱き上げるようにしてソファーへと誘いました。 「ラ、ラッシュ様……⁉ まだお夕食の準備が……」
「そんなものは後でいい。今はこうして、君を独り占めしたいんだ」
あなたの逞しい腕がわたくしを包み込み、耳元で甘い吐息が囁かれます。 帝都にいた頃よりも、あなたの愛情表現は真っ直ぐで、情熱的なものになっていました。 公爵という肩書きを捨て、一人の男として、わたくしを愛してくれている。 その事実が、わたくしの心を何よりも熱く、そして甘く溶かしていくのです。
「ミーシア……。君がいなければ、このバルザムも、今の私も存在しない。君が私の世界を変えてくれたんだ」
「ラッシュ様……。わたくしも、あなたといられるから、不毛の地さえ愛せるようになったのですわ」
わたくしは、彼の広い胸に顔を埋めました。 外はもう、カシアンが放った偵察兵たちの影が、森の奥に潜んでいるかもしれません。 帝都では、モンローがわたくしへの嫌がらせを、次の段階へ進めようと画策していることでしょう。
けれど、今のわたくしには、恐れるものなど何もありません。 この温かな胸の中にいれば、どんな冷たい風も、どんな悪意の刃も、届くことはないのだから。
「愛しているよ、ミーシア。永遠に、君だけを」
重なり合う唇。 それは、これから始まる激動の季節に向けた、神聖な誓いのようでもありました。 わたくしたちのワンダフルライフは、誰にも邪魔させない。 この夜の温もりを力に変えて、わたくしたちは明日、さらに高く、さらに強く、希望の旗を掲げるのです……‼
「奥様、このハーブの根、これでよろしいでしょうか⁉ 」
「ええ、完璧ですわ、マーサさん。それを細かく刻んで、サフラスの油に漬け込んでくださいね」
笑い声が絶えない作業場。 帝都の冷酷な社交界では考えられない、温かな共同体の姿がそこにありました。 けれど、連日の激務は、わたくしたちの体力を確実に削っていきます。
特にリリカは、自分の過去を振り払うかのように、寝る間も惜しんで働いていました。 夕暮れ時、ふと見ると、彼女が資料の束を抱えたまま、テラスの椅子でうたた寝をしているのを見つけました。
「……ふふ、頑張りすぎよ、リリカさん」
わたくしはそっと毛布をかけようとしましたが、その時、彼女が小さく「……おかあさん……」と寝言を漏らしたのです。 その幼い声に、胸が締め付けられるような思いがしました。 彼女が背負ってきた孤独と苦しみ。それを癒やすことができるのは、もうわたくしたちしかいないのだと。
そこへ、一日の作業を終えたラッシュ様が戻ってきました。 泥に汚れながらも、その瞳には充実感と、わたくしへの深い愛情が溢れています。
「リリカは眠ってしまったのか。本当に、よくやってくれているね」
「ええ……。この子には、これからたくさんの幸せを経験させてあげたいですわ」
わたくしたちは、リリカを起こさないように静かに家の中へと入りました。 室内には、暖炉の火がパチパチとはぜる音と、サフラスの心地よい香りが漂っています。
「ミーシア。君も少し、休みが必要だ」
ラッシュ様はわたくしの腰を抱き寄せると、そのまま抱き上げるようにしてソファーへと誘いました。 「ラ、ラッシュ様……⁉ まだお夕食の準備が……」
「そんなものは後でいい。今はこうして、君を独り占めしたいんだ」
あなたの逞しい腕がわたくしを包み込み、耳元で甘い吐息が囁かれます。 帝都にいた頃よりも、あなたの愛情表現は真っ直ぐで、情熱的なものになっていました。 公爵という肩書きを捨て、一人の男として、わたくしを愛してくれている。 その事実が、わたくしの心を何よりも熱く、そして甘く溶かしていくのです。
「ミーシア……。君がいなければ、このバルザムも、今の私も存在しない。君が私の世界を変えてくれたんだ」
「ラッシュ様……。わたくしも、あなたといられるから、不毛の地さえ愛せるようになったのですわ」
わたくしは、彼の広い胸に顔を埋めました。 外はもう、カシアンが放った偵察兵たちの影が、森の奥に潜んでいるかもしれません。 帝都では、モンローがわたくしへの嫌がらせを、次の段階へ進めようと画策していることでしょう。
けれど、今のわたくしには、恐れるものなど何もありません。 この温かな胸の中にいれば、どんな冷たい風も、どんな悪意の刃も、届くことはないのだから。
「愛しているよ、ミーシア。永遠に、君だけを」
重なり合う唇。 それは、これから始まる激動の季節に向けた、神聖な誓いのようでもありました。 わたくしたちのワンダフルライフは、誰にも邪魔させない。 この夜の温もりを力に変えて、わたくしたちは明日、さらに高く、さらに強く、希望の旗を掲げるのです……‼
8
あなたにおすすめの小説
病弱設定されているようです
との
恋愛
『あのようにご立派な家門にお産まれになられたのに⋯⋯お可哀想なご令嬢だそうですのよ』
なんて噂が流れているけれど、誰も会ったことがないミリー・ミッドランド侯爵令嬢。
ネグレクトなんて言葉はない時代に生まれ落ちて、前世の記憶を取り戻したら⋯⋯。
前世の記憶と共に無双します!
再開しました。完結まで続投です。
ーーーーーー
恋愛小説大賞27位、ありがとうございました(感謝)
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定。
完結確定、R15は念の為・・
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
【完結】恋が終わる、その隙に
七瀬菜々
恋愛
秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。
伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。
愛しい彼の、弟の妻としてーーー。
人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。
貧乏子爵令嬢ですが、愛人にならないなら家を潰すと脅されました。それは困る!
よーこ
恋愛
図書室での読書が大好きな子爵令嬢。
ところが最近、図書室で騒ぐ令嬢が現れた。
その令嬢の目的は一人の見目の良い伯爵令息で……。
短編です。
師匠の嫉妬で才能を奪われた薬師見習いの私、牢獄で本物の力を取り戻す
er
恋愛
辺境貴族の娘セシリアは宮廷薬師見習いとして働くが、師匠エリザから無能と罵られ続ける。疫病が王都で流行すると、エリザはセシリアに濡れ衣を着せ処刑させようとする。
【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!
たまこ
恋愛
エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。
だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる