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不毛の地に咲く新たな絆
帝都の毒花、モンローの焦燥
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一方その頃、華やかな帝都の一角にある、皇太子マカリスタの別邸では、全く異なる空気が流れていました。 贅を尽くしたサロンには、甘ったるい香水の匂いが立ち込め、高価な絹のドレスを纏った女性たちが、優雅に茶を楽しんでいます。 その中心に座っているのは、わたくしからすべてを奪った女、モンロー・フォン・バートリーでした。
「まあ、モンロー様。その耳飾り、バルザムの蒼の月草よりも美しいですわね⁉ 」
取り巻きの令嬢たちが、おべっかを使います。 モンローは、自慢の金髪を指で弄びながら、不機嫌そうに唇を尖らせました。
「当たり前でしょう。あんなゴミ溜めのような土地に咲く草など、わたくしの美しさの前では雑草も同然だわ。……それよりカシアン、まだ報告はないの⁉ 」
影から現れたカシアン伯爵は、冷や汗を拭いながら、深々と頭を下げました。 「も、申し訳ございません、モンロー様。派遣した偵察隊が……戻ってまいりません」
「なんですって……⁉ 」
モンローの手から、繊細な磁器のカップが床に落ち、粉々に砕け散りました。 周囲の令嬢たちが悲鳴を上げて後退する中、彼女の美しい顔は、嫉妬と怒りで醜く歪んでいきます。
「ただの没落公爵と、あの植物オタクの女よ⁉ どうして十人の精鋭が戻ってこないのよ‼ 貴方、無能なの⁉ 」
「そ、それが……。村の周囲に奇妙な霧が発生し、近づく者すべてを眠らせてしまうという噂が……」
カシアンの報告に、モンローは椅子を蹴り上げて立ち上がりました。 彼女にとって、わたくし、ミーシアは、自分を引き立てるための「惨めな敗者」でなければならなかったのです。 それが、追放された先で奇跡を起こし、あまつさえ帝都の軍を退けているなど、許せるはずがありません。
「……マカリスタ様は、何と仰っているの⁉ 」
「殿下は……あの蒼の月草の『若返りの効能』に、非常に執着しておられます。もし、ミーシア様がそれを独占しているとなれば、力ずくでも奪い取るよう、正規軍の動員を示唆されております」
マカリスタ皇太子。 わたくしの元婚約者であり、この悲劇の元凶。 彼は昔から、自分の所有物だと思っていたものが、自分の手を離れて輝き出すことを何よりも嫌う男でした。
「ふん、いいわ。正規軍が出るというなら、わたくしも同行します。あの女が、泥に塗れて這いつくばる姿を、この目で見届けてあげなくては……」
モンローは、鏡に映る自分の顔を見つめ、不敵な笑みを浮かべました。 彼女の心にあるのは、もはや利益ではありません。 ただ、わたくしへの純粋な「憎悪」と、奪いきれなかったラッシュ様への執着だけ。
一方、その頃。 バルザムのわたくしたちの家では、ささやかな、けれど温かな夕食の時間が流れていました。 偵察隊を退けたことで、村人たちが届けてくれた新鮮な野菜と、新しく収穫した麦で作ったシチュー。
「奥様、今日のスープは一段と美味しいです‼ 」
リリカが、元気よくスプーンを動かしています。 彼女の隣では、ラッシュ様がわたくしの皿に、一番柔らかい肉を選んで取り分けてくれていました。
「ミーシア、顔色が少し優れないな。やはり無理をさせたか……」
「いいえ、あなた……。ただ、帝都にいた頃の自分を思い出していただけですわ」
わたくしは、ラッシュ様の温かな手に触れ、静かに微笑みました。 あちら側の世界には、偽りの笑顔と、他人を蹴落とすための毒しかありませんでした。 けれど、ここには、土の匂いと、仲間たちの汗、そして本物の愛があります。
「ラッシュ様。わたくし、決めましたわ」
わたくしは、夫の瞳を真っ直ぐに見つめ、決意を口にしました。 「ただ守るだけではありません。帝都の人々に、教えてあげましょう。本当の『豊かさ』とは何なのか。そして、わたくしたちから奪ったものが、どれほどかけがえのないものだったのかを……」
わたくしの言葉に、ラッシュ様は力強く頷き、わたくしの手を引き寄せて口づけました。
「ああ、共に戦おう、ミーシア。君の知恵が、帝国そのものを変える日も近いだろう。……愛しているよ、私の誇り高き妻よ」
外では、蒼の月草が夜の闇を優しく照らしています。 帝都の毒花が迫り来る予感。 けれど、わたくしたちの絆は、どんな毒をも浄化する「聖域」となって、この大地に根を張っていました。
「まあ、モンロー様。その耳飾り、バルザムの蒼の月草よりも美しいですわね⁉ 」
取り巻きの令嬢たちが、おべっかを使います。 モンローは、自慢の金髪を指で弄びながら、不機嫌そうに唇を尖らせました。
「当たり前でしょう。あんなゴミ溜めのような土地に咲く草など、わたくしの美しさの前では雑草も同然だわ。……それよりカシアン、まだ報告はないの⁉ 」
影から現れたカシアン伯爵は、冷や汗を拭いながら、深々と頭を下げました。 「も、申し訳ございません、モンロー様。派遣した偵察隊が……戻ってまいりません」
「なんですって……⁉ 」
モンローの手から、繊細な磁器のカップが床に落ち、粉々に砕け散りました。 周囲の令嬢たちが悲鳴を上げて後退する中、彼女の美しい顔は、嫉妬と怒りで醜く歪んでいきます。
「ただの没落公爵と、あの植物オタクの女よ⁉ どうして十人の精鋭が戻ってこないのよ‼ 貴方、無能なの⁉ 」
「そ、それが……。村の周囲に奇妙な霧が発生し、近づく者すべてを眠らせてしまうという噂が……」
カシアンの報告に、モンローは椅子を蹴り上げて立ち上がりました。 彼女にとって、わたくし、ミーシアは、自分を引き立てるための「惨めな敗者」でなければならなかったのです。 それが、追放された先で奇跡を起こし、あまつさえ帝都の軍を退けているなど、許せるはずがありません。
「……マカリスタ様は、何と仰っているの⁉ 」
「殿下は……あの蒼の月草の『若返りの効能』に、非常に執着しておられます。もし、ミーシア様がそれを独占しているとなれば、力ずくでも奪い取るよう、正規軍の動員を示唆されております」
マカリスタ皇太子。 わたくしの元婚約者であり、この悲劇の元凶。 彼は昔から、自分の所有物だと思っていたものが、自分の手を離れて輝き出すことを何よりも嫌う男でした。
「ふん、いいわ。正規軍が出るというなら、わたくしも同行します。あの女が、泥に塗れて這いつくばる姿を、この目で見届けてあげなくては……」
モンローは、鏡に映る自分の顔を見つめ、不敵な笑みを浮かべました。 彼女の心にあるのは、もはや利益ではありません。 ただ、わたくしへの純粋な「憎悪」と、奪いきれなかったラッシュ様への執着だけ。
一方、その頃。 バルザムのわたくしたちの家では、ささやかな、けれど温かな夕食の時間が流れていました。 偵察隊を退けたことで、村人たちが届けてくれた新鮮な野菜と、新しく収穫した麦で作ったシチュー。
「奥様、今日のスープは一段と美味しいです‼ 」
リリカが、元気よくスプーンを動かしています。 彼女の隣では、ラッシュ様がわたくしの皿に、一番柔らかい肉を選んで取り分けてくれていました。
「ミーシア、顔色が少し優れないな。やはり無理をさせたか……」
「いいえ、あなた……。ただ、帝都にいた頃の自分を思い出していただけですわ」
わたくしは、ラッシュ様の温かな手に触れ、静かに微笑みました。 あちら側の世界には、偽りの笑顔と、他人を蹴落とすための毒しかありませんでした。 けれど、ここには、土の匂いと、仲間たちの汗、そして本物の愛があります。
「ラッシュ様。わたくし、決めましたわ」
わたくしは、夫の瞳を真っ直ぐに見つめ、決意を口にしました。 「ただ守るだけではありません。帝都の人々に、教えてあげましょう。本当の『豊かさ』とは何なのか。そして、わたくしたちから奪ったものが、どれほどかけがえのないものだったのかを……」
わたくしの言葉に、ラッシュ様は力強く頷き、わたくしの手を引き寄せて口づけました。
「ああ、共に戦おう、ミーシア。君の知恵が、帝国そのものを変える日も近いだろう。……愛しているよ、私の誇り高き妻よ」
外では、蒼の月草が夜の闇を優しく照らしています。 帝都の毒花が迫り来る予感。 けれど、わたくしたちの絆は、どんな毒をも浄化する「聖域」となって、この大地に根を張っていました。
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