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特別編 その4

ギャル系JS理穂乃ちゃんの幸せな末路 エピローグ

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 私立しりつもも薔薇ばら女学園じょがくえん
 名前の通り、私立の女子中学校だ。しかし、お嬢様学校というわけではなく、学費も偏差値もそこそこ。男子が一人もいないという点を除き、一般の公立中学校とあまり変わらないが、やはり地元にある公立中学校に通わないが、この学園の女子生徒たち一人一人にある。
 ちなみに「桃薔薇ももばら」という名の由来は、学園長の好きな食べ物がモモ肉とバラ肉だからである。 
 
 *

 「いじめられてそう」
 「へっ……? えっと……、誰が……ですか……?」
 「あなたがです! 戸木田美晴さんっ!」
 「わたし……? いじめられてそう……ですか……?」
 
 三年後の美晴。桃薔薇女学園の中学三年生。
 不気味な黒髪はさらに長くなり、肌はさらに白くなり、体はさらに細くなった。つまり、幽霊がメガネをかけてセーラー服を着たら、今の美晴になる。趣味や性格は昔と変わらず。

 「あなた、誰かにいじめられてるのではなくて?」
 「別に……いじめられてないと……思います……けど……」
 「ウソです! あなた、絶対にいじめられてるっ! オーラがにじみ出てますものっ! いじめられっ子のオーラが!」
 「そ、そうなんですか……? オーラ……」

 美晴と話しているのは、美晴と同じ3年A組に所属する、車田くるまだ富香トミカという名前の女学生だ。富香はこの学園の生徒会長をしており、誰よりも正義感は強いが、思い込みが激しいという欠点がある。

 「いじめの件について、わたくしに相談しなさい。生徒間のトラブルを解決するのが、生徒会長の役目ですもの」
 「えっ……。でも、わたし……いじめ……なんて……」
 「もしかして……いじめっ子に脅されている、とか? 弱みを握られていますのね? だから、私に打ち明けることができないのですね!?」
 「えぇ……!? いや……別に……」
 「分かりました。理解しましたわ。辛かったでしょう、悲しかったでしょう。もう大丈夫ですわ。私があなたの心に寄り添います」
 「あ、ありがとう……ございます……?」

 突如、プルルと電話が鳴る。美晴は富香に了承を得た後、自分のスクールバッグから携帯電話を取り出し、通話ボタンを押した。
 
 「もしもし……? うん、うん……。今……? 教室で……読書しながら……富香さんと……おしゃべり……してる……。富香さんって……わたしたちの学校の……生徒会長さん……だよ……。え……? 屋上……? うん……。分かった……。じゃあ、また後でね……」

 通話終了。美晴はスクールバッグの中に携帯電話をしまった。

 「どちらからのお電話ですの?」
 「え……? 気になる……?」
 「当然ですっ! 知っておく必要があります!」
 「えっと……風太く……じゃなくて、理穂乃ちゃん……から……」
 「り、理穂乃さんっ!? 理穂乃さんって、あの!?」
 「富香さん……知ってるの……?」
 「知ってるも何も……!」

 青坂理穂乃。3年B組に所属する女子生徒の名前だ。
 髪を明るい茶色に染め、毎日のメイクもかかさず、セーラー服は自分流に着崩し、おまけにスカート丈まで短いという、校則違反のかたまりのような生徒である。常にクールであまり口数は多くないが、教師の指図を受けない堂々としたその姿から、同類の女子生徒(ギャルっぽい派手な子たち)からは「りほちー先輩」と呼ばれ慕われている。しかし、真面目な生徒や臆病な後輩からは、距離を置かれたり怖がられたりもしている。

 「いわば、不良のボスですわっ!」
 「不良の……ボス……? ふふっ……」
 「笑い事じゃありませんっ! 私たち生徒会は、いつも校則違反をする不良生徒たちに悩まされていますのっ! あの人たちったら、学園の風紀を乱してっ!」
 「そっか……。それは……問題……かも……」
 「授業をサボったりすることも多いですし、夜遅くまで外で遊んだりもしてるそうです。ウワサですけど、陰ではお酒やタバコなんかもたしなんでいるとか……!」
 「それは……ガセ……ですよ……。臭いがキツいと……お客さんに嫌がられるって……、風太く……じゃなくて、理穂乃ちゃん……言ってました……し……」
 「本当は、生徒指導の教頭先生にもっと処罰してもらいたいのですけど、教頭先生はなぜか理穂乃さんには甘いみたいで……!」
 「ああ……、それは……うちの教頭先生が……理穂乃ちゃん……の……お客さん……だから……」
 「とにかく、理穂乃さんは誰の言うことも聞かない極悪不良女子なのですっ! 後輩たちは、みんな彼女の真似をして不良の道に堕ちていくのですっ!」
 「な、なるほど……。そうだったんだ……」

 言われてみれば確かにそうかも、と美晴は思った。

 「ところで、美晴さんはさっき、理穂乃さんとお電話を?」
 「え……? うん……。『15分後、校舎の屋上で』……って……会う約束……を……したけど……」
 「屋上に呼び出し……? まさかっ!!」
 「まさか……??」
 「理穂乃『美晴、お金は持ってきたでしょうね』
  美晴『り、理穂乃ちゃん……!』
  理穂乃『分かってるでしょ? あたしに逆らったらどうなるか』
  美晴『きゃー! 理穂乃ちゃんやめてくださいっ!』的な!!」
 「もしかして……カツアゲ……ですか……?」
 「そうそれですっ! 美晴さんは、理穂乃さんにいじめられているっ!! 間違いないっ!!!」
 「えぇっ……!!?」
 「分かりました。あなたは屋上にお行きなさい。私はこっそり様子をうかがい、いじめと呼べる行為が確認でき次第、あなたの前に飛び出します。そして、私の得意な空手と柔道で、理穂乃さんをやっつけてみせますわ!」
 「あ、あの……! 理穂乃ちゃんに……乱暴なことは……ちょっと……」

 ということで、美晴と理穂乃の待ち合わせに、富香もこっそり同行することになった。美晴は何度も断ろうとしたが、思い込みの激しい富香の意見は決して変わらなかった。

 * *

 秋の夕暮れ時。少しだけ冷たい風が吹く。
 オレンジ色に染まっていく桃薔薇女学園の屋上で、理穂乃は美晴を待っていた。いつもなら、この場所で吹奏楽部の演奏やソフトボール部のかけ声などを聞くことができる時間だが、定期テストの日が近づいているため、本日は全ての部活動がお休みとなっている。寂しいくらいの静けさが、屋上に立つ独りぼっちの少女を包む。

 「……」

 あの雨の日から三年。
 変わったのは服装と身長、そして目つきの悪さ。中学生になったらセーラー服を着るのは普通のことだし、体が成長すれば当然身長も伸びる。ただ、目つきが悪くなったのは、理穂乃として生きていくことを決めたあの日から、イヤな物をたくさん見てきたせいかもしれない。
 
 「重い……」

 見つめる先には、自分の胸。リボンが膨らみに押し上げられている。
 小学生だったころよりも、その存在は大きく重くなっていた。女子としての成長に加え、たくさんの見知らぬ男に触れさせてきた代償でもある。「あたし」が今日まで売り物にしてきたのは“性”だと、わざわざ教えてくれている。男子では決して感じることのできない重みとなって。

 「苦しい……」

 下着が胸を締め付ける。とても窮屈で、今にも取っ払ってしまいたいくらいだった。でも、美晴に選んでもらった可愛い下着なので、しっかりと着けていようと心に決めていた。

 「可愛い、なんて。あたしが……?」 
 
 可愛くなりたい。キレイになりたい。おしゃれな服を着たい。
 それらはもう女としての本能で、衝動に近いものだった。心でどれだけ抗っても、体は勝手に自分を着飾ろうとしてしまう。そうしないといけないと、肉体に強制されているようだった。時々、そんな自分が怖くなって泣いてしまうこともあったが、いつでも美晴がそばにいて、泣き止むまで慰めてくれた。

 「三年かぁ。もうそんなに経つのね」

 風太と別れて三年。美晴と出会って三年。
 理穂乃は、屋上の手すりにもたれながら、自分がこれまで辿たどってきた数奇な運命を想い返し、少しだけ笑った。三年前のあの日、もし美晴に出会っていなかったら……。

 「あっ……! 風太……くん……!」
 「……!」

 屋上の扉が開き、ウワサのそいつが現れた。

 「お待たせ……して……ごめんなさい……!」
 「遅い」
 「えっ……?」
 「こんな寒いところで、30分も待ってたんだけど?」
 
 笑顔を消し、理穂乃はムスッとした表情を作った。

 「でも……、屋上を……集合場所に……決めたのは……風太くん……だし、わたしは……あなたが決めた……時間通りに……来てるんです……けど……」
 「うっさい。美晴のくせに、あたしに口応えする気?」
 「はい……。わたし……自分勝手で……生意気な……風太くん……と……口ゲンカ……するのも……けっこう……好き……ですし……」
 「は、はあ!? 何言ってんのよ! ってか、あんたいつまであたしのこと『風太』って呼ぶつもりなの?」
 「えっ……? 二人きりの……時は……ずっと……ですよ……? あなたが……『おれは風太だ』……って……思い続けてる……限り……ずっと……」
 「もう思ってないわよ。今さら元には戻れないし、あたしには理穂乃として生きていく道しかないんだから。何もかも、諦めたわ」
 「でも……、まだ……心の中に……ありますよね……? もし……風太になれるのなら……なりたい……って……気持ち……。今は……その気持ちに……フタをしてる……だけ……」
 「う……! あー、もうキモいキモいっ! ほんとウザいわね美晴って! 好きにすればいいじゃないっ。あたしの呼び方なんて!」
 「でも、呼び方を……気にしてる……のは……風太くんの……方で……」
 「うるさいってば!!」
 「ふふっ……。風太くんは……風太くん……です……。三年経ったくらいで……それは……変わりません……よ……」
 「……!」

 入れ替わりのことを知っているのは、当人たちを除いて美晴だけ。誰かに話しても信じてもらえるハズがないので、他の人に話そうという気はなかった。そして何より理穂乃にとっては、美晴が覚えていてくれるだけで満足だった。……口が悪いのはギャルの体質なので仕方ない。

 「ところで……、わたしを……呼び出した……理由は……なんです……か……?」
 「ああ、それね。今度の休みに、二人でどっか行かない? って話をしようと思ってさ」
 「今度の……休日……。遊んでいて……いいんです……か……? 風太……くん……」
 「え? 何が?」
 「来週……定期テスト……が……あるんです……けど……」
 「あ、そうだっけ? 最近学校サボってたから、知らなかったわ」
 「中学生になって……も……、毎日……勉強……せずに……派手な格好のお友達と……遊び歩いたり……、お店で……男性相手に……サービスしたり……。風太……くん……」
 「な、なによっ。何か文句でも言いたいわけ?」
 「なんていうか……、すっかり……身も……心も……ギャルですね……」
 「仕方ないわよ。理穂乃になった時点で、そういう生き方を選ぶしかなかったんだから。お金だって必要だし」
 「楽しい……ですか……? その……生き方……」
 「ううん、つまらない。今でも考えるもの。もしあの時入れ替わらずに、あたしが今でも風太だったら、もう少しマシな人生だったんだろうな……って」
 「マシな……人生……」
 「男子として中学生になって、雪乃や健也と同じ中学校に通って……。部活は運動部にでも入ってたかもね。勉強も、今のあたしよりかは確実にできてたわ。今のあたし……風太だったころよりも、頭が悪くなってるもん」
 「それは……脳の違い……ですか……?」
 「多分ね。風太は図工と体育、それから算数が得意だったけど……今のあたしには、得意な教科なんて一つもない。男子みたいに自由に体は動かないし、小学生でも分かる計算すら頭が追いつかない。理穂乃になってから、できないことばっかり増えていくの」
 「でも……。悪いこと……ばかりじゃ……ない……。わたしと……あなたが……こうして……出会えたのは……入れ替わりが……あった……から……です……!」
 「それはそうね。でも、あたしが風太だったら、もっと美晴に……してあげられた」
 「……!」

 色々なこと。思春期の美晴にも、それはいくつか心当たりがあった。
 男女の仲ではないという大きな壁。精神は「憧れの風太くん」でも、その体は全然知らない赤の他人で、しかも同性。年頃の男と女なら自然にできたかもしれない行為も、女同士だとどうしても事情が変わってくる。周囲の視線だって、男女のソレと比べるとまるで違う。
 
 「風太……くん……。それって……先日の……」
 「美晴は普通なのにね。あたしがこんなに……複雑なだけで」

 女同士の“好き”に、その先はない。
 先日、理穂乃は美晴と二人きりで一日過ごし、それを知った。
 
 「今度二人で遊ぶ時は、男を連れてくるわ。美晴にも優しくしてくれそうな男をそこらで探して、あたしが逆ナンを……」
 「か、勝手なこと……言わないで……くださいっ……!! そんなの……必要……ありませんっ……!!」
 「えっ!?」

 理穂乃の申し出を、美晴はキッパリと断った。

 「わたしが……小学生の時から……ずっと……見ていた……のは……、二瀬風太くん……! つまり……あなた……です……! 他の男子……じゃないっ……!」
 「それは分かってるわよ。でも、あたしの体は女だから、これからは女同士じゃできないこともあるって話をしてるの」
 「いいえ……! 風太くんは……自分が男じゃないことを……気にしすぎ……! 女同士……とか……関係……ありません……! できない……こと……は……二人で……協力して……乗り越えて……行くんです……! この先も……ずっと……!」
 「あのさ、急にバカにならないでくれる? そんな根性論みたいな話じゃなくて……」

 ドンッ!

 「わたしっ……!! そうやって……ウジウジする……風太くん……は……嫌い……!! 大っ嫌いっ……!!」 
 「わっ!? ちょ、ちょっと美晴っ!?」

 押し倒した。押し倒された。
 三年前、理穂乃が車にかれそうになったあの時と同じように、理穂乃の上に美晴が覆い被さった。アマチュアレスリングのようなタックルを決められた理穂乃は、背中に軽い痛みを感じていた。

 「いたた……。いきなり何すんのよ、このバカっ!」
 「思いつきました……。思いつきました……よ……。風太……くん……」
 「はあ? 何が?」
 「今度の……休みの日の……デートは……、全部……わたしが……リード……します……。風太……くんは……わたしの……カノジョに……なっていて……ください……」
 「は、はあぁ!!?」

 理穂乃は、自分の上にいる美晴をポカポカと殴り、ほっぺたをぐにーっとつねった。しかし、もう前しか見えていない美晴に、そんな攻撃は通用しなかった。

 「風太くんは……わたしの……カノジョ……なので……、とびっきりの……おしゃれを……してきて……ください……。わたしも……あなたの……隣を……歩けるように……ちゃんと……可愛い服を……着てきます……」
 「何を勝手な……!」
 「午前のデートスポットは……市立図書館……。わたしが……あなたに……勉強を……教えます……ので……、筆記用具を……忘れずに……。そして……一緒に……どこの……高校を……受験する……か……決めましょう……」
 「な、なんて恐ろしい計画っ」
 「午後は……映画館……。ちょっと……恥ずかしい……ですけど……二人で……恋愛映画を……見ます……。普通の……男女が……やってる……みたいに……!」
 「そんなことして……。ムードなんて作って、何をしようって言うのよ。普通の男女のカップルなら、その後に夜があるけど、あたしたちにはその先は何も……」
 「海の見える……公園に……行きます……。そして……きれいな……夕日を……バックに……わたしたち二人は……見つめ合い……、そして……」
 「そんなの無理だってば。この妄想デート幽霊っ!」
 「できますっ……!!」
 
 美晴は語気を強め、理穂乃はそれに食ってかかった。はたから見ていると、二人はまるで殴り合いのケンカをしているような雰囲気だった。

 「ちょ、ちょっと何事ですか!? ケンカはおやめなさいっ! 美晴さんっ! 理穂乃さんっ!」
 「「!?」」

 何やらただならぬ様子。慌てて、生徒会長の富香が止めに入った。
 突然の第三者の登場に対して、理穂乃は少し首をかしげ、美晴はビシッと指をさした。

 「と、富香さん……! そこで……待って……!」
 「へ? み、美晴さん? あなた、本当にいじめられっ子の美晴さんなんですの? なんだか、さっきより随分ずいぶん強そうですけれど」
 「とにかく……待って……ください……! 今……風太く……じゃなくて、理穂乃ちゃんと……真剣な……話を……している……ので……!」
 「ま、待てと言われてもっ! わたくしは生徒会長として、あなたたちのケンカを見過ごすわけにはいきませんっ!」
 「ケンカは……してませんっ……! わ、わたしと……理穂乃ちゃん……は……普段は……とっても……仲良し……だからっ……」
 「ウソ! とても仲良しには見えませんわっ! さっきからあなたたちは、暴力ばかりっ!」
 「だ、だったら……今から……証拠を……見せますっ……! 仲良しの……証拠を……!」
 「えぇっ!? な、仲良しの証拠っ!?」

 くるりと振り返り、美晴は理穂乃の方に顔を戻した。

 「します……!」
 「はあぁ!? い、今ぁ!? ここでっ!?」
 「風太くん……、目を……つぶって……! カノジョって……いうのは……されるがわ……なんです……!」
 「いや、なんでよ!? 生徒会長さんとやらが、あたしたちのこと見てるけどっ!?」
 「富香さんに……見せつけ……ます……! 女同士……でも……こういうこと……が……できるんだって……! さあ、早く……準備して……!」
 「なんて強引な……! ちょ、待っ、美晴っ!!」
 「風太くん……! 好きですっ……!」
 「お、おれもっ……!」

 勢い余った。
 
 「きゃっ……!」

 ────────
 ────
 ──

 *

 秋空の下。
 校舎の屋上にて、二人の女子生徒が正座させられている。
 一人は、派手な服装のいかにもギャルという感じの女子。もう一人は、ひたすら地味でお化け屋敷の幽霊役みたいな陰気な女子。見た目からして全く正反対の二人が、生徒会長の前で仲良く並んで正座させられている。
 
 「不純交友」
 「「はい……」」
 「理穂乃さんは、服装や身だしなみの校則違反」
 「はい」
 「美晴さんは、風紀の乱れに関する校則違反」
 「はい」
 「キ、キスが3回なので、来週までに反省文を3枚提出っ!」
 「「はい……」」
 
 もちろんばつが下された。
 富香はプンプンと怒りながら、正座する二人の前に仁王立ちしている。一方の美晴と理穂乃は、ひたすら頭を下げて反省の意を示している。

 「あなたたち二人を、極悪不良女子に認定しますっ! これからは、わたくしが常にあなたたちを監視をしますので、そのおつもりでっ!」
 「「わ、分かりました……」」

 理穂乃は横目でチラリと、美晴の顔を見た。一応、深く反省しているようには見えるが、口元に少しだけ笑みを浮かべている。

 「何笑ってるの。また怒られるわよ」
 「ふふっ……。風太くんと……一緒に……富香さんに……叱られる……なんて……。こういうのを……青春……って……呼ぶのかな……って……思って……」
 「あんた、バカね。小学生の時から思ってたけど、美晴はやっぱりバカだわ。バーカ」
 「はい……。わたしも……好きです……よ……」
 「なぁっ!? い、いきなり何!?」
 「今……風太……くん……が……、わたしのこと……好きって……言ったから……。それに対する……お返事……です……」
 「言ってないっ! ああもうっ、ほんと最悪っ!」
 「ふふっ……。わたしも……とっても……幸せ……です……」

 風太がどんな声で、どんな口調で、何を言っても、美晴の耳にはしっかり届いていた。言葉の裏に隠された、本当の気持ちまで。
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