昔助けた王子様に求婚されて外堀を埋められています

水無瀬雨音

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 クロードがソフィアの髪飾りに目を止め、そっと手を伸ばす。
「まだ持っていてくれたのだな。ソフィアの目と同じ美しい色だから選んだが、やはりよく似合う。私もソフィアに渡されてから守護としてずっと持ち歩いている」
 最初は真っ白なレースハンカチだったはずのそれは、十年という月日ですっかり黄ばんでみすぼらしくすらある。そんなものを大切にお守りとしてくれていることに感激したソフィアだったが、クロードにふさわしくないと取り上げようとする。
「殿下とあろう方に持っていただくようなものではありません。処分いたしますので、どうかお渡しください。代わりといってはなんですが、相応のものを贈りますので」
 ソフィアの伸ばした手は空を掴み、クロードはさっとハンカチを懐に戻す。
「処分などされてたまるか。どうしても贈り物をしたいのであれば、ソフィアの手ずから刺繍してくれたハンカチなら受けとることにしよう。このハンカチは返さぬがな」
 手に口づけながらじっと見つめられ、ソフィアは自分でも分かるほど頬が熱くなった。きっと誰が見ても頬を染めてしまっているに違いない。
 クロードの射るような目を見ただけで胸が締め付けられるようだった。ドキドキと胸が高鳴るのが分かる。この音は周囲に聞こえていないだろうか。
 社交界デビューもしていないため物心ついてから家族以外の男性と二人きりで会話したことなどないに等しく、手を握られた経験もないのだ。ましてや手とは言え口づけされたことなどないので、そうした反応は仕方のないことだった。
 無垢である証と、クロードは満足気で、二人はそのまましばらく見つめあった。
 口を開くものも音をたてるものもなく、鼓動の高鳴りを回りに知られはしないかとソフィアは気が気ではなかったが、止めることはできなかった。その強い視線をそらすこともできない。
 静寂を破ったのはジャンだった。
「恐れながらクロード様、姉上。この部屋にいるのはお二人だけではないのをお忘れではありませんか」
 ソフィアは慌てて手を引っ込めうつむく。
 一方のクロードは悠然と
「水くさいではないか、ジャン。気安く義兄上と呼んでよいのだぞ。ここにいるのは身内だけだからな」
「では義兄上、そろそろ思い出話をお止めになって本題に入られた方がよろしいかと思われます。お忙しい身であらせられますので。今日も他の予定を差し置いて姉のために、わざわざお越しいただいたのでは?」 
 13歳という若さでありながら、ほぼ初対面の王族にはっきり意見できる弟に、ソフィアは感心すると同時にハラハラする。
 ジャンの言葉にクロードはこほん、と咳払いしてソフィアを見つめる。
 改まった雰囲気に、ソフィアも緊張に身を固くする。
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