昔助けた王子様に求婚されて外堀を埋められています

水無瀬雨音

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 ソフィアはしばらくしてやってきたメイドたちに湯あみさせられ、香油を塗りたくられると、コルセットで締め上げられ、クロードが用意したというドレスを着せられた。髪を結いあげられ、軽く化粧を施させられると、途端に大人びた雰囲気になった。
「よくお似合いですわ」
「さすがクロード様、婚約者のソフィア様のお似合いになるドレスをご存じなのですね」
 マリアやメイドたちが口々に褒めそやす。
「そ、そうかしら」
 髪を結いあげたり化粧をしたことがほとんどないソフィアは落ち着かなかったが、鏡をよく見ると似合っている気もする。ドレスは濃紺と今まで着たことがない色だったが、どちらかと言えば童顔のソフィアを落ち着いた印象に見せた。レースがふんだんに使われ、若々しいデザインなので、大人びすぎてもいない。
「ソフィア様はほどなくしたら奥さまにおなりですものね……」
 マリアは寂しげに言ったが、
「それは早すぎよ、マリア……」
 まだ国王の許しも得ていないのだ。
「支度はできたか?」
 部屋の向こうからクロードが声をかけてきた。
「それはより美しくおなりですよ」
 メイドが扉を開けてクロードを招き入れる。入ってきたクロードがソフィアの前に進み出る。
 ソフィアは身を固くしてクロードの言葉を待った。頭のてっぺんから靴先までじろじろ見つめ、全く言葉を発さず表情も動かない。時間にするとほんの数分だっただろうが、ソフィアにとってはひどく長く感じられた。気に入らなかったのだろうか、と不安に思い始める。
「恐れながらクロード様、お声をかけていただけませんか」
 耐えかねたマリアが申し入れると、ようやくクロードが口を開く。
「すまない。あまりの美しさに女神が現れたのかと目を疑っていた。これでは結婚式の衣装を身に着けたソフィアの美しさはいかほどだろうな」
「クロード様、褒めすぎです」
 ソフィアが頬を赤らめると、クロードは愛おしそうに微笑む。
「出会ったときから天使のような美しさを備えていたが、そなたの美しさはとどまることを知らぬな」
「あまり褒められると恥ずかしいです、クロード様」
 歯の浮くような言葉を次々と口にするので、メイドたちは目を丸くしている。普段のクロードは必要な時のみ定型的に女性を褒める程度だったからだ。ソフィア以外の女性に興味がないので、致し方ないと言えるが。
 こほん、とマリアが咳払いする。
「国王様をお待たせしているのですから、行かれたほうがよろしいのではないですか。クロードさまも執務の途中なのでしょう」
 ほらほら、とマリアにせかされ、二人は応接間に向かった。
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