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ソフィアとマリアが城からいなくなったのが分かったのは昼過ぎだった。
マリアの部屋に二人の昼食を運びに行ったメイドが、二人の姿がないことに気づいたのだ。そして時を同じくして紹介状を不当に入手した女たちが大きな荷物を運び出しているのが分かった。
女たちは王宮のメイド服を着用し紹介状を持参していたため疑われなかったのだが、メイド服の在庫を調べたところ数が合わなかったので、王宮に自由に出入りできるものがソフィアとマリアの誘拐に関わっていると思われる。
「とりあえず門番の処分は保留だ。各検問にその馬車が通過したか聞いてこい。他の者はーー」
執務はライナスに押し付け、クロードは王太子たちとともにクロードの私室を拠点にし、ソフィアたちの捜索に当たったが、暗くなっても一向に見つかる気配はなかった。手がかりすらない。
恐らく黒幕はベルなのは想像に難くなかったが、本人に直接問い詰めるわけにもいかない。動きがないかそれとなく見張らせるにとどめた。
一応他の筋からも捜索するため、ソフィアやアルデンヌ家、王家に怨恨を持つ者も洗い出す。ベルがソフィアへの怪しい動きがあったことを王太子たちに伝えたところ、モンブール国王の姉を母に持ち、父が議員であるオレーユも調べることになった。父であるブノワ侯爵は真面目な人物だが、オレーユは放蕩息子であり、10年前のことも記憶に新しい。
それらしい馬車が通った検問所もあるのだが、門番と同じようなやり方で通過したようだ。まっすぐ目的地に向かうはずもなく途中で足取りもつかめなくなった。門番といい、検問にあたっている傭兵といい変える必要があるが、それはソフィアたちが見つかってからだ。
このようなことになるのだったらソフィアを自分の傍から離すのではなかった。一応一人にしないようにはしていたが、正直ベルがここまでするだろうとは想像していなかったのだ。
そして最後に会ったときソフィアに放った言葉。ソフィアがベルの策略から言わされているとは分かっていたのにあのように冷たい言葉を口にするのではなかった。
恐らくあの後ソフィアは泣いただろうと思うと心が痛む。
自分が未熟だと言われれば全くその通りだと思う。
たとえ本当に万一心変わりをされたとしてもクロードの気持ちが変わることはない。ソフィアはクロードの唯一の宝物なのに。
ぎりぎりと音が鳴るくらい歯ぎしりをするが、後の祭りだ。
やはり小鳥は鳥かごに入れておくべきだった。
「クロード様、とりあえず何か召し上がって休まれてください。王太子たちもお休みになられました。
引き続き騎士たちに捜索させますし、動きがあれば知らせますので」
ノックして入ってきたのはライナスだった。
手にサンドイッチなどの軽食ののったトレイを持っている。
「だが…」
ソフィアやマリアがどんな目にあっているかと思うと、食事をとる気にもならないし、休めるとも思えない。
「朝までにそうそう事態が動くとは思えない。いざというときにお前が動けないほうが困ると思うが」
「……分かった」
ライナスに諭され、クロードはサンドイッチを手に取った。食欲はなかったはずなのに、食べ始めてしまえばライナスの持ってきた軽食をあっさりと完食した。
思えば今日は朝食の後は全く何も口にしていない。もうすぐ日付が変わるころだから空腹で当たり前だ。
「メイドを呼んでくるから湯あみをすませたらすぐ休め。
……大丈夫だ。お前のお姫様もマリアもすぐに帰ってくる」
いつになく優しい口調のライナスが、幼子にするようにクロードの頭を撫でるとそっと部屋から出て行った。
「……いつまでも子ども扱いするな」
クロードのつぶやきはたぶんライナスにはもう届いてはいない。
今夜は満月だ。
せめて優しい月明かりが、ソフィアとマリアの心を慰めてくれればいいのだが。そしてどんなに昏い状況でも明るく照らしてくれればいい。ソフィアが泣かないように。
ソフィアとマリアは絶対に見つけ出す。
そして再びこの手に取り戻した小鳥は鳥かごから出さない。
マリアの部屋に二人の昼食を運びに行ったメイドが、二人の姿がないことに気づいたのだ。そして時を同じくして紹介状を不当に入手した女たちが大きな荷物を運び出しているのが分かった。
女たちは王宮のメイド服を着用し紹介状を持参していたため疑われなかったのだが、メイド服の在庫を調べたところ数が合わなかったので、王宮に自由に出入りできるものがソフィアとマリアの誘拐に関わっていると思われる。
「とりあえず門番の処分は保留だ。各検問にその馬車が通過したか聞いてこい。他の者はーー」
執務はライナスに押し付け、クロードは王太子たちとともにクロードの私室を拠点にし、ソフィアたちの捜索に当たったが、暗くなっても一向に見つかる気配はなかった。手がかりすらない。
恐らく黒幕はベルなのは想像に難くなかったが、本人に直接問い詰めるわけにもいかない。動きがないかそれとなく見張らせるにとどめた。
一応他の筋からも捜索するため、ソフィアやアルデンヌ家、王家に怨恨を持つ者も洗い出す。ベルがソフィアへの怪しい動きがあったことを王太子たちに伝えたところ、モンブール国王の姉を母に持ち、父が議員であるオレーユも調べることになった。父であるブノワ侯爵は真面目な人物だが、オレーユは放蕩息子であり、10年前のことも記憶に新しい。
それらしい馬車が通った検問所もあるのだが、門番と同じようなやり方で通過したようだ。まっすぐ目的地に向かうはずもなく途中で足取りもつかめなくなった。門番といい、検問にあたっている傭兵といい変える必要があるが、それはソフィアたちが見つかってからだ。
このようなことになるのだったらソフィアを自分の傍から離すのではなかった。一応一人にしないようにはしていたが、正直ベルがここまでするだろうとは想像していなかったのだ。
そして最後に会ったときソフィアに放った言葉。ソフィアがベルの策略から言わされているとは分かっていたのにあのように冷たい言葉を口にするのではなかった。
恐らくあの後ソフィアは泣いただろうと思うと心が痛む。
自分が未熟だと言われれば全くその通りだと思う。
たとえ本当に万一心変わりをされたとしてもクロードの気持ちが変わることはない。ソフィアはクロードの唯一の宝物なのに。
ぎりぎりと音が鳴るくらい歯ぎしりをするが、後の祭りだ。
やはり小鳥は鳥かごに入れておくべきだった。
「クロード様、とりあえず何か召し上がって休まれてください。王太子たちもお休みになられました。
引き続き騎士たちに捜索させますし、動きがあれば知らせますので」
ノックして入ってきたのはライナスだった。
手にサンドイッチなどの軽食ののったトレイを持っている。
「だが…」
ソフィアやマリアがどんな目にあっているかと思うと、食事をとる気にもならないし、休めるとも思えない。
「朝までにそうそう事態が動くとは思えない。いざというときにお前が動けないほうが困ると思うが」
「……分かった」
ライナスに諭され、クロードはサンドイッチを手に取った。食欲はなかったはずなのに、食べ始めてしまえばライナスの持ってきた軽食をあっさりと完食した。
思えば今日は朝食の後は全く何も口にしていない。もうすぐ日付が変わるころだから空腹で当たり前だ。
「メイドを呼んでくるから湯あみをすませたらすぐ休め。
……大丈夫だ。お前のお姫様もマリアもすぐに帰ってくる」
いつになく優しい口調のライナスが、幼子にするようにクロードの頭を撫でるとそっと部屋から出て行った。
「……いつまでも子ども扱いするな」
クロードのつぶやきはたぶんライナスにはもう届いてはいない。
今夜は満月だ。
せめて優しい月明かりが、ソフィアとマリアの心を慰めてくれればいいのだが。そしてどんなに昏い状況でも明るく照らしてくれればいい。ソフィアが泣かないように。
ソフィアとマリアは絶対に見つけ出す。
そして再びこの手に取り戻した小鳥は鳥かごから出さない。
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