寡黙な騎士団長は花嫁を溺愛する 番外編

水無瀬雨音

文字の大きさ
15 / 60

ドミニクと彼の可愛い幼なじみ1

しおりを挟む
 初めて会ったのは貴族同士が集まるお茶会で、多分ヴィオレットが5歳の時だと思う。
 幼児らしくて可愛らしいというよりは、神秘的とか美しいとかいうほうが正しかった。すでにヴィオレットの美しさは完成されていた。
 ヴィオレットは遠巻きにじろじろ見られることに居心地悪そうにしながら、伯爵夫人のドレスのスカート部分を握っていた。
 最初に話しかけたのはエミリエンヌで、話しかけられたヴィオレットは一瞬驚いた表情をしながらも、すぐににこっと破顔した。不安そうな顔をしているだけで大変魅力的だったのに、笑うとものすごく可愛らしくて、
(この子を守りたい)
 と幼いドミニクは誓ったのだが、結果としてアプローチが下手すぎて、結婚するどころか嫌われることになってしまった。そのあと何とか原状回復しようともがいている間に、ヴィオレットはさっさと疾風の黒豹と結婚してしまった。
 エミリエンヌのとりなしがあって誠心誠意謝罪し、会話をしてくれるようになり、今では多分唯一の男友達というポジションに落ち着いた。
 離縁して戻ってきたところを、かっさらって結婚してやろうという考えが半場本気であったのだが、疾風の黒豹と結婚することに不本意そうだったヴィオレットも、何やらいざ結婚したら大変仲睦まじそうだったので、多分離縁しないだろう。
 ドミニクだってヴィオレットが幸せであるなら、それでいいので離縁することを望んでいない。
 人妻であるヴィオレットと二人きりにはなれないのだが、邪魔が同席していたとしても、お茶会を楽しんでたまにプレゼントを押し付けて、今の関係もそんなに悪くないかなぁとそれなりに満足していた。
 最近のヴィオレットは可愛らしさの中に、人妻の色香というものも漂っていて、自分を抑えるのに大変苦労はするのだが。
 何よりの男友達というのも、自尊心をくすぐる。
 ドミニクにとって、ヴィオレットは初恋だった。正直心の中には今もヴィオレットがいて、次の恋なんて到底考えられない。
 もっとも一応貴族であるドミニクには、そもそも恋愛結婚なんて縁遠いもので、
(そのうちそこそこの家柄の令嬢に縁談申し込んで結婚すんのかもなー)
 と思っていた。
 結婚相手に恋愛感情は抱くことができなくても、家族として愛する努力はしよう。男の心理から考えて、跡継ぎを残すことも可能だろう。
 若いながらも達観していたが、幼い頃ヴィオレットを一緒に追い回していた悪童仲間たちも多くは恋愛結婚でなく政略結婚で続々と身を固めていた。

(ヴィオレットと結婚できないなら、誰と結婚したって同じだ。
 家のためになるか、それだけだ)

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました

まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました 第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます! 結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...