異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第8話 買物

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 正秀と為次が見知らぬ世界にやって来て、一夜が明けた。

 二人はまだ寝ている。
 為次はソファーで白目を剥いて寝ているし、正秀は床でうつ伏せに転がっていた。
 昨夜、遅くまで飲み明かしていたのだから。

 テーブルや床には、空のビール瓶や食べカスが散乱していた。

 トン トン トン

 そんな惨状の建物の扉をノックする音が聞こえる。
 しかし、その程度の音で二人が起きる分けもなかった。

 ガチャリ

 返事が無かったので、ノックをした人物は鍵の掛かっていない扉を開くと、勝手に入って来た。
 昨日出会ったスレイブ、ターナ、マヨーラの3人である。

 「あら、あら、まぁ」

 ターナは散らかったロビーを見渡すと、少し困った様子である。

 「こいつらも結構、飲んでたようだな」

 「あーあ、こんなに散らかしちゃって」

 「マヨーラ、二人を起こしてちょうだい」

 あからさまにターナは怒っていた。

 「え? あ…… はい、わ、分かったわ……」

 マヨーラは指先を杖の代わりにして呪文を唱える。

 「ライトニングボルトぉ~」

 ビビビビビィ~

 指の先から電撃が正秀と為次を目掛けて発射される。
 死なない程度に威力は最小限にはしてあるものの、生身の人間にとってはかなりの衝撃だ。

 「「にぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 流石の二人も目が覚めた様子だ。
 為次は飛び起きると辺りをキョロキョロしている。

 「うぉぉぉ、な…… なんなの?」

 「て、敵か!?」

 正秀も同様に慌てふためいていた。

 気が付くと、目の前にターナが居る。
 その美女は優しい笑顔でこちらを見つめている。
 しかし、その目は怒りに燃えていた。

 「なんだターナか、何事かと思ったぜ」

 「あーうー、もう朝なのー?」

 「ふぁぁぁ~あ……」

 正秀が大きなあくびをすると、為次はこめかみを押さえながら言う。

 「あー飲みすぎたかな…… 頭いてぇや。おはようターナ、そうだヒールかけてよ二日酔いで頭が痛いお」

 「おいおい…… こいつやべぇぞ」

 スレイブの顔がちょっと引きつっている。

 「まあそれは大変ですわ、今すぐ楽にしてあげますわ」

 顔では笑っているが、ターナの目は笑っていなかった。

 「ヒール」

 ターナは呪文を唱えると杖を振り上げる。
 そして、その杖は為次の顔面に振り下ろされた。

 「ぶほぉうぇ!」

 奇妙な叫び声と共に、為次は吹っ飛んだ。

 ターナは吹っ飛んだ為次に近寄ると、更にヒールをかける。
 杖による打撃と共に……

 「ヒール、ヒール、ヒール……」 

 ドゴ バキ グシャ!

 二日酔いの頭痛は直ぐに治ったが、打撃のダメージで激痛が走る。
 しかし、そのケガも激痛もヒールで直ぐに治ったかと思えば直後にまた殴られる。

 無限地獄だ……

 「す、すびばぜん…… ごべんなさい、も、もうやめて」

 「あら、もう二日酔いは治りまして?」

 「は、はい、治りました。反省してます」

 「それは良かったですわ。それで、もうお一人は……」

 ターナは正秀を睨みつける。
 それを見た正秀は、咄嗟にうつ伏せになると死んだ振りをするのだ。

 「まあ、大変、こちらも今直ぐにヒールを」

 「申し訳ありませんでした!」

 正秀は死んだ振りをしながら、必死に謝るであった……

 ……………
 ………
 …

 二人は床に正座をさせられた。

 「どう言うことか、説明して頂けまして?」

 為次は上目使いでターナを見ながら言い訳をする。

 「いやぁ、久しぶりのお酒で少々ハメを外しすぎまして」

 「あ、ああ、そうだな」

 ターナは二人を睨みつける。

 「「すいませんでした!」」

 二人は土下座で謝るのだ。

 「反省しておられるようですし、よろしくってよ。約束の時間になっても、お二方ともお見えになられなかった理由も分かりましたし」

 「約束の時間?」

 為次は約束のことなど知らない。

 「為次、すまねぇ…… すっかり忘れていた。今日はターナ達に街を案内してもらう予定だったんだ」

 「しょうがない人ですわね」

 「すまねぇ……」

 「まあ、その件は置いといて、もう一つお訊きしたいことがありますわ」

 「なんでしょーか?」
 と、為次。

 「キューリ小屋はどう言うことでして?」

 「きゅーり? きゅーりって?」

 「あらら、キューリも知らないのね。キューリってのはね……」

 マヨーラの説明によると、キューリとは鳥らしい。
 鳥と言っても飛べる分けではなく、ダチョウのように走るのが速い鳥だそうだ。
 中型の鳥類野獣で、飼いならし移動手段として活用する。
 言わば馬みたいな存在である。
 しかし、マヨーラはキューリが苦手だと言っている。
 何故かマヨーラだけはよく突っつかれるし、言うことを聞かないことも多いらしい。
 だから3人の時は徒歩で移動することが多いそうなのだ。

 「分かった?」

 「分かったかも」

 「分かったぜ」

 「それで、別荘の隣にそのキューリ小屋がなかったのかしら?」

 と、ターナはもう一度訊いてきた。

 「だってさ、マサ」

 「…………」

 当然、正秀には思い当たる節がある。
 昨晩レオパルト2の駐車場にしようとして破壊した小屋だ。

 正秀は突然、立ち上がるとガッツポーズみたいな変なポーズをとり叫ぶ!

 「そんなものは無かった!!」

 「マヨーラっ!!」

 「らいとにんぐぼるとぉ~」

 ビビビビビィ~

 「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!」

 結局二人は、小一時間程ターナの説教を聞く羽目になった。

 その後……

 「小屋の残骸を使用人に片付けさせますわ」とターナに言われたので、邪魔なレオパルト2をどかした。
 それから当初の目的通り皆で街へと行くことになった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 街に着くと、そこは人通りも多く、とても賑やかな場所である。
 正秀は昨日来ていたので、その様子は知っているが初めて来た為次は驚いていた。

 「おおすげ、屋台とかいっぱい出とるわ」

 「タメツグは初めてだったな」

 スレイブは振り返り為次に言った。

 「うん。ほんと、色々な人種がおるし、まさにファンタジーだねこりゃ」

 「俺も昨日は驚いたぜ。んで、何処に行くんだ?」

 「とりあえず、服を買いに行かれてはどうかしら? そのボロボロの身なりはどうかと思いましてよ」

 二人の着ている自衛隊の迷彩服を見ながらターナは言った。
 洗濯もしていないので汚いし、戦闘や山中さんちゅうを走り回ったせいであちこちがほつれている。

 「そだね、ここじゃ迷彩の方が逆に目立っちゃうね。脱ぎたいわ」

 為次はあまり迷彩服が好きではなかった。
 もっとダラダラした楽にできる服を着たい。

 「それに臭いのよっ」

 マヨーラがさっきから少し離れて歩いていたのは匂いのせいらしい。

 「昨日、風呂にも入れなかったしなぁ」

 自分の服を摘みクンクンしてみる為次だが、よく分からない。

 「じゃあ服を買いに行くか。頼んだぜターナ」

 正秀はターナに言った。

 「分かりましたわ。では向こうのお店に行きましょうか」

 「おう」

 「りょかーい」

 そして、ターナに案内され皆で少し先の服屋に入った。

 「わぁ、これカワイイ。見て見てぇ、これどお?」

 ヒラヒラのいっぱい付いた服を体にあてがい、マヨーラは楽しそうにしている。

 「いいんじゃねぇか、お子様にはお似合いだぜ」

 「何よ! スレイブだってダサイ服ばっか着てるくせに」

 「そうか? ほとんどターナに選んでもらってるんだが?」

 「え? うそ? あのその……」

 マヨーラはしどろもどろになっている。

 それを見たターナは笑いながら言う。

 「私が選んだのは、ほとんどありませんわよ、ふふ」

 「ちょ、騙したわねスレイブ!」

 「へへへっ、あの焦った顔。そっちのがお似合いだぜマヨーラ」

 「なんですって!」

 「んんっ、今日はマサヒデとタメツグの服を買いに来たのでしてよ」

 「「はい」」

 怒られたスレイブとマヨーラは急に大人しくなった。

 「それで、お二人はどれがお好みかしら?」

 「うーん、俺はこれでいいや」

 為次は上下セットの少し大きめな黒のスウェットみたいなのを適当に持って来た。

 「センス以前の問題ね」

 「ほとんどパジャマじゃねーかよ」

 その服を見たマヨーラとスレイブは呆れていた。

 「これでいいの、このまま寝れるし」

 「まあ、本人が良いとおっしゃるなら…… マサヒデはどれにいたしますの?」

 「そうだな、冒険者っぽいのがいいかな」

 「では、こちらなどいかがでして?」

 白いシャツと、テーラージャケットを長くしたような上着に、スラックスをカーゴパンツっぽくしたのをターナは手にした。
 そのままシャツを正秀に充てがってみる。

 「おっ、中々カッコいいぜ。これで決まりかな」

 どうやら気に入ったらしい。
 為次も気に入った寝間着を持ちながら、何故か寝間着を探そうとする。

 「じゃ、後は似たようなの数着と下着と寝間着と靴と…… 適当に買ってきますか」

 そう言いながら為次は金を寄こせと正秀に向かって上手を差し出した。

 「そうだな、金は沢山もらったし…… あ、レオの中に置きっぱなしだぜぇ」

 為次は虚しく手を引っ込める。

 「…………」

 結局、お金はターナに立て替えてもらい、必要なものを買う二人であった。

※  ※  ※  ※  ※

 それから、みんなで昼食を食べ、冒険者ギルドへと向かった。

 仕事探しである。

 無難なクエストを選んでもらい、その日は、それで別れ家に帰ることにした。
 ギルドでは数枚の依頼書を持ち帰るのだった。

 別荘は自由に使っていいが、あまり無茶をするなとターナに念を押された。
 それと、「困ったことがあれば、いつでも訪ねて来てちょうだい」とも言われた。

 二人が家に着く頃には辺りは暗くなっていた。
 夜空には再び謎のリングが浮いている。
 しかし、今夜は楕円形であった。

 正秀はリングを見上げて言う。

 「そう言や、あのリングのこと聞くの忘れてたな」

 「ああ、そだね。今夜は長丸になってるね、自転してるっぽいかも」

 「そんなことより、今夜はワインだぜ。飲みながらミッション選ぼうぜ」

 「うん」

 異世界の2日目……

 何となく、この世界にも慣れてきた二人であった。
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