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異世界編 1章
第19話 帰宅
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酒場でターナ達と別れた為次。
スイを連れて街外れに駐車していたレオパルト2の所へと戻って来た。
戦車が直ぐ近くにあると、何故かとても安心する。
そのお陰だろうか、ようやく落ち着きを取り戻したのであった。
「はぁ、やっと戻って来れたわ。やっぱりお前が居ないとダメだなレオ」
レオパルト2に話しかけると、車体をナデナデしながら鉄の肌触りを堪能する。
おっぱいの感触も捨て難いが、やはり鉄の感触と油の匂いは何ものにも変え難い。
しかも、それが地上最強の車両ともなれば尚更である。
だから為次は、しばしの間、レオパルト2を堪能し現実逃避をするのであった。
とはいえ、何時までも戦車を愛でている分けにもいかない。
今はスイを連れ帰って、何とか正秀を誤魔化さなければならないのだ。
奴隷を買ったことや、それに使ってしまった5千万ゴールドの言い訳を。
為次は振り返ってスイを見ると数メートル離れて立っている。
ずっとあの距離を保って着いて来ていたようだ。
やはり、臭いと怒鳴られたのがショックだったのだろう。
「うーん…… あのぉ、スイ」
「はい、なんでしょう? ご主人様」
「臭いと言ったのは悪かったよ。ごめんね」
「はぃ」
「だから、その…… もう少し、こちらに来てもらえるかなぁ。って」
「はい、ご主人様」
返事をしながらスイは為次の方へと近寄って来た。
あの時、為次は思わずスイに臭いと言ってしまったが、実際に臭い。
奴隷として飼われていたので、ロクに風呂も入れてもらえなかったのだろう。
「えっと、とりあえず仲間を紹介するね。これがレオパルト2だよ」
レオパルト2の車体を、ポンポンしながら為次は言った。
「こちらの方が、れおぱるとつばい様ですか」
「あ、はい」
「とてもたくましい、お体なのですね」
「まあ、そうね…… じゃあ、そっちから登って」
「え? ご主人様のお仲間に登ってよろしいのでしょうか?」
「うん、登らないと入れないから」
そう言いながら、為次は砲塔に上がると装填手ハッチを開ける。
「じゃあ、ここから入って」
「はい、では失礼します。つばい様」
「つば…… (良かった、ツヴァイで教えて。壺様とか呼ばれるとこだったわ)」
スイが車内に入ると、為次も車長ハッチから車内に入る。
そして、床に置いてあった装填手のシートを手に取り、座り方とハッチの開け閉めをスイに教えた。
「じゃあ借家に着くまで、そこで休んでてね」
「はい、ご主人様」
為次は運転席に行くと、エンジンを始動させる。
主の姿が見えなくなり、車内にエンジン音が響くと、スイは狭い車内をキョロキョロしながら不安そうに怯えていた。
そんな、スイの気持ちも知らずに為次はレオパルト2を走らせ始める。
「きゃっ」
戦車を動かすと少女の小さな悲鳴が聞こえた。
それを聞いた為次は、ペリスコープでも覗かせとけばよかったかな?
などと思いながら帰路に就くのであった。
※ ※ ※ ※ ※
借家に到着すると辺りはすっかり暗くなっていた。
部屋には明かりが灯っている。
どうやら、正秀は既に帰宅しているようだ。
とりあえず玄関先にレオパルト2を停車させる。
そして、ハッチから頭だけ出したままの為次は悩んだ。
うーん、マサになんと言えばいいかな……
スイにロボットのマネさせてダッチワイフですって。
いやいや、5千万ゴールドのダッチワイフってなんだよ。
そもそもダッチワイフ買ってきたって、意味わかんない。
そうだ! 等身大フィギュアですって……
いやいや、フィギュアを風呂に入れたらフニャフニャになるだろ!
って、そう言う問題じゃねーぞ、俺よ。
なんて為次がアホなことを考えながら悩んでいると、玄関の扉が開いた。
正秀のお出迎えのようである。
「よう為次、戻ったのか」
「ぎゃぁぁぁ! マサぁ!」
「なんなんだよ」
「あ、いや…… なんでもないよ」
「相変わらず、変な奴だな」
「へへへ、変じゃないよ。なんも変じゃないよ!」
「んん?」
あからさまに為次の様子がおかしい、その時であった。
装填手ハッチが開くとスイが車内から出てきてしまった。
「どうされました? ご主人様」
主の悲鳴を聞き、心配して出てきたようだ。
しかし、為次の位置からは楔形装甲が邪魔で見えない。
「誰だ? その娘」
「は?」
為次は慌てて、運転手ハッチから這いずり出ると、レオパルト2を振り返る。
そこには装填手ハッチから身を乗り出したスイが居た。
「ぎゃぁぁぁ!」
「だから、なんなんだよお前は」
「あわわわ…… フィギュアです!」
「は?」
「等身大フィギュアです!! そうです、そうなんです!」
「そんな分けないだろ……」
為次では埒が明かないので正秀は少女に尋ねる。
「んで、君はだれなんだ?」
「私はスイと申します。本日為次様の奴隷として買っていただきました」
「ぎゃぁぁぁ!」
「…………」
正秀が無言で為次を睨んだあとに言う。
「とりあえず、中でゆっくり話を聞こうか? 為次君」
「う、うぐぅ…… はぁ……」
観念した為次はスイを連れて借家へと入って行くのだった……
……………
………
…
ロビーに入ると、テーブルの上に巨大な剣が置いてあった。
その大剣の重さにギリギリ耐えているテーブルはギシギシしている。
しかし、為次は今それどころではない。
為次と正秀はソファーに座ると、スイは為次の横に立った。
「スイちゃん、ちょっと臭うな。風呂に入ってきた方がいいんじゃないのか?」
正秀にそう言われたスイは為次を見つめる。
「う、うん。向こうの扉の先に風呂があるからスイは風呂に行っておいで。あと、何時までも魔法少女だとアレだし、今日買ってもらった寝間着に着替えるといいよ」
「はい、ご主人様。ありがとうございます」
返事をするとスイは、言われたようにお風呂に向かった。
そして、ロビーには為次と正秀の二人になる。
「じゃあ、説明してもらおうか?」
「は、はい……」
もう、誤魔化しようのない為次は、素直に今日の出来事を話した。
流石におっぱい関連のことは黙っておいたが、その他のことは洗いざらい話したのだ。
ターナ達から聞かされた、奴隷についての説明もしておいた。
「なるほどな、そういうことか……」
「そうです……」
「理由はともかく、お前が奴隷を買ってくるなんて正直おどろいたぜ」
「自分でもびっくりです。はい」
そして、為次の説明が終わった頃に、スイはお風呂から上がりロビーに戻って来た。
その姿は、胸の所以外はシースルーのナイトドレスであった。
「お風呂に入らせていただきました。ご主人様」
と、為次に向かってお辞儀をする。
その拍子に、胸元の奥が見えそうになるのだ!
否! 微かに突起が見えたかも知れない!
「ぎゃぁぁぁ! 何その恰好!?」
「え?」
「またセクシーなパジャマを買ってやったな。為次」
「違うでしょ! さっき説明したでしょ! 買ったのはターナ達だったよねっ」
「ははっ、分かってるよ」
「あの…… おかしいでしょうか?」
「い、いや、似合ってますけど、ちょっと目のやり場に困るだけです。はい」
「似合ってるぜ、スイちゃん」
「とりあえず、スイもここに座ってよ」
「いえ、私は結構です」
そう言いうと、スイは為次の横に立った。
奴隷とはそういうものだと、聞いてはいた。
かと言って、立たせっぱなしもどうかと思う為次ではあるが、命令して座らせるのも嫌であった。
「それじゃあ、スイちゃんちょっと聞いてもいいかな?」
「はい、なんでしょう?」
正秀はスイに話を聞こうと思った。
しかし、その前に自己紹介かなとも思う。
「っとその前に、俺は正秀だ。為次の保護者みたいなもんだ、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「保護者って……」
「それで、お父さんやお母さんは?」
先程、奴隷の子は奴隷と為次から説明を受けたが一応は聞いてみた。
「お母様は私を生んですぐに処分されたと聞きます。お父様は…… 申し訳ございませんが存じません」
「そうか、分かった。知り合いとか親戚とか、帰れる場所も無いのかな?」
「はい」
行く宛の無い奴隷少女に為次は焦る。
「マサぁ、どうしよう……」
「どうもこうもないだろ、俺達で面倒見るしかないないぜ」
「う、うん…… でも、いいの?」
「犬や猫みたいに、そこら辺に捨てるわけにもいかないしな」
「もっと、怒ると思ってたけど……」
「お前は何も悪いことしてないだろ?」
「うん」
「じゃあ仕方ねーよな、人を助けるのが俺達の仕事だからな」
「そっか……」
正秀にそう言われた為次は傍にいるスイを振り返る。
「よろしくね、スイ」
「はい、ご主人様」
「それじゃ、一杯呑みながら晩飯にするか」
「うん。ところで、この大剣じゃまだよね」
「かっこいいだろ、コレを買いに行ってたんだぜ。いつまでもお前に頼ってばかりも癪だからな。俺も強くなろうと思ってさ」
「持てるの?」
「持ち上がらないぜ」
「…………」
それから、正秀の買ってきていた酒と肴を食べた。
為次はスイに空いている部屋を割り当て、残った肴と飲み物を与えると、「部屋でゆっくり食べるといいよ」と言っておいた。
そして、異世界の4日目が終わる……
※ ※ ※ ※ ※
その頃……
ターナとスレイブはガザフ邸に居た。
「どうしてあの娘を渡したの? 処分するように言わなかったかしら?」
「せっかくの勇者様の頼みでしたからね」
「王族の血をひく奴隷だと世間に疑われるのはよろしくありませんわ」
「大丈夫ですよ、ターナ様は心配しすぎだよ」
「だと、いいんだがな」
と、スレイブは口を挟む。
「それに、向こうの戦力も強化しといた方がいいかなと思いましてね」
「それは、そうですけれど…… まあ、いいですわ。それよりエレメンタルストーンはどちらでして?」
「どうぞターナ様、こちっだよ」
ガザフは隣の部屋へとターナを案内する。
そこには大きなエレメンタルストーンが置いてあった。
「次はもっと楽しくなりそうね、ふふっ」
不気味に赤い輝きを放つエレメンタルストーン。
それを見つめるターナは、とても満足そうであった……
スイを連れて街外れに駐車していたレオパルト2の所へと戻って来た。
戦車が直ぐ近くにあると、何故かとても安心する。
そのお陰だろうか、ようやく落ち着きを取り戻したのであった。
「はぁ、やっと戻って来れたわ。やっぱりお前が居ないとダメだなレオ」
レオパルト2に話しかけると、車体をナデナデしながら鉄の肌触りを堪能する。
おっぱいの感触も捨て難いが、やはり鉄の感触と油の匂いは何ものにも変え難い。
しかも、それが地上最強の車両ともなれば尚更である。
だから為次は、しばしの間、レオパルト2を堪能し現実逃避をするのであった。
とはいえ、何時までも戦車を愛でている分けにもいかない。
今はスイを連れ帰って、何とか正秀を誤魔化さなければならないのだ。
奴隷を買ったことや、それに使ってしまった5千万ゴールドの言い訳を。
為次は振り返ってスイを見ると数メートル離れて立っている。
ずっとあの距離を保って着いて来ていたようだ。
やはり、臭いと怒鳴られたのがショックだったのだろう。
「うーん…… あのぉ、スイ」
「はい、なんでしょう? ご主人様」
「臭いと言ったのは悪かったよ。ごめんね」
「はぃ」
「だから、その…… もう少し、こちらに来てもらえるかなぁ。って」
「はい、ご主人様」
返事をしながらスイは為次の方へと近寄って来た。
あの時、為次は思わずスイに臭いと言ってしまったが、実際に臭い。
奴隷として飼われていたので、ロクに風呂も入れてもらえなかったのだろう。
「えっと、とりあえず仲間を紹介するね。これがレオパルト2だよ」
レオパルト2の車体を、ポンポンしながら為次は言った。
「こちらの方が、れおぱるとつばい様ですか」
「あ、はい」
「とてもたくましい、お体なのですね」
「まあ、そうね…… じゃあ、そっちから登って」
「え? ご主人様のお仲間に登ってよろしいのでしょうか?」
「うん、登らないと入れないから」
そう言いながら、為次は砲塔に上がると装填手ハッチを開ける。
「じゃあ、ここから入って」
「はい、では失礼します。つばい様」
「つば…… (良かった、ツヴァイで教えて。壺様とか呼ばれるとこだったわ)」
スイが車内に入ると、為次も車長ハッチから車内に入る。
そして、床に置いてあった装填手のシートを手に取り、座り方とハッチの開け閉めをスイに教えた。
「じゃあ借家に着くまで、そこで休んでてね」
「はい、ご主人様」
為次は運転席に行くと、エンジンを始動させる。
主の姿が見えなくなり、車内にエンジン音が響くと、スイは狭い車内をキョロキョロしながら不安そうに怯えていた。
そんな、スイの気持ちも知らずに為次はレオパルト2を走らせ始める。
「きゃっ」
戦車を動かすと少女の小さな悲鳴が聞こえた。
それを聞いた為次は、ペリスコープでも覗かせとけばよかったかな?
などと思いながら帰路に就くのであった。
※ ※ ※ ※ ※
借家に到着すると辺りはすっかり暗くなっていた。
部屋には明かりが灯っている。
どうやら、正秀は既に帰宅しているようだ。
とりあえず玄関先にレオパルト2を停車させる。
そして、ハッチから頭だけ出したままの為次は悩んだ。
うーん、マサになんと言えばいいかな……
スイにロボットのマネさせてダッチワイフですって。
いやいや、5千万ゴールドのダッチワイフってなんだよ。
そもそもダッチワイフ買ってきたって、意味わかんない。
そうだ! 等身大フィギュアですって……
いやいや、フィギュアを風呂に入れたらフニャフニャになるだろ!
って、そう言う問題じゃねーぞ、俺よ。
なんて為次がアホなことを考えながら悩んでいると、玄関の扉が開いた。
正秀のお出迎えのようである。
「よう為次、戻ったのか」
「ぎゃぁぁぁ! マサぁ!」
「なんなんだよ」
「あ、いや…… なんでもないよ」
「相変わらず、変な奴だな」
「へへへ、変じゃないよ。なんも変じゃないよ!」
「んん?」
あからさまに為次の様子がおかしい、その時であった。
装填手ハッチが開くとスイが車内から出てきてしまった。
「どうされました? ご主人様」
主の悲鳴を聞き、心配して出てきたようだ。
しかし、為次の位置からは楔形装甲が邪魔で見えない。
「誰だ? その娘」
「は?」
為次は慌てて、運転手ハッチから這いずり出ると、レオパルト2を振り返る。
そこには装填手ハッチから身を乗り出したスイが居た。
「ぎゃぁぁぁ!」
「だから、なんなんだよお前は」
「あわわわ…… フィギュアです!」
「は?」
「等身大フィギュアです!! そうです、そうなんです!」
「そんな分けないだろ……」
為次では埒が明かないので正秀は少女に尋ねる。
「んで、君はだれなんだ?」
「私はスイと申します。本日為次様の奴隷として買っていただきました」
「ぎゃぁぁぁ!」
「…………」
正秀が無言で為次を睨んだあとに言う。
「とりあえず、中でゆっくり話を聞こうか? 為次君」
「う、うぐぅ…… はぁ……」
観念した為次はスイを連れて借家へと入って行くのだった……
……………
………
…
ロビーに入ると、テーブルの上に巨大な剣が置いてあった。
その大剣の重さにギリギリ耐えているテーブルはギシギシしている。
しかし、為次は今それどころではない。
為次と正秀はソファーに座ると、スイは為次の横に立った。
「スイちゃん、ちょっと臭うな。風呂に入ってきた方がいいんじゃないのか?」
正秀にそう言われたスイは為次を見つめる。
「う、うん。向こうの扉の先に風呂があるからスイは風呂に行っておいで。あと、何時までも魔法少女だとアレだし、今日買ってもらった寝間着に着替えるといいよ」
「はい、ご主人様。ありがとうございます」
返事をするとスイは、言われたようにお風呂に向かった。
そして、ロビーには為次と正秀の二人になる。
「じゃあ、説明してもらおうか?」
「は、はい……」
もう、誤魔化しようのない為次は、素直に今日の出来事を話した。
流石におっぱい関連のことは黙っておいたが、その他のことは洗いざらい話したのだ。
ターナ達から聞かされた、奴隷についての説明もしておいた。
「なるほどな、そういうことか……」
「そうです……」
「理由はともかく、お前が奴隷を買ってくるなんて正直おどろいたぜ」
「自分でもびっくりです。はい」
そして、為次の説明が終わった頃に、スイはお風呂から上がりロビーに戻って来た。
その姿は、胸の所以外はシースルーのナイトドレスであった。
「お風呂に入らせていただきました。ご主人様」
と、為次に向かってお辞儀をする。
その拍子に、胸元の奥が見えそうになるのだ!
否! 微かに突起が見えたかも知れない!
「ぎゃぁぁぁ! 何その恰好!?」
「え?」
「またセクシーなパジャマを買ってやったな。為次」
「違うでしょ! さっき説明したでしょ! 買ったのはターナ達だったよねっ」
「ははっ、分かってるよ」
「あの…… おかしいでしょうか?」
「い、いや、似合ってますけど、ちょっと目のやり場に困るだけです。はい」
「似合ってるぜ、スイちゃん」
「とりあえず、スイもここに座ってよ」
「いえ、私は結構です」
そう言いうと、スイは為次の横に立った。
奴隷とはそういうものだと、聞いてはいた。
かと言って、立たせっぱなしもどうかと思う為次ではあるが、命令して座らせるのも嫌であった。
「それじゃあ、スイちゃんちょっと聞いてもいいかな?」
「はい、なんでしょう?」
正秀はスイに話を聞こうと思った。
しかし、その前に自己紹介かなとも思う。
「っとその前に、俺は正秀だ。為次の保護者みたいなもんだ、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「保護者って……」
「それで、お父さんやお母さんは?」
先程、奴隷の子は奴隷と為次から説明を受けたが一応は聞いてみた。
「お母様は私を生んですぐに処分されたと聞きます。お父様は…… 申し訳ございませんが存じません」
「そうか、分かった。知り合いとか親戚とか、帰れる場所も無いのかな?」
「はい」
行く宛の無い奴隷少女に為次は焦る。
「マサぁ、どうしよう……」
「どうもこうもないだろ、俺達で面倒見るしかないないぜ」
「う、うん…… でも、いいの?」
「犬や猫みたいに、そこら辺に捨てるわけにもいかないしな」
「もっと、怒ると思ってたけど……」
「お前は何も悪いことしてないだろ?」
「うん」
「じゃあ仕方ねーよな、人を助けるのが俺達の仕事だからな」
「そっか……」
正秀にそう言われた為次は傍にいるスイを振り返る。
「よろしくね、スイ」
「はい、ご主人様」
「それじゃ、一杯呑みながら晩飯にするか」
「うん。ところで、この大剣じゃまだよね」
「かっこいいだろ、コレを買いに行ってたんだぜ。いつまでもお前に頼ってばかりも癪だからな。俺も強くなろうと思ってさ」
「持てるの?」
「持ち上がらないぜ」
「…………」
それから、正秀の買ってきていた酒と肴を食べた。
為次はスイに空いている部屋を割り当て、残った肴と飲み物を与えると、「部屋でゆっくり食べるといいよ」と言っておいた。
そして、異世界の4日目が終わる……
※ ※ ※ ※ ※
その頃……
ターナとスレイブはガザフ邸に居た。
「どうしてあの娘を渡したの? 処分するように言わなかったかしら?」
「せっかくの勇者様の頼みでしたからね」
「王族の血をひく奴隷だと世間に疑われるのはよろしくありませんわ」
「大丈夫ですよ、ターナ様は心配しすぎだよ」
「だと、いいんだがな」
と、スレイブは口を挟む。
「それに、向こうの戦力も強化しといた方がいいかなと思いましてね」
「それは、そうですけれど…… まあ、いいですわ。それよりエレメンタルストーンはどちらでして?」
「どうぞターナ様、こちっだよ」
ガザフは隣の部屋へとターナを案内する。
そこには大きなエレメンタルストーンが置いてあった。
「次はもっと楽しくなりそうね、ふふっ」
不気味に赤い輝きを放つエレメンタルストーン。
それを見つめるターナは、とても満足そうであった……
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