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異世界編 1章
第30話 喧嘩
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ガザフ邸からの帰り道、三人の口数は少なかった。
スイは主に疑われているのを気にしているのか、結構いじけている。
そして、何時もの屋台が並んでいる道を通り抜けると見えて来る。
木の陰に駐車してあるレオパルト2が……
「やっと着いたね」
「為次じゃねーが、レオがあると安心するな」
「うん。スイ、またレオに魔法かけてよー」
「むぅー……」
「スイちゃん……」
「はぁい……」
スネながらも魔法を戦車にかけてくれる。
「エンチャントリバースグラビティむぅー」
「もぉー、いつまで怒ってるの…… スイ」
「別に怒っていませんです。むー」
「はぁ…… とりあえず乗ってよ」
「はぁい……」
スイは言われたように戦車に乗り込もうとするのだが、正秀は搭乗しようとはせず腕を組んで砲塔の上を見ていた。
「ちょっと待ってくれ」
正秀はそう言いうと砲塔に飛び乗った。
車長席には入ろうとせず、置いてあった大剣を手にする。
そして、片手で持ち上げ軽々と振り回して見せるのだ。
「おお、すげーぜ」
大剣を持って砲塔からジャンプすると、近くにあった木に回転しながら斬りかかる。
そのまま、高さ10メートルはあろう木の上から下へと大剣を振り下ろした。
「うぉりゃぁぁぁ!」
ズバババッ!
何と! 木は縦真っ二つに斬れてしまった!
ちなみに、斬った木は戦車を駐車している木とは別のだ。
それを見ていた為次は唖然としている。
「マジかよ…… バケモンだは」
やっちゃった本人すらも、驚いている様子だ。
「す、すげぇ…… ぜ。これなら敵なしだぜ、多分」
「おおう、怪物退治はマサに期待せざるを得ない」
「おう! 任せときな、へへっ」
「スイもお役に立ちますよ。むぅー」
「あ、う、うん、もちろんスイにも期待してるよ」
「ほんとですかぁ?」
「ほ、ほんとだってば……」
「……むぅ」
「…………」
黙る為次を見ながら正秀は言う。
「そんじゃ、帰るとするか」
「うい」
「はぁい」
正秀はとりあえず大剣を砲塔後部に置いて車内へ。
三人が搭乗すると、為次は軽くなった戦車を動かし始める。
レオパルト2は相変わらず快調であるが、三人はちょっと微妙な雰囲気だ。
もっとも、正秀は大剣の威力にご満悦なのか、嬉しそうではある。
だが、やっぱりガザフ邸での為次の行動に不満が残るのだ……
「なあ、為次」
「んー、何ぃ?」
「なんでイキナリ撃ったんだよ? いくらなんでも非常識だろ」
先程のガザフ邸での出来事を思い出しながら正秀は尋ねる。
「はぁ……」
「なんだよ、はぁっ、て」
「別にぃ」
「……なぁ」
「非常識な世界だから、非常識な撃ち方をしただけ。そんだけ」
「そうかい。ま、この手記もあるし帰ってからにするか」
「うん……」
そして、レオパルト2はエンジン音を鳴り響かせながら、三人を乗せて借家へと向かうのであった……
※ ※ ※ ※ ※
借家に着くと、皆はお腹が空いているので遅い昼食を取ることになった。
ガザフ邸での食事は血まみれになったので食べていない。
スイはまだ、ご機嫌斜めではあるが食事の準備をしてくれたのだ。
三人はソファーに座ると、テーブルの上に置かれた大剣を食卓にして食べ始める。
スイは為次の被っている洗面器を狙っている様子だが、また、怒られると思い渋々お皿で食べるのであった。
「腹減ってるから、余計に美味いなスイちゃんの飯は」
「そうね」
「えへへ、ありがとうございますぅ」
スイは二人に褒められて嬉しそうだが、心なしか寂しそうでもあった。
「じゃ、早速だけどなんか弁解はあるのか? 為次」
「は? 弁解って……」
「ガザフのとこでだよ。やり過ぎだろ……」
「また、その話…… もー、めんどくさいなぁ」
「めんどくさいって、こたぁねーだろ」
「はぁ、簡単なことだよ、一発撃ってみれば敵かどうか直ぐ分かるでしょ。実際、その後はガザフも大人しく話たわけだし」
「いや、そう言う問題じゃないだろ。イキナリ人の腕を千切るヤツが居るか? それに、スイちゃんを試すようなことをして。あのカーラってメイドさんに、謝りながら蹴り入れてたぞ」
「はいはい、分かった、分かった。俺が悪かったよ」
「なんだよ、その言い方は」
「…………」
「なんとか言ったらどうだ?」
「ああ、もう、そうね…… じゃあ、ご馳走さんとでも言っとくよ。レオでも洗って来るわ、焦げたままだし」
「おい、為次っ」
「俺が居ると、飯が不味くなるみたいだからね……」
為次は食事に少し手を付けただけで、フォークを置いて立ち上がろうとした。
しかし、立ち上がろうとした、その時だった。
「ご主人様、待って下さい……」
「ん? 何?」
為次の前に立ち、悲しそうに言うのだ。
「私のせいですよね…… 私のせいでご主人様が嫌な思いをするんですよね……」
スイは為次の前に立っているが、テーブルとソファーの間なので、二人の距離はかなり近い。
目の前のスイを見上げながら言う。
「いや…… ち、違うて……」
「スイちゃん……」
正秀もスイの突然の行動に戸惑っている。
そして、スイは叫ぶように涙を流しながら為次の前で話し始めるのだ。
「私がご主人様を困らせているんですよねっ!」
「いや…… あの……」
為次も戸惑っている。
「ご主人様に買われたあの日も、私のせいで困らせてたんですよねっ!」
「違っ……」
「ご主人様に助けてもらって…… 私は、スイは…… ご主人様に体も命も全てを捧げるつもりでいます! だけど…… だけど、私が居ることでご主人様が…… ご主人様が…… うぇ…… ご主人様がスイのことを迷惑なら…… スイをさっさと処分して下さいよっ! どうして、こんな出来損ないの奴隷を飼っているんですかっ!」
「ス…… イ……?」
「どうして、ご主人様が出て行こうとするんですか? 私なんて居ない方がいいじゃないですかっ!! ご主人様に迷惑をかけるくらいなら、助けてもらわない方がよかった! 要らないならさっさと殺して下さいっ! 死ねと言わればすぐにでも死にますよっ!!」
「スイっ! いい加減にしろ!」
思わずスイに向かって叫ぶ為次!
バチーン!
思いっきり引っ叩いてしまった。
だが、自分の愚かな行為に為次は直ぐさま後悔する。
「……あ」
「……おい、お前……」
「……きゃぁん」
スイは大粒の涙を流しながら、為次を睨つけている。
「な、な、な! 何するんですかっ!」
「あの、その…… ごめんなさい……」
スイをビンタしたバカな為次はどうしていいのか分からない。
「信じられません! 意味が分からないですよ!」
「マジでお前、何考えてんだ?」
「いや…… だってさ、目の前にさ……」
ビンタをしてしまった……
「どうして、スイのおっぱいを叩くんですかっ!」
ビンタをしてしまった……
おっぱいをだっ!
「だから…… 目の前に、けしからんモノがぷるんぷるんって…… ぷるん ぷるん」
「意味分かんねぇー」
「ほんとですよ、普通は頬っぺたとかじゃないですか? 叩くのはっ」
「いや、ほんと、スイさんのおっしゃる通りでして……」
「もう、ご主人様なんて知りませんっ! ご主人様のバカぁー!」
スイは叫ぶと為次の前から走って行ってしまう。
「あ、ちょ、スイ……」
そして、部屋に入り閉じこもってしまった。
為次の部屋に……
「あーぁ、スイちゃん行っちまったぞ。おまえの部屋に」
「あぅ…… スイ……」
「早く行ってやった方が、いいんじゃないのか?」
「え? なんで…… 俺が?」
「だって、お前の部屋だろ」
「うぐっ。あぁぁぁ! もうっ! なんなのっ!」
とうとう、為次は叫び始めてしまうのでした。
※ ※ ※ ※ ※
一方、為次の部屋に飛び込んだスイも後悔していた……
「あ、あ…… 私はなんてことを…… こともあろうか、ご主人様をバカ呼ばわりして、しまいましたぁ。しかも、思わずご主人様の部屋に入ってしまいました。ど、どうしましょう…… ご主人様におっぱいを叩かれるくらい、なんとも無いはずですが…… どうして私は……」
不安になったスイは扉に耳を当てて、ロビーの様子を伺って見ることにした。
すると、ロビーの方から為次の叫び声が聞こえて来る。
「俺が何をしたってんだよ!」
「お、おい、為次……」
「ガザフの野郎がムカついたから、撃っただけだろ! マサは見てないから知らんだろうけど、どんだけスイがいたぶられたと思ってんだよっ! 腕一本で済んだだけでも、ありがたく思えっ!」
「為次、お前……」
「そりゃ、最初は話でも聞こうと思ったけど、アイツの顔見たらそれどころじゃないっての!」
それを聞いた正秀は、突然笑いだした。
「うははははは、そりゃいーや」
「え? ちょ、マサ、なんで笑うの……」
「初めから、そう言えよ。はははっ」
「えぇー?」
「お前はやっぱりバカで、安心したぜ」
「はぁ? んもー。そもそも、スイをけしかけたのだって、俺も疑いたく無かったから…… 変なわだかまりとかあると嫌だし……」
「ああ、分かったぜ」
「…………」
「じゃあ、早くスイちゃんのとこ行ってやれよ」
「でも…… スイ怒ってるし……」
「そりゃぁ、おっぱい叩けば怒るだろ」
「あうう」
「だけど、為次に来て欲しいから、お前の部屋に駆け込んだんだろ」
「…………」
「ほらっ、行ってこい」
正秀に背中を押されると、為次は憂鬱そうに自分の部屋に向うのだった。
そんな、ロビーの様子を伺っていたスイは、二人の会話を聞いて喜んでいた。
「ご主人様…… 私の為に…… えへ、えへへへ。ご主人様ぁ、えへへぇ。ハッ! こうしてる場合じゃありませんっ。ご、ご主人様が来ちゃいますぅ」
慌ててベットに潜り込むと、頭から布団を被った。
どうしていいのか分からず、とりあえず隠れたつもりなのだ。
トン トン トン
部屋の扉をノックする音が聞こえる。
はわわわ、どうしましょう……
とスイは布団の中で思った。
スイが返事をしないので、為次は仕方なく部屋に入って来るようだ。
「スイ、入るよ」
「…………」
為次は自分の部屋に入り辺りを見回すと、あからさまにベットの中に誰か居る。
とりあえず、ベットへと近づいてみる。
「スイ…… あの……」
「なんですかぁ?」
布団の中から、スイのこもった声が聞こえてくる。
そして、恥ずかしそうに顔だけ布団から覗かせた。
為次もベットへと腰掛ける。
「悪かったから、怒ってないで機嫌直してよ……」
「怒ってませんよ、ご主人様に怒る分けがありません」
「んー」
「それに…… すいません、先程のお二人のお話を聞いてしまいました……」
「え? マジで……」
「はぃ……」
「うぅ……」
「ご主人様ぁ!」
イキナリ為次に抱きついて来た。
「ごめんなさぃ、うぇぇぇ…… ごめんなさい、ご主人様ぁ」
「スイ…… 俺の方こそごめんね。痛かったよね」
「はぃ、ご主人様に叩かれた胸が痛いです」
「えっと、えっと、どうしよう…… ヒールポーション飲もうか?」
しかし、スイは為次の胸に顔を埋めながら首を振るのだ。
「ううん、飲まないです」
「えー、どうしよう……」
「ご主人様に擦ってもらえば、治るかもです」
「えっ!?」
「……んー、んー」
「い、いいの?」
「はいぃ。お、お願いしますぅ……」
為次はゴクリと生唾を飲み込む。
「分かりました! で、でわ、失礼します……」
そっと、おっぱいに触れて見る。
手には柔らかく、豊かな胸の感触が伝わってくるのだ。
「あんっ……」
なんとも言えない感触に、為次は夢中になる。
もはや、触れるどころか、ひたすら揉みしだくのだ。
「んん…… あっ、あっ、んぁ……」
甘い声で鳴きだすスイ。
「スイ…… はぁ、はぁ」
「んぁ、あっ、あ……、ご主人…… さまぁ……」
スイは身を悶えさせ、切ない顔をしながら、為次に顔を寄せてくる。
「はぁ、はぁ…… ご主人様さ…… ま…… あんっ、あんっ、んんんっー…… もっとぉ…… もっと触ってぇ……」
硬くなった突起を服の上から指でツマミあげる度に、スイはピクンピクンと身体を痙攣させる。
「……スイ」
「あ、ああ…… ご主人様……」
二人は見つめ合う。
そして、物欲しそうなスイの唇が触れる……
その瞬間だった!
バァン!!
突然、扉が開き誰か入ってくる。
それは当然、空気の読めない正秀だ!
「おい! 為次!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ! マサぁぁぁ!」
為次は叫びながらスイを突き放すと、手近にあった壺を手にするのだ。
突き飛ばされたスイは、ベットの反対側に転げ落ちる。
「にゃぁぁぁ!?」
「ん? どうした?」
「いや、いや、えっと……」
咄嗟に壺を撫でながら言う。
「コレはいいモノかもー」
「そうか…… あ、もしかして、邪魔したか?」
「いえいえ、全然、まったく、の~ぷろぶれむ」
「お、おう」
「そ、それより、どうかしたの?」
「おう、そうだ、コレ暇だったから読んでたぜ」
そう言いながら、ガザフの手記を為次に渡す。
「中々、面白いことが書いてあってな、お前にもすぐに見せようと思って」
「うむっ、なるほどっ、よしっ、直ぐに読もう、そうしよう」
「お、おう…… ところでスイちゃんは?」
「ここに居ますよぉ…… むー」
ベッドの向こうから、ふて腐れながら顔を覗かせてきた。
「なんだ、まだ怒ってるのか?」
「いや、アレはマサに対して怒ってるのかも……」
「は? 俺は何もしてないぜ」
「むぅ」
「まあいい、とりあえず手記を読もう」
「お、おう……」
そして、三人はロビーに戻ると、遅い昼食を再度食べながらガザフの手記を読み始める。
そこには、にわかには信じられないことが書いてあるのだった……
スイは主に疑われているのを気にしているのか、結構いじけている。
そして、何時もの屋台が並んでいる道を通り抜けると見えて来る。
木の陰に駐車してあるレオパルト2が……
「やっと着いたね」
「為次じゃねーが、レオがあると安心するな」
「うん。スイ、またレオに魔法かけてよー」
「むぅー……」
「スイちゃん……」
「はぁい……」
スネながらも魔法を戦車にかけてくれる。
「エンチャントリバースグラビティむぅー」
「もぉー、いつまで怒ってるの…… スイ」
「別に怒っていませんです。むー」
「はぁ…… とりあえず乗ってよ」
「はぁい……」
スイは言われたように戦車に乗り込もうとするのだが、正秀は搭乗しようとはせず腕を組んで砲塔の上を見ていた。
「ちょっと待ってくれ」
正秀はそう言いうと砲塔に飛び乗った。
車長席には入ろうとせず、置いてあった大剣を手にする。
そして、片手で持ち上げ軽々と振り回して見せるのだ。
「おお、すげーぜ」
大剣を持って砲塔からジャンプすると、近くにあった木に回転しながら斬りかかる。
そのまま、高さ10メートルはあろう木の上から下へと大剣を振り下ろした。
「うぉりゃぁぁぁ!」
ズバババッ!
何と! 木は縦真っ二つに斬れてしまった!
ちなみに、斬った木は戦車を駐車している木とは別のだ。
それを見ていた為次は唖然としている。
「マジかよ…… バケモンだは」
やっちゃった本人すらも、驚いている様子だ。
「す、すげぇ…… ぜ。これなら敵なしだぜ、多分」
「おおう、怪物退治はマサに期待せざるを得ない」
「おう! 任せときな、へへっ」
「スイもお役に立ちますよ。むぅー」
「あ、う、うん、もちろんスイにも期待してるよ」
「ほんとですかぁ?」
「ほ、ほんとだってば……」
「……むぅ」
「…………」
黙る為次を見ながら正秀は言う。
「そんじゃ、帰るとするか」
「うい」
「はぁい」
正秀はとりあえず大剣を砲塔後部に置いて車内へ。
三人が搭乗すると、為次は軽くなった戦車を動かし始める。
レオパルト2は相変わらず快調であるが、三人はちょっと微妙な雰囲気だ。
もっとも、正秀は大剣の威力にご満悦なのか、嬉しそうではある。
だが、やっぱりガザフ邸での為次の行動に不満が残るのだ……
「なあ、為次」
「んー、何ぃ?」
「なんでイキナリ撃ったんだよ? いくらなんでも非常識だろ」
先程のガザフ邸での出来事を思い出しながら正秀は尋ねる。
「はぁ……」
「なんだよ、はぁっ、て」
「別にぃ」
「……なぁ」
「非常識な世界だから、非常識な撃ち方をしただけ。そんだけ」
「そうかい。ま、この手記もあるし帰ってからにするか」
「うん……」
そして、レオパルト2はエンジン音を鳴り響かせながら、三人を乗せて借家へと向かうのであった……
※ ※ ※ ※ ※
借家に着くと、皆はお腹が空いているので遅い昼食を取ることになった。
ガザフ邸での食事は血まみれになったので食べていない。
スイはまだ、ご機嫌斜めではあるが食事の準備をしてくれたのだ。
三人はソファーに座ると、テーブルの上に置かれた大剣を食卓にして食べ始める。
スイは為次の被っている洗面器を狙っている様子だが、また、怒られると思い渋々お皿で食べるのであった。
「腹減ってるから、余計に美味いなスイちゃんの飯は」
「そうね」
「えへへ、ありがとうございますぅ」
スイは二人に褒められて嬉しそうだが、心なしか寂しそうでもあった。
「じゃ、早速だけどなんか弁解はあるのか? 為次」
「は? 弁解って……」
「ガザフのとこでだよ。やり過ぎだろ……」
「また、その話…… もー、めんどくさいなぁ」
「めんどくさいって、こたぁねーだろ」
「はぁ、簡単なことだよ、一発撃ってみれば敵かどうか直ぐ分かるでしょ。実際、その後はガザフも大人しく話たわけだし」
「いや、そう言う問題じゃないだろ。イキナリ人の腕を千切るヤツが居るか? それに、スイちゃんを試すようなことをして。あのカーラってメイドさんに、謝りながら蹴り入れてたぞ」
「はいはい、分かった、分かった。俺が悪かったよ」
「なんだよ、その言い方は」
「…………」
「なんとか言ったらどうだ?」
「ああ、もう、そうね…… じゃあ、ご馳走さんとでも言っとくよ。レオでも洗って来るわ、焦げたままだし」
「おい、為次っ」
「俺が居ると、飯が不味くなるみたいだからね……」
為次は食事に少し手を付けただけで、フォークを置いて立ち上がろうとした。
しかし、立ち上がろうとした、その時だった。
「ご主人様、待って下さい……」
「ん? 何?」
為次の前に立ち、悲しそうに言うのだ。
「私のせいですよね…… 私のせいでご主人様が嫌な思いをするんですよね……」
スイは為次の前に立っているが、テーブルとソファーの間なので、二人の距離はかなり近い。
目の前のスイを見上げながら言う。
「いや…… ち、違うて……」
「スイちゃん……」
正秀もスイの突然の行動に戸惑っている。
そして、スイは叫ぶように涙を流しながら為次の前で話し始めるのだ。
「私がご主人様を困らせているんですよねっ!」
「いや…… あの……」
為次も戸惑っている。
「ご主人様に買われたあの日も、私のせいで困らせてたんですよねっ!」
「違っ……」
「ご主人様に助けてもらって…… 私は、スイは…… ご主人様に体も命も全てを捧げるつもりでいます! だけど…… だけど、私が居ることでご主人様が…… ご主人様が…… うぇ…… ご主人様がスイのことを迷惑なら…… スイをさっさと処分して下さいよっ! どうして、こんな出来損ないの奴隷を飼っているんですかっ!」
「ス…… イ……?」
「どうして、ご主人様が出て行こうとするんですか? 私なんて居ない方がいいじゃないですかっ!! ご主人様に迷惑をかけるくらいなら、助けてもらわない方がよかった! 要らないならさっさと殺して下さいっ! 死ねと言わればすぐにでも死にますよっ!!」
「スイっ! いい加減にしろ!」
思わずスイに向かって叫ぶ為次!
バチーン!
思いっきり引っ叩いてしまった。
だが、自分の愚かな行為に為次は直ぐさま後悔する。
「……あ」
「……おい、お前……」
「……きゃぁん」
スイは大粒の涙を流しながら、為次を睨つけている。
「な、な、な! 何するんですかっ!」
「あの、その…… ごめんなさい……」
スイをビンタしたバカな為次はどうしていいのか分からない。
「信じられません! 意味が分からないですよ!」
「マジでお前、何考えてんだ?」
「いや…… だってさ、目の前にさ……」
ビンタをしてしまった……
「どうして、スイのおっぱいを叩くんですかっ!」
ビンタをしてしまった……
おっぱいをだっ!
「だから…… 目の前に、けしからんモノがぷるんぷるんって…… ぷるん ぷるん」
「意味分かんねぇー」
「ほんとですよ、普通は頬っぺたとかじゃないですか? 叩くのはっ」
「いや、ほんと、スイさんのおっしゃる通りでして……」
「もう、ご主人様なんて知りませんっ! ご主人様のバカぁー!」
スイは叫ぶと為次の前から走って行ってしまう。
「あ、ちょ、スイ……」
そして、部屋に入り閉じこもってしまった。
為次の部屋に……
「あーぁ、スイちゃん行っちまったぞ。おまえの部屋に」
「あぅ…… スイ……」
「早く行ってやった方が、いいんじゃないのか?」
「え? なんで…… 俺が?」
「だって、お前の部屋だろ」
「うぐっ。あぁぁぁ! もうっ! なんなのっ!」
とうとう、為次は叫び始めてしまうのでした。
※ ※ ※ ※ ※
一方、為次の部屋に飛び込んだスイも後悔していた……
「あ、あ…… 私はなんてことを…… こともあろうか、ご主人様をバカ呼ばわりして、しまいましたぁ。しかも、思わずご主人様の部屋に入ってしまいました。ど、どうしましょう…… ご主人様におっぱいを叩かれるくらい、なんとも無いはずですが…… どうして私は……」
不安になったスイは扉に耳を当てて、ロビーの様子を伺って見ることにした。
すると、ロビーの方から為次の叫び声が聞こえて来る。
「俺が何をしたってんだよ!」
「お、おい、為次……」
「ガザフの野郎がムカついたから、撃っただけだろ! マサは見てないから知らんだろうけど、どんだけスイがいたぶられたと思ってんだよっ! 腕一本で済んだだけでも、ありがたく思えっ!」
「為次、お前……」
「そりゃ、最初は話でも聞こうと思ったけど、アイツの顔見たらそれどころじゃないっての!」
それを聞いた正秀は、突然笑いだした。
「うははははは、そりゃいーや」
「え? ちょ、マサ、なんで笑うの……」
「初めから、そう言えよ。はははっ」
「えぇー?」
「お前はやっぱりバカで、安心したぜ」
「はぁ? んもー。そもそも、スイをけしかけたのだって、俺も疑いたく無かったから…… 変なわだかまりとかあると嫌だし……」
「ああ、分かったぜ」
「…………」
「じゃあ、早くスイちゃんのとこ行ってやれよ」
「でも…… スイ怒ってるし……」
「そりゃぁ、おっぱい叩けば怒るだろ」
「あうう」
「だけど、為次に来て欲しいから、お前の部屋に駆け込んだんだろ」
「…………」
「ほらっ、行ってこい」
正秀に背中を押されると、為次は憂鬱そうに自分の部屋に向うのだった。
そんな、ロビーの様子を伺っていたスイは、二人の会話を聞いて喜んでいた。
「ご主人様…… 私の為に…… えへ、えへへへ。ご主人様ぁ、えへへぇ。ハッ! こうしてる場合じゃありませんっ。ご、ご主人様が来ちゃいますぅ」
慌ててベットに潜り込むと、頭から布団を被った。
どうしていいのか分からず、とりあえず隠れたつもりなのだ。
トン トン トン
部屋の扉をノックする音が聞こえる。
はわわわ、どうしましょう……
とスイは布団の中で思った。
スイが返事をしないので、為次は仕方なく部屋に入って来るようだ。
「スイ、入るよ」
「…………」
為次は自分の部屋に入り辺りを見回すと、あからさまにベットの中に誰か居る。
とりあえず、ベットへと近づいてみる。
「スイ…… あの……」
「なんですかぁ?」
布団の中から、スイのこもった声が聞こえてくる。
そして、恥ずかしそうに顔だけ布団から覗かせた。
為次もベットへと腰掛ける。
「悪かったから、怒ってないで機嫌直してよ……」
「怒ってませんよ、ご主人様に怒る分けがありません」
「んー」
「それに…… すいません、先程のお二人のお話を聞いてしまいました……」
「え? マジで……」
「はぃ……」
「うぅ……」
「ご主人様ぁ!」
イキナリ為次に抱きついて来た。
「ごめんなさぃ、うぇぇぇ…… ごめんなさい、ご主人様ぁ」
「スイ…… 俺の方こそごめんね。痛かったよね」
「はぃ、ご主人様に叩かれた胸が痛いです」
「えっと、えっと、どうしよう…… ヒールポーション飲もうか?」
しかし、スイは為次の胸に顔を埋めながら首を振るのだ。
「ううん、飲まないです」
「えー、どうしよう……」
「ご主人様に擦ってもらえば、治るかもです」
「えっ!?」
「……んー、んー」
「い、いいの?」
「はいぃ。お、お願いしますぅ……」
為次はゴクリと生唾を飲み込む。
「分かりました! で、でわ、失礼します……」
そっと、おっぱいに触れて見る。
手には柔らかく、豊かな胸の感触が伝わってくるのだ。
「あんっ……」
なんとも言えない感触に、為次は夢中になる。
もはや、触れるどころか、ひたすら揉みしだくのだ。
「んん…… あっ、あっ、んぁ……」
甘い声で鳴きだすスイ。
「スイ…… はぁ、はぁ」
「んぁ、あっ、あ……、ご主人…… さまぁ……」
スイは身を悶えさせ、切ない顔をしながら、為次に顔を寄せてくる。
「はぁ、はぁ…… ご主人様さ…… ま…… あんっ、あんっ、んんんっー…… もっとぉ…… もっと触ってぇ……」
硬くなった突起を服の上から指でツマミあげる度に、スイはピクンピクンと身体を痙攣させる。
「……スイ」
「あ、ああ…… ご主人様……」
二人は見つめ合う。
そして、物欲しそうなスイの唇が触れる……
その瞬間だった!
バァン!!
突然、扉が開き誰か入ってくる。
それは当然、空気の読めない正秀だ!
「おい! 為次!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ! マサぁぁぁ!」
為次は叫びながらスイを突き放すと、手近にあった壺を手にするのだ。
突き飛ばされたスイは、ベットの反対側に転げ落ちる。
「にゃぁぁぁ!?」
「ん? どうした?」
「いや、いや、えっと……」
咄嗟に壺を撫でながら言う。
「コレはいいモノかもー」
「そうか…… あ、もしかして、邪魔したか?」
「いえいえ、全然、まったく、の~ぷろぶれむ」
「お、おう」
「そ、それより、どうかしたの?」
「おう、そうだ、コレ暇だったから読んでたぜ」
そう言いながら、ガザフの手記を為次に渡す。
「中々、面白いことが書いてあってな、お前にもすぐに見せようと思って」
「うむっ、なるほどっ、よしっ、直ぐに読もう、そうしよう」
「お、おう…… ところでスイちゃんは?」
「ここに居ますよぉ…… むー」
ベッドの向こうから、ふて腐れながら顔を覗かせてきた。
「なんだ、まだ怒ってるのか?」
「いや、アレはマサに対して怒ってるのかも……」
「は? 俺は何もしてないぜ」
「むぅ」
「まあいい、とりあえず手記を読もう」
「お、おう……」
そして、三人はロビーに戻ると、遅い昼食を再度食べながらガザフの手記を読み始める。
そこには、にわかには信じられないことが書いてあるのだった……
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毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
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林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
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スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
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科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
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食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
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クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
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本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
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