異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第41話 早朝

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 俺様は山崎為次二等陸士、陸上自衛隊の超スーパーエリートだ。
 二等陸士ってのは自衛隊で一番偉い役職か称号かミドルネームの何かだ、間違いない。
 わかりやすく言えば、多分、提督だ。

 そして、俺の部下である水谷正秀三等陸尉は、まだまだ新米のぺーぺーである。
 いつもヘマばかりしやがって、私を困らせてばかりだ。

 あー、困った、困った……

 だが、それも仕方あるまい、初心者とはそう言う者なのだからな。

 それから、もう一人部下が居る。
 名前はスイ、役職も苗字も無い変な女だ。
 私のことをご主人様と呼び、更に頭も弱いと来たもんだ。

 あー、困った、困った……

 そんな、スーパーウルトラデラックスメーンである私は今とても困っている。

 あー、困った、困った……

 私は昨日から木に吊るされていて、トイレに行けてない……

 「あー、マジで困ったわー、トイレ行きたいわー」

 そんな為次は、寝不足と膀胱の限界により、訳の分からない妄想をしていたのだ。

 「なーんで、デラックス提督の俺様が縛られて木に吊るされてるの? 意味が分かんないわー。しかも、なーんで、俺様の下でスイは寝てるの? 意味が分かんないわー。さっさと俺様を下ろせばいいのに、役に立たない部下だわー、もうねアホかとバカかと言いたい」

 ぶつぶつと独り言を喋る為次の下で寝ているスイ。
 昨夜、借家に戻り寝ようとしたが為次が居ないことに気が付いた。
 一人で寝れないスイは正秀に「ご主人様を持って来るのです」と言って広場に戻ろうとしたのだ。
 だが、正秀は「為次を下ろすと殺されてしまうぞ」などとスイを脅し諦めさせようとしたのだった。
 結局、スイは「分かりましたです」と言うと、広場に戻り吊り下がっている為次の下で寝たのであった。

 それと、レオパルト2も広場に置きっぱなしだ。
 正秀は街中を運転する自信がなかったので、歩いて帰ったのでした。

 「おい! スイ! 起きろ! 貴様は何をやっておるのじゃ!」

 為次は必死にスイを起こそうとしている。
 しかし、地べたで熟睡しているスイは、まったく起きる気配が無い。

 「くそ! 使えん奴だまったく…… 教育がなっとらん!」

 そんな為次がミノムシのように木からぶら下がっていると、向こうから誰か歩いて来きた。

 「よう、為次。よく寝れたか?」

 「はぁーい、おっはよー」

 どうやら正秀がマヨーラと一緒に来てくれたようだ。

 「ぬふぅ、誰かと思えば我の部下ではないか。早くマロをここから降ろすのじゃ」

 「タメツグ何言ってんのよ……」

 「貴様のような下賤な者には要は無しでござる」

 「なんですって……?」

 「なんか、おかしくなってんな……」

 「前からおかしいけどね……」

 「何をしておるのじゃ! 部下とあろう者が提督を放っとくとは何事でござるか! ささ、遠慮は要らぬ、早く我を降ろすのじゃ」

 「……とりあえず降ろした方が良さそうだな」

 「そ、そうね」

 正秀は持ってきた大剣でロープを切ってやることにした。

 ズバッ

 だが、吊るしている部分だけを切ったので、為次は縛られたまま地面に落ちてしまった。

 ドサッ!

 「ぐふぅ!」

 地面に落ちた為次はおかに揚げられた魚のように、ビタンビタンと跳ねている。

 「なんだか気持ち悪いわね……」

 「あ、ああ…… そうだな……」

 ビタンビタン ビタンビタン

 変な動きをする為次を見ていると、結構不気味なので巻かれているロープもほどいてやる。
 ようやく解放された為次は無言で立ち上がると、股間を押さえながら内股で花壇の方へと歩き始めた。
 正秀とマヨーラはその変な歩き方に、更に気持ち悪いと思った。

 「為次、どこへ行くんだ?」

 「おほほ、ちょっとお花摘みに」

 そう言うと、為次は近くの花壇の前で立ち止まり放尿した。

 それは、為次にとって至福の時に違いない。
 この世界に来てから…… いや、生まれて初めての快感なのかも知れない。
 だが、お花摘みに行った花壇の花は多分、枯れるであろう……

 「もっと離れた所でしなさいよ……」
 
 為次は、お花摘みが終わると戻って来た。
 膀胱を開放してスッキリしたので、ちょっと正気に戻った様子である。

 「やあ、マサおはよう」

 「おう、おはよう」

 「どうしたのこんな所で、何かあった?」

 「覚えていないのか?」

 「何が?」

 「昨日のこととか」

 「えっと…… 確かテントで寝て……」

 「1日とんでるぞ」

 「大丈夫なの? タメツグ」

 「ん? 誰だ、その女は」

 「私よ! マヨーラよ!」

 ……あっ! 思い出した、黒パン少女だは」

 ビターン!

 「ぶへっ!」

 「要らんことばっかり思い出すな!」

 マヨーラは為次を思いっきり引っぱたきながら叫んだ。
 思いっきりビンタされた為次は、ようやく目が覚めたっぽい。

 「やあ、マサおはよう」

 「おう、おはよう」

 「何回、おんなじ挨拶してるのよ……」

 「まったく、昨日は酷い1日だったわ、今もほっぺ痛いけど」

 「自業自得よ、少しは反省したの?」

 「はぁ? 俺が何したってば」

 「今夜も吊るして欲しいのかしら?」

 「あ、えっと…… ごめんなさい」

 「始めから素直に謝りなさいよ」

 「くそっ、黒パンが調子に乗りやがって……」

 「何か言った?」

 「あ、いえ、なんでもありません…… ごめんなさい」

 「ほんと、どうしようもないバカね」

 「ぐぬぬぬ」

 「お前ら、喧嘩はその辺にして、レオを戻しに行こうぜ」

 「そうね、そうしましょ。こんな奴構っていても面白くないわ」

 「はいはい、黒ぱんぱん」

 「あっ?」

 ごめんなさい……」

 そして、3人はレオパルト2に乗り込むと……

 乗り込むと……

 「あ、車体を軽くせねば」

 「スイちゃん……」

 スイを忘れていた。

 為次は降車するのが、めんどくさいからと動こうとしないので、仕方なく正秀はスイを拾いに行った。
 装填手席にはマヨーラが入っていたので、スイを運転手ハッチから車内に放り込む。
 すると、為次は相変わらず狭い狭いと文句を言いつつも、嬉しそうにしているのだ。
 なかなか起きなかったスイも、為次の匂いを嗅ぐとようやく目を覚ましたのであった。

 「ご主人様、おはようございます。むはー」

 挨拶をするスイだが、まだ眠そうに為次の胸に顔を埋めている。

 「まだ、寝ててもいいから戦車を軽くしてちょ」

 「はぁい。えんちゃんむにゃ~、るみゃ~すぐりゃびむにゃ~」

 なんか、適当に魔法をかけるスイ。
 一応、魔法は付与された感じはするが、また直ぐに寝てしまった。

 「大丈夫なのか?」

 正秀は心配そうだ。

 「さあ?」

 「さあ? って……」

 「ちょっと動かしてみるわ」

 「おう」

 為次はレオパルト2を少し動かしてみると、その軽さが実感できる。
 軽くアクセルを踏み込むだけで、戦車は軽やかに前進するのであった。

 「おけ、問題ナッシング」

 「分かった、それじゃ借家に戻るか」

 「はいはい」

 レオパルト2は信地旋回で方向転換すると、広場から出て通りに向かって走り出す。
 建物と建物のあいだを走行するレオパルト2は、両側にある建物で音が反響するので凄くうるさい。
 通りに面した家からは、人々が何事かと窓から顔をだしてくる始末で、朝早くから大迷惑だ。
 そんなことも気にせずに戦車は軽快に走る、軽いので速いし石畳も破壊しない。
 もっとも、昨日走った場所なので石畳は既に粉砕されているが……

 通りを抜けると、街並みは屋台街へと入り、街の雰囲気は大きな変化を見せる。
 もう少し時間が立てば、この通りは活気で賑わうであろう。
 しかし、今日は分からない。
 何故なら昨日ほとんどの屋台を為次が破壊したのだから。

 そんな、壊れた街並みで戦車を走らせる為次は思う。

 狭いんだよ、ボケ。

 と。

 ようやく屋台街を抜けると、何時もの勝手に駐車場にしている木の陰までやって来た。
 
 「ねぇ、マサヒデ」

 「ん? どうしたマヨーラ」

 「まだ、朝早いし、何処か行ってみない? 行ってない場所も沢山あるでしょ?」

 「そうだなぁ…… 言われてみればサイクスに来てから殆ど冒険者区画しか行ってないな」

 「んあ? 戻んないの?」

 「タメツグは黙って運転してればいいの!」

 「ぬぅ、サイクスに来てからタクシーの運ちゃんだお、俺……」

 「バスもタクシーも似たようなもんだろ」

 「そうよ、そうよ」

 「まじすか…… つか、マヨはバスとかタクシー知ってんの?」

 「バカは放っといて、マサヒデは行ってみたい場所はないの?」

 マヨーラは為次のツッコミを軽くスルーする。

 「ぬぐぅ……」

 「急に言われてもなぁ…… 為次はどうだ?」

 「え? 俺に振るの? 黙ってろ言われたんだが……」

 「まあ、そう言うなよ」

 「そうね、じゃあ食物プラントとやらがいいかな」

 「え? 食物プラント…… そんなとこに行きたいの?」

 「ダメなん?」

 「別にダメって分けじゃないけど、そんな場所よく知ってたわね」

 「この前聞いたから」

 「誰に?」

 「ガザフだよ」

 「そう、ガザフにね……」

 「為次は食い意地が張ってるからな、飯に関しては調査しまくってたんだよ」

 「あはは、タメツグらしいわね」

 「ヒドイわぁ」

 「それじゃ行こうぜ」

 「はいはい…… で、どっち?」

 「北の方に行けばいいわ、右回りで外周を走って行きましょ」

 「うい」

 斯《か》くして一行はサーサラさん事件など、もはや気にもせずに、一路食物プラントを目指して走り出す。

 まったくもって、どうでもいい早朝の出来事であった…… 
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