異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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テラ宙域編 4章

第1話 未知との遭ぐふっ!

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 ―― 3番モノポールリング付近

 白銀の美しい宇宙船が次元潜行艦の到着を待っていた。
 ワームホール内での戦闘になれば、次元潜行能力が低い通常艦では極めて不利になる為である。

 艦名はテンペスト級1番艦エクステンペスト。
 高機動巡洋艦特有の両側に備え付けられている大きな翼が特徴的だ。
 通常時は閉じているが、現在は戦闘態勢を取っているので左右に大きく開いている。

 ブリッジではクルー達がモノポールリングを監視中である。
 そんな中、情報官のセリナがたった今、リングの反応を確認していた。

 「艦長! ホールアウト反応感知、アウトまでおよそ180秒!」

 「なんだと! 何処の船だ!?」

 艦長は立ち上がるとメインスクリーンを凝視した。

 「シグナルはありません。対象は不明。かなり小さな物体と思われます。質量約60トンのサイズです」

 「ふむ? 隕石か何かでも飛び込んだか?」

 「いえ、生体反応3。何かしらの生命体が入っていると予測されます」

 「……よし、エンジェル隊を展開させろ。あまり前には出すなよ」

 「了解」

 メイが待機中のエンジェル隊へと出撃を促す。
 エンジェル隊とは少女だけで編成された、対宇宙魔獣の特殊部隊である。
 特殊な能力をもって、通常兵器ではダメージを与えることができない魔獣へ、近接戦闘で挑み討伐するのである。
 レオタード姿に手足や背中に戦闘ユニットを装着した、メカ少女とでも呼ぶに相応しい格好をしていた。

 「間もなくホールアウト。3…… 2…… 1…… 今」

 波打つモノポールリングの内側が光を放ち、幾つもの波紋が広がる。
 そして、眩しい輝きとともに、それは姿を現した。

 ブリッジの皆は呆気にとられていた。
 あまりにも予想外の物体が出て来てしまったから……

 「なんだ、あれは……」

 メインスクリーンを見る艦長は呟いた。

 「ねぇティアラちゃん、アレって小型の船かなぁ?」

 「メイにはあれが船に見えるの?」

 「だって…… 宇宙を飛んでるってことは宇宙船でしょ?」

 「そうだけど、どう見てもビーグルよ?」

 「無駄話はいい! 照合しろ!」

 「はい、完了しています。適合率現在73パーセント、戦車かと思われます」

 「せん…… 戦車だと……!? ぶわっはっはっは」

 急に笑い出す艦長。
 まだ彼らは知らないが、それは惑星アクアよりやって来たレオパルト2であった。

 「微弱なレーザーを照射しています。おそらく距離の測定かと」

 「ふむ」

 「スキャン開始します」

 「ああ」

 「か…… 完了しました…… 100パーセント完了です。地上用ビーグル、約7.7メートル程度の戦車で間違いありません。開拓時代のモノと似ているようです」

 「おい、本当か!?」

 「はい」

 皆は驚いた、スキャンが即座に完了したから……

 スキャンとは対象を内部まで調べ、その構造を隅々まで事細かに把握できる手段である。
 通常はジャミングシールドや装甲に阻まれて非常に困難な作業だ。
 その為に、シールドと同時に発生しているジャミングの隙を付き、装甲を徐々に透過させる必要がある。
 当然、相手も防御手段としてジャミングのパターンを逐一変化させる。
 水面下で行われる静かなる情報戦なのだ。
 スキャンされた側は弱点をさらけ出すことになり、戦闘になれば非常に不利となる。

 故に簡単には成功しないはずなのだが……

 「装甲は鉄やセラミックです。武装は火薬を使ったインパクト兵器が一門。動力源は油を使用したレシプロ機関と思われますが……」

 ティアラは報告するも最後の言葉は切れ味が悪かった。

 「動力源がどうかしたのか?」

 「はい。油で作動する機関ようですが水素を使用しています。その水素の発生源が不明です」

 「ふむ…… エネルギー源はともかく、原始的なビーグルで間違いはなさそうだな」

 「武装も貧弱過ぎます。驚異となる対象ではありませんし、装甲のつもりでしょうがあれでは重いだけで……」

 「よくもまあ、あんな玩具おもちゃで来れたものだな…… よし、通信を試みる」

 早速、メイは一般的に使用される重力波通信で問いかける。

 「こちらソーラ連合軍所属エクステンペスト、リングから出て来たビーグルは応答せよ」

 応答が無い。

 「こちらソーラ連合軍所属……」

 ……………
 ………
 …

 しばらく通信を試みたが、一向に応答の気配は無かった。

 「駄目です。重力波通信、亜空間通信どれも応答ありません」

 「ふーむ…… 何ものなのだ……」

 「搭乗員はヒューマンタイプです。ナノマシンもこちらと同じ物を使用しているようです。ですが、船体へのナノマシンの使用はありません」

 セリナは報告した。

 「通信装置の故障か?」

 「どうでしょうか? 調べてみます」

 「ああ」

 車内を細かくスキャンすると、通信の取れない原因はすぐに分かった。

 「分かりました。先程から放出している電波が彼らの通信手段です」

 「ええっ!? 電波通信なの? 今どきそんなの使わないよぉ」

 「ほら、メイっ。文句言ってないで早く」

 「あ、そ、そうだね……」

 メイはチラリと艦長を見てから、電波によるチャンネルをオープンにした。

 と、その時だった……

 『ねぇ! もしもしぃ! ねぇってば、聞こえるー? おーい、おーい!!』

 突如、為次の間抜けな叫び声がブリッジ内に響き渡る。

 『もしもーし! おーい、もしもーし。なんとか言ってよー』

 『その周波数も駄目か?』

 『もしもしぃ! これも駄目だわ。次やってみるは』

 『おう』

 どうやら必死にコンタクトを取ろうとしているのが伺える。
 だが、うるさいだけだ。

 「もう少しボリュームを絞れ!」

 「は、はい!」

 「それと、こちらの回線も開くんだ」

 「既にオープンしてますが……」

 メイが言い終わる前に、艦長は戦車へと問いかける。

 「そうか、あーあー聞こえるか?」

 『もしもしぃ、ねぇーねぇー、もしもしぃ!」

 「おい、黙れ!」

 『なんとか言ってよー、ねーねー、もしもしぃ』

 「少し静かにしろ!」

 「あ、あの……」

 「なんだっ? メイ」

 『もっしもーし』

 「相互通信ではありません」

 「なっ…… なんだと!? くそっ! 何処までロートルな連中だぁっ!」

 結局、相手が喋り終わるのを待つハメになってしまった。

 ……………
 ………
 …

 ―― 3分後

 ようやく戦車からの通信が途切れた。
 最後に『ダメっぽいね』『おう』との会話の後に静かになった。
 イライラ気味だった艦長は自ら交信試みる。

 「おい! リングから出て来た戦車…… 戦車、ぶわはっ。戦車聞こえたら返事をしろ!」

 『もしもーし、聞こえるよ』

 『やったな為つ』

 プツッ

 即座に返答はきた。

 「こちらはソーラ連合軍所属のエクステンペストだ、貴官の所属を知らせろ」

 『もしもしぃ、こっちは日本の陸上自衛隊のレオパルト2だよ。第10師団だったかも』

 「聞かない名前だな、星系と惑星は?」

 『もしもしぃ、太陽系の地球だよ』

 「どうだ?」

 艦長は通信をせずにセリナに訊いた。

 「照合しましたが、該当する星系も惑星もありません」

 「ふむ」

 再び通信を始める。

 「目的を言え」

 『もしもしぃ、リングの向こう側にあるアクアって星が大変なことになってて、助けてもらえたらと思って……』

 「分かった、しばらく待て。妙なマネはするなよ」

 『もしもしぃ、はーい』

 一旦、通信を終わらせた。

 「向こうで何かあったようだな」

 「はい。どうされますか? 艦長」

 セリナは訊いた。

 「このまま放っておく分けにもいかんか……」

 「収容するにも、二名は男性ですが」

 「そのようだな、どうしたものか……」

 「ワープ機能は無いみたいですので、このままだと宇宙の塵になってしまいますが……」

 「……仕方ないか。エンジェル隊を向かわせろ。とりあえず回収する」

 「了解。メイ」

 「うん」

 メイが出撃中のエンジェル隊の3人に連絡をする。
 すると少女達は宇宙に浮かぶ戦車に向かうのであった。

 ※  ※ レオパルト2車内 ※  ※

 戦車クルーの三人は一安心であった。
 未知の宇宙へと投げ出され、最悪は死すらも覚悟していた。
 だが、ワームホールから抜けると前方に白い宇宙船らしき物が確認できた。
 必死に交信を試みた結果、先程収容してくれるとの連絡があったからだ。

 「あー、マジで助かったわ」

 「だな」

 「良かったですね、タメツグ様」

 「そうだねー」

 「お! 誰かこっちに来るぜ」

 「え? 誰かって?」

 「女の子だぜ。水着の……」

 「はぁ? マジで……?」

 正秀はパノラマサイトを覗いていたので、いち早く確認できていた。
 言われて為次もペリスコープを覗く。

 「どれどれ?」

 「12時、真正面だぜ」

 確かに前方に人影のようなものが見える。
 かなりの速度であろう、ぐんぐんと近づいて来た。

 「うお、ほんとだ。水着の女の子…… って宇宙服は!? バイザーだけでヘルメットも無しって……」

 「宇宙遊泳だから水着なんだろ、水中眼鏡もしてるし」

 「いやいや、あり得んって」

 などと話している内に、彼女らは目の前まで迫り止まった。

 『聞こえる?』

 3人の内の誰かだろう。
 可愛らしい声が無線機から聞こえてきた。

 「もしもしぃ、あ、っはい」

 『誘導する。付いて来て」

 「もしもしぃ、りょかーい」

 メカ少女達が戦車の後方と両脇に着くと、為次はコンスクを操作しエクステンペストへと進路を取る。
 と、そこへ通信が入る。

 『もう少し速度は出ないの?』

 「もしもしぃ、遅い?」

 『凄く遅い』

 凄くと言われてしまったので、水素パルスエンジンの出力を最大にしてみる。
 大気の無い宇宙だ、音速などは優に超えかなりの速度まで加速するはずである。

 が……

 『速くならないの?』

 「ええ!? もういっぱいなんだけど!」

 予想外の言葉に思わず、「もしもし」を言い忘れてしまった為次。

 『分かった。押す』

 「へっ?」

 と、次の瞬間……

 「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 「おぉぉぉぉ、すげぇぜ……」

 「うにゅにゅ、何事ですかぁ!?」

 車内には凄まじいまでの加速度が加わった。
 戦士の正秀でも耐えるのは困難な程だ。
 シートの良い為次はまだマシだが、スイは弾薬庫の扉に顔面から打ち付けてしまう。

 「いだだだ、痛いのですぉ!」

 「ちょ…… ぐぇ……」

 マシだと思われた為次も、持っていたコンスクが胸にめり込む。

 ボキッ ゴキッ

 「がはっ、ぐへぇっ……」

 折れた肋が肺に刺さり、吐血してしまった。
 しかも、血を吐くのすら苦しい始末である。

 だが、苦しいのも束の間であった。
 加速度が得られると、次第に体も楽になる。

 と、思ったが……

 車体が180度反転するのが感じられると……
 再び減速による荷重が三人を襲う。

 「ぎぃぇぇぇぇぇ、息がぁ……」

 「た、為次…… 大丈夫か?」

 「いだだだ、うにゅぅー!」

 車内には三人の絶叫が木霊する。

 無事にモノポールリングを通過できたと思ったのも束の間。
 色々と難儀な連中であった……
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