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テラ宙域編 4章
第3話 色々と教えてしてほしいってば
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三人は出された弁当を食べ始めた。
見た目は悪いが味は問題無い。
むしろ美味しい。
「じゃあ、話すけど艦長1人しか居ないけどいいの?」
「問題無い。戦闘艦だからな、この手のことに関しては応対できる者が少ない。それにブリッジの情報官も聞いているので心配は無用だ」
「そう…… 当然だけど見張られてるのね」
「当たり前だろう」
「では…… もぐもぐ」
そして、為次はアクアでの出来事をかいつまんで説明するのであった。
……………
………
…
「……って分けだね」
調査船ミストラルが魔獣によって全損。
帰還不能に陥り、思考に異常がきたし始めた為に記憶を失いつつもなんとか生存している旨を伝えた。
あまり詳しくは話していない。
特に魔法に関しては黙っていた。
相手は何もかもが優位な立場にある。
こちらのアドバンテージは魔法だけだから……
「ふむ、色々と大変だったようだな。だが他にも話すことは無いのか?」
「他にも? うーん…… 特には無いよ」
「そうか? お前は先程ケガをしていたようだが…… ナノマシンで即座に治るようなものではないと思うが?」
「それはですね…… むぐぐ?」
スイが喋りそうになったところで、為次は口を塞いだ。
「もぐぐ…… モグツグ様?」
「いやまあ、こっちには凄い治療薬があってねぇ…… へへへ」
「ほう?」
「欲しかったらあげてもいいけど…… こちらも訊きたいことが少々……」
「ふふっ、よかろう。何が聞きたい?」
「とりあえず救助の方は?」
「それは心配無い。元々テラの住民だからな、本部に連絡すれば対策は取るはずだ」
「ほんとか!? それならサーサラさんも助かるよな!」
正秀は嬉しそうであった。
「だがな……」
「ん? だが? だがなんだぜ?」
「向こうにも魔獣が居るのだろう? そうなれば、おいそれと行く分けにもゆかん。下手をすれば再びモノポールリングを閉じる必要も出てくるかもな」
「なんだよ、そりゃ……」
「あー、その辺は心配ないよ。あっちの魔獣は宇宙まで行かないから」
「そうなのか?」
「多分だけどね……」
「頼りない返事だな」
「んま、それはそれとして、この船はなんなの?」
「私の艦か? これは魔獣討伐の特務艦、高機動巡洋艦エクステンペストだ。テンペスト級一番艦だが少し前に近代化改修をした最新型だ。その時に改名もした」
「ふーん、魔獣討伐ってどうやって?」
「天使と呼ばれる、戦闘員によって近接戦闘を仕掛ける。魔獣は彼女らにしか倒せないからな」
「え? もしかして、さっきレオ…… 戦車を押しやがったアレ?」
「そうだ」
「……もっと凄いビームとか兵器は無いの?」
「もちろんあるぞ、それこそお前らの戦車など一瞬で蒸発させてしまう程のな。だが魔獣は違う。奴らはシールドによって全てが無効化されてしまうのだ」
「へー……」
「アクアにも魔獣は居るのだろう? 3百年もの間どうやって凌いでいたのだ?」
「へへっ! そいつはこの俺が!」
と、スプーンを振り回しながら突然に立ち上がった正秀。
「こう、大剣でバッタバッタと薙ぎ倒したんだぜ! 良かったら詳しく話すぜ、この俺の活躍をな!」
スプーンを大剣に見立て、大立ち回りをする変な人を艦長は唖然と見ていた。
「彼は大丈夫なのか?」
と、為次に訊いた。
「う…… 気にしないで……」
「どうだ!? 聞きたいよなっ」
「マサ、お座りして」
「食事中は、お座りなのです」
「お、おう……」
ちょっと不満そうに座るも、まだ話したそうだ。
「しばらく静かにしててね、マサは」
「う…… 艦長、後で沢山聞かせてやるぜ…… 艦長……? 名前はなんて言うんだ?」
「……私は艦長だ。名前など気にするな」
「そうは言っても気になるんだぜ」
「そんなことはどうでもいい! 気にするな!」
名前を訊かれて、急に大声を出した艦長。
余計に気になるが、どうしても名前を教えたくない雰囲気が伝わってくる。
「お、おう…… 別に無理にって分けじゃ……」
「うむ…… それで、他にも聞きたいことはあるのか?」
「えっとねー……」
為次が何か言おうとした時であった。
シャララーン♪ シャララーン♪
何処からか可愛らしい音楽が聞こえてきた。
「ん? 何?」
「ああ、すまない。私への通信だ」
そう言いながら艦長は携帯端末を取り出すと、何やら操作をした。
すると、女性が映し出されたスクリーンが投影される。
「どうした?」
スクリーンに向かって話すと、相手も応える。
『本部からの通信です。アルファ宙域にて魔獣の出現を確認。エクステンペストは速やかにこれを排除せよ。以上です』
「なんだと! こちらはまだ、リングの監視中だぞ。それに要救助者も乗艦したままだ!」
『はい。監視任務は間もなく到着予定の次元潜行艦シータイガーに引き継がれます。要救助者はこのまま乗艦とのことです』
「くそっ! 本部は一体何を考えているのだ! こちらはエンジェルを2人も失ったままだぞ!」
『それについても、タイフーンが応援に来るとのことです。現在は我々が一番近いからと』
「ふざけやがって! メイっ! 後で覚悟しとくんだな!」
『ええ!? な、な、なんで私なんですかーっ!? うう…… 通信を伝えただけですよぉ……』
「すぐにブリッジに向かう」
通信を終えた艦長は、かなり苛立っている様子だ。
どうやら話していたメイと呼ばれる女性は、あてつけで怒鳴られていたみたいだ。
「すまないな君達。急用ができた。ここで大人しく待っていてくれ。その辺をうろつくんじゃないぞ。特にタメツグとマサヒデの男どもはな」
「男だと駄目なの?」
「そうだな、それも後で説明しよう。では失礼する」
「あ、ちょ……」
為次は待ってくれと言おうとするも、艦長はさっさと部屋から出て行ってしまった。
「あー、行っちゃった……」
「だな」
「です」
「でもまあ、助けてもらえるみたいだな。良かったじゃないか為次」
「うん」
「で、これからどうする?」
「そうね、暇だしどっか散策に行こうよ」
「おう」
「です」
大人しく待っておけと言われたが、残念ながらそんな連中ではない。
特に為次は超科学の結晶であろう、この船に興味津々である。
「いえーい、出発ー!」
皆は残った弁当を掻き込むと扉へと向かう。
プシュー
自動ドアは問題無く開いたので、皆は意気揚々と飛び出した。
どうやら監禁されている分けではなさそうだ。
右に左にと見渡すも、白く素っ気ない通路が続いているだけだ。
「あっちから来たっけ?」
右を指しながら為次は訊いた。
「どうだっけな? まあ、そっちだろ。多分」
「じゃあ反対に行こうよ」
「なんでだよっ」
「だって違うとこも見たいじゃない」
「……ああ、確かにな」
「行くです」
「そうだねー」
そんな分けで早速、散策を始める。
てく てく てく……
未知の宇宙船にワクワクしながら歩む。
しかし、しばらく進んだものの、あまり代わり映えはしない。
「なんだか同じような通路がずっと続いているだけだぜ……」
「うん」
「何も無いです」
「うん」
所々、何かの部屋ヘ通じるだろう扉はあるが、その他は白い通路が続いているだけだ。
しかも、誰とも出会わない
「どうするんだ?」
「んー…… どっかに端末が置いてないかなぁ。見取り図でもあればいいのに」
「だな」
と、そこへ前方から誰かがやって来る。
「誰か来たのです」
「ほんとだ」
「あっ! なあ為次。あの娘ってさっきの……」
銀髪であまり表情の無い少女。
服装こそメカ少女風ではなく、きっと制服であろうブレザーにタイトスカートといった感じではあるが……
間違いなく戦車が遅いからと、思いっ切り押した少女であった。
「こんにちは」
三人の前で止まると挨拶をしてきた。
「おう、ユーナちゃん…… だったよな? こんにちはだぜ」
「こんにちはなのです」
「うげ、またこいつか…… てか、さっきは夜って言ってたし」
あからさまに嫌そうな顔をする為次。
それでもユーナは気にしていない……
と、いうよりは何を考えているのかイマイチ分からない表情だ。
「何処に行くの?」
「何処だっていいでしょ!」
「おい為次…… 何を怒ってんだよ…… ユーナちゃん、俺達はこの凄い船を散策中なんだぜ」
「案内する」
「いいのかい? そりゃ助かるぜ。な、為次」
「うー、まあいいけど。忙しんじゃないの? さっき艦長が魔獣討伐に向かうとか言ってたし、あんたが戦闘要員のエンジェルって奴じゃないの?」
「そう、でもまだ時間がある。あなた達が、うろついてるから相手しとけって艦長が」
どうやら監視はされているらしい。
「ふーん」
「じゃあ、ユーナちゃん案内よろしくな」
「分かった」
……が。
「「「「…………」」」」
誰も動こうとしないし、何も言わない。
ユーナのガイドを待っているが、突っ立ているだけだ……
「ユーナ…… ちゃん?」
「何?」
「何じゃないよ! 案内するんじゃないのっ!?」
ちょっと為次はキレてしまった。
「何処に行くの?」
「何処だっていいでしょっ!」
「おい為次…… 何を怒って……」
「ちょっと待てーい! 同じ会話をしてんじゃない!」
「案内する」
「じゃあ、ユーナちゃん案内よろしくな」
「んも、早く行けって」
「何処に……」
「それは、もういいからっ!」
流石に為次はユーナのセリフを途中で遮った。
「くそっ……(なんだこいつは、頭おかしいのか? 仕方ない適当に目的地を考えるか)」
「なぁ為次。何処か行きたいとこを言った方がいいんじゃないのか?」
「うん、今そう思ってた」
「スイちゃんは何処に行きたい?」
「私はタメツグ様と一緒なら何処でもです」
「……よし、武器を見せてよ。兵器があるとこ」
と、為次は言った。
「分かった」
……が。
「「「「…………」」」」
ユーナは動こうとしなかった。
「ねぇ! なんなの!? 早く案内してよっ!」
為次が喚くもユーナは自分を指すだけであった。
「え? 何? なんなの!?」
「私が兵器。だからここ」
「……あ、ああ。確かエンジェルとか恥ずかしい名前の兵器だったけ」
「恥ずかしくない」
「でも、もっとこう…… 生物じゃなくて…… 機械みたいな、乗り物みたいな……」
「生物は冷蔵庫に入れておかないと、腐るのです」
「そうだねー」
「腐らない」
表情の読み取れないユーナであるが、心無しかムッとした感じであった。
「お、おう…… って、失礼だろ為次」
「タメツグは失礼」
「だよな…… えっと…… そうだ、ユーナちゃん。武器とかはあるのか?」
「ある」
と、答えた瞬間だった!
突然ユーナの全体が光り一瞬だけ裸のようになると、次の瞬間にはレオタードに機械を装着した状態になった。
イキナリの変身に三人は驚きを隠せない。
「う、うおっ!? ユーナちゃん?」
「は、裸……」
「びっくりなのです!」
「タメツグ、目つきが嫌らしい」
目の前に居る変身ヒロイン状態の少女に正秀は大興奮だ。
変身こそ男のロマンである。
などと思っていた。
「うぉぉぉぉ! スゲーぜぇぇぇっ!」
正秀の絶叫が通路に木霊するのであった……
見た目は悪いが味は問題無い。
むしろ美味しい。
「じゃあ、話すけど艦長1人しか居ないけどいいの?」
「問題無い。戦闘艦だからな、この手のことに関しては応対できる者が少ない。それにブリッジの情報官も聞いているので心配は無用だ」
「そう…… 当然だけど見張られてるのね」
「当たり前だろう」
「では…… もぐもぐ」
そして、為次はアクアでの出来事をかいつまんで説明するのであった。
……………
………
…
「……って分けだね」
調査船ミストラルが魔獣によって全損。
帰還不能に陥り、思考に異常がきたし始めた為に記憶を失いつつもなんとか生存している旨を伝えた。
あまり詳しくは話していない。
特に魔法に関しては黙っていた。
相手は何もかもが優位な立場にある。
こちらのアドバンテージは魔法だけだから……
「ふむ、色々と大変だったようだな。だが他にも話すことは無いのか?」
「他にも? うーん…… 特には無いよ」
「そうか? お前は先程ケガをしていたようだが…… ナノマシンで即座に治るようなものではないと思うが?」
「それはですね…… むぐぐ?」
スイが喋りそうになったところで、為次は口を塞いだ。
「もぐぐ…… モグツグ様?」
「いやまあ、こっちには凄い治療薬があってねぇ…… へへへ」
「ほう?」
「欲しかったらあげてもいいけど…… こちらも訊きたいことが少々……」
「ふふっ、よかろう。何が聞きたい?」
「とりあえず救助の方は?」
「それは心配無い。元々テラの住民だからな、本部に連絡すれば対策は取るはずだ」
「ほんとか!? それならサーサラさんも助かるよな!」
正秀は嬉しそうであった。
「だがな……」
「ん? だが? だがなんだぜ?」
「向こうにも魔獣が居るのだろう? そうなれば、おいそれと行く分けにもゆかん。下手をすれば再びモノポールリングを閉じる必要も出てくるかもな」
「なんだよ、そりゃ……」
「あー、その辺は心配ないよ。あっちの魔獣は宇宙まで行かないから」
「そうなのか?」
「多分だけどね……」
「頼りない返事だな」
「んま、それはそれとして、この船はなんなの?」
「私の艦か? これは魔獣討伐の特務艦、高機動巡洋艦エクステンペストだ。テンペスト級一番艦だが少し前に近代化改修をした最新型だ。その時に改名もした」
「ふーん、魔獣討伐ってどうやって?」
「天使と呼ばれる、戦闘員によって近接戦闘を仕掛ける。魔獣は彼女らにしか倒せないからな」
「え? もしかして、さっきレオ…… 戦車を押しやがったアレ?」
「そうだ」
「……もっと凄いビームとか兵器は無いの?」
「もちろんあるぞ、それこそお前らの戦車など一瞬で蒸発させてしまう程のな。だが魔獣は違う。奴らはシールドによって全てが無効化されてしまうのだ」
「へー……」
「アクアにも魔獣は居るのだろう? 3百年もの間どうやって凌いでいたのだ?」
「へへっ! そいつはこの俺が!」
と、スプーンを振り回しながら突然に立ち上がった正秀。
「こう、大剣でバッタバッタと薙ぎ倒したんだぜ! 良かったら詳しく話すぜ、この俺の活躍をな!」
スプーンを大剣に見立て、大立ち回りをする変な人を艦長は唖然と見ていた。
「彼は大丈夫なのか?」
と、為次に訊いた。
「う…… 気にしないで……」
「どうだ!? 聞きたいよなっ」
「マサ、お座りして」
「食事中は、お座りなのです」
「お、おう……」
ちょっと不満そうに座るも、まだ話したそうだ。
「しばらく静かにしててね、マサは」
「う…… 艦長、後で沢山聞かせてやるぜ…… 艦長……? 名前はなんて言うんだ?」
「……私は艦長だ。名前など気にするな」
「そうは言っても気になるんだぜ」
「そんなことはどうでもいい! 気にするな!」
名前を訊かれて、急に大声を出した艦長。
余計に気になるが、どうしても名前を教えたくない雰囲気が伝わってくる。
「お、おう…… 別に無理にって分けじゃ……」
「うむ…… それで、他にも聞きたいことはあるのか?」
「えっとねー……」
為次が何か言おうとした時であった。
シャララーン♪ シャララーン♪
何処からか可愛らしい音楽が聞こえてきた。
「ん? 何?」
「ああ、すまない。私への通信だ」
そう言いながら艦長は携帯端末を取り出すと、何やら操作をした。
すると、女性が映し出されたスクリーンが投影される。
「どうした?」
スクリーンに向かって話すと、相手も応える。
『本部からの通信です。アルファ宙域にて魔獣の出現を確認。エクステンペストは速やかにこれを排除せよ。以上です』
「なんだと! こちらはまだ、リングの監視中だぞ。それに要救助者も乗艦したままだ!」
『はい。監視任務は間もなく到着予定の次元潜行艦シータイガーに引き継がれます。要救助者はこのまま乗艦とのことです』
「くそっ! 本部は一体何を考えているのだ! こちらはエンジェルを2人も失ったままだぞ!」
『それについても、タイフーンが応援に来るとのことです。現在は我々が一番近いからと』
「ふざけやがって! メイっ! 後で覚悟しとくんだな!」
『ええ!? な、な、なんで私なんですかーっ!? うう…… 通信を伝えただけですよぉ……』
「すぐにブリッジに向かう」
通信を終えた艦長は、かなり苛立っている様子だ。
どうやら話していたメイと呼ばれる女性は、あてつけで怒鳴られていたみたいだ。
「すまないな君達。急用ができた。ここで大人しく待っていてくれ。その辺をうろつくんじゃないぞ。特にタメツグとマサヒデの男どもはな」
「男だと駄目なの?」
「そうだな、それも後で説明しよう。では失礼する」
「あ、ちょ……」
為次は待ってくれと言おうとするも、艦長はさっさと部屋から出て行ってしまった。
「あー、行っちゃった……」
「だな」
「です」
「でもまあ、助けてもらえるみたいだな。良かったじゃないか為次」
「うん」
「で、これからどうする?」
「そうね、暇だしどっか散策に行こうよ」
「おう」
「です」
大人しく待っておけと言われたが、残念ながらそんな連中ではない。
特に為次は超科学の結晶であろう、この船に興味津々である。
「いえーい、出発ー!」
皆は残った弁当を掻き込むと扉へと向かう。
プシュー
自動ドアは問題無く開いたので、皆は意気揚々と飛び出した。
どうやら監禁されている分けではなさそうだ。
右に左にと見渡すも、白く素っ気ない通路が続いているだけだ。
「あっちから来たっけ?」
右を指しながら為次は訊いた。
「どうだっけな? まあ、そっちだろ。多分」
「じゃあ反対に行こうよ」
「なんでだよっ」
「だって違うとこも見たいじゃない」
「……ああ、確かにな」
「行くです」
「そうだねー」
そんな分けで早速、散策を始める。
てく てく てく……
未知の宇宙船にワクワクしながら歩む。
しかし、しばらく進んだものの、あまり代わり映えはしない。
「なんだか同じような通路がずっと続いているだけだぜ……」
「うん」
「何も無いです」
「うん」
所々、何かの部屋ヘ通じるだろう扉はあるが、その他は白い通路が続いているだけだ。
しかも、誰とも出会わない
「どうするんだ?」
「んー…… どっかに端末が置いてないかなぁ。見取り図でもあればいいのに」
「だな」
と、そこへ前方から誰かがやって来る。
「誰か来たのです」
「ほんとだ」
「あっ! なあ為次。あの娘ってさっきの……」
銀髪であまり表情の無い少女。
服装こそメカ少女風ではなく、きっと制服であろうブレザーにタイトスカートといった感じではあるが……
間違いなく戦車が遅いからと、思いっ切り押した少女であった。
「こんにちは」
三人の前で止まると挨拶をしてきた。
「おう、ユーナちゃん…… だったよな? こんにちはだぜ」
「こんにちはなのです」
「うげ、またこいつか…… てか、さっきは夜って言ってたし」
あからさまに嫌そうな顔をする為次。
それでもユーナは気にしていない……
と、いうよりは何を考えているのかイマイチ分からない表情だ。
「何処に行くの?」
「何処だっていいでしょ!」
「おい為次…… 何を怒ってんだよ…… ユーナちゃん、俺達はこの凄い船を散策中なんだぜ」
「案内する」
「いいのかい? そりゃ助かるぜ。な、為次」
「うー、まあいいけど。忙しんじゃないの? さっき艦長が魔獣討伐に向かうとか言ってたし、あんたが戦闘要員のエンジェルって奴じゃないの?」
「そう、でもまだ時間がある。あなた達が、うろついてるから相手しとけって艦長が」
どうやら監視はされているらしい。
「ふーん」
「じゃあ、ユーナちゃん案内よろしくな」
「分かった」
……が。
「「「「…………」」」」
誰も動こうとしないし、何も言わない。
ユーナのガイドを待っているが、突っ立ているだけだ……
「ユーナ…… ちゃん?」
「何?」
「何じゃないよ! 案内するんじゃないのっ!?」
ちょっと為次はキレてしまった。
「何処に行くの?」
「何処だっていいでしょっ!」
「おい為次…… 何を怒って……」
「ちょっと待てーい! 同じ会話をしてんじゃない!」
「案内する」
「じゃあ、ユーナちゃん案内よろしくな」
「んも、早く行けって」
「何処に……」
「それは、もういいからっ!」
流石に為次はユーナのセリフを途中で遮った。
「くそっ……(なんだこいつは、頭おかしいのか? 仕方ない適当に目的地を考えるか)」
「なぁ為次。何処か行きたいとこを言った方がいいんじゃないのか?」
「うん、今そう思ってた」
「スイちゃんは何処に行きたい?」
「私はタメツグ様と一緒なら何処でもです」
「……よし、武器を見せてよ。兵器があるとこ」
と、為次は言った。
「分かった」
……が。
「「「「…………」」」」
ユーナは動こうとしなかった。
「ねぇ! なんなの!? 早く案内してよっ!」
為次が喚くもユーナは自分を指すだけであった。
「え? 何? なんなの!?」
「私が兵器。だからここ」
「……あ、ああ。確かエンジェルとか恥ずかしい名前の兵器だったけ」
「恥ずかしくない」
「でも、もっとこう…… 生物じゃなくて…… 機械みたいな、乗り物みたいな……」
「生物は冷蔵庫に入れておかないと、腐るのです」
「そうだねー」
「腐らない」
表情の読み取れないユーナであるが、心無しかムッとした感じであった。
「お、おう…… って、失礼だろ為次」
「タメツグは失礼」
「だよな…… えっと…… そうだ、ユーナちゃん。武器とかはあるのか?」
「ある」
と、答えた瞬間だった!
突然ユーナの全体が光り一瞬だけ裸のようになると、次の瞬間にはレオタードに機械を装着した状態になった。
イキナリの変身に三人は驚きを隠せない。
「う、うおっ!? ユーナちゃん?」
「は、裸……」
「びっくりなのです!」
「タメツグ、目つきが嫌らしい」
目の前に居る変身ヒロイン状態の少女に正秀は大興奮だ。
変身こそ男のロマンである。
などと思っていた。
「うぉぉぉぉ! スゲーぜぇぇぇっ!」
正秀の絶叫が通路に木霊するのであった……
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